前兆と対処法を掴めば回避可能!発生率の高いトラックのトラブルオーバーヒートとは?
トラックのオーバーヒートとは
エンジンが稼働することで荷物を満載した状態でも、トラックは目的地に向けて力強く走ってくれます。高圧力で稼働するエンジンは高熱を発するためエンジンオイルで保護・冷却すると共に、ラジエター内の冷却液「LLC (ロングライフクーラント)」が循環することで異常加熱を防ぎながら稼働しています。
これらのエンジン冷却装置が問題なく機能していればトラックのエンジンは快調に稼働しますが、冷却装置にトラブルが発生し冷却されることなくエンジンが過熱されると異常過熱状態である「オーバーヒート」が引き起こされます。
オーバーヒート(異常加熱状態)の恐ろしさとは?
冷却装置にトラブルが発生し冷却されない状態のエンジンが異常加熱状態となるのがオーバーヒートであることやオーバーヒートが比較的発生の確率の高いトラックのトラブルであることは既に紹介しました。
オーバーヒートは発生頻度が低くないトラックのトラブルであると共に、オーバーヒートを起こしたエンジンは廃車に至るほどの重篤なダメージを負うケースや車両火災を引き起こす原因になりかねませんので深刻なトラブルだとも言えます。
オーバーヒートが発生するとリカバリーまでに1~2時間程度の時間がすぐに過ぎてしまうので、納品時刻に間に合わず延着の可能性も高くなります。時間に追われながらトラックを運転するドライバーにとってオーバーヒートは絶対に回避したいトラックのトラブルの1つだと言えるでしょう。
走行中のトラックにこの症状がでたら注意!オーバーヒート発生時の症状とは
オーバーヒートは恐ろしいトラブルですが突然発生するものではなく、前触れとして様々な症状がトラックに起こりますので、早期発見をすれば軽度のオーバーヒート「オーバーヒート気味」の段階で発生を回避できます。
オーバーヒート気味になったトラックには次に挙げるような症状が現れるので絶対に見逃さないようにしたいものです。
水温計の上下の振れ方がいつもと違う!
水温計が通常よりも「H」に近づくような状態からもオーバーヒートの発生を読み取れますが、通常よりも早く水温計が振れる状態はオーバーヒートの前兆だと考えるべきです。またいつまでたっても水温が上がらない場合も冷却液漏れが発生している可能性があり、オーバーヒートの原因となりますので、運転中はスピードの確認と共に水温計の確認も習慣付けることをおすすめします。
アイドリング時のエンジン回転数が不安定!
問題のないエンジンは回転数が安定していますが、不調があればアイドリングが不安定になりがちとなるため、アイドリング時のエンジン回転数はトラックのコンディションを計る重要なポイントの1つだと言えます。特にエンジンに直接的なダメージを与えかねないオーバーヒートの前兆を、アイドリング時のエンジン回転数で知るケースは少なくないためアイドリング時のエンジン回転数にも注目するべきでしょう。
アクセルを踏み込みエンジンの回転数が上がり始めると異音がする!
エンジンに問題がない場合でも走行中のエンジンからはエンジンノイズが発生しますが、トラックに乗りなれているドライバーなら特に気になるものではないでしょう。しかし、「カリカリ」・「カンカン」・「キンキン」というような耳慣れない異音がエンジンノイズに交じって聞こえてくる場合は要注意です。
「カリカリ」という音はオーバーヒートの初期症状、「カンカン」・「キンキン」と聞こえる場合は末期症状に陥っていると考えられるため、すぐに正しい対処を行う必要があります。
アクセルを踏み込んでもエンジンの回転数が上がらず加速しない!
運転中のトラックがアクセルを踏み込んでもエンジンの回転数が上がらず加速しない状態である場合は、エンジンが熱ダレを起こしている可能性が高いと考えられます。発火や摩擦など熱源の塊だと言えるエンジンは適切な対処法が取られていないと異常加熱状態に陥ることは既にふれましたが、エンジンオイルは温度が上がり過ぎると潤滑特性を失いエンジンが不調になります。
この状態を熱ダレと呼びオーバーヒート寸前の危険な状態ですので、すぐに正しい対処を行う必要があります。
エンジンからオイルの焼けるようなニオイや白煙が発生する!
トラックに搭載されるエンジンは4ストロークエンジンで、ガソリンや軽油と共にエンジンオイルを燃焼させるメカニズムではありませんので、エンジンが正常な状態であればオイルの焼けるようなにおいは発生しません。
オイルの焼けるようなニオイやエンジンから白煙が発生するのは、既にエンジンが異常加熱状態に陥っているというサインなので早急に対処する必要があります。
トラックからオーバーヒートの前兆を感じた際の対処法
トラックのエンジンがダメになってしまう可能性を秘めたオーバーヒートの前兆を感じた際には、早急に適切な対処を行う必要があります。しかし、走行中に慌てて路肩への退避を試みたり無理な割り込みで脇道に逸れようとすると交通事故を引き起こしかねないので、オーバーヒートの対処法の基本は「慌てない」ことであることを忘れないでください。
オ-バーヒートの前兆が出た際に行うべき対処法は次に挙げるものがあります。
安全な場所を探しトラックを停車させる!
オーバーヒートの前兆が現れたトラックは走行を中止し停車させる必要がありますが、既にふれたように慌てずに安全な場所を探して停車させます。交通の流れの妨げにならず、安全にオーバーヒートに対する対処作業を行えるスペースであることや周囲に可燃物がないことなどが安全な場所に該当します。
オーバーヒートの延長線上には発火による車両火災の可能性もありますので、駐車スペースの周囲の環境は非常に重要だと言えるでしょう。
エンジン停止がオーバーヒートの症状を悪化させるケースもある!
熱源であるエンジンが稼働していると過熱が続くことから心境的には即座にエンジン停止をしたいところですが、エンジン停止は冷却装置の停止を意味しますのでエアコンなどエンジンに不可となる装備を停止した状態でアイドリングを行うのが正しい応急対処法です。トラックのキャビンを上げエンジンルームの熱を放出するのも効果的です。
安全に停車し応急対処後はロードサービスへの連絡を!
トラックを停車させ応急対処法を施した場所が会社や取引のある整備工場などが近くの場合にはそちらに連絡をするのも良いでしょうが、遠方である場合はロードサービスに連絡し、確認したオーバーヒートの症状・停車している現在位置・連絡先などを知らせ到着を待ちます。
ロードサービスの担当者の指示に従ってエンジンルームやラジエターなどの状態確認を行うこともありますが、ラジエターキャップを開けるのは非常に危険ですから絶対にやめて下さい。
また、ロードサービスの担当者に正確な情報を伝えるために手元に車検証を準備しておくとスムーズに処理が進みます。
オーバーヒートしたトラックの修理費用の目安
オーバーヒートしたトラックの車種や年式、症状によってオーバーヒートの修理費用は大きく異なります。軽微な場合であれば冷却液の交換やオイル交換程度で済みますが、深刻なものであればエンジン載せ換えが必要になるケースもあるので修理費用を紹介することができませんが、参考となる目安価格は以下のとおりです。
・冷却液の交換:数千円
・サーモスタット交換:10,000円前後
・ラジエーター交換:20,000~60,000円
・ガスケット類交換:40,000~150,000円
・エンジン載せ換え:100~数百万円
深刻なオーバーヒートに至る前にオーバーヒートの前兆を察知できなければ高額なエンジン載せ換えが必要となるケースもありますので、オーバーヒートの前兆は必ず察知するべきだと言えるでしょう。
トラックをオーバーヒートさせないためのメンテナンス法
トラックはオーバーヒートさせてしまうと最悪の場合、車両火災や廃車、数百万円の修理費が必要となるような深刻なダメージをエンジンに被りますが、オーバーヒートはやみくもに恐れるものではなく、日頃のメンテナンスで予防できるものであると言えます。
トラックのエンジン冷却機能を正常に作動させることができていれば、オーバーヒートが発生する確率は大きく低下します。エンジン冷却機能を維持するポイントは次に挙げる点を日頃から確認しながらメンテナンスをおこなうのがポイントとなります。
・冷却水は十分な容量を確保しているかリザーブタンクの確認
・冷却ファンは正常に動作しているかファンベルトの確認
・温度計は正常に動作しているか計器類の確認
・エアコン(特に暖房機能)の機能に異常はないかの確認
・水温計の針が「C」を示していることはないかの確認
・エンジンオイルの量は十分にあるかの確認
・ラジエター本体やホース・ウォーターポンプからの液漏れはないかの確認
上記の7つのポイントを確認し不具合がある場合は適切な対処法を取ることで、オーバーヒートによるトラックのエンジントラブルの可能性が大きく低下します。
オーバーヒートの原因には簡単な対処法で解決するものもある!
エンジンに深刻なダメージを与えかねないオーバーヒートは恐ろしいトラブルですが、走行中ラジエターに雪やビニール袋などのゴミが付着して発生するケースもあります。この場合はラジエターに付着した雪やゴミを取り除けばエンジンが正常に冷却されますので、簡単な対処法で処理できるオーバーヒートだと言えるでしょう。
オーバーヒートの症状を感じた際に慌ててしまうと、簡単に処理できる問題を見落としてしまいがちですのでオーバーヒートの症状を感じた際はエンジン以上に頭を冷やすのが先決だと言えるでしょう。
まとめ
オーバーヒートの前兆はその症状から察知することができます。オーバーヒートが発生すると納品時間や修理費などのことが頭を巡り、慌ててしまうものです。繰り返しになりますがオーバーヒート発生時は解説した対処方法を慌てずにできるかが重要です。
無用な出費を抑えて安全な走行をする為にも、日頃のメンテナンスを行うことも大切ですね。
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- 冷却装置にトラブルが発生し、冷却されることなくエンジンが過熱されると異常過熱状態である「オーバーヒート」が発生する
- オーバーヒート気味になったトラックは、下記のような症状が現れる
①水温計の上下の振れ方がいつもと違う
②アイドリング時のエンジン回転数が不安定
③エンジンの回転数が上がり始めると異音がする
④アクセルを踏み込んでもエンジンの回転数が上がらない
⑤エンジンからオイルの焼けるようなニオイや白煙が発生 - オ-バーヒートの前兆が出た際に行うべき対処法は下記のとおり
①トラックを停車させる
②エンジンを停止しない
③応急対処後はロードサービスへの連絡を