トラックの排ガス浄化装置DPF故障の主な症状と発生原因、修理費用や予防策とは?
国内では1992年に施行された大気汚染防止法の特別措置法である自動車Nox法を皮切りにトラックの排ガス規制が開始されました。
1992年以前はモウモウと黒煙を排出しながら走行するトラックが数多く存在しましたが、排ガス規制によって現在はクリーンディーゼルやエコトラックと呼ばれるまでトラックの排ガス浄化が進んでいます。
トラックの排ガス浄化の要となるのがDPFを代表とする排ガス浄化装置ですが、DPFが故障すると排ガス浄化ができなくなり有害物質を排出することになりますので、トラックの排ガス浄化装置DPF故障の主な症状と発生原因、修理費用や予防策を紹介します。
トラックが排気ガス規制をクリアするために欠かせないDPF
トラックの排ガスのなかで、特に問題視されるのはディーゼルエンジンの排ガスに含まれるPMと呼ばれる粒子状物質で、PMを含むディーゼルの排ガスは黒煙として目視することができます。
1992年に施行された自動車Nox法では当初排ガスの窒素酸化物の規制を行うものでしたが、のちに粒子状物質(PM)が癌性物質の可能性があると考えられ排出規制に加わり、現在の自動車Nox・PM法が施行されます。DPFは排ガスに含まれるPM除去を行うためにトラックに搭載される浄化装置です。
トラックの排気ガス浄化装置DPFとは?
化石燃料を燃料として稼働するトラックの排ガスには、さまざまな有害物質が含まれます。各トラックメーカーが環境に配慮したエンジン開発を行い排ガスは随分浄化されたものの、残念ながら有害物質の発生を完全に食い止めるまでには至っていない状況です。
そこで、排ガスの浄化を行うため有害物質を補修・処理するフィルターとして開発されたのがディーゼル微粒子捕集フィルター(Diesel particulate filter)で通称 DPFと呼ばれています。
ベーシックなDPFは定期的にPM捕集を行うフィルターを交換する必要がありますが、補修フィルターに溜まったPMを燃焼させ再生させるタイプも存在し、DPR(Diesel Particulate Active Reduction System)やDPD(Diesel Particulate Defuser)と呼ばれています。
トラックメーカーによって採用する排ガス浄化装置の種類が異なり、国内トラックメーカーの採用する排ガス浄化装置は次のようになっています。
・いすゞ自動車:DPD
・日野自動車:DPR
・三菱ふそう:DPF
・UDトラックス:DPF
DPFは再生方式で3タイプに大別される
排ガス浄化装置DPFは微粒子捕集フィルターですから、使用を続けるとフィルターが目詰まりして機能低下が生じるため定期的にフィルター交換を行うか、捕集したPMを燃焼させるなどの処理をすることでクリーニングする必要があります。
フィルターの再生はセルフクリーニングと呼ばれ、再生方法には次に挙げる3つの方法が存在します。
・連続再生方式:排ガスの熱エネルギーなどを利用し自己再生方式とも呼ばれる
・間欠再生方式:電気ヒーターでPMを燃焼させる再生方式
・添加剤再生方式:燃料に触媒を添加しPMと触媒を接近させPMを酸化させる再生方式
トラックの重要装置DPF故障の主な症状や発生原因は?
DPFはトラックの排ガスを浄化する重要装置ですが、故障が発生するケースもあり、DPF故障が生じたトラックは排ガス浄化を行うことが不可能となり有害物質を排出しながら走行することになります。
トラックのDPF故障で生じる主な症状
DPFのフィルターに一定量のPMが溜まるとセルフクリーニングで自動再生が行われることは既に紹介しましたが、セルフクリーニングが上手くいかなかった場合や再生を繰り返した結果DPFで詰まりが生じるケースがあります。
詰まりが生じたDPFはPMの捕集燃焼スペースを奪っていくため、DPFの浄化機能が機能しなくなりますしセルフクリーニングサインが点灯し続けエンジンを停止することができなくなります。また排気効率が低下することでエンジンの回転数が頭打ちになったり、トルク不足や燃費の悪化が生じるケースも存在します。
トラックのDPF故障の主な原因
最適な状態でセルフクリーニングが行われていればDPFが故障する確率は高くありませんが、次に挙げる状態が続くことでDPF故障が発生します。
低速走行や短距離走行が多い
排ガス温度が十分に上がりきらない低速走行や短距離走行が多いトラックはセルフクリーニングが上手く行えず故障が発生する場合があります。
渋滞が多い場所をよく走る
運行ルートの多くが渋滞路の場合もエンジンの回転数を上げることができないためセルフクリーニングが上手く行えず故障原因となります。
頻繁にエンジンの始動・停止を行うことが多い
頻繁にエンジンを始動・停止を行うと排出されたPMが溜まり続けDPF故障の原因となります。
長時間のアイドリングを何度も繰り返す
アイドリング中はPMが溜まる一方でセルフクリーニングが行えないためDPF故障の原因となります。
エンジンが温まる前にエンジンを停止する
セルフクリーニングには高い排ガス熱が必要となるため、温まる前にエンジンを停止すると再生が上手く行えずDPF故障の原因となります。
経年劣化によるもの
DPFのセルフクリーニングは高熱でPMを燃焼させるため長期間使用したDPFは熱の影響などで経年劣化が進み故障原因となります。
トラックのDPF故障の予防策とは?
既述のとおりトラックの排ガス浄化装置DPFの主な故障原因はセルフクリーニングが上手くできないことにありますので、DPF故障の効果的な予防策は定期的に高熱の排ガス温度が確保できる程度の高速走行を行うことだと言えるでしょう。
DPFが故障したトラックで運行すると整備不良で処罰される
大気汚染防止法の特別措置法として、施行された自動車Nox法はその後自動車Nox・PM法に姿を変え、現在も厳格に運用されています。国土交通省は出先機関である陸運支局に「迷惑黒煙相談窓口(黒煙110番)」を設置し黒煙対策を行うなど、積極的に環境対策に取り組んでおり、DPF故障が発生した状態で運行するトラックは整備不良の道路交通法違反で取り締まりの対象となっています。
DPFが故障した状態では車検に合格できない?
陸運支局はトラックの車検を行う機関として知られていますが、既述のとおり国土交通省の出先機関であり迷惑黒煙相談窓口が設置されることなどから環境対策の最前線基地としての役割も担っています。
排ガス浄化装置DPFが故障したトラックはPMを浄化できなくなり、有害物質を排出し大気を汚染しながら走行するため整備不良で処分の対象となることは既にふれましたが、車検の際に陸運支局も排ガス濃度測定を行いDPF故障が生じた状態では車検に合格できません。
排ガス規制が厳格化する現在DPF故障はトラック運行にダメージを与える
トラックのDPF故障の修理費用の目安とは?
DPFが故障したトラックを運行させると整備不良の道路交通法違反での処罰対象となるばかりか車検を通過できなくなります。また、大気を汚染しながら運行することに繋がるので早急に修理を行うべきですが、DPFの修理費用は高額な傾向にあるという問題に直面するのも事実です。
故障したDPFの修理費用の経済的負担は決して小さなものではない
トラックの排ガス浄化装置DFP故障が発生した場合の修理費用は、修理の依頼先や故障の症状・トラックの車両区分によって異なりますが、目安額は以下のとおりとなります。
・小型クラス(2トン車):部品代約40万円+工賃
・中型クラス(4トン車):部品代約60万円+工賃
・大型クラス(10トン車):部品代約100万円+工賃
修理に用いる部品代だけでもかなりの経済的負担が生じる上に工賃が加算され、3日前後の修理期間が必要となるためDPF修理の負担は非常に大きなものになると言えるでしょう。
DPFが故障の対応策は中古トラックへの乗り換えがおすすめ!
工賃を含めると、小型クラスで40万円以上・中型クラスが60万円以上・大型クラスの場合は100万円以上の経済的負担を強いられるのがDPFの修理ですので、DPF故障はトラックにとって致命的ダメージと言っても過言ではないでしょう。
またDPF故障が発生するトラックは新車登録から時間が経過していたり走行距離が伸びている傾向にあり、車両全体の経年劣化が進んでいることが珍しくないことからDPF故障発生を機会にトラックの乗り換えを検討するのがおすすめです。
高額な修理費用よりも中古トラックへの乗り換えは現実的
新車トラックへの乗り換えには、高額な車両購入価格や注文から納車までにかかる納車期間などの問題が発生しますが、中古トラック販売店で取り扱われる中古トラックであれば乗り換えにかかる経済的・時間的問題を解決することが可能となります。
中古トラックへの乗り換えでは「またすぐにDPFが故障するのでは?」という不安を感じる方もいるかもしれませんが、車両全体の経年劣化が進んだトラックに高額な修理費用を支払うよりも高品質な中古トラックへの乗り換えの方が高い費用対効果を得られると言えるでしょう。
トラックのDPF故障が発生した場合は、1度中古トラック販売店で取り扱われている中古トラックのラインナップを確認してみてください。かならず納得できる中古トラックと巡り合えますよ。
まとめ
環境に配慮したトラック運行が求められる現在、排ガス浄化装置であるDPFは環境に優しいトラックの必需品であり非常に重要な装置であると言えるでしょう。故障したDPFの修理費用は高額であるため、次に挙げる3点を意識してトラックの運行を行うことをおすすめします。
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- 低速走行・短距離走行・頻繁なエンジン停止は避ける
- セルフクリーニングを行うため定期的に高速走行を行う
- DPF故障が発生した場合は中古トラックへの乗り換えを検討する