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    ITV_2016年1月号表紙

    月刊ITV 2016年1月号

    発行:平成28年1月1日 発行所:(株)日新(HP) 執筆:大西徳・井上元・岡雅夫・澤田征二・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃 表紙・レイアウト:望月満 記事&編集:秋林路篤文・於久田幸雄

    【新春対談】ドライバー不足に伴う トラック運送業界の改革

    聞き手:秋林路篤文(本誌)

    取引環境・労働時間改善 協議会に期待

    宮内秀樹衆議院銀…ザ・トラック

    宮内秀樹 衆議院議員 国土交通大臣政務官

    本誌は一昨年、自民党のトラック輸送振興議員連盟に所属する政治家を中心に8名の議員と対談した。物流二法による規制緩和は、結果として物価抑制には大きく貢献したものの、トラック運送業界には同業者間の競争を助長して、適正運賃収受が難しい構造を創出してしまった。その結果、最近になって顕著に表面化したのがドライバー不足である。このドライバー不足は少子高齢化だけでなく、ドライバーへの待遇や業界イメージの問題など根が深いので、何とか政治を動かせないかと考えたのである。筆者は政治家との対談で多くを学ぶことが出来たが、中でも2014年8月号で対談した宮内秀樹議員は、具体的に「運送事業許可の更新制とアウトサイダーの排除」を提唱した。運送事業許可を更新制にする為には、事業者は定期的に事業内容などのチェックを受けることになるので“痛み”が伴うことは間違いない。筆者も宮内議員の提唱に賛同し、昨年のトラック協会長との対談で意見具申した。その宮内議員が第三次安倍内閣で国土交通大臣政務官に就任した。トラック輸送業界の改革が求められるこの時期としては絶妙のタイミングである。公務多忙な中、時間を割いて頂いた。(秋林路)

    先ず、トラック運送事業者自身から行動開始を

    □秋林路 先日の『宮内秀樹君を激励する会』(24P参照)は、昨年を大きく上回る支持者が駆けつけて大いに賑わいました。また、今回は国土交通大臣政務官にご就任されましたこと、私も嬉しく受け止めております。

    ■宮 内 有難う御座います。私も当選2回でこのポストに就かせて頂いたことに感謝しております。

    □秋林路 宮内さんの政治に対する取り組みに好感が持たれ、その評価が自然発生的に伝播しているのだと思います。

    ■宮 内 私の政治信条は“即戦力”ですので、評価は別にしても、何事につけ一所懸命取り組んでいきたいと思っています。

    □秋林路 評価がなければこの重要なポストに任命されることはないと思います。真面目で一所懸命な姿は好感が持てますし、落研で鍛えたキャラクターも爽やかです。

    ■宮 内 有難い事です。“即戦力”がモットーですので、そのように映るのかも知れません。

    □秋林路 宮内議員が国交省の大臣政務官に就かれて喜んでいる支持者は多いと思いますが、実は私もそのひとりです。と申しますのも、前回の対談(2014年8月号)で、トラック運送業界を改革するためには「トラック運送事業許可を更新制にして、事業内容をしっかりチェックし、違反するアウトサイダーは即排除する時期に来ている。」と発言されました。トラック運送業界のドライバー不足は、少子高齢化だけでなく、若者の自動車離れや業界のイメージ、社会的地位の問題もあって根が深いんです。しかし、このまま放置しておくと、物流マヒの引き金になるし、日本経済にも大きな影響を及ぼしかねない。業界のリーダー的立場にいる人は大きな危機感をもっているし、改革断行は待ったなしの所に来ていると感じています。大きな改革を行う時は官と政治の力が不可欠です。その意味ではグッドタイミングで宮内さんが、このポストに就かれたと歓迎しているのです。

    ■宮 内 トラック運送事業許可の更新制、アウトサイダーの排除は、私の地元(福岡)の事業者さんからも伺っています。トラック運送事業者さんのドライバー不足や運賃問題は切実ですから、確かに待ったなしだと思います。ただ、改革には“痛み”が伴いますから、事業者さんにもその覚悟が必要です。

    □秋林路 明治維新は江戸城の無血開城に象徴されるように、歴史的にも希に見る流血の少ない革命でした。それでも崇高な志をもつ若者が数多く亡くなっています。このトラック運送業界の改革も“痛み”を覚悟で立ち上がる人が居ないと一歩も前に進みません。私は報道の立場でその一翼を担いたいと考えていますが、政治では是非宮内さんにその一翼を担って頂きたいと期待しているのです。

    ■宮 内 改革を推進する際には、政治がやるべき事、官が動くべき事がありますが、先ず求められるのは業界自らの行動です。トラック運送業界に改革のニーズが高まっていないのに、政治や官が介入しても実態は動きません。アウトサイダーの存在が運賃問題や業界の社会的地位とも深く関わっている事は明らかですから、その排除に向けての行動指針をまとめるとか、許可の更新制かそれに近いことを実施するためのプランとその効果を業界で議論するとか、先ずは事業者さん自身が行動を起こすことが大切です。

    □秋林路 明治維新は殿様のいる藩体制を変える活動ですから、改革は死を覚悟の活動です。トラック運送業界の改革はそれほど大げさなものではないけれども、荷主に対して直言する勇気は必要だし、理論武装の為には学識経験者の力も必要です。

    ■宮 内 そうですね。トラック運送業界にその機運が高まれば政治も官も一緒に考えていくことになるでしょう。

    宮内秀樹衆議院銀…ザ・トラック

    原価計算に基づく運賃を尊重する取引へ

    □秋林路 以前、トラック運送事業の若手経営者の全国大会でアンケートしたら「自分の運送会社を息子には継がせたくない。」という回答が9割を占めたという話しを当時の青年部長さんから聞きました。社会的地位も低いし、荷主に頭を押さえられて何時までも卯うだつ建が上がらない。こんな惨めな想いを息子に味合わせたくない、という訳です。この話しを聞いたときに、この業界が若い人にとって夢も希望もなくなってしまった事を痛感しました。 その要因は平成2年に施行された物流二法(貨物自動車運送事業法と貨物運送取扱事業法)に遡ります。この物流二法は規制緩和を柱とするもので、物価抑制など非常に効果の大きい法律でした。しかし、規制緩和によって自由度は高まったものの、競争原理によって弱者にしわ寄せが来る結果になりました。先月号で対談した静岡県トラック協会の大須賀正孝会長(ハマキョウレックス会長)は、「保有台数5台では会社の体裁を成さないし、安全管理も出来ない。最低でも保有台数が20台以上になるように行政指導して欲しい。」と述べておられます。

    ■宮 内 確かに実態の実感はそうかも知れませんね。しかし、この規制緩和の時代に官が介入して規制を強化出来るか、それは大変難しい事だし、時代に逆行する事にもなります。ただ、そこに秩序の重要性とか、アウトサイダー排除の必要性が社会認識されれば、官としての方針も打ち出せるのではないかと思います。

    □秋林路 先般、藤井直樹自動車局長さんとも対談させて頂きましたが「トラック運送業界は全日本トラック協会をはじめ都道府県別に団体が組織され、非常にまとまりの良い業界なので、要望をどんどん出して欲しい。」と、官としても業界のニーズに積極対応のお考えです。やはり、先ずはトラック運送業界が行動を興すべきですね。

    ■宮 内 ドライバー不足で物流が滞って困るのは荷主も同じですから、業界の実情を虚心坦懐に訴えるべきだと思います。

    □秋林路 私は昨年一年間、毎月関東のトラック協会長さんを訪ねて地方トラック協会の実情と課題を伺って来ました。その結果、全てのトラック協会長がトラック運送の現状に非常に大きな危機感を抱いていることが判りました。現在、表面化しているのはドライバー不足で物が運べなくなるという危機感ですが、その背景には若者が憧れる夢のある業界を創りにくいという問題があります。その根本原因は荷主と事業者の立場の違いです。規制緩和によってこの25年間でトラック運送事業者の数は約4万から6万3000に膨れ上がっています。新参者の事業者は生き残りをかけて荷主に立ち向かいますから、運賃は言いなりです。歴史を重ねた真面目な事業者も荷主から値下げを要請されれば、アウトサイダーの存在があるのでイヤと言えない構造です。 物流二法は規制緩和によって競争力を高め、良品質のものを安く市場に供給する狙いがありますから、物流では荷主同士も競争関係にあります。企業の経営方針が物流のコストダウンにあれば、その担当者は出入り業者との取引価格をいかに引き下げるかが使命だし会社貢献です。この構図がトラック輸送業者にしわ寄せが来る根本原因です。

    ■宮 内 その通りだと思います。そこで私は大改革の為に、トラック運送事業者が“痛み”を伴うとしても襟を正すことの出来ないアウトサイダーは排除するべきだと考えているのです。

    □秋林路 要は、何時どのように実施するかという点です。もう待ったなしのところに来ていることは業界のリーダーは判っていると思います。

    ■宮 内 私は今、全国で始まっているトラック輸送における取引環境・労働時間改善協議会などに期待を寄せています。この協議会は荷主も参画する会議ですから、ここで少子高齢化の影響、労働環境の実態、若者の自動車離れなどを丁寧に説明して、原価計算に基づく運賃を尊重するよう訴えるべきです。その結果、ドライバーの待遇が改善され、夢のある職場実現への道筋が見えてくると思います。その代わりに、健全な業界体質の構築に努めるべきです。ここで、荷主と事業者の信頼関係が構築出来ればアウトサイダーが入り込む余地は無くなるのではないでしょうか。

    □秋林路 私も取引環境・労働時間改善協議会には期待を寄せています。ただ、このような場であっても荷主と事業者の立場は歴然としています。やはり事業者の立場でものが言える論客が必要です。

    ■宮 内 確かに簡単ではないと思います。しかし、事態は背に腹はかえられない処まで来ているのですから、トラック事業者さんは勇気を持って一歩を踏み出して欲しいと思います。

    2016NIPPONトラックショー開催に賛美

    2016NIPPONトラックショー…ザ・トラック

    □秋林路 取引環境・労働時間改善協議会は進行中ですので、その結果を待ちたいと思いますが、この構造的問題は議論を尽くすだけでは改善されないと思います。 私は、このドライバー不足に対して、当社で出来ることは何かを模索して来ました。その一つが本誌による取り組みですが、この2年間で一定の成果はあったと感じています。二つ目が30余年の経験があるトラックショーの活用です。 実は、昨年対談した全てのトラック協会が来年10月、トラックの日から開催する『2016NIPPONトラックショー』への協賛を表明してくれました。私はこの『2016NIPPONトラックショー』の中で、荷主、トラック事業者そして官や政治を含めたシンポジウムや討論会、講演会の開催を計画しています。勿論、マスコミへの参画も要請して世論の構築も目指します。 他方では“こどもトラックショー”も開催します。地方トラック協会には区域を分けて支部がありトラック事業者はそこに所属しています。1支部で運送経営に関係する子供20名を集めれば、保護者の親御さんを合わせ40名になるので、バス1台を仕立てる事が出来ます。一つの協会で平均10支部あるとして、関東だけでも80支部ですから、80台のバスで運送経営者の子供と保護者(トラックユーザー)3200名が集結することになります。

    2011年東京トラックショー展示風景…ザ・トラック

    2011年東京トラックショー展示風景

    ■宮 内 面白いこと考えていますね。子供はトラックが好きですから喜ぶでしょう。今年、地元福岡での同じ試みに私も参加しましたよ。

    □秋林路 ただ子供を集めるだけではないんです。来場するバスの中でDVDなどで運送事業が社会性の高い職業であることを学んで頂き、会場では色々な種類のトラックの説明を親子で聞き、後日、写真や絵画、作文を募集して審査・表彰します。優秀作品はトラックにデザインしたり新聞に掲載して頂くことも励みになると思います。この“こどもトラックショー”は、親子で見学することで、親の仕事を子供に伝えるよい機会になるし、親もプライド意識が高まります。また、トラックショーに出展する企業もユーザーの生の声を聞く良い機会になるし、ビジネスチャンスにも繋がります。

    ■宮 内 それは素晴らしい企画です。“こどもトラックショー”は必ず大きな成果を生むと思います。私も『2016NIPPONトラックショー』の会場に駆けつけますよ(笑)。

    □秋林路 有り難う御座います。オープニングセレモニーで励ましの言葉など頂ければより一層盛り上がること間違いなしです。

    ■宮 内 私のキャッチフレーズの“即戦力”とは、自分に出来る事を即やるという事です。トラック運送業界の改革も待ったなしという事ですから、即行動に移して欲しいと思います。

    □秋林路 幸い安倍政権の活躍もあって、日本は2020年のオリンピック・パラリンピックが大きな目標になっています。このトラックショーは隔年開催ですから、2020年は開催年に当たります。『2016NIPPONトラックショー』のイニシャルに日の丸を入れたのも、それを意識したものですが、このトラック運送業界の改革もその頃には道筋がついている事を願っています。

    ■宮 内 5年の歳月は長いようでも短いですから、一日一日の活動が大切です。私もトラック運送業界の為に全力を尽くす覚悟です。

    □秋林路 力強いお言葉です。私はある意味自由な立場ですから、明治維新に置き換えれば坂本龍馬の役割を果たしたいですね(笑)。

    ■宮 内 そうですか。では私は大久保利通か勝海舟といったところでしょうか(笑)。

    □秋林路 いえ、宮内さんは政治家ですから、初代総理大臣の伊藤博文でしょう。 最後はトラックショーの宣伝になってしまいましたが、2016年の新年号に相応しい内容になりました。公務ご多忙のところ、時間を割いて下さり感謝しております。有り難う御座いました。

    宮内秀樹と秋林路…ザ・トラック

    宮内秀樹国土交通大臣政務官(右)と対談する本誌・秋林路

    昭和戦後のことば…運送事業の史論

    物資の欠乏は、敗戦直後のこととてわが国全体のことであったが、昭和20年8月以降は混乱の中で支離滅裂な状況から、再スタートをきったのであった。トラック運送事業は戦中から厳しい物価統制のもとで、事業を進めて来たのであるが、敗戦の混乱の中で、その状況は暗澹たるものであった。戦中は企業統合で事業所の集約、働き手は戦地へと赴き、事業は政府の統制で軍需物資の輸送が大半という中で、終戦を迎えた。さて、GHQについては、本連載3回目で触れた。しかし、簡単かつ皮相的であるため、GHQと運送業との関係の核心に迫るまでに至っていないため、もう一度触れておく。

    トラックユーザーNews…大口多頻度割引継続でも新ETC業界にさらなる負担

    国土交通省が渋滞回避や安全運転支援などのサービスに加え、新たな拡充の可能性も期待する次世代型の「自動料金収受システム(ETC)2.0」(新ETC)サービス。高速道路料金の大口・多頻度割引最大50%の継続を求めるトラック業界に対し、継続条件として新ETC対応機器の装着が示された。デジタルタコグラフ、ドライブレコーダといった安全・環境に役立つ機器に次々と費用を投入してきた業界に、さらなる投資が求められる。

    話題のニュートラック新製品情報・新情報…2016年1月号

    作業範囲拡大による作業効率のアップを目的に 高所作業車“スカイボーイ” 2機種をモデルチェンジ ほか