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クラッチ調整をしないとどうなる?大型トラックの調整方法とは?


近年ATのトラックが増える中、MT車のトラックに乗っている方もまだまだ多くいるのではないでしょうか。
MT車のトラックは、「クラッチの摩耗」と深く関係性があります。なぜなら摩耗しすぎると、走行ができなくなってしまいます。
そこで今回は、クラッチ滑りの症状が現れ始めた方、クラッチが滑るとは?と疑問に思う方に向けて、クラッチ滑りの原因と対策を解説していきます。

筆者・太田さん

太田 りく著者のTwitterはこちら

整備士として現場で働いている現役整備士ライターです。 所有資格は整備士3級。

現役で働いているという強みを活かし、読みやすく読者の疑問を解決できるような記事になるよう心がけています。

トラックのクラッチ滑りの予兆とは?


まず、どういう症状が現れたらクラッチが滑っている可能性が高いのでしょうか。
主な症状として、以下があげられます。

・クラッチを踏んでもなかなか切れない
・ギアが入りづらい
・回転数を上げているのに速度が比例しない

このような症状が現れている場合、クラッチが滑っている可能性が高いです。
クラッチが滑っているとは、エンジンの力がトランスミッションにうまく伝わらない状態を指します
車の動力はエンジン→トランスミッション→ドライブシャフトや、プロペラシャフト→タイヤの順に伝わります。
そして、エンジンとトランスミッションの間にクラッチディスクが取り付けられており、クラッチディスクを操作することで、エンジンの動力をタイヤに伝えたり切断したりします

以上のことから、エンジンからの動力がトランスミッションに伝わらないと、タイヤにも力が伝わりません。
すると、うまく変速ができなかったり、速度が上がっていかなかったりするような症状が現れます

初期の段階では、クラッチの調整をすることで症状を改善できます。
しかし、クラッチディスクの摩耗が進んでいる場合は、クラッチディスクの交換が必要となってきます。

クラッチ滑りの発生原因

クラッチが滑る原因は、クラッチディスクの摩耗であることがほとんどです。
クラッチディスクは、ブレーキパッドなどと同じように必ず摩耗します。

なぜなら、『フライホイール』と呼ばれるエンジンの出力をおこなうパーツに、クラッチディスクを押し付けて動力の伝達をおこなうからです。
フライホイールにクラッチディスクが完全に押し付けられるまでの間、両者の回転数が違うので、クラッチディスクが摩耗します。
クラッチディスクは消耗品なので、長い間無交換であればクラッチが滑る可能性も高くなります。

その他のクラッチを構成するパーツの故障も考えられますが、故障以外ではクラッチディスクの摩耗が、クラッチ滑りの原因だと考えて間違いないでしょう。

クラッチディスクがなくなったまま走行していると事故の危険性につながる

クラッチディスクの残量がなくなると、クラッチが切れなかったり、うまくつながらなかったりします
このような状態では、トラックをうまく走行させることができず大変危険です。
例えば、走行中にシフトチェンジでギアが入らずエンストし、急減速してしまうなんてことも考えられます。
こうなると、追突事故などの危険性が高くなります。

また、修理代が高額になります。
クラッチディスクは動力伝達の他に、「摩耗をする」ことも重要な役割です。
つまり、クラッチディスクが「犠牲」となることで、クラッチを構成するその他の部品を保護しているのです。

クラッチディスクの残量がない状態のままだと、フライホイールやレリーズベアリングなどクラッチを構成する部品が破損する恐れがあります。
早く対処していればクラッチディスクの交換だけで済んだものが、そうはいかなくなってしまいます。
最悪の場合、クラッチが焼き付いてしまい、クラッチ本体や周辺の装置すべてを交換しなければなりません。

クラッチ滑りを放置するのは事故にもつながるため大変危険です。
事故に発展しないよう、異常を感じたら早めに点検をするよう心がけましょう。

こんな乗り方は危険!クラッチを異常摩耗させる

クラッチディスクの摩耗スピードは、運転の仕方に左右されます
摩耗スピードの早い運転をしてしまっていると、交換頻度が高くなり、修理代がかさんでしまいます。
自身がそんな運転になっていないか、下記の項目でチェックしてみましょう。

常に左足がクラッチペダルの上にある

クラッチを切る回数が多いからといって、クラッチペダルの上に足を乗せっぱなしにしてはいけません。
軽くでも足を乗せていると、意識せずに半クラッチの状態になってしまっていることがあります。
クラッチ滑りの原因でもお話ししたとおり、クラッチディスクが摩耗するのは「フライホイールに完全に押し付けられるまでの間」です。
つまり、クラッチペダルを踏んで半クラッチの状態にしてから足を完全に離すまでの間となります。

クラッチペダルの上に足を乗せっぱなしにしていると、半クラッチの状態が多く発生し、異常摩耗してしまうのです。

必要以上にギアチェンジをおこなっている

通常、ギアチェンジをおこなわなくてもよい場面などで、必要以上にギアチェンジをおこなうのも、クラッチディスクが異常摩耗する原因となります
ギアチェンジが多いということは、その分半クラッチの状態も多いということです。

そのため、クラッチディスクの摩耗が早くなってしまいます。

クラッチディスクを保護するためにも、本当に必要なタイミングなのか見極めてから、ギアチェンジをするようにしましょう。
特にトラックは、ディーゼルエンジンであることがほとんどです。
ディーゼルエンジンはトルクが太いという特徴があるため、ギアチェンジをおこなわずに多少エンジン回転数が落ちても、エンストなどを起こすことはほとんどありません。
このような特徴を知っておき、ギアチェンジのタイミングを見極める参考としてみてください。

半クラッチでの走行が多い

今まで述べたとおり、クラッチディスクが一番摩耗するのは、半クラッチの状態です。
だからといって、クラッチペダルを急に離すつなぎ方は、クラッチ全体の負担が大きく、よいとはいえません。

このため、半クラッチのタイミングはおのずと必要となってきますが、いつまでも半クラッチの状態では、クラッチディスクの異常摩耗の原因となります。
スムーズに半クラッチを解除する加減は、慣れるまで難しいかもしれません。
しかし、運転技術をレベルアップさせるためにも、半クラッチの状態を意識した運転を心がけましょう。

クラッチの調整方法と対策


ここからは、クラッチの調整方法と点検、交換などの対策について解説していきます。
まずクラッチの点検をおこない、必要であれば調整や交換をおこなう流れとなります。
それぞれを詳しく見ていきましょう。

クラッチの調整頻度

クラッチの調整頻度は、ドライバーの運転の仕方や、走行する道路状況によって変わってきます。
クラッチ調整が必要な目安としては、ペダルの遊びが減ったり、つながり方がぎこちなかったり、今までと比べて違和感を覚えたときです。
とはいっても、毎日少しずつ摩耗が進行していると、なかなか気付きにくいかもしれません。
そのため、定期的なクラッチの点検が必要となってきます。
クラッチの点検頻度としては、基本的に3ヶ月毎、走行距離の多い事業用トラックの場合は1ヶ月毎の点検がおすすめです。

クラッチの点検方法

簡単な日常点検として、クラッチの点検方法をご紹介します。
まず、トラックがアイドリング状態のときにクラッチを踏み込み、異音や踏み込み具合を確認してみましょう。
いつもと違う音がしていたり、重いなと感じた場合は何か異常が発生している可能性があります。

次に、クラッチペダルの間隔を確認します。
クラッチペダルをいっぱいに踏み込んだ状態から、クラッチがつながるまでの間隔を確認しましょう
この感覚が大きくなっていると、クラッチディスクが消耗している可能性が高いです。

その他に、クラッチフルードの点検も大切です。
車のほとんどがクラッチの作動に、クラッチフルードによる油圧式を採用しています。
そのため、クラッチフルードの量がタンクの適正値にあるかの確認が必要です。
適正値とは、タンクに示している上限のラインと下限のラインとの間のことをいいます。
多すぎても少なすぎてもよくありません。

もし液が減っている場合、クラッチディスクが消耗しているか、どこかで液漏れが発生している可能性があります。
また、液が少ないまま走行していると、液に空気がまぎれ込んでしまい、適切にクラッチ操作ができなくなる可能性があり、大変危険です。
クラッチ操作の点検と一緒に、クラッチフルードの点検もおこなうようにしましょう。

クラッチの踏みしろ調整方法

乗用車などであれば、クラッチペダルの奥にある、プッシュロッドという部品で調整が可能ですが、トラックの場合は違ってきます。
トラックは、ミッションの横に付いている『クラッチレリーズシリンダー』での調整が必要です。
調整方法は、シリンダーに取り付けられているアジャスターボルトのロックナットを緩め、ナットを回転させることにより、踏みしろの調整をおこないます。

最近では、クラッチの踏みしろを自動調整してくれるトラックもありますが、大型トラックなどでは採用しておらず、定期的に手動で調整する必要があります。

クラッチの交換時期

クラッチの交換時期の目安としては、10万キロ前後、もしくは6年前後での交換がおすすめです。
ただし、あくまでも目安であり、ドライバーの運転の仕方により左右されます。
10万キロ以上使用可能な場合もありますし、10万キロも走行していないのに交換が必要な場合もあります。
そのため、定期的に整備工場での点検をおこない、摩耗具合を確認してもらうことが必要です。

また、摩耗具合を確認してもらった結果、摩耗スピードが早い場合は、運転の仕方を見直すことも大切です。
ギアチェンジが多いのか、半クラッチが多いのかなど、意識をすることでクラッチディスクの寿命をのばすことができます。
そして、プロドライバーとしてのレベルアップもできるので、ぜひ自身の運転の特徴を意識してみてください。

できればクラッチ調整は整備工場へお願いしよう!


クラッチは、走行に関わる重要な部品です。
もしクラッチ調整を失敗していた場合、クラッチが切れなくなってしまうなどの重大なトラブルが発生してしまいます。

また、クラッチ調整は熟練の感覚も必要となってきます。
トラックの整備知識や技術がないのであれば、メンテナンスをしてもらっている整備工場にて調整をしてもらうようにしましょう

まとめ

まとめ
今回は、クラッチが滑る原因から調整方法まで解説していきました。
普段乗っている乗用車は、AT車であることがほとんどのため、なかなかクラッチを意識することはないかもしれません。

しかし、トラックドライバーである方は、MT車の知識としてクラッチのことを知っておく必要があります。
トラブルが発生した際、適切な対処をおこなうためにもクラッチの構造を知りドライバーとしてレベルアップしていきましょう。

  • MTを採用しているトラックは定期的なクラッチ調整が必要
  • クラッチディスクは消耗部品
  • クラッチの異常摩耗は運転方法が原因の場合もある
  • 乗用車とトラックではクラッチの調整方法が異なる
  • 整備技術や知識がなければ自分でクラッチ調整をせず整備工場にお願いすることが望ましい

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