ATトラックが急増!トラックに搭載するセミオートマの人気の理由とメリット・デメリットとは?
AT(オートマチック・トランスミッション)は1980年代中盤頃から急速に普及し始め、2011年には乗用車市場の約98%がAT搭載車両となるほど広く普及していますが、トラックへ搭載されるのはMT(マニュアル・トランスミッション)が一般的でした。しかし近年ATトラックの人気が高まりを見せATを搭載するトラックが急増する傾向にあります。トラックにATが搭載されるようになった理由やトラックメーカーが開発したトラック向けのセミオートマシステムの人気の理由、メリット、デメリットを紹介します。
技術革新でトラックへの導入が進むセミオートマとは?
ドライブレンジを選びアクセルを踏み込むとエンジン回転数や車速から最適なギア段を選択しながら自動変速してくれるAT(オートマチック・トランスミッション)はドライバーの運転に対する負担を軽減してくれる便利な機能だと言えます。
乗用車への搭載が進み現在ほぼ全ての乗用車にATが採用され製造販売されていますが、トラックへのAT搭載を推し進めたのはトラックメーカーがセミオートマを開発したことが大きく影響していると言えるでしょう。
トラックに搭載されるセミオートマは乗用車のATとは異なる
クラッチペダルがなく自動変速を行うミッションシステムはATと呼ばれますが、ひと口にATといっても乗用車に搭載されるATシステムとトラックに搭載されるATシステムは異なります。
一般的に乗用車や小型トラックに搭載されるATシステムはトルクコンバーター(通称:トルコン)式ATと呼ばれるミッションシステムで、トラックに搭載されるATシステムは機械式セミオートマと呼ばれるミッションシステムですので、両者の特徴を紹介します。
トルコン式AT
ATフルードと呼ばれる液体トルクコンバーターでエンジン出力をトランスミッションに伝えるATシステムで、非常の多くの乗用車に搭載される一般的なATシステムです。自動変速装置とも呼ばれ基本的に変速の管理はシステムが行い、ドライバーは前進と後退を選択して自動車を走行させます。
機械式セミオートマ
トラックに搭載されるMTシステムをベースに自動変速機能とドライバーが任意にシフト段を選択できるように開発されたのがセミオートマです。エンジン出力に対してトルクコンバーターを使用せずに機械的な変速を行うため、機械式セミオートマとも呼ばれます。
トラックに長年ATが搭載されなかった理由とは?
長距離や長時間運転を行うトラックドライバーにとって、自動変速でトラックを走行させられるATシステムは非常に魅力的な存在であったと言えます。しかし近年国内トラックメーカー各社から機械式セミオートマが発売されるまではATトラックは一般的ではなく、台数は非常に少なかったと言えます。
ATのトルクロスがトラックには不向きであった
トラックへのATシステム搭載が進まなかった理由としてトルコンATのトルクロスが挙げられます。液体のATフルードを介して動力伝達を行うトルコン式ATは、車両重量が大きく荷物を積載して走行するトラックには不向きなATシステムであったことからATトラックの普及は進みませんでした。
技術革新と社会的背景がトラックへのセミオートマ搭載を後押しした
トラックにATシステム搭載が進んだ理由として、国内トラックメーカー各社がトラック用にトルコン式ではない高性能なセミオートマシステムを開発し搭載したことが非常に大きいと言えるでしょう。
また1991年に免許区分に追加されたAT限定免許の取得者数が増加したことも、トラックへのATシステム搭載の後押しを行ったと言えます。機械式セミオートマはMTシステムの延長線上にあるトランスミッションシステムですが、アクセルとブレーキの2ペダルであるためAT限定免許で運転することが可能です。
MT式トランスミッションの延長線上に位置付けられるセミオートマ
トラックに搭載されるセミオートマは、乗用車に採用されるトルコン式ATシステムとは異なりトラックに搭載されてきたMTシステムをベースに開発されたもので、MT式トランスミッションの延長線上に位置付けられるミッションシステムだと言えます。
国内トラックメーカーの開発したセミオートマシステムとは?
エンジン同様トラックにとって心臓部ともいえるトランスミッションは、各メーカーが技術力の総力を注ぎ込み開発する非常に重要なパーツであり各社が高性能なセミオートマ開発を行っています。
日野自動車
日野のトラックに搭載されるセミオートマシステムは「プロシフト」です。MTシステムのシフトチェンジを自動化し、他社のオートマとは異なりATではなくAMTとして表記されています。
いすゞ自動車
いすゞのトラックに搭載されるセミオートマシステムは「スムーサー」です。MTシステムにフルードカップリングと油圧アクチュエータで動作する摩擦クラッチを組み合わせ、クラッチ操作を自動的に制御します。
三菱ふそう
三菱ふそうのトラックに搭載されるセミオートマシステムは「イノマット」です。MTシステムをベースにコンピュータ制御で自動変速を行い車両区分によって5~16段のギア段数が設定されています。
UDトラックス
UDトラックスのトラックに搭載されるセミオートマシステムは「エスコット」です。MTシステムをベースに開発された機械式セミオートマで、日野自動車のPro Shift同様AMTとして表記されています。
トラックのセミオートマのメリットとデメリットは?
乗用車に搭載されるトルコン式ATとは異なるシステムでトラックの自動変速運行を実現するセミオートマシステムですが、高性能セミオートマのメリットと共にいくつかのデメリットが存在しますのでセミオートマのメリットとデメリットを紹介します。
セミオートマトラックのメリット
セミオートマトラックのメリットは次のとおりです。
トラックの運転の簡素化が図れる
セミオートマのメリットとしてまず挙げられるのが、クラッチ操作が不要で運転時の操作作業が簡素化されドライバーの負担軽減がされることだと言えるでしょう。
トラックの燃費の均一化が図れる
誰が運転しても安定した燃料消費量でトラックを運行できるのもセミオートマトラックのメリットだと言えます。セミオートマトラックの場合でも運転方法で燃費変化が生じますが、MTシステムほど大きな変化が見られないことから運行コストを含む効果的な運行計画が立てやすくなります。
AT限定免許で運転できる
運転資格にとらわれずAT限定免許で運転できるのもセミオートマトラックの魅力だと言えます。事実AT限定免許取得者数が増加したことがセミオートマの研究開発や普及を後押しした側面があります。
セミオートマトラックのデメリット
メリットの多いセミオートマトラックですが次に上げるようなデメリットも存在します。
熟練者による燃費走行の実現が行えない
セミオートマに限らずATシステム全般に言えるのが「万人受けするミッションシステム」であることで、近年の技術革新で燃費向上が推し進められていますが熟練者の運転するMTシステムにはかなわないのがセミオートマのデメリットだと言えます。
車両価格が高額となる
MTシステムよりも複雑な構造であることから高額となる車両製造コストが販売価格に転嫁され車両価格が高額となる点や、複雑な構造が災いして故障リスクが高くなる点、故障した場合の修理費用も高額となる傾向にある点などもセミオートマの弱点だと言えます。
中古トラック市場にもセミオートマトラックが増加している
トラック用セミオートマの登場で長年トラックのミッションシステムに採用されてきたMTの他に、セミオートマのミッションシステムを搭載するトラックが増加してきています。
ゼミオートマトラックの新車登録台数の増加とともに、中古トラック市場へのセミオートマトラックの流入台数は増加傾向にあり、以前は珍しかったATトラックが現在では決して珍しい存在ではなくなりつつあります。
新車購入ではデメリットとなる高額な導入コストを中古トラックが解決する
以前から使用されてきたトラックのMT式ミッションシステムの延長線上にあるセミオートマトラックですが、MT式ミッションシステムよりも構造が複雑となり生産コストが高くなることからセミオートマトラックの新車車両価格は高額になりがちです。
セミオートマトラックの導入を検討する際、高額な導入コストに頭を悩ませる方も少なくないのではないでしょうか?しかし中古トラック販売店で販売される中古トラックの多くは既に使用されている中古車両が中心であるため、車両販売価格は新車購入価格よりもリーズナブルであることが一般的です。
新車同様の未使用車など一部の中古トラックは、車両販売価格が大きく値下がりすることなく販売されていますが、この場合は納車期間が新車購入よりも圧倒的に短期間である点がメリットになると言えるでしょう。
セミオートマトラック購入は中古トラック販売店の利用がおすすめ
中古トラックに対して「すぐに壊れてしまうのではないか?」というネガティブなイメージを持つ方が存在しますが、消費者の目が厳しくなった現在では中古トラック販売店が取り扱う中古トラックの品質が格段に向上していると言えます。
コンディションに疑問がある中古トラックはリビルド部品用に解体されたり、海外市場へ流出するため現在国内の中古トラック市場ではいわゆる「ポンコツトラック」を目にすることがなくなりました。
コスパの高いセミオートマトラック導入実現には、中古トラック販売店で販売される中古セミオートマトラックの購入がおすすめです。
まとめ
トラックの自動変速運行を実現させるセミオートマは非常に便利で魅力的なミッションシステムで、次の3つのメリットが存在しますが新車では導入コストが高額となるため導入の際は中古トラック販売店で中古セミオートマトラック購入をおすすめします。
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- クラッチ操作が不要で運転時のドライバーの負担軽減がされる
- 誰が運転しても安定した燃料消費量でトラックを運行できる
- 運転資格にとらわれずAT限定免許で運転できる