深刻なトラブルの原因にも!馬鹿にできないクラッチの故障の原因や症状、確認法とは?
トラックにもAT(オートマチック・トランスミッション)が採用され普及し始めてはいるものの、ドライバーが自分で変速を行うMT(マニュアル・トランスミッション)は現在でも圧倒的多数のトラックに搭載されるミッションシステムだと言えます。MTは右手はステアリング、右足はアクセル、左手はシフトノブ、左足はクラッチペダルとドライバーが全身でトラックを操作する文字通りマニュアルの変速装置ですが、トラックとの一体感が得られる魅力的なシステムで根強い人気があると言えるでしょう。
既述のとおり左足で操作するのがクラッチペダルですが、クラッチはエンジン出力をトランスミッション伝達する重要パーツの1つです。深刻なトラブルの原因にもなりかねないクラッチ故障の症状や原因、対処法を紹介します。
エンジン出力を駆動系に伝達する重要パーツ「クラッチ」
トラックの重要パーツと言えば、エンジンやトランミッションをイメージする方が多いのではないでしょうか?しかしエンジン出力をトランスミッションに伝達するのがクラッチで、トラックを稼働させるためにはエンジンやトランスミッショに劣らないほど重要な働きを果たすパーツだと言えます。
胸の前で右手を震わせながら両手の掌を合わせるとクラッチの基本構造が掴みやすいでしょう。右手がエンジン、左手がトランスミッションでクラッチペダルを離した状態が掌を合わせた状態でクラッチペダルを踏み込んだ状態が掌を離した状態です。
掌を合わせると震わせた右手の振動が左手に伝達されますが、掌を離すと振動は震わせている右手だけとなります。走行中は掌を合わせた状態ですが、変速時は掌を離した状態となります。
自走不能の事態に陥る可能性もある!クラッチの故障とは?
エンジンの出力をトランスミッションで駆動力に転嫁するためにはクラッチの働きが重要となるため、クラッチに不具合や故障が発生すると最悪のケースではトラックが自走不能な状態に陥る可能性もあります。
クラッチの故障で多く見られる症状は?
クラッチはエンジン出力をトランスミッションに伝えトラックの駆動力を発生させる重要なパーツですが、過酷な環境で使用されるため残念ながら不具合や故障が発生しやすいパーツだとも言えます。クラッチに不具合や故障が発生すると現れる症状を具体的に紹介します。
接続・切断の不具合
クラッチペダルを踏み込んでクラッチ操作を行っても、クラッチが切れない、繋がらない状態になるとMTが操作不能に陥ります。クラッチが切れなければ変速ができなくなりますし、クラッチが繋がらなければシフトノブで変速してもエンジン出力をトランスミッションに伝達できません。
接続後にクラッチが滑る
シフトチェンジを行った後にクラッチメートをすると、キュルキュルと金属が擦れ合うような音が発生して思うように加速しない場合や、登坂時など負荷がかかるとエンジンの回転数だけが上昇しスピードが上がらない場合はクラッチが滑っている状態だと考えられます。症状が悪化するとクラッチミートしてもトラックが動かない自走不能の状態に陥ります。
クラッチの破損
稀に上記のクラッチの接続・切断の不具合以外でクラッチペダルを踏み込んでもクラッチ操作が全くできなくなるケースが発生します。この場合は残念ながらクラッチ自体が破損していることが考えられます。
クラッチ故障の主な原因とは?
クラッチに不具合が生じるとエンジン出力を効率的にトランスミッション伝達することができないため、トラックに効果的に駆動力を発生させることができなくなります。また不具合が進行しクラッチで故障が発生するとトラックは駆動力を得られなくなり自走不能に陥るので注意が必要です。
症状別のクラッチ故障の原因とは?
クラッチの不具合や故障はトラックが自走不能に陥りかねない深刻なトラブルだといえますが、回避するためには「クラッチの不具合や故障の原因をしっかりと掴んでおく必要がある」と言えます。クラッチの不具合や故障の症状別に発生原因を紹介します。
接続・切断の不具合の原因
クラッチの接続・切断ができなくなる不意具合は「クラッチ板の摩耗」が原因で発生しているケースが非常に多い傾向にあります。クラッチ滑りの原因として経年劣化や常時満車状態での高負荷での走行、ラフなクラッチワークなどが挙げられます。
接続後にクラッチが滑る原因
クラッチミート後に金属が擦れあう音が発生して駆動力を得られなくなるクラッチ滑りもクラッチの摩耗が原因で発生します。クラッチ滑りの原因となるクラッチ摩耗は半クラッチの多用が原因となるケースが多く見られます。
クラッチ破損の原因
クラッチの破損はクラッチ操作で半クラッチを利用せずにシフトチェンジを強行した場合や変速時にアクセルを緩めずに高回転の状態でクラッチミートを行うなど、無理な運転をした場合に発生しやすいと言われています。
トラックのクラッチは消耗品!定期的な点検整備が必要
付いたり離れたりしながらトランスミッションへのエンジン出力伝達を制御するクラッチは、激しい摩擦が発生するため使用と共に摩耗するパーツです。摩耗したクラッチはクラッチ滑りを発生させエンジン出力を効率的にトランスミッションに伝達することができませんので、点検整備や場合よっては交換の必要がある消耗部品の1つに含まれます。
トラックのクラッチ交換サイクルの目安は?
摩耗が進んだクラッチは交換の必要がありますが、トラックのクラッチ交換サイクルの目安は一般的に7~8年で到達する100,000kmだと言われています。しかし、高負荷での走行が多い場合やラフなクラッチワークを繰り返した場合などは、100,000kmに達する前にクラッチが寿命を迎えることもありますし、丁寧なシフトチェンジを心がけていれば100,000kmを超過しても問題ないケースもあるので100,000kmはあくまでも目安値だと言えます。
トラックのクラッチ交換費用の目安は?
トラックのクラッチ交換費用にどのくらいかかるのかが気になるところですが、クラッチ交換費用は、交換パーツ代と交換工賃で構成されるので依頼先によって異なります。一般的に150,000~300,000円がトラックのクラッチ交換費用の目安額となり、小型クラスは低額に、大型クラスは高額になると言えます。
クラッチ故障発生前にできるクラッチ滑りの確認方法
クラッチ故障の前兆である不具合クラッチ滑りは突然降って湧いたように発生するものではなく徐々に症状を表しますが、前兆を捉えることができなければ出先でトラックが走行不能となる最悪の事態に陥る可能性があります。
クラッチ滑りの有無は3つの方法で確認できる
クラッチの不具合や故障は仕事中、出先で突然トラックが走行不能となる可能性があるため、定期的に滑りの有無をセルフチェックで確認しておくことがクラッチの不具合や故障の効果的な回避方法です。クラッチの滑りは次に挙げる3つの方法で確認できます。
クラッチペダルの踏みしろでの確認
クラッチペダルを踏み始めてクラッチが完全に切れるまでの踏みしろをクラッチの遊びと呼びますが、クラッチが摩耗進むと遊びの踏みしろが減少します。遊びは多すぎるとクラッチが切り難く、少なすぎるとクラッチ滑りの可能性がありますので、適正な遊びの幅に調整しておくことがトラックの維持管理では重要です。
発進時のエンストテストでの確認
サイドブレーキをしっかり利かせた状態で最も高いギア段にシフトした状態で一気にクラッチミートします。クラッチミートと共にエンジンが停止すればクラッチが正常な状態であると言えますが、ワンテンポ遅れてエンストするのであればクラッチ滑りが発生しています。
走行中のギアチェンジでの確認
低速走行時に最も高いギア段の1つ下(6速MTであれば5速)のギア段にシフトしアクセルを一気に踏みこみます。クラッチ滑りが発生しているトラックは一瞬エンジンの回転数が上がった後に回転数が下がり加速が始まります。
クラッチ故障の発生前のトラック乗り換えが効果的
既に紹介したとおりエンジン出力をトランスミッションに伝達するクラッチは重要パーツですが、消耗パーツでもあるため100,000kmを目安に寿命を迎えます。寿命を迎えたクラッチは交換すれば再びトラックを走行させることができるものの修理費用の経済的負担は小さくありません。
走行距離が100,000kmを迎えたトラックはクラッチ以外の機関も寿命が迫っていることが多く、クラッチ交換後にもさまざまなパーツ交換の必要が生じる可能性が予想されます。このためクラッチ交換時期を目安にトラックの乗り換えを行うのが、結果的に低コスト・低リスクでトラックを運行することに繋がるのではないかと考えられます。
トラック乗り換えコストや納車期間の面で中古トラック販売店の利用がおすすめ
トラックの乗り換えには乗り換えコストや乗り換え車両の納車タイミングなどが障壁となるケースが見られますが、中古トラック販売店の中古トラックを選択することでトラック乗り換えの障壁を取り払うことができます。
中古トラック販売所ではさまざまな中古トラックを取り扱うため予算に合わせた車両を選ぶことができますし、完成車が取り扱われているため納車までの期間が大幅に短縮されます。
クラッチ滑りの発生が予想される場合は修理よりも中古トラック販売店を利用したトラックの乗り換えを検討してみるのはいかがでしょうか?
まとめ
エンジンやトランスミッションが好調なトラックでもクラッチ不具合や故障が発生すると走行不能となってしまいます。仕事中に出先で動けなくなる最悪のケースを開始するために次の3つのセルフチェックで定期的にクラッチ滑りの確認を行うことをおすすめします。
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- クラッチペダルの踏みしろでの確認
- 発進時のエンストテストでの確
- 走行中のギアチェンジでの確認