荷台を自在に変更!アームロール車の運転操作に必要な免許や資格、活用フィールドは?
車載アームで積載コンテナの積み下ろしが自在に行え、コンテナ乗せ替えで荷台形状を自由に替えられる特殊車両がアームロール車です。荷台コンテナの形状でさまざまなフィールドへの対応が可能となる汎用性の高い特殊車両であり、さまざまな車両区分が用意されていることから運転やアーム操作には、特別な資格や免許が必要となるのではないかと感じる方も少なくないのではないでしょうか?変幻自在にボディタイプを変更できるオールラウンドプレイヤー、アームロール車の特徴や運転・アームの操作に求められる資格や免許などを紐解きながら紹介します。
使用用途に合わせて荷台の変更ができるアームロール車とは?
アームロール車の主要機能は縦方向に力強く稼働する車載アームで、オペレーターがアームを操作して荷台コンテナの積み下ろしを行います。一般的なトラックの構造が頭にあると荷台コンテナの積み下ろしと言ってもイメージが湧き辛いですが、アームロール車はトラックの荷台に相当するコンテナを完全に分離できる車両です。
荷台コンテナを降ろした状態のアームロール車はキャビン付き裸シャーシの状態になるといっても過言ではなく、文字通り荷台コンテナの入れ替えを完全に行います。荷台コンテナの入れ替えは次の流れで行います。
- アームで荷台コンテナを車両後方に押し出す。
- コンテナを半分程押し出したアームがコンテナ前部を持ち上げる
- コンテナ前部を持ち上げたアームが弧を描くように車両後部に向かって動きコンテナを設置させる
- 設置したコンテナをフックから切り離し分離完了
上記4ステップで荷台コンテナの分離を行い逆の手順で交換コンテナを積載します。アームロール車のオペレーターは1人で車両の運転とアーム操作を行うのが一般的です。
アームで行う荷台の積み下ろしと共にダンプ機能も搭載する
アームロール車の機能として積載コンテナを車載アームで積み下ろす機能が注目されますが、これ以外にもダンプカーのように荷台を持ち上げ積み荷を流し降ろすダンプ機能を搭載したアームロール車も存在します。
車載アームで荷台に引き上げた積載コンテナの積み荷をダンプ機能で流し降ろすことができることから、積み荷の積載は少しずつ手作業で行いコンテナ回収後に一気に荷降ろしを行いたい廃棄物収集などでは効率良く作業できると言えるでしょう。
アームロール車の搭載コンテナは多種多様!
アームロール車のボディタイプを変更できる特徴は、積載コンテナのバリエーションの豊かさによって実現されています。
アームロール車用の荷台コンテナは一般的なものだけでもオープンコンテナ・テールゲートコンテナ・密閉型コンテナ・フラットデッキ型コンテナ・カーゴコンテナ・タンク・バルクなどの形状が存在します。
上記の積載コンテナはアームロール車の製造メーカーの商品ラインナップで確認できるものですので、特注品などを含めると実にさまざまなバリエーションが存在すると言えるでしょう。
アームロール車は架装メーカーの商標?
アームロール車の正式名称は「脱着ボディシステム車」ですが、一般的には最もシェアの高い新明和工業が製造販売する車両の商標であるアームロール車が、通称として用いられています。
クレーン付トラックが古河ユニックの製造車両のユニックの名称で呼ばれるように、特殊車両はポピュラーなモデル名がそのまま通称として用いられる傾向にあると言えるでしょう。
脱着ボディシステム車の製造販売を行うボディメーカー(架装メーカー)は数社存在し、現在国内ではアームロール車以外にもロールオン・マルチローダ・水平脱着車・フックロール・ロールリフト・マルチリフトなどの同型車が製造販売されています。
モデル名は異なっても基本構造はアームロール車と共通で、既にふれたとおり荷台コンテナの規格は一般社団法人 日本自動車車体工業会が定め互換性が保たれています。
アームロール車が用いられるフィールドとは?
アームロール車が最も活躍するフィールドとして挙げられるのが、廃棄物収集運搬を行う廃棄物処理業だと言えます。最も一般的な車載コンテナの形状がオープンコンテナであることからも、アームロール車が廃棄物収集業で活用されていることが伺えます。
搭載するコンテナでアームロール車の活躍するフィールドが異なる
既述のとおりオープンコンテナは廃棄物収集業務のフィールドを中心に活用されていますが、搭載コンテナの形状でボディタイプを変化できるアームロール車は積載コンテナのタイプによって次のように活躍するフィールドが異なります。
オープンコンテナ、テールゲートコンテナ
アームロール車に最も多く積載される荷台コンテナタイプで、廃棄物回収業務や一般的な運送業務に用いられます。ダンプ機能を搭載するアームロール車にテールゲートコンテナを積載すればダンプカーと同様の使い方が可能です。
密閉型コンテナ
オープンコンテナに天蓋を付けたコンテナで肥料や家畜糞尿の運搬に用いられます。天蓋の形状はスライド式・両開き式などが存在します。
フラットデッキ型コンテナ・カーゴコンテナ
荷台形状がフラットデッキとなったフラットデッキ型コンテナや低いアオリで囲んだカーゴコンテナは、小型建機類の搬送に用いられます。また一般的なトラックの荷台形状に近いカーゴコンテナは通常の運送業務に用いられます。
タンク・バルク
タンク型コンテナやバルク型コンテナも存在し、飲料水などの液体輸送にはタンク型、粉体輸送にはバルク型が用いられます。
その他のコンテナ
アームロール車に積載するコンテナは既述のタイプ以外にも廃棄物の分別回収に対応する分別型コンテナや粗大ゴミなどの大型収集物が投入しやすいサイドゲート型コンテナ、集合住宅などのゴミ回収に適したオムスビ型コンテナなど使用用途に合わせたものが開発されています。
アームロール車の運転やアーム操作に必要な資格や免許とは?
車載アームで積み下ろしを行う搭載コンテナは決して軽量なものではなく、コンテナの積み下ろし作業時には細心の注意を払う必要があります。多くの特殊車両の運転や機能操作には資格や免許が必要となることから、「アームロール車の運転やアーム操作にも資格や免許が求められるのでは?」と考える方は少なくないようです。
実際に運送業務でアームロール車の運転や操作を行う際に必要な資格や免許を紹介します。
幅広い車両区分のアームロール車が存在する
アームロール車に積載される荷台コンテナのサイズは、2トン・4トン・車両総重量22トン用などの区分でラインナップされています。アームロール車のラインナップは一般的なトラックの車両区分同様に小型クラス・中型クラス・大型クラスの3区分で展開していると言えます。
運転免許区分ごとの運転資格は?
2017年の道路交通法改正で国内の運転免許制度が改定され、自動車運転免許は普通免許・準中型免許・中型免許・大型免許の4つの免許区分に分類されました。各免許区分の運転資格は次に挙げるとおりです。
免許区分 | 車両総重量 | 最大積載量 | 乗車定員 |
普通免許 | 3.5トン未満 | 2.0トン未満 | 10人以下 |
準中型免許 | 7.5トン未満 | 4.5トン未満 | 10人以下 |
中型免許 | 11.0トン未満 | 6.5トン未満 | 29人以下 |
大型免許 | 11.0トン以上 | 6.5トン以上 | 30人以上 |
トラックの運転の場合は免許区分によって定められる車両総重量・最大積載量の範囲内での運転が許可されており、各車両区分のアームロール車の運転に必要となる免許区分は次のとおりとなります。
小型アールロール車の運転に必要となる免許区分
小型2トンクラスのアームロール車は法律上は最大積載量で見ると普通免許から運転資格がありますが、車両総重量が3.5トン以上の車両が少なくないため現実的には準中型免許以上の免許区分が必要となると言えます。
中型アールロール車の運転に必要となる免許区分
中型4トンクラスのアームロール車は準中型免許から運転資格がありますが、小型クラス同様、車両総重量や最大積載量を考慮すると現実的には中型免許以上の免許区分が必要だと言えます。
大型アールロール車の運転に必要となる免許区分
車両総重量22トン用などの大型クラスのアームロール車の運転には、大型免許が必要となります。大型免許以下の運転免許では運転資格が足りないため、大型アームロール車の運転はできません。
アーム操作には資格や免許が求められない!
車載アームで搭載コンテナの積み下ろしを行うアーム操作は車載クレーンや高所作業車のような労働安全衛生法で定める資格が必要となるのではないかと感じますが、実は、車載アームの操作に特別な資格や免許は求められません。
しかしアームを操作して行う搭載コンテナの積み下ろしは危険が伴う作業となるため、ビギナーのドライバーは経験者の指導の下で十分な練習を行う必要があります。
まとめ
積み荷を積載した荷台コンテナを軽々と持ち上げる車載アームは非常に力強いものですが、アームロール車をコンテナにまっすぐに近づけないとコンテナがガイドレールから外れることもあるので注意が必要です。
オペレーターとしてアームロール車を使用した業務に付く際には次の3つのポイントに注意して下さい。
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- アームロール車の活躍フィールドは荷台コンテナのタイプで異なる
- アームロール車の運転には車両区分ごとの運転資格が必要
- アーム操作には資格や免許は不要だがしっかりとした練習が必要