普通免許でトラックの運転は可能?免許区分と運転可能なトラックをご紹介!
トラックの運転は、トラックの大きさによって必要となる免許が異なります。運転資格のないトラックを運転すると、道路交通法違反で処分の対象となります。実は、2度免許の区分が変わっており、運転できるトラックの大きさが細かく分かれました。また、中型免許や大型免許以外にも、実は普通免許で運転できるトラックもあります。今回は、運転免許の区分や限定免許や限定解除の方法、運転できるトラックの大きさなど紹介します。
2021年現在の運転免許区分とトラック
かつては普通免許と大型免許しかなく、普通免許で中型トラックが運転できました。
しかし、2007年と2017年の2度、道路交通法が改正され、普通免許で運転できるトラックの区分は大きく変わったのです。
わずか10年間で、2度の法改正が行われたことで免許区分が複雑化しました。
漠然と運転できるトラックの大きさが異なることは理解していても、具体的にどのトラックが運転できるのかはわかりくいでしょう。
現在の免許区分は次のとおりです。
・普通免許
・準中型免許(5トン限定もあり)
・中型免許(8トン限定もあり)
・大型免許
大きくこの4つの免許区分となっています。
このほか、けん引免許や大型特殊免許などもありますが、車体と荷台が一体になったトラックを運転するには、この4つの免許いずれかが必要です。
運転できるトラックは「車両総重量」「最大積載量」で決まる
今持っている免許で、どのサイズのトラックが運転できるかわからないという声がちらほらあります。
区分が細かく分かれてしまったため、ある意味仕方ありません。
運転できるトラックの大きさは、そのトラックの「車両総重量」と「最大積載量」、バスも含めれば「乗車定員」で決まります。
つまり、トラックの重さ、積み荷の重さによって運転できるトラックが違うということです。
以下に、現在新規で取得できる運転免許と、乗れる車の条件をまとめてみました。
免許区分 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 3.5トン未満 | 2トン未満 | 10人以下 |
準中型免許 | 7.5トン未満 | 4.5トン未満 | 10人以下 |
中型免許 | 11トン未満 | 6.5トン未満 | 29人以下 |
大型免許 | 11トン以上 | 6.5トン以上 | 30人以上 |
よくある勘違いなのですが、「4トントラックを運転するには中型免許で大丈夫」という、トラックの通称がそのまま車両総重量と同じだと思っている人がいます。これは実は間違いで、トラックは同じクラスのものであっても、搭載している設備や年式によって差があるのです。
例えば、4トントラックでも、ただのアルミバンと冷凍機つきアルミバンでは重量が異なります。
理由は簡単で、冷凍機つきのトラックのほうが、冷凍機を稼働させる装備の分、重たくなってしまうからです。
また、キャブ・荷台形状によっても、運転できるトラックは変わります。
知らずに公道を運転すると、無免許で罰せられるので、車両総重量と最大積載量には十分注意しましょう。
「8トン限定免許」「5トン限定免許」とは?
2007年と2017年の道路交通法改正で、特殊な免許区分である「限定免許」が登場しました。
それが「中型8トン限定免許」と「準中型5トン限定免許」です。
いずれも、中型・準中型の区分新設に伴う特例措置で、新しく取得できる免許ではありません。
「8トン限定」が2007年3月31日までに、「5トン限定」が2017年3月31日までに旧普通免許を持っていた人がこれに該当します。
限定免許とは名前のとおり、車両総重量が8トン未満、もしくは5トン未満の車両まで運転できるということです。
そのため、ざっくりとした覚え方ですが、「8トン限定」は4トントラックを、「5トン限定」は2トントラックまでは運転できることになります。
もちろん、例外の車両があります。
そのため、乗れるかどうか微妙なラインの車両を運転する際は車検証を確認しましょう。
限定免許は教習所で解除できる
特例措置で作られた限定免許ですが、教習所で「限定解除」が可能です。
限定解除と聞くと、多くの人はオートマチック限定免許から、マニュアルミッション免許へ切り替えることを連想する人が多いようです。
しかし、この特例措置の新設で、>今まで運転できていたトラックが運転できなくなってしまうドライバー>が出てきてしまいました。
そこで、車両重量に関わる限定を解除するコースが、各地の教習所で設けられたのです。
これらの限定免許は限定解除試験に合格すれば、運転可能な車両区分の限定が解かれ次に挙げる免許区分に昇格させられます。
・5トン限定準中型免許:限定解除され準中型免許に昇格
・8トン限定準中型免許:限定解除され中型免許に昇格
また、限定解除には、教習所に通う方法と、直接運転免許試験場で試験を受ける方法があります。
しかし、この限定解除だけではなく、すべての運転免許で言えることですが、直接試験場で試験を受けても合格しない場合がほとんどです。
その理由は、運転技術だけではなく、乗車姿勢や乗車前確認などがきちんとできていることが前提だからです。
確実に限定解除をするには、教習所で所定の時間の教習をしてから試験を受けることをオススメします。
トラックの運転免許を取得するにはどうすればいい?
トラックの運転免許を取得するには、免許区分によって受験条件があります。
この条件をクリアしていないと、免許取得ができないのです。
というのも、トラックの運転には、普通車と違う動作や判断基準が必要になります。
現在の普通車のほとんどは、前輪駆動なのに対して、トラックはほぼすべてが後輪駆動です。
また、車体が大きい分、内輪差・外輪差が普通車とはまったく異なるため、同じ感覚での運転はできません。
そのため、中型免許、大型免許に限り、取得のための条件が設けられています。
以下に、現在新規取得できる免許の条件をまとめました。
免許の種類 | 取得条件 |
大型免許 | 満21歳以上で普通免許、又は中型免許(8t限定含む)の運転経験期間が通算して3年以上 |
中型免許 | 満20歳以上で普通免許の運転経験期間が通算して2年以上 |
準中型免許 | 満18歳以上 |
普通免許 | 満18歳以上 |
免許取得は教習所で学ぶか飛び込みで試験を受ける必要がある
運転免許の取得には、教習所で、定められた時間数の学科と実技を終了して受験する方法と、免許センターで直接受験する方法の2種類があります。
教習所に通い、学科と実技を修了すると、本試験のときに実技試験が免除されるので、学科のみの受験で合否判定となるのですが、デメリットとしては、教習所に通う費用がそれなりにかかります。
現在所有している免許が普通免許の場合、中型免許なら約20万円、大型免許なら30〜40万円が相場です。
もし、オートマチック限定の普通免許なら、ここに5万円前後プラスされると考えたほうがいいでしょう。
一方の、「飛び込み」と呼ばれる、直接運転免許センターで試験を受ける方法は、1回の費用が5万円前後なので、圧倒的に安く済みます。教習所に通う時間もいらないので、時間の節約にもなるのですが、合格率は低めです。
これには深いわけがあり、見られるのが運転技術だけではなく、乗車前の動作や乗車姿勢も判断材料に入るからです。
そのためか、飛び込み試験での合格率は中型・大型ともに10%未満となっています。非常に難易度が高いため、確実に合格したい人は教習所に通うことをオススメします。
運転免許を取得するためにかかる費用
運転免許の取得費用は、取得方法や免許区分で大きく変わります。
まず、免許を取る一般的な方法である、教習所の料金体系です。
時期や地域、合宿か通いかで差はありますが、大まかには以下のようになります。
免許の種類 | 教習所でかかる費用 |
大型免許 | 25~35万円 |
中型免許 | 15~20万円 |
準中型免許 | 30~40万円 |
普通免許 | 25~30万円 |
※大型・中型は、普通免許を持っている場合の費用
このうち、まだ何の免許を持っていなくても取得できるのは、普通免許と準中型免許です。
また、最初から準中型免許を取れば、架装が大掛かりではない4トントラックまでは運転できるようになります。
一方の中型と大型免許に関しては、普通免許、もしくは準中型免許を取得してからある程度の期間が経過していることが条件です。
いきなり中型・大型免許を取得することはできないので注意しましょう。
次に、免許センターでの飛び込み試験の場合です。
こちらも、取得する免許の区分によって若干の差はありますが、教習所ほど高くはありません。
こちらも地域によって若干費用に差がありますが、だいたい以下の費用が必要になります。
免許の種類 | 1回でかかる費用 |
大型免許 | 3~4万円 |
中型免許 | 3~4万円 |
準中型免許 | 2万7,000~3万円 |
普通免許 | 2万5,000円 |
教習所に通うよりも圧倒的に安い金額で免許を取得することができます。
ただし、この金額でおさめるには、文字どおり「一発」で合格する必要があります。
不合格であれば、再度試験を受けなければならず、費用は2回分となるので、純粋に倍です。
一発で合格できるだけの知識と、運転技術があればいいですが、自信がなければ素直に教習所にいきましょう。
法改正後の免許で運転できるトラックにはどんな種類があるの?
2017年の改正道路交通法以降で新規取得した普通免許でも運転できるトラックとして、軽トラックがあります。
軽トラックの最大積載量は350kgなので、普通免許でも運転することができます。
軽トラックは、宅配や土木工事業者のあいだでも使われており、「軽」の名はついていますが、幅広い活躍が出来るのです。
維持費も安いため、導入している運送会社や事業者も少なくありません。
しかし、やはり軽自動車であるがゆえ、パワーは一般的なトラックには劣ってしまいます。
また、商店の配達業務などに活躍する小型の1.5トントラックも最大積載量が1.5トン以下のため普通免許で運転できます。
代表的なものに、トヨタのトヨエースがあり、少し古いものであれば、マツダのボンゴバンも運転できます。
こちらも軽自動車と同じく、宅配事業者によく利用されています。1.5トントラックを使用する理由は、普通免許の上限である最大積載量2トン未満をクリアできるからです。
しかし、冷凍冷蔵機能を搭載したバンやクレーンはトラックの架装次第で車両総重量が上限の3.5トン未満を超過するものもあるため注意しましょう。
貨物登録の「普通車」にも注意
2017年以降に取得した普通免許では、貨物登録の普通車にも注意が必要です。貨物登録の普通車とは、人を載せることを目的とせず、車検証にも「貨物」と登録された車種になります。
代表的な車種にトヨタのハイエース、日産のキャラバンがあります。この2車種は、普通自動車のくくりではありますが、その高い積載能力から、貨物登録されることも多い車種です。しかし、この2車種、貨物登録になると最大積載量が1,000〜1,250kgと、見た目の割に大きいため、普通免許では運転できるかどうかが微妙なラインになります。
ただでさえ車体重量が2トン近くあるため、場合によっては普通免許では運転できないものも出てくるのです。
この2車種が乗用登録か貨物登録かを見分けるには、ナンバープレートの最初の数字を確認するといいでしょう。乗用登録であれば、いずれも3から始まる3桁の数字になっています。一方の貨物登録では、4から始まる3桁の数字になっています。
細かな違いですが、いちいち車検証を探すより手軽な判断材料です。
運送業界ではトラックドライバー不足と免許取得の低さが問題に!
トラックを日常的に使う運送業界ですが、今、深刻なドライバー不足に直面しています。
もっとも深刻なのは、大型トラックのドライバーで、数が少ないために取り合いになっています。
しかし、そんな運送会社の需要とは裏腹に、大型免許の取得希望者はそれほど多くありません。そこで、深刻な大型トラックドライバー不足を解決するために、企業や行政も少しずつ動き出しているのです。ここでは、大型免許取得希望者が少ない理由と、企業・行政の免許取得支援についてお話します。
大型免許取得希望者が減少傾向!原因は長時間労働?
大型免許を取得するということは、トラックドライバーかバスの運転手を目指していることになります。
例外として、大型トラックを扱う自動車整備工場の作業員が、大型免許を取得する場合もありますが、数は少なめです。
この大型免許を自分の意志で取得したいという人が、一部地域を除いてここ数年減少傾向にあるといわれています。
免許取得までの費用が高いこと、試験が難しいことも理由に挙がっていますが、一番は、運送業界への就職希望者が少ないことにあります。
なぜ、運送業界への就職希望者が少ないのでしょうか。その理由は、長時間労働を強いられるというイメージがついているためです。世間一般のイメージとして、「大型トラック=長距離を走る」というものが定着しています。さらに、一昔前の運送会社には「ノルマ」というものがありました。これは所定の場所から場所までを、決まった時間内に移動するというもので、昼夜を問わずトラックを走らせる運転手も少なくなかったようです。しかし、実際は、大型トラックすべてが長距離輸送をしているわけではありません。
近距離であっても、荷物が大きかったり、量が多かったりすれば大型トラックが活躍する場面はいくらでもあります。
また、「ノルマ」も現在ではほとんどなくなり、勤務実態を把握するためにGPSを用いての勤務管理も行われているのです。
このように、昔のイメージと実際の現場では、ドライバーを取り巻く環境が大きく異なっています。
しかし、なかなかこのイメージがぬぐい切れないせいか、運送業界に携わりたいという人はあまり増えていないのが現状です。
企業ごとに「免許取得支援」を開始
企業は、ただ手をこまねいていても人は集まらないことから、独自の支援策を開始しました。それが、「免許取得支援制度」です。
通常であれば、運転免許は個人の資格なので、会社側が費用を負担することはありませんでした。これは運転免許のみならず、各種の資格でも同じことが言えます。そのため、大型免許を事前に取得しておかないと、企業への応募すらできなかったのです。
しかし、免許取得にかかる費用が高額であること、ドライバー不足が深刻であることから企業側も方針を転換。
入社後に大型免許を取得するための支援制度を、企業独自で始めたのです。
内容は企業ごとに異なりますが、ほとんどの場合、免許取得費用の一部もしくは全額の負担と、教習・試験日の休暇取得制度を整えています。
中には、企業が無利子で免許取得費用を貸し付けるところもあり、対応はさまざまです。
この制度のおかげで、企業への応募の時点で大型免許を持っている必要がなくなり、ドライバー希望者にとっては応募しやすくなったという背景があります。
ハローワークでも「教育訓練給付金」が受けられる
企業側だけが、大型免許取得を後押ししているわけではありません。
現在、ハローワークでも「教育訓練給付金」を受け付けており、教習費用の20%を給付してくれるものがあります。
この制度は、厚生労働省が認めた資格の取得を目指す人のために用意された制度です。大型免許の場合、上限が10万円であるものの、本来の教習費用より安く抑えられるのはメリット以外のなにものでもないでしょう。
企業が行っている免許取得支援制度とあわせて使えば、かなり安く大型免許を取得することができるのです。
また、「教育訓練給付金」は中型免許取得でも使うことができます。ただし、申請者が65歳未満であることが条件で、この制度が使える教習所も限定されています。詳しくは、最寄りのハローワークまで問い合わせるといいでしょう。
まとめ
免許取得には、時間も費用もかかります。しかしそれは、「運転のプロ」の証である免許を取得するためには必要なものです。
道路交通法の改正に伴う免許区分の細分化で、免許制度も複雑になってしまいました。
運転するトラックの大きさで必要な免許が違い、違反すると罰則の対象にもなります。
トラックを運転する際は、自分の持っている免許とトラックの条件をよく確認することが大切です。
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- 持っている免許でそのトラックが運転できるかどうかの判断は、車両総重量と最大積載量でできる
- 中型、大型免許は取得するための年齢や運転経歴の条件があり、かつ教習所に通うと高額
- 一発試験も受験できるが合格率は低い
- 普通免許で運転できるトラックはあるが、物によっては貨物登録普通車が乗れなくなる
- 大型トラックのドライバーは少ないが、企業の補助や行政の給付金で安く取得できることも