パワステオイル漏れの主な症状と原因、進行後の危険性や予防策とは?
パワステがトラックに搭載されるまでトラックの運転には腕力が必要で、トラックドライバーは粒々とした筋肉と力強さが求められた時代がありました。しかし現在国内で運行するトラックにはハンドル操作のアシスト機能であるパワーステアリングが標準装備され、トラックのハンドル操作性は飛躍的に向上しました。機械的にアシストすることでハンドル操作に力が必要なくなり、運転環境を改善させたパワステですがパワステのオイル漏れが生じるとアシスト機能が低下してしまい、最悪の場合ハンドル操作不能状態に陥るリスクが潜みます。パワステオイル漏れの主な症状と発生原因やオイル漏れ進行後に生じる危険性、パワステオイル漏れの予防策などを紹介します。
トラックのハンドル操作を劇的に向上させたパワステとは?
パワーステアリングの開発は自動車の登場直後から開始され、ガソリンエンジンが開発される前の1876年のアメリカでは蒸気自動車にパワステが搭載されたと言われています。具体的なパワステ搭載例として1903年アメリカで蒸気自動車コロンビアの5トントラックに搭載された記録が残っています。
車両重量が重い上に多くの荷物を積載しFRで駆動するトラックはハンドル操作時のドライバーの肉体的負担が大きく、長らく腕力のある男性がドライバーとして活躍する時代が続きます。しかし近年パワステの標準搭載が推し進められ、2000年代に入るとほぼ全ての国内販売車両にパワステが搭載されたことで、トラックのハンドル操作性は飛躍的に向上したと言えるでしょう。
パワステには油圧式と電動式が存在する
ひと口にパワステと言ってもパワステのシステムには油圧式と電動式が存在し、異なるアプローチでハンドル操作のアシストを行います。一般的に電動式パワステは小型車や乗用車に搭載されトラックのハンドル操作のアシストには油圧式パワステが採用されますが、それぞれのパワステのシステムを簡単に紹介します。
油圧式パワーステアリング
油圧式パワステはエンジン出力を利用して作動するポンプの圧力でハンドル操作のアシストを行うパワステのシステムです。システム動力にエンジンを使用することからエンジン停止中はアシスト効果を得られませんが、ハンドル操作は基本的にエンジン稼働時に行われるため大きなデメリットではないと考えられます。
電動式パワーステアリング
電動モーターの出力でハンドル操作のアシストを行うパワステのシステムですが、モーター出力で直接アシストを行うものと主圧を介してアシストする電動油圧式の2つのタイプが存在します。大出力を得るためには巨大モーターが必要であったためトラックには採用されることが少なかったものの、技術革新やエンジン回転数の影響を受けず安定したアシスト力を得られることから近年採用例が増加しています。
トラックのハンドル操作に大きく影響するパワステオイル
大部分のトラックに搭載されるパワステのシステムは既に紹介したとおり油圧式のパワステシステムですが、油圧式でアシストを行うのに使用されるのがパワーステアリングフルードと呼ばれるオイルです。
油圧式パワステは、エンジン出力で作動するポンプでパワーステアリングフルードを加圧し、ハンドル操作のアシストを行い、ステアリングギアボックス内の潤滑もパワーステアリングフルードが行います。
パワステオイル漏れが発生するとハンドル操作の際に足回りから異音が発生し、ハンドルが重くなったり直進中にハンドルが取られるなどの症状が現れトラックのハンドル操作性が損なわれ、危険な状態に陥りますので注意が必要です。
パワステオイル漏れが発生したトラックは操作性が大きく低下する
油圧式のパワステでハンドル操作のアシストを行うトラックでパワステオイル漏れが発生すると、パワステのアシスト機能が損なわれる上にステアリングギアボックス内の潤滑が行われなくなる危険性が生じます。
パワステによるアシストを失ったトラックのハンドルは驚くほど重くなり、正確なハンドル操作が困難な状態となります。またパワステは操舵輪である前輪が受けたショックがハンドルに影響するキックバック現象の緩和も行っているため、パワステオイル漏れが進行したトラックは直線走行も困難となると考えられます。
パワステオイル漏れの原因とは?
発生するとトラックのハンドル操作に大きな影響を与えるパワステオイル漏れは、避けて通りたいトラブルだと言えます。予防策を講じるためにはパワステオイル漏れの発生メカニズムを掴むことが重要ですので、パワステオイル漏れの発生原因を確認します。
トラックのパワステオイル漏れはパワステポンプやホースで発生するのが一般的で、トラックに強い衝撃が加わり発生するケースもありますが、ポンプのオイルシール類の劣化やホースのひび割れなど経年劣化によって生じるものが多いと言えます。
オイル漏れ予防にはパワステオイルの管理が重要
パワステオイル漏れの予防策として定期的なパワステオイルの量の確認が効果的だと言えます。またパワステオイルの劣化や純正品以外のパワステオイルを使用することでブッシュ類が変質しパワステオイル漏れの発生原因となる可能性も考えられるため、定期的なオイル交換や純正指定品の使用などもパワステオイル漏れの予防策として効果的だと言えるでしょう。
パワステオイル漏れが発生したトラックは経年劣化が進んでいる?
トラックのハンドル操作のアシストを行うパワステは重要部品であるため、各メーカーも研究を重ね高い耐久性のものを採用していますので、パワステオイル漏れ発生の確率は基本的には高くないと言えます。
パワステオイル漏れの発生はトラック自体の経年劣化が進んでいると捉えるべき症状ですので、パワステオイル漏れの発生は経年劣化の目安だと考えるべきでしょう。
重要部品パワステは基本的に耐久性の高いパーツ
パワステはハンドル操作に大きく影響することから高い耐久性が求められるパーツであり、実際には早めの交換が理想的ですがパワステオイルの交換サイクルは10万kmが目安となっています。
オイル交換の目安を10万kmに設定していることからもパワステの耐久性の高さを伺うことができますので、パワステオイル漏れは経年劣化の目安であると言えるでしょう。
パワステオイル漏れの修理費用の経済的負担は小さくない
トラックでパワステオイル漏れが生じた際の修理費用が気になるところですが、パワステオイル漏れの修理費用は次に挙げるように発生場所によって大きく異なります。
- ホース交換:10,000円前後(1本)
- ポンプ交換:50,000~70,000円
- ギアボックス交換:100,000~130,000円
パワステオイル漏れはトラックの乗り換え時期の目安となる?
パワステオイル漏れが発生したトラックは車両全体の経年劣化が進んでいることが予想されますので、仮にパワステオイル漏れの修理を行っても車両各部の搭載パーツが同様に使用限度を迎え、交換時期が訪れると考えられます。
さまざまなトラブルが五月雨式に発生し以前より遥かに高い頻度で整備工場に持ち込む機会が増えることが予想されます。
経年劣化の進んだトラックは維持管理が大変
経年劣化が進み老朽化したトラックは交換や修理を必要とするパーツが急増しますので、修理費用の経済的負担が大きくなると考えられます。また相対的に燃費の悪化も進行するため、ランニングコストが高騰すると言えるでしょう。
運送業に従事する方にとって運行スケジュール管理は非常に重要ですが、どのタイミングで不具合が生じるか判らないリスクを背負ったトラックでは、運航計画を立てるのが難しくなり事業運営にも悪影響を及ぼすと考えられます。
トラック乗り換えには金銭的、時間的な乗り換えコストの問題が生じる
経年劣化が進み老朽化したトラックは、乗り換えを検討することをおすすめしますが、実際にトラックの乗り換えを実現するには、少なくない経済的負担と乗り換えのタイミング調整などが障壁になるのではないでしょうか?
新車のトラックはユーザーの希望する仕様に仕上げるためオーダーメイドに近い生産体制で製造されていることから、車両価格は高額で納車までに時間がかかり迅速な乗り換えには適さない側面があります。迅速なトラック乗り換えを実現するには、中古トラック販売店から中古トラックを購入する方法をおすすめします。
中古トラックへの乗り換えが効果的な理由
中古トラック販売店で取り扱う中古トラックは全て完成した状態のトラックばかりですから、完成車のなかから必要な装備を搭載した車両を選ぶことができます。中古トラックのなかには即納可能なものも少なくなく、場合によっては購入同日に納車されるケースもあり迅速な乗り換えの実現が可能です。
また中古トラック市場には新車同然の未使用車から低年式のものまで、さまざまな車両が流入するため中古トラック販売店では予算に合わせた車両を選ぶことができるのも魅力だと言えます。使用中のトラックでパワステオイル漏れが発生した場合は、中古トラック販売店で取り扱われる中古トラックのコンディションや車両価格を確認してみてはいかがでしょうか。
まとめ
トラックのハンドル操作のアシストを行うパワステは非常に便利な機能であるものの、万一故障するとハンドル操作不能の状況に陥りかねない重要部品です。トラックの安全かつ計画的な運行のためにもパワステオイル漏れが発生したトラックは乗り換えの検討を行うべきだと言えるでしょう。
トラックのハンドル操作で次のような症状が発生した場合はパワステオイル漏れを疑い、パワステオイルの量を確認しオイル漏れが発生している場合は修理か乗り換えを検討して下さい。
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- ハンドル操作時に足回りから異音が発生する
- 以前よりハンドルが重くなり操作性が低下する
- 直進中にハンドルを取られる症状が発生する