トラックのエアドライヤーとは?仕組みや故障時の対処法、修理費目安を大紹介!
車両自体が大きい上に多くの荷物を積載して走行するトラックを安全に運行させるためには大きな制動力が求められるため、中型クラス以上のトラックには強力な制動力を発生させるエアブレーキが搭載されます。エアブレーキはエアタンクに充填された高圧エアを使用して機能しますが、外気を取り込みコンプレッサーで圧縮する過程で活躍するのがエアドライヤーです。
故障するとブレーキのトラブルに繋がりかねない重要部品ですが、エアドライヤー自体は存在感の薄いパーツとも言えますのでエアドライヤーの仕組みや故障時の対処法、修理費用目安などを紹介します。
エアブレーキ搭載トラックの重要部品エアドライヤーとは?
エアブレーキを機能させるために欠かせないのがエアタンクに充填された圧縮エアで、バタ踏みなどでエア切れが起こると制動機能が機能せず、トラックは非常に危険な状態に陥ります。
トラックを安全に減速・停車させるため必要となる圧縮エアはコンプレッサーでエアタンクに充填されますが、充填時に機能し良質な圧縮エアを作るのに不可欠なのがエアドライヤーです。
エアブレーキ搭載トラックにはなぜエアドライヤーが必要なのか?
エアタンクの圧縮エアは外気を取り込みコンプレッサーで圧縮し充填されますが、大気中には水分が含まれています。標準大気圧の大気中に含まれる水分量は温度と比例関係にあり温度が上がれば含水量は増加し下がれば減少しますが、コンプレッサーで圧縮することで標準大気圧以上の圧力がかかったエアタンク内の圧縮エアは外気とは異なる状態となります。
エアブレーキに使用される圧縮エアーは湿度が高くなる
コンプレッサーで圧縮されると空気の密度が高くなりますが、同時に水分濃度も高く多湿の状態となるのには2つの理由が挙げられます。
第1の理由として挙げられるのは空気と水の圧縮率の違いで、空気の収縮率が高いのに対して水はほとんど収縮しないため、圧縮エアの中で水分の占める比率が高くなります。
第2の理由は既にふれた空気中の含水量が温度と比例関係にあることです。圧縮エネルギーによって圧縮空気は温度上昇するため飽和水蒸気量が増加し、圧縮エアは高温多湿状態となります。
これらの理由で圧縮エアは湿度が高くなりますが、圧縮エネルギーで高温となった圧縮エアの温度が下がると飽和水蒸気量が減少し、エアタンク内で結露してしまいます。
エアドライヤーの働きや構造とは?
コンプレッサーで加圧され高温多湿となった圧縮エアの温度が下がると圧縮エアに含まれる水分が結露しエアタンク内で水に戻ってしまいます。またコンプレッサー内の油脂分が圧縮エアに混入することもあり、結露した水や油脂分がエアブレーキ装置に悪影響を及ぼすため水分や油脂分を除去するためにエアドライヤーが用いられます。
圧縮エアーの水分・油分を取り除く乾燥機能がエアドライヤー
エアドライヤーの名称から髪の毛を乾かすドライヤーのようなものをイメージしがちですが、エアドライヤーの基本構造は特別複雑なものではなく圧縮エアの水分や油分を取り除く濾過器のようなものです。
エアドライヤーには顆粒状の乾燥剤が封入されていて、コンプレッサーで加圧された圧縮エアはエアタンクに封入される前にエアドライヤーで濾過され水分や油分が取り除かれる仕組みになっています。
エアドライヤーの基本構造は圧縮エアを通過させて水分や油分を除去する濾過器のようなものですが、濾過後の乾燥エアは全てエアタンクに送らずエアドライヤー内に残しておき、乾燥剤に吹きかけることで乾燥・再生する機能も搭載しています。
エアドライヤーの制御方法は3つのタイプがある
トラックに搭載されるエアドライヤーには圧縮エアを濾過した乾燥剤の乾燥・再生機能が搭載されており、再生機能の制御は電気制御式・モジュール式・タイマーパージ式の3つの制御方法が存在します。
電気制御式
車両の電子制御ユニットを使用するエアドライヤーでカートリッジの寿命をモニタリングすることができます。
モジュール式
乾燥・再生エア用のパージタンク一体型のエアドライヤーで、高いメンテナンス性を誇ります。
タイマーパージ式
パージタンクが不要なコンパクトタイプのエアドライヤーで本体に再生タイマーが搭載され、乾燥剤の乾燥を行います。
エアドライヤーを構成する4つのパーツ
トラックに搭載されるエアドライヤーは乾燥剤の乾燥・再生機能を搭載していますが、基本構造は濾過器のようなものですからエアドライヤーの構成パーツは多くはありません。エアトライヤーは次に挙げる4つのパーツで構成されています。
エアドライヤーの主要パーツ乾燥剤
圧縮エアーの水分・油分を取り除くエアドライヤーの主要パーツが乾燥剤です。濾過後の乾燥圧縮エアーを吹きかけることで水分を除去し再生しますが、油分は除去できないため定期的な交換が必要な消耗パーツでもあります。
圧縮エアーの流れを正すチェックバルブ
圧縮エアの流れを一定に保つための逆止弁で、圧縮エアラインの清浄作動には欠かせないパーツです。
エアドライヤーの動作を制御するガバナ
圧縮エアラインの圧力検知を行いコンプレッサーやエアドライヤーの作動をコントロールするエアドライヤーの頭脳的働きを行います。
高温に耐える耐久性が求められるエキゾーストバルブ
ガバナからの指令を受け除湿・再生作業を行うバルブで、高温の圧縮エアを排出するため耐熱性が求められます。
エアドライヤーは消耗部品?定期点検と交換が必要!
エアブレーキの正常な作動に欠かすことができない重要パーツのエアドライヤーですが、既に紹介したとおりエアドライヤーの主要パーツの乾燥剤は付着する油分によって機能低下するため定期的な交換が必要な消耗パーツです。
エアドライヤーの点検整備の目安と寿命は?
エアドライヤーの乾燥剤が吸着した水分は濾過後の乾燥した圧縮エアを吹き付けることで除去させることができますが、乾燥エアーでは油分を除去することができないため乾燥剤は徐々に劣化し正常な機能を果たせなくなります。
乾燥剤を含むエアドライヤーの定期点検が必要となりますが、点検整備のサイクルはエアドライヤーを搭載する車両区分によって次にあげるように異なります。
- 中型クラス:1年又は60,000kmごと
- 大型クラス:1年又は100,000kmごと
上記の期間や走行距離を超過すると乾燥剤が劣化しブレーキ系統を始めとする圧縮エアラインに不具合が生じるリスクが高くなります。
エアドライヤーの故障原因と故障で生じる症状とは?
エアドライヤーの働きは圧縮エアの乾燥を行うだけのシンプルなものですが、圧縮エアが上手く乾燥されなければ最悪のケースでは走行不能状態に陥ったりブレーキ機能の喪失などが引き起こされる可能性もあります。
エアドライヤーの主な故障原因は経年劣化で生じる
基本構造はシンプルなエアドライヤーですが、主要パーツの乾燥剤は濡れた状態と乾燥状態を繰り返し油分が付着することで劣化しますし、各バルブ類は高温・高圧の環境下で作動するため経年劣化が生じます。
繰り返しになりますがエアドライヤーの構成部品は消耗パーツだと割り切り、トラブルが生じる前に定期的に交換することをおすすめします。
エアドライヤーの故障でトラックに生じる症状は?
エアドライヤーの構成パーツが故障することでトラックに発生するトラブルは、故障パーツや故障の影響がどのように波及するかで異なるため一概には言えませんが、一般的には次に挙げる症状が発生すると言われています。
- 乾燥剤:ブレーキの動作不要
- チェックバルブ:ブレーキの動作不良・駆動系の動作不良
- ガバナ:ブレーキの動作不良・駆動系の動作不良
- エキゾーズトバルブ:ブレーキの動作不良・駆動系の動作不良
ブレーキの動作不良はトラックにとって致命的なトラブルですし、駆動系やエアサス搭載車ではサスペンション機能に影響を及ぼす可能性があります。
エアドライヤーの修理方法と修理費用の目安
消耗パーツであるエアドライヤーは定期的に交換する必要がありますが、交換前や交換後にエアドライヤーの故障が発生した場合は早急に修理する必要があります。
エアドライヤーはパーツ交換で修理
エアドライヤーの不具合は経年劣化によって生じるものが多いため、アッセンブリー交換で修理するケースが多く見られます。基本構造がシンプルなだけに経年劣化による故障を修理するよりも交換した方が経済的なケースが多いと言えるでしょう。
エアドライヤーのパーツ交換費用の目安
エアドライヤーの交換費用はトラックの車種や車両区分、搭載するエアドライヤーの制御システムなどで異なりますが、新品交換の場合工賃込みで50,000~60,000円程度を考えておくべきでしょう。
整備工場によっては中古のビルド品への交換に対応している場合もありますが、中古のエアドライヤーへの交換でも25,000~30,000円程度の費用が必要となります。
車両の経年劣化を知らせるエアドライヤー故障はトラック乗り換えの目安
エアタンクに充填された高圧エアはエアブレーキのみではなく、クラッチやトランスミッションの作動にも用いられているトラックが増えています。このため圧縮エアのトラブルは単純にエアブレーキのトラブルの原因となるだけではなくなっていると言えるでしょう。
クラッチやトランスミッションのトラブルとなると修理費用が大きくなる傾向にあるため、定期的に交換する必要がある乾燥材以外でエアドライヤーの故障が派生した場合は経年劣化が進んでいると判断できます。
高額な修理費用が必要となるトラブルが発生する前にエアドライヤーの故障を機会に、トラックの乗り換えを検討することがトラックの効率的な運行の秘訣になるのではないでしょうか?
まとめ
トラックの運行に直接影響しないような印象を受けるエアドライヤーですが、制動装置であるブレーキや駆動系のクラッチ・トランスミッション、場合によってはサスペンション機能にまで影響を及ぼす非常に重要なパーツであると言えます。
重要パーツであるエアドライヤーを良好なコンディションに保つためには、次に挙げる3つのポイントを意識してエアドライヤーの重要性に注意を向けるべきだと言えます。
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- 中型・大型を問わず期間による定期点検サイクルは1年
- 中型クラスの走行距離による定期点検サイクルは60,000kmごと
- 大型クラスの走行距離による定期点検サイクルは100,000kmごと