高出力が必要なトラック!エンジンパワー低下の主な原因や対処法、修理費用目安とは?
大量の積み荷を積載した状態での長距離輸送や臨機応変な運行計画に対応できるトラックは、国内物流の大部分を担いながら日本経済を支える非常に重要なポジションに位置付けられています。
貨物自動車であるトラックの力強さは搭載する高出力エンジンが源となりますが、トラックのエンジンパワーが低下するケースも存在するので、エンジンパワーが低下する主な原因や対処法、修理費用目安などを紹介します。
トラックのエンジンパワーは気密性の高いエンジンから生み出される
何トンもの積み荷を積載したトラックを強力な出力で駆動させるため、トラックには高出力のエンジンが搭載されています。エンジンの内部では、ガソリンや軽油などの燃料が燃焼(爆発)することで動力を発生させるため、エンジンは非常に精密な構造で製造され高い気密性が保たれています。
トラックのエンジンは金属製パーツの塊であり、金属同士の接合面で気密性を発生することは困難ですが、金属の接合面にはさまざまな種類のシールやガスケットを用いることでエンジンに気密性を発生させています。
金属製パーツの塊!トラックのエンジンは使用と共に摩耗する
トラックのエンジンが金属製パーツの塊であり気密性を発生させるためにさまざまなシールやガスケットが用いられていることは既にふれましたが、シールやガスケットはエンジンの可動部分にも使用されます。
稼働中のエンジン内部は高温・高圧で、非常に過酷な条件下で長時間の高速運動が行われるため、エンジンの可動部には金属製のシールやガスケットが使用されます。しかし、エンジンに組み込まれる金属製ガスケットをはじめとするパーツは使用と共に摩耗し一定以上摩耗が進むと使用限度に達します。
エンジン内部のパーツ摩耗でトラックのエンジンパワーは低下する
既述のとおり金属パーツと金属パーツの接合部に気密性を発生させるのは非常に困難ですし、エンジン内の金属パーツ間は稼働のために必要なクリアランス(隙間)が設定されているためシールやガスケットの摩耗が進むと共にエンジンの気密性が損なわれます。
高出力のエンジンパワーはエンジンの高い気密性によって発生しますので、エンジン内部の金属製シールやガスケットなどのパーツが摩耗することでエンジンパワーは徐々に低下して行きます。
摩耗によってトラックのエンジンパワーを低下させるエンジンパーツとは?
接触する金属製パーツの硬度が同じであれば理論的には双方の摩擦面が同等に摩耗しますが、実際には金属製シールやガスケットの摩耗速度が接触側より早い傾向にあると言えます。
燃焼室を構成するシリンダーブロックなどは非常に高額なパーツであるため、シリンダーブロック本体の交換より金属製シールやガスケットの交換の方が経済的であることなどから金属パーツの強度に違いがあるのではないかと考えられます。
高圧・高熱・高回転でエンジンパワーを生み出すピストン部分の摩耗
代表的な金属製シールやガスケットとして燃焼室の気密性を保つためにピストンに取り付けるピストンリングが挙げられますが、高温・高圧・高回転で稼働するピストンに装着されるピストンリングはエンジングブロックとの摩擦で使用と共に摩耗します。
ピストンリングが摩耗すると、燃焼室の内圧が上がらなくなる「圧縮抜け」という症状が発生し、エンジンパワーが低下します。通常圧縮抜けは徐々に進行するため日常的にハンドルを握っているトラックのエンジンパワーの低下は感じ難いものですが、使用歴の長いトラックでエンジンパワーの低下を感じた際は真っ先に疑うべき箇所だと言えるでしょう。
ピストンと共にエンジンの気密性を保つタペット
シリンダーヘッドに搭載し燃焼室内に空気を送り込む吸気バルブと燃焼内の燃焼ガスを排気する排気バルブに用いられるのがタペットと呼ばれる金属製パーツで、タペットもピストンリング同様に過酷な環境で長時間高速運動するため損傷や摩耗が生じます。
吸気バルブや排気バルブが損傷や摩耗すると圧縮抜けが発生し、エンジンパワーは低下しますので、ピストンリング同様エンジンパワーの低下を感じた際はタペットも確認する必要があります。
エンジンパーツの摩耗以外にもエンジンパワー低下の原因が存在する
摩耗によってエンジンパワーの低下を引き起こす原因としてエンジンに組み込まれている金属製パーツピストンリングとタペットを紹介しましたが、実はエンジンパワーの低下は金属製パーツの摩耗のみで生じるものではありません。
エンジンに組み込まれる金属製パーツの摩耗以外にエンジンパワーの低下を引き起こす原因となり得るものを紹介します。
エンジンパーツ摩耗以外にもエンジンパワーを低下させる原因とは?
高出力を絞り出すトラックのエンジンには非常に精密で気密性の高い構造が求められますがエンジンの気密性が保たれていても、エンジンの燃焼室内コンディションが良好でなければエンジンパワーは低下します。
エンジンに組み込まれる金属製パーツの摩耗以外でエンジンパワーの低下を招く可能性のあるトラブルとして吸気・給油系統のトラブルや使用燃料の品質不良などが挙げられます。
吸気・給油系統のトラブル
高いエンジンパワーを発生させるためにはトラックのエンジンに十分な空気が供給される必要がありますが、エアエレメントの汚れなどで吸気抵抗が高くなると吸気不足が発生しエンジンパワーが低下します。
また燃料供給ラインのフューエルエレメントや給油ホースに詰まりが生じると必要な燃料が供給されませんし、燃料を燃焼室内に噴射する噴射ノズルやポンプに不具合が発生しても燃料不足でエンジンパワーの低下が生じ最終的にはエンジン停止の可能性があります。
燃料不良
トラックに搭載する大型燃料タンク内の気層部分は外気で満たされるため、温度変化で結露しますし雨天の給油時に雨水が燃料タンクに侵入するケースもあります。オイルタンク内に滞留した水分が給油系統に流れ込むとエンジンパワーが低下する原因となります。
エンジンパワーが低下した場合の対処法とは?
既にトラックのエンジンパワーの低下を感じている方にとってエンジンパワー低下の原因究明と効果的な対策を講じることは喫緊の課題であると言えるのではないでしょうか?
エンジンパワーの低下が、エンジンに組み込まれる金属製パーツの摩耗によるものである場合は、エンジンを分解し摩耗したパーツの交換や調整が必要となりますが、吸気・給油系統のトラブルや燃不良が原因の場合であればセルフメンテナンスでエンジンパワーの低下を解消することも可能です。
セルフメンテナンスでエンジンパワー低下を改善できるケースも存在する
トラックのエンジンパワーの低下がエアエレメントやフューエルエレメント、給油ホースの詰まりで発生している場合は、エレメントやホースのクリーニングや交換を行なうことでエンジンパワーの低下を解消することが期待できます。
また燃料不良の場合は市販の水抜き剤を使用してタンク内の水を処理すれば、低下したエンジンパワーを再び取り戻すことが期待できます。しかしフューエルエレメントや給油ホース交換に自身がない方や燃焼噴射ポンプやノズルが原因の場合は整備工場に依頼することをおすすめします。
エンジンパーツ摩耗が進んでいる場合は修理費用が高額化する
エンジンに組み込まれる金属製パーツの摩耗が原因でエンジンパワーが低下してる場合はセルフメンテナンスでは手に負えないため整備工場に修理を依頼すべきです。オーバーヒートを起こし焼き付きが原因でエンジンパワーが低下している場合も同様です。
エンジンに組み込まれるパーツの交換はエンジンを分解する必要があるためピストン交換やタペット交換の場合でも数万円~十数万円前後の経済的負担が生じます。万一シリンダーブロックやシリンダーヘッドが摩耗している場合は20~100万円もの修理費用が必要となるケースも存在します。
使用歴の長いトラックのエンジンパワー低下を感じた場合は乗り換えが効果的
トラックのエンジンは高い耐久性を持つように設計・製造されているためトラックは一般的な乗用車より遥かに丈夫なエンジンを搭載していると言えます。しかし、運送業務に用いられるトラックは年間走行距離が大きくなる傾向にあるため、エンジン内部の経年劣化は意外と早く進むのも事実です。
エンジンの経年劣化が進んでいると言うことは車両全体の老朽化が進んでいることを意味しますので、エンジンパワーの低下を解消しても他の部分が五月雨的に使用限度に達することが予想されます。
トラック乗り換え時のさまざまなコストを解決する中古トラック販売店
高い修理費用を支払い、>エンジンパワーの低下を解消したあとで車両各部が使用限度に達してしまうのでは、せっかく修理したトラックをフル活用することができなくなるため乗り換えがおすすめですが、トラックの乗り換えコストは決して安くないため難しいと捉える方も少なくないでしょう。
しかし中古トラック販売店で取り扱われる中古トラックを乗り換え計画に組み入れるだけで、トラックの乗り換えのハードルが大きく引き下げられます。
エンジンパワーが低下したトラックは中古トラック販売店での乗り換えがおすすめ
豊富な在庫を持つ中古トラック販売店では予算に合わせた中古トラックを選ぶことができますし、中古トラックは完成車であるため納車までの時間を大きく節約することも可能です。
使用歴が長いトラックのエンジン内部の金属製パーツ摩耗でエンジンパワーが低下した場合は、修理を行うよりも力強いエンジンパワーを持つ中古トラックへの乗り換えを行うことを強くおすすめします。
まとめ
今までなら楽々と登れる坂道なのに、最近「エンジンを吹かさないと登れなくなってきた」などの症状を感じるトラックはエンジンパワーが低下していることが疑われます。使用歴が長くなったトラックには愛着が湧きますが、残念ながらエンジンパワーが低下した車両は使用限度が近づいていると捉えるべきでしょう。
トラックのエンジンパワーが低下した場合の対処法は次の3つだと言えます。
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- エレメントや給油ホース、燃料への水の混入はセルフメンテで解消
- エンジンパーツの摩耗の場合は整備工場での整備か乗り換えを検討
- 効率的なトラック乗り換えは中古トラック販売店がおすすめ!