トラックロープ荷台-輸送結び・南京結び・もやい結び-|ロープの種類・コツ
トラックで荷物を運搬する際、荷台と荷物をロープで固定する必要があります。常に振動しているトラックは、しっかり固定しないと重い荷物が走行中に落下して、大きな事故につながりかねません。
本記事では、ロープの結び方、使用するロープ、荷物の落下で発生する事故を解説します。荷物の固定方法に悩むときは、参考にしてください。
トラックのロープの結び方!種類別の方法
トラックの荷台に荷物を固定するには、ロープの結び方を知っておかなくてはなりません。
多くのドライバーが実施しているロープの代表的な結び方は、次の3つです。
・南京結び ・もやい結び ・輸送結び |
それぞれの結び方の手順を解説します。
南京結びとは
南京結びは、ロープを強く締め付けることができ、振動による緩みが少ないため、重量のある大きな荷物の輸送時に活用されます。
結ぶときに、ロープで「8の字」を作る動きが特徴です。
ロープを引っ張ることで、固定を強めることができ、アジャスターのように使えます。荷物が大きいときは、複数のフックで南京結びを使用すると、ロープを強く固定できます。
南京結びの手順
南京結びの手順は、次のとおりです。
手順 | 詳細 |
動画 | |
①ロープを通す | ロープの端を荷物の向こう側にまわして、トラックのフックや穴などの固定ポイントに通します。 |
②8の字を作る | 手前に戻ってきたロープは、数字の「8」を描くように交差させながら丁寧に形を作ります。特に重要な工程です。形が崩れるとしっかり固定できません。 |
③8の字の中央で巻きつける | 8の字のくびれた中央部分(交差している部分)にロープを一度巻きつけて、動かないように固定します。 |
④ロープを下の輪に通す | 下の輪っか(8の字の下側)にロープを通して引っ張ります。このとき、左右のテンションをしっかりかけながら引っ張るとより強く締まります。 |
⑤フックにかけて固定する | ロープを引っ張った状態で、近くのフックや金具にかけて固定します。2人で作業できる場合は、掛け声を合わせて一気に引っ張るとさらにきれいに締められます。 |
⑥余ったロープの処理 | 余ったロープは、そのまま垂らしておくと走行中に絡まったりほどけたりして危険です。ロープの下を通してフックに数回巻きつけておきます。 |
南京結びの注意点
南京結びをするときの注意点は、次の3つです。
【緩みやすいロープに注意】 |
【強く締めすぎない】 |
【張りを確認する】 固定された荷物を押してみて、ロープの張りに変わりないか確認してください。少し走っただけでも振動で緩んでしまうことがあります。荷物を押して緩んだ場合は、再度固定してください。 |
もやい結びとは
もやい結びは、ロープの先端に輪を作る結び方で、結びの王様とも呼ばれています。結んだあとに強く引いても、輪っかの大きさが変わらないのが特徴です。
トラック輸送の現場では、ロープを柱やフックなどに結びつけたいときに使われます。結び目がほどけにくく、なおかつ簡単にほどけるので、初心者にも扱いやすい結び方です。
もやい結びの手順
もやい結びの手順は、次のとおりです。
手順 | 詳細 |
動画 | |
①ロープで輪っかを作る | ロープの途中に小さな輪っかをひとつ作ります。このとき、ロープの先端が手前側にくるようにしてください。 |
②ロープの端を後ろから通す | ロープの先端を、輪っかの後ろ側から前に向かって通します。 |
③ロープの根本の下をくぐらせる | 通したロープの先端を、今度はロープ本体(長い方)の下側をくぐらせます。しっかり通すことで、固定力が高まります。 |
④もう一度輪っかに通す | 輪っかに、今度は「前から後ろへ」もう一度ロープの先端を通します。これで結び目が完成します。 |
⑤ロープを引いて締める | ロープの先端と長いほうのロープの両方を引っ張り、結び目を締めます。しっかり引いても輪っかの大きさは、変わりません。 |
もやい結びの注意点
もやい結びをするときの注意点は、次の3つです。
【輪っかのサイズに注意】 |
【締まり具合を確認する】 |
【ほどき方を覚えておく】 もやい結びは簡単にほどけるのが魅力ですが、正しいほどき方を知らないと逆にほどけにくくなってしまうこともあります。使い慣れるうちに、結ぶ・ほどくの両方を練習しておくと安心です。 |
輸送結びとは
輸送結びは、ロープをフックに固定してから、引っ張りながら結びます。南京結びと似た構造ですが、より簡単でスピーディーに結べるため作業効率を向上できます。荷物の積み下ろしが多い現場に適した結び方です。
輸送結びの手順
輸送結びの手順は、次のとおりです。
手順 | 詳細 |
動画 | |
①ロープの端を固定する | ロープの一端を、荷台のフックや金具に結びつけます。 |
②荷物にロープをかける | 固定したロープを荷物の上からまわし、反対側のフックや固定箇所に向かって張っていきます。 |
③引きながら輪を作る | 輪っかの内側にロープの端を通して引っ張ります。これによりロープが締まり、荷物が固定されます。 |
⑤固定箇所にかける | ロープの端を近くのフックや金具にかけて結びます。ゆるみがないか確認してください。 |
輸送結びの注意点
輸送結びをするときの注意点は、次の3つです。
【結び目の強度を確認する】 輸送結びは簡単に結べますが、緩みやすいロープだと固定が弱くなることがあります。結んだあとに、荷物がしっかり締め付けられているか確認しましょう。 |
【荷物を押して確認する】 |
【引っ張りすぎない】 ロープを引っ張りすぎて箱を変形させてしまわないよう注意が必要です。もし柔らかい段ボールを固縛する際は、箱の角に角当てなどを取り付け、型崩れを防いでください。 |
トラックと荷物を結ぶときに使うロープの種類
トラックで荷物を運ぶときは、荷物をしっかり固定するためにロープを使います。ロープにはさまざまな種類があり、素材によって特徴や使い方が異なります。 ここでは、トラック輸送でよく使われる4種類のロープと、それぞれに適した荷物の例を紹介します。
テープ | 適した荷物の例 |
マニラテープ | 家具、大型家電、建築資材など、重量がありズレやすい荷物 |
ビニロンロープ | ダンボール、家電、木材など、積載時に強く固定したい荷物 |
リキロンロープ | 精密機器や家財、複数回の運搬が必要なイベント・展示資材など |
ポリプロピレンロープ | 植物、ビニール袋に入った荷物、軽い荷物の仮固定など |
マニラテープ
マニラテープは、天然繊維の「マニラ麻(あさ)」から作られたロープです。ほどよい硬さと滑りにくさがあり、手でも扱いやすいのが特徴です。
摩擦にも強く、ロープの結び目がしっかりと止まるため、荷物の固定に向いています。ただし、雨に弱いため屋内作業や晴天時の使用が適しています。
適した荷物の例: 家具、大型家電、建築資材など、重量がありズレやすい荷物
ビニロンロープ
ビニロンロープは、合成繊維で作られたロープで、天然素材に比べて軽く、耐久性が強いです。 雨や湿気にも強く、伸びにくいため、屋外での作業にも適しています。
また、滑りにくく、しっかりと結べるので、荷物を安定して固定したいときに重宝されます。
リキロンロープ
リキロンロープは、ビニロンロープの表面を樹脂コーティングしたタイプのロープです。摩耗や汚れに強く、見た目もきれいなのが特徴です。 耐久性が高いため、長期間使用する場面や、頻繁に結び直す作業にも適します。表面がややツルツルしているため、結び方によっては緩みやすいので注意が必要です。
ポリプロピレンロープ
ポリプロピレンロープは、非常に軽く水を吸わない性質を持ちます。水回りや雨天の作業に最適です。ただし、滑りやすく結び目がほどけやすいので、荷物の固定には、強く固定できる輸送結びを推奨します。
ロープを固定するフックもさまざまな種類がある【補足】
ロープを固定する際、貨物だけで固定しても意味がありません。トラックに取り付けてあるフックを使用します。
トラックに使用されているフックも、次のとおりさまざまな種類があります。
・埋込フック ・U字フック ・ロープフック ・グランドフック |
ロープをかけるだけで良いものから、輪の中に通して使用するタイプまでさまざまです。それぞれのフックに適した方法でロープをかけると、さらに安定して固定できます。
トラックの使用におけるロープの結び方の重要性
トラックを運転するのなら、適切な方法でロープを結べるようにならなくてはなりません。ロープの結び方を理解すべき理由をまとめました。
荷物の破損を防ぐ
例えばトラックを使用して引っ越しする際、中型の平ボディタイプのトラックを使用するのであれば、あおりが低く背の高い家具は走行によって起こった振動で倒れてしまいます。
また、大きく軽い荷物であっても走行風で飛んでいき、破損する可能性が高いです。これを防ぐためにロープがけが必要です。
また、適切な結び方は、荷物の種類により異なります。
ネットショッピングで購入した商品、スーパーや家電量販店へ商品など、トラックではさまざまな荷物を運びます。大きさ、重さ、形状に合わせた結び方とロープの種類の理解が重要です。
転落事故を防ぐ
荷台に積んだ貨物が落下し、貨物によって事故が起こると、「転落積載物等防止措置義務違反」に該当し罰則を受けます。
厳密には、事故が起きなくても貨物が落下した時点で違反となります。
罰則は、車のタイプによって違うものの、大型車で7000円、違反点数はトラックのタイプにかかわらず1点です。
転落した貨物によって事故が発生し、人がけがを負っていると、さらに追加で点数や罰則が科せられます。
他の車が巻き込まれ、死亡事故にでも発展すればさらに重い処分になるかもしれません。
たった一つの貨物でも大事故につながる恐れがあるため、トラックの荷台に積んでいる貨物はしっかりと固縛してください。
トラックにロープを結ぶとき発生しやすい事故
トラックの荷台に積み込みしたり、ロープを結んだりする際、注意すべきことがあります。気をつけていないと、大きな事故につながる恐れもあるため、ロープがけをする前はご確認ください。
ロープ掛けの事故
荷締め、つまりロープ掛けで発生しやすい事故のご紹介です。
・滑って転落してしまった事故 ・荷締め器具の不備による事故 ・あおりを固定せずに発生した事故 ・荷締め時にトラックが動いたために発生した事故 ・保護ヘルメットを着用せずに発生した事故 |
荷締め作業は、気を抜くと人身事故が発生します。高く貨物を積み上げたとき、高い位置での固縛が必要です。積み方が雑であれば、貨物が倒れてくることもあるでしょう。
また、あおりをしっかりと固定していないために貨物が崩れてしまい、人が巻き込まれる可能性もあります。人身事故が発生するとケガをした本人だけでなく、安全対策を怠った会社にも責任が降りかかります。
それだけでなく、納品の遅れや貨物の破損により、信用問題にもつながります。
積み下ろしの事故
貨物の積み卸しでは、次の事故がよく発生します。
・後ずさりでの事故 ・あおりを固定せずに発生した事故 ・足を滑らせ発生する事故 ・荷台で積み卸しを行っていない人を巻き込んでの事故 ・保護ヘルメットを着けずに作業し発生した事故 |
トラックの荷台では、絶対に後ずさりしないようにしましょう。後ずさりしてしまうと後ろを確認できません。あおりが倒れていれば荷台の端が分からず滑り落ちてしまうこともあります。
複数人で作業しているときは、お互い声をかけあって安全確認してください。
トラックの荷台から荷物を転落させないための注意点
トラックの荷台に積み込んだ貨物を転落させないためには、ロープがけだけでなく、積み方、固定箇所、運転方法も正しい方法を知っておかなくてはなりません。それぞれ解説します。
荷物の積み方
トラックに限らず車は、走行すると必ず振動が発生します。そしてその振動により、荷物が動いてしまいます。荷物を積むときは、荷物の周りに空間を作らないことがポイントです。
また、高く積むのであれば、下の貨物が上の貨物の重量に耐えられるかも考慮してください。軽く強度が低い貨物を下に、重い荷物を上に積むと当然、型くずれします。
そのほか、横すべりによっても転落する危険性もあるので、同じ形であれば段ごとに組付け配列を変えるなどの工夫が必要です。
荷物の固定方法
固定方法は、1か所だけでなく数か所固定し、車の動きを推測し固縛箇所を見極める必要があります。同じ方向だけで固定すれば、固定していない方向の力が加わった際、貨物がずれて転倒してしまいます。
貨物の形状を見極めて、複数の方向から固縛してください。
トラックの運転方法
運転にもコツがあります。急ブレーキやカーブでの加速は、貨物を転落させてしまう危険な運転方法です。トラックは、ただでさえ走行中振動しています。
それに加え、さまざまな角度から大きな力が加われば、いくら注意して積み込んでも荷物が転落してしまう可能性があります。そのため、貨物を積んで運転する際は、次の注意が必要です。
・急ブレーキや急加速をしない ・カーブを曲がるときはできるだけゆっくりと曲がる ・坂道などでスピードを出しすぎない |
トラックの荷台に積んだ荷物が破損する原因
トラックの荷台に積んでいる貨物が破損する原因はさまざまです。荷台からの落下だけでなく、荷台に積まれた状態でも破損するケースがあります。
トラックを運転時に知っておくべき破損原因を解説します。
転倒
当然ですが、転落すると荷物が破損します。それだけでなく、荷物の転落は、他の車にも迷惑がかかります。特に背の高い貨物やあおりが低いトラックで発生することが多いです。特に、急カーブや坂道でよく見られます。
この場合、ロープによる固縛をしっかりとおこなうのが1番の対策です。あおりの低いトラックの場合は、板で壁を作ったりスタンションと呼ばれる落下防止処置をするのも有効です。
型くずれ
型くずれは、すき間の多い段ボールを何段も積み込んだ際やカゴをむき出しのまま積み込んだ際に起こる破損です。表面に強度がない貨物の場合、下に積んだもしくは中間に積んだ貨物の強度が弱く、型くずれの原因となります。
荷くずれを起こしてしまうと、いくら周りをロープで頑丈に固縛していても意味がありません。
対策方法は、次のとおりです。
・外箱の強度が高い貨物を下に弱い貨物を上にする ・すべての貨物強度が低いのであれば、多く積みすぎない |
横すべり
横すべりとは、何段も同じ組付けをおこない、貨物同士の摩擦が弱くなってしまった場合起こる破損事例です。特に、正方形で軽い貨物は何か所かをロープなどで固定していても、急カーブなどによって発生する遠心力で貨物がずれ、結果的に荷くずれを発生させてしまいます。
そのため、同じ大きさの貨物を高く積む場合、側面のあおりを高くしたりロープがけを工夫するなどの対策が必要です。
トラックのロープの結び方に関するよくある質問
トラックのロープに関するよくある質問をまとめました。
トラックのロープでおすすめの太さは?
トラックで使用するロープの太さは、一般的に9〜12ミリが適しています。 細すぎるロープは強度が足りず、太すぎると結びにくくなるため、積載物の重量やサイズに応じて選びましょう。
たとえば、軽トラックなどで比較的小さな荷物が多い場合は、9ミリで十分です。一方、中型以上のトラックや大型の荷物を運ぶ場合は、11〜12ミリのロープを使用すると安心です。
トラックのロープの強度(耐荷重)は?
ロープの強度は素材と太さによって異なります。
一般的に、トラックロープとして使用される合成繊維製ロープ(ビニロン・リキロンなど)であれば、200〜500キロの耐荷重があります。
ただし、これは「新品・適切に使用された状態」での目安であり、ロープが劣化していたり、結び方が不十分だったりすると、耐荷重が下がってしまいます。
定期的にロープの状態を確認し、摩耗や損傷があるものは早めに交換してください。
トラックロープの適切な長さは?トラックのサイズ別に教えてほしい
トラックロープの長さは、車両のサイズや積載物の大きさによって変わります。目安を表にまとめました。
トラックの種類 | 荷台の長さ | ロープの長さ | 備考 |
軽トラック | 約2m | 3〜5m | 小型の荷物を固定できる |
〜2tトラック | 約3〜4m | 6〜10m | 複数本用意しておくと良い |
4tトラック以上 | 約6m〜 | 10m以上 | 大きな荷物や高積みの際は、予備のロープも用意しておく |
また、ロープは、長すぎた場合に調整できるため、少し余裕を持った長さを選ぶと作業しやすいです。
まとめ
トラックで貨物を輸送するときには、荷物が動かないよう、ロープを用いて固定することが求められます。その際、固縛技術が必要となるので、本記事を参考に結び方を練習してみてください。
さらに、荷物の大きさや形状に合わせて、適したロープと結び方を選ぶことも大切です。正しい知識をつけて、荷物の破損を防ぎながら安全な輸送につなげてください。
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- トラックロープの代表的な結び方は、「南京結び」「もやい結び」「輸送結び」
- 荷物の大きさに合わせてロープの種類を選ぶ
- 結び方以外にも「荷物の積み方」「運転方法」「固定位置」の3つが重要