中古冷凍車・冷蔵車を購入するためのチェック事項
中古の冷凍車・冷蔵車を購入するときは、通常の中古トラックを買うときとは別に注意すべき点があります。それは冷凍・冷蔵を行う冷却装置の仕組みや状態についての理解です。ここでは冷凍車と冷蔵車の基本的な仕組みを解説するとともに、実際に中古の冷凍車・冷蔵車を選ぶ際に注意するべきポイントを解説します。
基本編1:冷凍車・冷蔵車の違いを理解する
冷凍車・冷蔵車は冷却装置を備えた箱型架装を積載したトラックです。
冷凍車であれば荷室の温度を-18℃から-30℃に維持でき、冷蔵車なら0℃から+5℃の間で維持することができます。
冷凍車の場合は冷凍食品やアイスクリームなどの運搬に利用でき、冷蔵車なら生肉や鮮魚、野菜などの運搬が可能です。
荷室は1室だけのものや、2室3室と複数に分かれているものもあります。複数に荷室が分かれているものは、各室の気温をドライバーが任意で調整できるので、異なる積荷に応じた温度調整が可能となっています。
一方、冷凍車・冷蔵車とよく似た名称の「保冷車」というトラックもあります。
しかし両者は構造上全く別の車です。なぜなら保冷車には冷却装置が備わっておらず、荷室の壁に断熱構造を持たせただけのものだからです。
そのため、保冷車では気温の影響を受けやすい積荷を運ぶことはできません。新鮮で安全な食品を輸送できるのは、冷凍車・冷蔵車だけなのです。
基本編2:「冷やす仕組み」を理解する
次に、冷凍車・冷蔵車が物を冷やす仕組みを知っておきましょう。
冷却装置は5つのモジュールで構成されている
冷凍車・冷蔵車の冷却装置は、基本的に乗用車のクーラーと同じ仕組みで荷室内の温度をコントロールしています。
冷却装置を構成しているのは大きく5つのモジュールです。
1つ目は「コンプレッサー」と呼ばれる装置で、冷媒を圧縮して高温高圧のガスにし、コンデンサーに送る役割を果たしています。
2つ目のモジュールは「コンデンサー」です。この装置はコンプレッサーから送られてきた高温高圧のガスを外気を使って冷却し、冷媒液に変える役割を果たしています。
3つ目のモジュールは「エバボレーター」と呼ばれる装置で、コンデンサーから送られてくる冷媒液を気化させる役割を担っています。
4つ目は「ターボファン」。エバボレーターにより気化した冷媒液は空気を冷却しますが、ターボファンはこの冷たい空気を荷室内に循環させる役割を担っています。
5つ目のモジュールは「コントローラー」です。これを使って荷室内の温度管理を行います。
冷却装置の方式
また冷凍車・冷蔵車の冷却装置には構造上、2種類の方式があります。
1つは「サブエンジン式」です。これは車を動かすエンジンとは別に、冷却装置専用のエンジンをもう1台備え付ける方式です。
この方式には大きく2つのメリットがあります。
第一に車のエンジンを切っていても、冷却装置を稼働させられるという点です。
第二に車のエンジンに動力を奪われないので、冷却のための十分な出力を確保できるという点です。
これらのことから、サブエンジン式は荷室の大きな大型車に採用される場合が多くなっています。
ただしこの方式は冷却装置の重量が大きくなってしまうため、最大積載重量の低下につながるというデメリットがあります。
これに対して2つめの方式、「直結式」は、車のエンジンの動力を冷却装置にも利用する方式です。
この方式のメリットは第一に冷却装置が軽量化できること、第二に省エネルギー化が図れることです。大きな弱点であった出力不足も、近年の研究によって改善されてきています。
この方式の最大のデメリットは、エンジンを切ると冷却装置も動かなくなるため、駐車時の荷室内の温度管理ができなくなる点にあります。
しかしこれは「スタンバイコード」という外部電力を供給する電源コードを備え付けることにより、解決されています。つまり駐車中は外部電源によって冷却装置に動力を供給し、温度管理を継続できるのです。
この仕組みはさらに改善が進められており、現在は無線充電の可能性も模索されています。
実践編1:中古購入時のチェックポイント~温度調整機能の動作確認
冷凍車・冷蔵車を中古で購入する際に、まず確認するべきは冷却装置の動作確認です。
冷却装置に支障が出ると、そのときの積荷が全て売り物にならなくなってしまいます。自社内で解決できる問題ならまだ良い方で、取引先との信頼関係に発展すれば、事業の存続にも関わりかねません。
冷却装置の動作確認をする際は、まずその車がサブエンジン式なのか直結式なのか、もともとどの範囲の温度調整が可能な冷却装置なのかを確認します。そのうえでその機能がしっかりと発揮できているかを確認していきます。
また前述の5つのモジュールは、1つでも動作不良を起こすと正常な温度調整機能が維持できません。そのため1つずつ入念に動作確認を行う必要があります。
スタンバイコードが正常に電力を供給できるかも、確認しておくべきでしょう。
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買い換えのタイミング?と思ったら実際にトラックを探してみてください。
実践編2:中古車選びの基本的な項目もチェックする
冷却装置が正常に作動していたら、次は車体の確認です。
車体と架装は別物!
中古の冷凍車・冷蔵車には、架装だけを積み替えて運用されてきた車も少なくありません。その場合、冷却装置がいくら正常に作動していても、車体が酷使されている可能性が高くなります。逆に車体が新しくても、架装が古いという場合もあります。
中古の冷凍車・冷蔵車選びにおいては「車体と架装は別物」と覚えておきましょう。
車体の確認を行う際のチェックポイントは、通常の中古車と同じです。年式や走行距離を目安として、自分の目でどのような乗り方をされてきたのかを確認し、可能であれば試乗もして慎重にチェックしていきましょう。
<年式と走行距離の正しい考え方についてはこちらをご参照ください>
年式と走行距離、中古トラックの場合どちらを優先して選ぶべき?
各メーカーの冷凍車・冷蔵車の特徴
冷凍車・冷蔵車には架装メーカーが作った冷却装置を車体に後付けする場合と、自動車メーカーが製造している場合があります。
以下に特徴的な冷却装置を採用している3社、すなわち「トヨタ自動車」「日産自動車」「三菱ふそう」の代表的なベース車種と特徴を簡単にまとめました。中古の冷凍車・冷蔵車選びの参考にしてください。
メーカー | 特徴 | 代表的車種 |
トヨタ自動車 | 2つのコンプレッサーを装備したハイブリッド冷却装置が特徴 従来品から25%の軽量化を果たしている |
ダイナ |
日産自動車 | ヤマト運輸と共同開発したリチウムイオン電池式冷却装置が特徴 温度管理にエンジンを一切使用しない |
アトラス |
三菱ふそう | 三菱重工グループが製造・販売する冷却装置が特徴 1台で冷却・加温を同時に行えるため、より多彩な積荷を運搬できる |
キャンター |
まとめ
冷却装置は冷凍車・冷蔵車の最も重要な部分です。この仕組みをしっかり理解したうえで、その機能が損なわれていないかを確認するのは、中古の冷凍車・冷蔵車選びにおいて必要不可欠です。
一方で架装と車体は全くの別物なので、一般的な中古トラック選びのポイントも確認が必要です。ヌケ・モレのないよう、中古の冷凍車・冷蔵車を選ぶようにしましょう。
仕組みが理解できたらを早速冷凍冷蔵車を探してみましょう!
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- 冷凍車・冷蔵車を中古で購入する際に、まず確認するべきは冷却装置の動作確認
- 車体の確認を行う際のチェックポイントは、通常の中古車と同じ