冷却でオイル性能を保つ?オイルクーラーの仕組みと主な故障原因や対処法を大紹介!
稼働中のエンジンは大量の熱を発生させるため、トラックはラジエーターで冷却した冷却水をウォータージャケット内に循環させてエンジンを冷却しながら運行しますが、エンジンをはじめとする搭載機関の冷却はオイルでも行われています。通常オイルはオイルパンからの放熱による自然冷却で冷却されますが、外気温が高い場合などは自然放熱で冷却しきれないケースもあります。
オイルは高温状態になると冷却効率や潤滑機能の低下が生じるため、効率的にオイルの冷却を行うオイルクーラーが用いられます。オイルの機能を引き出すオイルクーラーの仕組みや主な故障原因と対策法を紹介します。
エンジンの異常加熱を防止するオイルクーラーとは?
トラックのエンジンやトランスミッションなどにはエンジンオイルやギアオイルが充填されていますが、オイルには潤滑・清浄・防錆・密閉・冷却の5つの特性が備わっています。
しかし高熱状態となったオイルは粘度が低下するため、オイルに備わった5つの特性が十分に機能しなくなり熱ダレと呼ばれる症状が発生します。熱ダレは軽度のオーバーヒート状態ですのでエンジンやトランスミッションに負荷がかかり悪影響を及ぼす原因となります。
オイルクーラーは名前のとおり、強制的にオイルの冷却を行う機器で、オイルクーラーで冷却することでオイルに備わった5つの特性が本来の働きを行うことをサポートします。
オイルクーラーの搭載で得られる効果
オイルクーラーで冷却することで、オイルの5つの特性が熱ダレで損なわれることを回避することができます。冷却することで得られる5つのオイル特性は次のとおりです。
- 潤滑:金属パーツの接合部の抵抗を軽減する特性
- 清浄:燃料燃焼や金属パーツの擦れで生じる汚れを吸収する特性
- 防錆:金属パーツをサビや腐食から保護する特性
- 密閉:金属パーツの接合部に気密性を持たせる特性
- 冷却:発熱した金属パーツを冷却する特性
オイルが高温になると特に影響を受ける潤滑・密閉・冷却の特性が、オイルクーラーでオイルを冷却することで本来の機能を果たせるようになります。
トラックにオイルクーラーが搭載される理由は?
一般的な自動車はオイルの冷却をオイルパンで行うためオイルクーラーが搭載されるケースは珍しく、オイルクーラーは高性能スポーツカーやレース用にチューニングを施した車両に搭載される傾向があります。
しかし、車両重量が大きく大量の荷物を積載して運行するトラックは、エンジンやトランスミッションへの負荷が大きなことから各機器への負荷を軽減するためにオイルクーラーを搭載しオイルの冷却が行われます。
トラックのオイルを効果的に冷却するオイルクーラーの構造
オイルを冷却することで5つのオイル特性を活性化させ、トラックのエンジンやトランスミッションの保護を行うオイルクーラーの基本構造は、ウォータージャケット内を循環する冷却水の冷却を行うラジエーターの構造と同じだと言えます。
しかし冷却水用のラジエーターが冷却水の冷却にのみ用いられるのに対して、オイルクーラーには空令式と水冷式が存在しオイルの冷却を行います。
オイルクーラーの冷却方法には空冷と水冷が存在する
オイルクーラーを用いたオイル冷却は空冷式と水冷式が存在し、オイルの冷却方法が異なります。空冷式オイルクーラーと水冷式オイルクーラーの具体的な構造を紹介します。
空冷式オイルクーラーとは?
冷却水用ラジエーター同様、熱伝導率の高い銅などを用いた配管にオイルを循環させ、配管に取り付けたフィンで放熱することでオイルの冷却を行うオイルクーラーです。オイルクーラーの構造はオイルを循環させる配管とフィンで構成するコアとコアの出入り口に設けられたタンクのシンプルな造りになっています。
オイルの温度が低い状態でオイルクーラーが作動することでエンジン始動時の暖機に時間がかかったり、走行中にオーバークールに陥ることを忌避するためオイル循環回路の中にサーモスタットが組み込まれているものも存在します。
水冷式オイルクーラーとは?
基本構造は空冷式オイルクーラーと同じですが、冷却回路に直接オイルを循環させるのではなくクーラント(冷却水)を循環させて2次的にオイルの冷却を行うのが水冷式オイルクーラーです。空冷式よりも熱交換効率が高く冷却性能に勝るため同等の冷却能力を持つ空冷式よりも小型化することができます。
また冷却限度が冷却水温度であることからサーモスタットを搭載する必要がなく、外気温が低い場合はウォーマーとしての効果が期待できるオイルクーラーです。エンジン冷却用の冷却ラインを利用してオイル冷却を行うタイプのものも存在します。
エンジンブローの可能性も?オイルクーラーの故障で生じるトラブルとは?
エンジンオイルやミッションオイルのオイル特性の低下を防止するオイルクーラーですが、オイルクーラーが故障することで生じる不具合でトラックが廃車の危機に追い込まれるほど深刻なダメージを追うこともあるので注意が必要です。
また高温状態となり粘度の低下したオイルでは十分な潤滑特性を得ることが難しくなり、金属パーツの摩耗が進むことから経年劣化の速度が加速するのも要注意だと言えます。
エンジンオイルの冷却不足はオーバーヒートに繋がる
エンジンオイルの重要な機能として高熱のエンジンを冷却する働きが含まれていますが、オイルクーラーが故障するとオイルの冷却機能が著しく低下し効率的にエンジンを冷却することが難しくなります。効率的に冷却されなくなったエンジンは走行と共にエンジン温度が上がっていくためオーバーヒート状態に陥りやすくなります。
オーバーヒートでエンジンブローすると廃車リスクも!
オイルクーラーの故障で高温となったオイルでエンジンが熱ダレを起こした状態は、既に軽度のオーバーヒート状態に陥っていると言えますが熱ダレ状態を放置すると本格的なオーバーヒート状態が発生します。オーバーヒートを起こしたエンジンではピストンの抱きつきや焼きつきが生じ、エンジンが稼働不能となることが珍しくありません。
起動不能となったエンジンはオーバーホールやエンジン載せ替えが必要となるため、非常に高額な修理費用が必要となります。また最悪のケースではオーバーヒートが原因で車両火災が発生することもあるので、オーバーヒートはトラック廃車の危機と言っても過言ではない非常に深刻なトラブルだと言えます
オイルクーラーで発生しやすい故障とその原因は?
トラックの重要パーツの1つと言えるオイルクーラーですが、オイルクーラーで発生しやすい故障と主な原因が気になりますので、故障とその原因を紹介します。
空冷式オイルクーラーの主な故障と発生原因
冷却コアの配管内をオイルが循環する空気式オイルクーラーで発生しやすい故障はオイル漏れです。高熱のオイルを循環させるため配管や接続部分は熱の影響で膨張・収縮を行うため金属疲労が発生するのが主な原因として挙げられます。また熱の影響で接続部の腐食が進み腐食部分からオイルが漏れだすことも珍しくありません。
水冷式オイルクーラーの主な故障と発生原因
水冷式オイルクーラーは冷却経路へのオイル混入やオイルへの冷却水混入による故障が少なくありません。本来クーラントが循環する経路にオイルが混入することやオイルの中にクーラントが混入して不具合が生じます。
冷却水の循環回路とオイルはシールで遮断されていますが、シールが劣化し損傷すると損傷部分から冷却水とオイルが漏れだして故障が発生します。
意外と高額!オイルクーラー故障の修理費用は?
オイルクーラーが故障すると本来冷却することで正常に機能しているエンジンオイルやミッションオイルなどのオイル特性が損なわれ、エンジンやトランスミッションが異常加熱(オーバーヒート)の状態に陥りやすくなります。
オーバーヒートはエンジンブローなど致命的なダメージの発生原因となりますし、熱ダレでオイル粘度が低下すると潤滑特性も低下するため摩耗が進み経年劣化の速度が加速するので早急に修理を行うべきです。しかしオイルクーラーの修理は工賃込みで150,000~200,000円の修理費用が必要となるケースが多く、経済的負担は決して小さなものではないのも事実です。
オイルクーラー故障は修理よりも乗り換えが効果的なケースもある
オイルクーラーの故障が発生したトラックは、トラック自体の経年劣化が進行していることが予想されるため、仮にオイルクーラーを修理しても相次いで他の部分のパーツが使用限度に達する状況であると考えられます。さまざまなパーツの交換をつどつど行うことは非経済的ですし、トラックの運行スケジュールにも支障をきたしかねません。
オイルクーラーの故障が発生するタイミングをトラックの経年劣化が進んだ目安として捉えると、オイルクーラーの修理よりもトラックの乗り換えを検討することが効率的であると言えるのではないでしょうか。
予算に合わせたトラックに短納期で乗り換えられる中古トラック販売店
トラックの乗り換えを検討する際に気になるのは、トラックの購入コストと注文から納車までの乗り換え期間の問題です。特にオイルクーラーの故障が発生しているケースでは納車期間が長い新車への乗り換えは、故障したトラックを騙し騙し乗り続けることになりかねないので、運転中も気が休まることがなくなります。
中古トラック販売店では>購入契約後すぐに乗り出せる状態の中古トラックを数多く取り扱っているため、不安な気持ちで運転を行う納車までの期間を大幅に短縮することが可能です。また新車同様のコンディションのものから低コストで購入できるもの、必要な架装を搭載したものなど予算に合わせたトラック選びが行えるのも中古トラック販売店の強みだと言えるでしょう。
まとめ
オイルクーラーはトラックのエンジンやトランスミッションなど、重要パーツの保護を行うオイルの温度管理に欠かせない存在だと言えます。オイルクーラーの故障は次のような不具合の原因となりますので、オイルクーラーが故障した際には修理か乗り換えを真剣に検討するべきだと言えます。
-
- オイル粘度が低下し金属パーツの摩耗・経年劣化が加速する
- オーバーヒートの発生リスクが向上する
- 最悪の場合車両火災の原因となるリスクが発生する