トラックのギアチェンジのコツや注意点を解説!ギアが入らない原因や対処法も紹介
普段の乗用車でAT車に乗っている方の中には、慣れないMTトラックの運転に不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、ギアチェンジのコツや注意点を解説します。あわせてギアが入らない時の原因や入らなかった場合の対処法を解説しますので、ぜひ参考にしてください。
車両のギア(MT・AT)とは?
車のトランスミッションには、MT(マニュアルトランスミッション)とAT(オートマチックトランスミッション)の2種類があります。乗用車では、AT搭載車が多くありますが、トラックの場合は、ほとんどMT車となっています。
ここでは、ギアが動く仕組みとATとMTの違いを詳しくみていきましょう。
仕組み
ギアは、エンジンの動力を車輪に伝える働きを持ち、トランスミッション(変速機)を構成する部品の一つです。
すべての車に搭載されていて、ギアの切り替えをおこなうことでエンジンに伝わる動力や回転数、方向を調整できます。そうした調整により、路面状況に応じた走行が可能です。
坂道をトラックで下ることを想像してみましょう。ギアを変えないで走行すれば、車両は勝手に加速するため、ブレーキを使用して速度を制御しなければなりません。
しかし、ギアチェンジをしていれば、エンジンブレーキが効き、ブレーキを使用しなくても加速が防げ、車両に負担をかけずに走行できます。
ギアチェンジはシフトチェンジと違う?
ギアチェンジとシフトチェンジは同じ意味です。ギア変更時は、車両のシフトレバーを使用することから、シフトチェンジと呼ばれることもあります。
AT車のギアの種類
AT車はギアの種類が6つあります。それぞれの用途目的を確認していきます。
■P(パーキングギア)
駐車の際に使用するギアです。ギアをパーキングに入れると、ギアがロックされるため、アクセルを踏んでも車両が動かなくなります。
■R(リバースギア)
車をバックさせるときに使用するギアです。バックギアとも呼ばれ、車を後退させる際に使用します。
■N(ニュートラル)
ニュートラルは、主に緊急時に使用するギアです。自力走行ができなく、牽引してもらう場合、ニュートラルを選択し、タイヤは動く状態にしておきます。
ギアがニュートラルに入っている時は、エンジンの動力が切り離され、タイヤに駆動力が伝わらない状態です。
パーキングと同様に、アクセルを踏んでも車両は動きませんが、ニュートラルの場合、ギアはロックされていません。傾斜がある場所では、車両が動いてしまうことを念頭に置いておきましょう。
■D(ドライブギア)
通常走行時に選択するギアです。AT車の場合、ドライブギアで走行していれば、自動でギアの変更をしてくれます。
■S、2(セカンドギア)
下り坂を走行する際に使用するギアです。アクセルを踏んでも、20kmほどしか速度が出なくなります。坂道で、ブレーキを踏む必要がなくなるため、ブレーキに負担をかけずに走行可能です。
■L(ローギア)
セカンド以上にスピードを抑えたい場合に使用するギアです。あまり使用機会はありませんが、かなり急な下り坂を走行し、エンジンをしっかりきかせたい時に選択します。
MT車のギアの種類
次に、MT車のギアの種類を解説します。AT車との違いを確認していきましょう。
■L、1(ローギア)
発進時に使用するギアです。走行時の使用はほとんどありません。
■2(セカンドギア)
MT車の場合、動力を段階的に伝えていく必要があるため、セカンドギアは、ローギアで発進後に、スピードが出てきたら使用するギアです。
ローギアと同じで、発進時に使用し、走行時の使用はほとんどありません。
■3(サードギア)
サードギアは、時速30kmほどのスピードが出るギアです。普段の走行時は使用しませんが、狭い道などスピードが出しにくい場所で使用します。
■4(トップギア)
トップギアは、走行中の使用が多いギアです。60kmほどまで加速可能となります。
■5(オーバートップギア)
主に高速道路を走行する際に使用するギアです。合流時にギアを変更するため、難易度が高いギアチェンジとなります。
■R(バックギア)
バックギアは、車両をバックするときに使用するギアです。MT車では、クラッチを踏みながら速度調整をしてバックします。慣れていないとエンストを引き起こす場合もあります。
トラックのギアチェンジのコツ
MTトラックを走行する際は、道路状況にあわせて適切なギアを選択する必要があります。
ギアチェンジの大まかな流れは以下です。
①アクセルペダルから足を離す
②ほぼ同時にクラッチペダルを踏み込む
③次に選択したいギアへと変更する
④ゆっくりとクラッチペダルを離す
⑤ペダルを踏む
トラックのギアチェンジは、クラッチペダルがギアチェンジ成功の鍵をにぎります。加速時と減速時にそれぞれ分けてギアチェンジのコツを確認していきます。
加速時
加速時、MT車では段階的にスピードをあげていきますが、次のギアチェンジを見込んでしっかりと加速しておくとうまくギアチェンジができます。スピードが足りないと異音や振動が発生する原因となります。ただし、スピードを出しすぎると、エンジンの回転数があがりすぎてしまうので、ちょうどいい速度を狙いましょう。
また、1速〜2速、2速〜3速へのギアチェンジ時は、ギアチェンジのショックが起こりやすいため、クラッチペダルを優しく戻すようにしましょう。4速〜5速へのギアチェンジ時は、慎重におこなわなくても変速時のショックは起こりにくい傾向です。
減速時
減速する際は、加速時に比べて変速ショックが起こりやすいのが特徴です。ギアチェンジをおこなう前にしっかりと減速しておく必要があります。
また、急な減速をする場合には、2段階一気にギアチェンジをおこなった方がよいとされています。しっかり減速できているにも関わらず、例えば、5速から4速へ1段階だけ変更すると、エンジン回転数が噛み合わず、逆に異音や振動が発生する原因となってしまいます。
トラックのギアチェンジの注意点
ギアチェンジをスムーズにおこなうためには、以下のような注意点に気をつけましょう。
中途半端にクラッチを切った状態でのギアチェンジ
クラッチが中途半端に切れた状態でギアチェンジをおこなうと、うまく変速できず、異音が発生します。シフトレバーの操作時は、しっかりとクラッチを踏み込んでおこないます。
また、発進時は、半クラッチの状態をとるのが一般的ですが、半クラッチの状態で走行し続けないよう注意が必要です。クラッチパッドが激しく消耗する原因になります。シフト操作時以外にも、クラッチペダルに足を置かないようにするとよいでしょう。
オーバーレブにつながるシフトミスに注意
オーバーレブとは、エンジンの回転数が限界を超えることです。
例えば、2速から3速へ変更したいのに、ギアチェンジをミスして、1速に入れてしまったり、5速から4速に変更するはずが2速になってしまったなどの操作ミスの際に発生します。
オーバーレブは、エンジンの故障にもつながるため、ギアチェンジは落ち着いておこなうようにしましょう。
ギアが入らない原因
トラックの走行中に選択したギアに入らないなどのトラブルが発生するケースがあります。ここでは、ギアが入らない場合の主な原因を見ていきます。
ミッション系統の問題
トランスミッション本体に問題があると、当然、ギアチェンジにも影響がでます。例えば、1速、2速など特定のギアが入らないなどの症状が発生します。
ミッションリンク系統の問題
車内からトランスミッション本体を操作する際に使用するのがシフトレバーですが、シフトレバーとトランスミッションを接続するミッションリンケージに不具合があると、ギアが入らないトラブルが発生します。
シフトレバーとトランスミッションは、ワイヤーやロッドで接続されています。ギアトラブルが発生する際は、以下のような現象が起きている可能性が考えられます。
・ワイヤーがスムーズに動かない
・ステーの固定プレートが脱落している
・ロッドのジョイント部分にガタ付きがある
・ロッドブッシュが摩耗している
クラッチ系統の問題
ギアチェンジの際は、クラッチ操作が必須なため、クラッチ系統に問題があればギアが入らなくなります。
クラッチのトラブルの一つに、クラッチが完全に切れない状態が挙げられます。クラッチが切れていない状態では、変速しても異音が生じ、ギアが入りにくくなってしまいます。
例えば、エンジンを止める際はギアが入るけれど、起動時に異音がしてギアが入らない場合、クラッチが切れていない可能性があります。
シンクロメッシュ機構の問題
シンクロメッシュ機構が消耗していると、ギアが入りづらくなるケースがあります。ギアの操作を容易におこなうために、多くのトラックに搭載されているのがシンクロメッシュ機構です。エンジンの回転数をシンクロさせ、ギアの損傷を防ぎ、滑らかにギアの変更を実現します。
シンクロメッシュ機構が消耗していると、特定のギアが動かなくなったり、素早くギアチェンジをして異音が発生したりします。
ギアが入らない場合の対応
上記で解説した「ギアが入らない原因」に対する対処法を押さえておきましょう。
ミッション系統が原因の場合
トランスミッション内部にあるギアが摩擦により擦り減っている場合は、トランスミッションを交換しましょう。
また、トランスミッションとシフトレバーをつなぐミッションリンケージに不具合がある場合は、ワイヤーや脱落した固定プレート、ロッドジョイントの調整、ロッドブッシュの交換などが有効的です。
クラッチ系統が原因の場合
クラッチが原因でギアが入らないトラブルが発生している場合は、クラッチワイヤーや固定プレート、ロッドジョイントの調整をすることで対処できることがほとんどです。
ワイヤー式クラッチであれば遊びの調整、油圧式であればレリーズシリンダやマスターシリンダからの油漏れの確認やエア抜きで改善できます。ただし、クラッチのレリーズベアリングの動きが悪くてクラッチが入らない場合は、クラッチ自体の交換が必要となります。
シンクロメッシュが原因の場合
シンクロメッシュが摩耗してギアが入らない状態の場合は、まず「ダブルクラッチ」でギアチェンジを試してみましょう。
ダブルクラッチでエンジンの回転数に合わせてギアを入れることで、走行が可能になります。
ダブルクラッチの手順は以下の通りです。
①クラッチペダルを踏んシフトレバーをニュートラルにする
②クラッチを離してつなぐ(※通常はこの時点で、ギアチェンジをしますが、ダブルクラッチの場合にはニュートラルにギアを入れたままクラッチをつなぎます)
③アクセルを踏みエンジンを軽く煽る
④クラッチペダルを踏み込んでシフトレバーの操作をおこなう
⑤クラッチペダルから足を離す
まとめ
今回は、ギアチェンジのコツや注意点、ギアが入らない場合の対処法について解説しました。
トラックの車両に負担をかけず、自身も快適に走行するためには、ギアチェンジのコツを押さえて運転する必要があります。
今回の記事を参考にぜひギアチェンジの上達を目指しましょう!
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- トランスミッションには2種類あり、AT車とMT車の主に2つに分かれる。トラックはMT車であることが多い
- ギアチェンジ時は、丁寧なシフトレバー操作とクラッチペダル操作が重要
- ギアがうまく入らない場合は、トランスミッションやクラッチ、シンクロメッシュ機構に問題があることが多い。それぞれの原因にあわせて適切な対処法をとることが大切