エンジン破損リスクも!トラックのノッキングの主な原因と対処法とは?
トラック運転中のシフトミスなどでノッキングが発生しますが、エンジンの回転数が上がると共にノッキングは解消されます。トラックドライバーにとってノッキングは身近に発生するものでノッキングの知名度は高いのではないかと考えられますが、ノッキングの発生原因や対処法などは意外と知られていないようです。
エンジンの回転数が上がると解消されるシフトミスで生じるノッキング以外にも生じることがあり、ノッキングが慢性的に続くとエンジン破損リスクが高くなるので、ノッキングの発生メカニズムや対処方法などを紹介します。
トラックのエンジンに大きな負担をかけるノッキングとは?
トラックの心臓部とも呼ばれるエンジンは燃料を燃焼させ動力を発生する内燃機関で、稼働中のエンジンからは稼働音や振動が発生しますが、エンジンが正常な状態であれば稼働音や振動は一定の周期性を持つ規則正しいものとなります。
もちろんエンジンの回転数の変化と共に発生音や振動も変化しますが、規則性を持つので違和感を感じることはないでしょう。ノッキングはエンジンから生じる異音や振動全般を指す言葉で、カンカン・キンキンという金属を打つような音がするためノッキングと呼ばれています。
ノッキングの原因は異常燃焼
トラックに搭載されるエンジンは吸入・圧縮・燃焼・排気を繰り返す4サイクルのレシプロエンジンで、既述のとおり問題がない状態では規則性のある音と振動を発しながら稼働します。エンジンから生じる異音や振動全般を指すノッキングは、エンジンの燃焼状態に不具合が生じる異常燃焼の際に発生します。
エンジンのノッキングには4つのタイプが存在する
ひと口にノッキングと言っても4つのタイプに分類することができます。一般的にはノッキングをと呼ばれる症状でもエンジンの研究分野ではノッキングに含まれないものも存在しますが、一般的にノッキングと呼ばれる4つのタイプを紹介します。
カーノック
シフトミスで生じるノッキングはカーノック・低速ノックと呼ばれるタイプのノッキングで、トラックの速度に対してエンジン回転数が異常に低い場合に発生します。またマウントの劣化でエンジンやトランスミッションを抑えきれずに生じる振動音や振動もカーノッキングに含まれます。
デトネーション
デトネーションはガソリンエンジンで生じるノッキングで、燃焼室が超高温・超高熱状態となりプラグ点火以外で燃焼することで発生します。プラグを使用しない燃焼システムのディーゼルエンジンでは生じないノッキングですので、ディーゼルエンジン搭載率が高いトラックではあまり見られないノッキングだと言えます。
プレイグニッション
デトネーションの1種でプラグの点火タイミングよりも早く燃焼が始まり、プラグの点火でも燃焼する2重燃焼の状態となります。2重燃焼の爆発力がエンジンにダメージを与える危険なノッキングだと言えますが、ディーゼルエンジンでは発生しないガソリンエンジン独特のノッキングです。
ディーゼルノック
デトネーションやプレイグニッションはガソリンエンジン独特のノッキングで燃焼室内の燃料が自然発火することで生じますが、点火プラグを使用しないディールエンジンは常に自然発火で稼働しています。ディーゼルエンジンはノッキングで稼働するエンジンだと言えますが、不完全燃焼が生じるとエンジンに悪影響を及ぼしかねないノッキングが生じます。
ノッキングを引き起こす異常燃焼の原因とは?
燃焼の三要素として可燃物・酸素・点火源が挙げられますが、エンジンは燃料を可燃物とし供給される空気に含まれる酸素を利用して燃焼を行います。ノッキングの主な原因となるのが3つめの燃焼要素の点火源で、異常燃焼は意図しない点火源で発火燃焼することで発生するものが多く見られます。
エンジンが異常燃焼を引き起こす5つの原因
ノッキングの発生原因である異常燃焼は点火源を原因とするものが多い傾向にありますが、さらに原因を探ると次の5つが異常燃焼を発生させていることが判ります。
エンジンの温度不足
始動時のエンジンは回転数が安定しませんが、自然着火で稼働するディーゼルエンジンはエンジンが温まるまで燃焼室内の燃焼が不安定となる場合があります。特に冷え込んだ冬場の始動時などはノッキングを引き起こしやすい状態だと言えます。
エンジンへの高負荷
最大積載量を積載した状態で登坂する際などエンジンの負担が高くなった状態では燃焼行程のリズムにくるいが生じて異常燃焼が発生しノッキングに繋がるケースがあります。また高負荷の状態は燃焼室内温度が高くなることから、異常燃焼が生じやすいとも考えられます。
燃焼室の汚れ
不完全燃焼の際に生じるカーボンが燃焼室内に付着し燃焼室内が汚れていると、汚れに付着した燃料が点火源となり異常燃焼が発生、ノッキングに繋がることがあります。
燃料が原因となる異常燃焼
燃焼室内に噴霧される燃料濃度が低い場合やガソリンのオクタン価・軽油のセタン価が低い場合も、発火タイミングにくるいが生じて異常燃焼を起こしノッキングが発生するケースがあります。
エンジン形式による異常燃焼
ターボなどの過給装置が搭載されているエンジンや高圧縮エンジンは燃焼室内が高圧・高温となるため異常燃焼が生じやすくなりノッキングが発生しやすくなります。
多くのトラックが搭載するディーゼルエンジンはノッキングが付きもの?
既に紹介したとおりディーゼルエンジンは点火プラグを使用せず、高圧に圧縮し高熱状態となった燃焼室内に燃料を噴霧することで燃料が自然発火して稼働する燃焼システムのエンジンです。
点火プラグで点火して稼働するガソリンエンジンとは燃焼メカニズムが全く異なりエンジン特性も異なりますが、多くのトラックに搭載されるディーゼルエンジンはノッキングが付きもののエンジンだと言えます。
ディーゼルエンジンの燃焼システムにノッキングは付きもの
ガソリンエンジンのノッキングの主な原因となる自然発火がディーゼルエンジンの稼働力となっているのは非常に興味深い点ですが、点火メカニズムに自然発火を利用するディーゼルエンジンとノッキングは切っても切れない関係だとも言えます。
常時ノッキングを起こしながら稼働するエンジンと言っても過言ではないディーゼルエンジンは、自然発火を促すために燃焼室内を高圧にする必要があり耐圧性能を確保するため頑丈な造りになっています。
点火メカニズムのために耐圧化したディーゼルエンジンは耐ノッキング性も併せ持つことから常時ノッキングを起こしながらの稼働に耐えることができます。
ノッキングによる弊害と対処方法は?
点火プラグで燃焼室内の燃焼をコントロールするガソリンエンジンはノッキング耐性が高くないと言えるでしょう。また点火メカニズム上ノッキングが付きもののディーゼルエンジンも、エンジン内部の摩耗などでノッキングが進行すると耐ノッキング性能では対応しきれなくなる場合もあります。
酷いノッキングを放置しているとエンジンブローのリスクが上がる!
ノッキングは異常燃焼によって発生するためノッキング状態の際、エンジンには非常に大きな負担がかかっています。燃焼が自然発火するほどの高圧・高温状態となったエンジンは特にピストン・バルブ・コンロットなどのパーツに影響が出やすくなります。
これらのパーツが破損するとエンジンブローの状態に陥り走行不能となるのはもちろん、最悪の場合漏れ出した燃料に引火し車両火災が発生するリスクも潜んでいると言えます。耐ノッキング性の高いディーゼルエンジンも経年劣化と共にノッキングが許容範囲外まで進行すると同様のトラブルを生じますので、ディーゼルエンジン搭載トラックと言っても油断は禁物です。
ディーゼルエンジンのノッキング対処法は?
ディーゼルエンジンは点火メカニズムの関係で耐ノッキング性能が高いものの、自然着火までに時間がかかりすぎると後から噴霧された燃料と共に燃焼し、燃焼室に想定以上の燃焼圧がかかる場合があります。
頑丈に作られたディーゼルエンジンでも想定以上の圧力がかかると劣化が加速しますし、稼働音や振動も大きくなってしまいます。燃焼タイミングの遅れで生じるディーゼルエンジンのノッキングには、次に挙げる対処法を講じることで効果が期待できます。
軽度のノッキングは燃料の変更や添加剤で解決できるケースも!
ディーゼルエンジンのノッキングは燃焼タイミングの遅れで生じるため、発火しやすいセタン価の高い燃料を使用する方法や燃料に添加剤を加えて燃焼を促すことで解消するケースもあります。
使用するエンジンオイルを変えてみる
ディーゼルエンジンの燃焼室内は高圧であるほど燃焼効率が向上しますので、使用するエンジンオイルを粘度の高いものに変えてみることで燃焼効率が向上しノッキングが解消されるケースもあります。
応急処置で対処できない場合はオーバーホールが必要
セタン価の高い軽油や添加剤、粘度の高いエンジンオイルの使用などの>応急処置でもディーゼルエンジンのノッキングが解消されない場合は、エンジンの内部パーツの摩耗で燃焼室内の圧力が上がらないケースや燃料噴霧装置の不具合などが原因として考えられます。
エンジンの内部パーツが原因となるノッキング解消はオーバーホールを行うしか解決法がないため、ディーラーや整備工場でオーバーホールを行います。
ノッキングはディーゼルエンジンの経年劣化の目安?
点火メカニズム上ノッキングと縁が切れないディーセルエンジンですが、燃焼タイミングの遅れによるノッキングは経年劣化によって引き起こされるものが一般的だと考えられ、燃焼タイミングの遅れによるノッキングは経年劣化が進んだ目安だとも言えるでしょう。
応急処置で改善されない場合は乗り換えが効果的
既にふれたとおり経年劣化で燃焼タイミングの遅れによるノッキングが発生した場合のノッキング解消法はエンジンのオーバーホール一択となります。エンジンのオーバーホールは時間的にもコスト的にも負担が小さくないのも事実で、オーバーホールを行うよりもトラックの乗り換えを行った方が負担が小さいケースは珍しくありません。
中古トラック販売店を利用すればトラック乗り換えを簡単に行える
トラックの乗り換えを行う際に新車への乗り換えは、コストや納車期間の面でハードルが低くないと言えますが、中古トラック販売店を利用して中古トラックに乗り換える方法であれば乗り換えコストと納車期間を大きく圧縮することが可能となります。
経年劣化の進んだトラックはエンジンのオーバーホールを行った後でもトランスミッションなど修理費用が高額となるパーツの不具合が予想されるので、ノッキング発生を機会にトラック乗り換えを検討することをおすすめします。
まとめ
点火プラグで着火をコントロールするガソリンエンジンにとってノッキングはリスクの高い症状ですし、多くのトラックに搭載されるディーゼルエンジンはノッキング耐性が高いものの燃焼タイミングの遅れによるノッキングは深刻に捉える必要があります。
ディーゼルトラックで燃焼タイミングの遅れによるノッキングが疑われる場合は次の応急処置を行い、解消されなければオーバーホールか乗り換えを検討が必要となります。
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- 使用燃料をセタン価の高いものに変えると
- 燃焼効率を向上させる添加剤を使用する
- エンジンオイルを粘度の高いものに変更する