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  3. 『トラガール促進プロジェクトサイト』立上げの背景と女性雇用に果たした役割 大きく前進した国土交通省の取り組み
  4. 『トラガール促進プロジェクトサイト』立上げの背景と女性雇用に果たした役割 大きく前進した国土交通省の取り組み

    ITV_2016年4月号表紙

    月刊ITV 2016年4月号

    発行:平成28年4月1日 発行所:(株)日新(HP) 執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之 表紙・レイアウト:望月満 記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄

    『トラガール促進プロジェクトサイト』立上げの背景と女性雇用に果たした役割

    大きく前進した国土交通省の取り組み

    このところ、トラックドライバー不足が顕著に表面化してきた。荷物もある、トラックもある、しかしドライバーが居ないので運べない。このような状況が訪れる事は既に数年前から予測されていたが、アベノミクスで経済が活発化したことで、一気に加速の傾向にある。そこで、女性労働力に着眼した国土交通省では、女性トラックドライバーの呼称を”トラガール”とし、『トラガール促進プロジェクトサイト』を立ち上げ、トラック運送事業の支援に乗り出している。このような形で官が業界をリードするのは稀なケースであるが、このサイト立上げから約1年半が経過したので、これまでの取り組みや成果などを国土交通省自動車局貨物課に取材した。

    『トラガール促進プロジェクト』...ザ・トラック

    『トラガール促進プロジェクト』

    『トラガール促進プロジェクトサイト』の開設背景

    子どもの頃にモノクロTVで、まんが昔話『うばすて山』を観た記憶がある。 昔、ある山奥の村に、60歳以上のお年寄りは親であっても山へ捨てなければならない、というお触れ(ルール)がある所があって、一人の息子が年老いた母親を背負ってうばすて山へ登って行くが、背負われた母親は「息子が帰り道に迷わないように…」と、道すがら木の枝を折って道しるべを作っていたというストーリである。 筆者は昭和22年生まれ、間もなく69歳になる。我々団塊世代は人口構成比の中でも蛇がタマゴを丸のみした時のように塊となって膨れ上がっている。『うばすて山』の時代なら裏山に捨てられる年齢である。しかし、この『うばすて山』は、親が子を思う人情ストーリのほかに、経験豊富な高齢者の智慧で難局を乗り切る筋書きも別にある。少子高齢化の日本に何かを示唆する内容でもある。 平成26年9月9日、国土交通省自動車局のホームページに以下のニュースが掲載された。「本日、自動車局のホームページ内に、『トラガール促進プロジェクトサイト』を開設しましたのでお知らせいたします。本サイトでは、全国各地の女性トラックドライバー(通称「トラガール」)の活躍紹介に加え、トラガールになるための方法等を盛り込んでいます。今後も随時、サイト内容の充実強化に努めてまいります。ぜひご覧下さい。」 この『トラガール促進プロジェクトサイト』は、自動車局貨物課が開設したもので、官としては初めての取り組みであるが、その目的など、次のように説明している。 「男性の仕事と思われがちなトラックドライバー。他産業に比べても、女性比率はまだまだとても低い状況です。そんな中、近年、少しずつではありますが、業界に華やぎを与える女性ドライバー(トラガール)が増えてきました。『トラガール促進プロジェクト』は、元気に活躍するトラガールを社会に広く発信することで、トラガールを目指す女性の道しるべとなるとともに、経営者や荷主に新しい視点を提供し、業界のイメージ改革を図るための取組です。トラック運送業界は、他業種に比べて女性の進出が遅れていましたが、近年は、細やかな気配りや高いコミュニケーション能力、丁寧な運転など女性ドライバーならではの能力発揮を通じた業界の活性化を図るべく、女性トラックドライバーの活躍に注目が集まっています。国土交通省自動車局では、トラック運送業界における女性の活躍を促進するため、女性トラックドライバーをトラガールと名付け、様々な取組を進めております。」

    トラガール促進プロジェクトサイトのトップページ...ザ・トラック

    トラガール促進プロジェクトサイトのトップページ

    トラガールロゴ...ザ・トラック

    トラガールロゴ

    トラガールの活躍ぶりを掲載

    現在、トラックドライバーに占める女性比率はわずか2.5%(約2万人)にとどまっている。大型免許を保有する女性は全国に13万4千人以上にのぼっているので、ドライバーを職業の選択肢として考える女性は潜在的には一定程度見込めると考えられる。しかし、現役の女性ドライバーからは、女性であることのみを理由に就職を断られたといった声や、配送先等に女性用トイレが整備されていないといった声が上がっており、女性を雇うことについての経営者の意識改革や女性が働きやすい労働環境の整備、業界イメージの改善が喫緊の課題となっている。そこで、国土交通省では、2014年をトラックドライバーの「人材確保・育成元年」と位置付け、トラック運送業界における女性の活躍を促進していくため、積極的な情報発信や経営者に対する働きかけなどを開始。そのとり組のひとつが『トラガール促進プロジェクトサイト』の開設である。 では、『トラガール促進プロジェクトサイト』では、これまで主にどのような内容を扱ってきたのか。 「このサイトでは、運転免許の種別ごとの取得方法や、採用活動に係るイベント情報等を紹介するとともに、全国の現役女性ドライバーの声や、関係業界等からの応援メッセージ等を掲載しています。また、単なる情報発信にとどまらず、女性ドライバーの労働環境の一層の改善(運送道中におけるトイレ使用や荷役作業時の省力化等)にご理解・ご配慮していただける事業者等について、このサイト内でトラガール協力企業として紹介するなどしています。」(貨物課) では、現在この『トラガール促進プロジェクトサイト』に掲載されている、トラガールを一例紹介しょう。 トラガールのOさん、Mさん、Iさんトヨタ輸送株式会社堤営業所(愛知県豊田市)

    なんと21mもあるフルトレーラに憧れて、ドライバーを目指した3名のトラガールたち!...ザ・トラック

    なんと21mもあるフルトレーラに憧れて、ドライバーを目指した3名のトラガールたち!

    笑顔がすてきな入社16年目のOさん、夫も同社で運行管理者をしている入社10年目のMさん、昨年9月に入社した元気いっぱいのIさんたちは、とても仲良しです。3人が話し始めたら、周りもつい引き込まれてしまいます。 営業所では、職長や先輩からの的確なサポートが受けられたり、女性専用の更衣室もあるなど、働きやすい環境が整備されています。 ○トラガールになったきっかけ 2才の息子を育てるため、女性でも経済的に自立できる仕事だと思い入社しました。それから十数年経ちましたが、ここまで仕事を続けてこられたのも、職場のみなさん、両親の協力のおかげです。感謝でいっぱいです。(Oさん) トレーラは普通の大型トラックと比べて車の動きが特殊ですし、トレーラの種類やトレーラを引っ張るヘッドによっても運転の感覚が違うため、飽きっぽい性格の私が一生楽しみながらできる仕事だと思ったからです。(Mさん) 子供の頃、トラックドライバーだった父にトラックの助手席に乗せてもらった事があります。高いところからの眺めや楽しかった思い出から、大きなトラックを運転することに憧れていました。初めは別の会社で2トントラックのドライバーをしていましたが、ある時、女性が大型トラックを運転する姿を見かけたことで、私ももっと大きなトラックを運転できるのではないかと思い、入社しました。(Iさん) ○トレーラで車を輸送する仕事のよろこび 〈1日のスケジュール〉 8台の車を積み終えてからトレーラの姿を眺めると、満足した気持ちになります。お客様の大切なお車を扱うので、慣れない頃は手が震えるほど緊張しましたが、今ではその緊張を楽しんでいます。(Oさん) 時折いつもと違う車を乗せると、うれしくなります。特に新型車などは新鮮で楽しいです。(Mさん) 通常他の大型トラックでは輸送中の荷物が見えませんが、トレーラは商品車を見せながら運んでいます。仕事への誇りと充実感があります。(Iさん) ○普段こころがけていること お客様に気持ちよく接してもらえるよう、笑顔でお話するようにしています。(Oさん) 女性次第で家庭も職場も明るく変わりますので、私が変える意識を心がけています。(Mさん) 未経験である私を採用してくれた会社、指導してくれる先輩、応援してくれる方々への感謝の気持ちものせて運転しています。(Iさん) ○これからの目標 職長を目指しながら、女性が働きやすい環境づくりに役立つ仕事ができたらいいと思います。(Oさん) 管理職を目指してがんばっていきたいです。私はOさんを手本にがんばってきたので、今度は自分が見本となり、会社が求める人材に後輩を育て、より魅力的な職場にしていきたいです。(Mさん) 先輩であるOさん、Mさんを見習い、管理職をめざして、私が下積み時代にこうなればいいなと思ったことが実現できるように、信念をもってくじけずに仕事をしていきたいです。(Iさん) ○トラガールを目指す女性へのメッセージ ぜひ、この業界にたくさん入って来て下さい!女性ドライバーは増えてきています。昼勤・夜勤などがあったり、開拓する分野があったり、大変なこともあるかと思いますが、やりがいは十分あります!!(一同より)

    営業所長からトラガールへ

    営業所長、ドライバーのみなさん 女性ドライバー同士とても仲がよいですが、事務職の女性も彼女達が帰社すると女性だけの会話ができるので、うれしいようです。また、Mさんは夫が同じ会社の運行管理者なので、昼夜勤のシフトを配慮したり、子供が熱をだした時にこちらでカバーするなどしています。このように、これからも女性ドライバーをバックアップしていきますので、これからも明るい職場、丁寧な作業など女性の強みを発揮してがんばってもらいたいと思っています。 同業経営者のみなさんへ 女性が営業所にいると雰囲気が明るくなります。お客様からの評判もいいです。トヨタ博物館でデモンストレーションを行った時、運転席から小柄な女性ドライバーが姿を現した瞬間の観客のみなさんの反応は忘れられません。 また、女性の作業は丁寧で安定しており、安心できます。新車を扱うデリケートな仕事は、女性の方が向いていると思います。 現在、『トラガール促進プロジェクトサイト』には、このトヨタ輸送を含めて26の事例が紹介されているが、実際に生の声が反映されているので、トラガールを目指す女性には参考になる。 一方、女性ドライバーを採用した事の経験が少ないトラック運送経営者に対しては、この『トラガール促進プロジェクトサイト』のスタートと併せて、全日本トラック協会と共同で”ドライバー不足の対策していますか?~トラック運送業の人材採用に向けて~”と題した30ページ弱の小冊子を配布している。この冊子は事例を中心に非常に分かり易く解説されている。 また、「トラガールを増やす為には、トラック運送業界だけに情報発信するのではなく、一般社会の認知度も高めていく必要があります。実際に一般のリクルート誌に『トラガール促進プロジェクトサイト』を特集して頂いた結果、一般女性からの問い合わせが増えた例もあります。今後は、このような活動も大事になると考えています。」(貨物課)と語っている。

    ドライバー不足の対策していますか?~トラック運送業の人材採用にむけて~...ザ・トラック

    ドライバー不足の対策していますか?~トラック運送業の人材採用にむけて~

    『トラガール促進プロジェクト』...ザ・トラック

    『トラガール促進プロジェクト』

    トラックメーカー4社の取り組み

    最近、ユーザーニーズがトラックメーカーに伝わりにくい時代になったと言われているが、この『トラガール促進プロジェクトサイト』にみるトラックメーカーの対応も簡単に紹介する。

    三菱ふそうトラック・バス

    女性の女性による女性のためのトラック ~Cute Truck Project~ 「トラックの持つイメージを変えたい」、「もっとトラックの分野で女性に活躍しもらいたい」、「トラック・物流業界を元気にしたい」といった目的から、Cute Truck Projectを始動。元気で明るいトラックをイメージしたエコでキュートな小型ハイブリッドトラック(カンナトラック)を作成しました。 平成27年3月10日に、ドイツのメルケル首相が来日し、ドイツ自動車大手のダイムラー傘下の三菱ふそうの川崎製作所(川崎市)を視察しました。 「もっとトラックの分野で女性に活躍してもらいたい」、「トラック・物流業界を元気にしたい」といった思いから始まったCute Truck Projectについて、携わった女性社員から説明したところ、大変興味深く耳を傾けていただきました。

    いすゞ自動車

    トラックの世界をより身近に感じてもらうために いすゞ自動車では、楽しみながらトラックの世界を身近に感じていただくためにコミュニティサイト「HaKoBu」を2008年からスタートしています。スタート当時からダントツの人気を誇るコンテンツが「なでしこ★ドライバー」です! ここでは女性トラック&バスドライバーを職業とする、素敵な働く女性をご紹介しています このコンテンツを通じて「はこぶ」という仕事を選んだ女性の皆さんを応援しています。一緒に「はこぶ」を支えていく中で、女性ドライバーの皆さんとお会いできる日を楽しみにしています。

    日野自動車

    女性トラックドライバーを意識した販売店づくり(東京日野自動車) 主に修理依頼の方が来店する大型車の販売店。来店したお客様(ドライバー)が満足してもらえる店舗づくりが目標!コンシェルジェの配置や女性専用待合室の設置、デザイン性の高い店内などこれまでの販売店のイメージとは全く異なる、新しい店舗づくりの1号店。女性ドライバーが満足してもらえる店舗づくりの結果、他店舗では店から車を取りに行くかたちの依頼が多い中、来店してもらえるお客様も増加! ●女性の来やすい店舗には女性メカニックも バイクに乗っていて、機械いじりが好きになり、大学卒業後、専門学校に通い、整備士を目指しました。実際に働いてみると、思ったよりも大変だったりしますが、作業環境はとても良く、先輩にも助けてもらってやっています。女性の整備士がもっと増えると良いなと思っています! ●女性コンシェルジェ 大きな車を運転する女性ドライバーの方は、かっこいいなと思います。「こんな人がトレーラーを運転しているんだ」と意外に思うようなかわいらしい方が多いです! ●女性専用の待合室 女性専用の待合室には、より満足いただけるようソファーなどのほか、女性ファッション雑誌、観葉植物を設置。今後も女性に快適に過ごしてもらえる待合室を目指します。

    UDトラックス

    もっと女性が操作しやすい車両に 大型トラックは、筋骨隆々な男性が運転するもの、女性には無理、そう思っていませんか?重いクラッチとギアチェンジ、振動と騒音...。しかし、答えは「ノー」です。UDトラックスでは、大型トラックだからこそ、誰もが楽に運転できる車を造っています。フルオートマチックに加えて快適な室内、先進の安全性など、充実した装備でドライバーをサポートします。 1.フルオートマチック 同社独自の電子制御式トランスミッション「ESCOT-V(エスコット・ファイブ)」は、面倒なギアチェンジが不要。アクセルとブレーキの操作だけで、乗用車のように楽に運転ができます。 2.快適な室内 すわり心地にこだわったシートは、体型に合わせて最適なポジションに調整可能。遮音性能に優れたキャブの室内はとても静かで、ゆったりと安心できるプライベートルームのような空間です。 3.充実の安全装備 先進の安全技術が追突や走行車線から外れた場合の危険を低減。もちろん、プリテショナー付シートベルト、ニープロテクター、各種SRSエアバッグなど、あらゆる安全機構も備えています。

    トラックドライバーの年齢構成等と労働環境...ザ・トラック

    トラックドライバーの年齢構成等と労働環境

    トラック産業の現状と課題...ザ・トラック

    トラック産業の現状と課題

    大きく前進した官の体質

    以上、国土交通省が配信する『トラガール促進プロジェクトサイト』を貨物課の説明を受けながら紹介したが、このサイトにはまだ多くの興味深い記事が掲載されている。 しかし、『トラガール促進プロジェクトサイト』を立ち上げて約1年半になりますが、最近少し新しい話題が少なくなってきたという課題もあります。更に注目して頂けるように、コンテンツをはじめとするサイトの見せ方も工夫していく必要があると感じています。こちらとしては、業界団体をはじめとする民間団体等とも協調して、影響力のあるサイトに発展させていきたいと思っています。また、これまでの評価という意味では、女性が働きやすい職場環境を整備する事業者が増えてくるなど、着実に効果が上がっていると感じています。国土交通省としては、トラック運送事業者様が経営面で厳しい環境にあることを承知していますので、この『トラガール促進プロジェクトサイト』だけでなく“トラック輸送における長時間労働の抑制に向けたロードマップ(”26ページ)も作成して、荷主等と一体となって取引環境の改善が進められるよう取り組んでいるところです。これらの施策を実施することによって、トラック運送業界の労働環境の改善とイメージアップにつながり、若い方々が夢を抱いて集まってくる業界に発展することを願っています。」(貨物課)と語っている。 かつての運輸省の時代、トラック運送業界は運送事業免許を取得するために、大変苦労した経緯がある。今でも当時のことを”認可行政”と酷評する評論家がいるが、この『トラガール促進プロジェクトサイト』は、官が自らの判断で業界発展のサポートに乗り出したもので、国土交通省の体質も大きく前進したことを痛感する。

    トラック輸送における長時間労働の抑制に向けたロードマップ...ザ・トラック

    トラック輸送における長時間労働の抑制に向けたロードマップ

    北海道車体㈱(北海道北広島市)エア・ウォーターグループのシナジー効果を実践ボディ生産技術力アップで車体経営の安定化を

    【創業56年の歴史を持つ北海道を代表する車体メーカー】今月号の取材で北海道まで足を伸ばした。生憎、日本列島が強烈な低気圧に見舞われ、札幌周辺も前日から季節外れの暴風雪となり、取材先の北海道車体㈱(北車)にたどり着くまで不安の連続だった。道民にとっては季節外れの悪天候というだけのことだが、東京から来た人間にとっては恐怖すら感じる状況だった。

    国内トップレベルの省燃費を実現した小型トラック「キャンター」2016年モデルを発表

    三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、省燃費性能を高め、インテリアデザインなどを改良した、小型トラック「キャンター」2016年モデルを全国の三菱ふそう販売会社及び三菱ふそう地域販売部門から発売する。

    風力発電により製造したCO2フリー水素を燃料電池フォークリフトへ供給する実証を開始

    神奈川県、横浜市、川崎市、岩谷産業㈱、㈱東芝、トヨタ自動車㈱は、京浜臨海部における再生可能エネルギーを活用した「低炭素な水素サプライチェーンモデル」の構築を図る実証プロジェクトの具体的な内容について、2015年9月から検討を進めていたが、このたび、その詳細が固まったことを受け、実証を開始することになった。