トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンの違いは?サイズ・特徴・必要な免許などを紹介
ひと口に「クレーン」といっても種類がいくつかあり、トラックに備え付けられたクレーンは小型のものから大型のものまであります。運送作業や土木作業、解体作業をおこなう現場では、トラッククレーンとラフタークレーンが使用されます。しかし、両者にどのような違いがあるか詳しく知らない人も多いのではないでしょうか。そこで今回は、トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンの違いやそれぞれの特徴、必要な免許、おすすめメーカーをご紹介します。
トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンの特徴
クレーンにはいくつかの種類があります。運送業界、土木業界でよく使われるクレーンは、トラッククレーンとラフタークレーンの2種類です。ここでは、トラッククレーンとラフタークレーンそれぞれの特徴と両者の違いをみていきましょう。
トラッククレーン(ユニック車)
トラッククレーン(ユニック車)は、トラックの運転席「キャビン」の後ろにクレーンと操縦席がついています。国内のトラックメーカー4社でもラインナップされているほど需要が高いのが特徴。ラフタークレーンとは違い、ベースは普通のトラックです。
トラックベースのメリットとして、長距離走行が可能という点が挙げられます。しかし、走行できる道はトラックの性能に左右されるため、標準車両での悪路走行は向いていません。
四輪駆動のトラックに装備することもできますが、タイヤサイズなどの関係でラフタークレーンほどの力強さは発揮できないのです。
また、吊り上げ能力は高いものの、舗装された場所でないと転倒事故につながる可能性もあります。クレーンを使うために必要なアウトリガーという脚を張っても同じなので、場所を選んで使用しましょう。
ラフタークレーン
ラフタークレーンは、一般に「クレーン車」と紹介される車両です。大きな車体に巨大なブームがついており、公道を自走できます。
ラフタークレーン最大の特徴は四輪駆動です。一般車両でいう4WDということです。すべての車輪が動力を直に地面に伝える車両なので、力強い走りが特徴的で、四輪駆動最大のメリットである悪路走行や狭い道でも難なく走行が可能です。足場が悪い建設現場にピッタリのクレーンと言えます。
しかしその反面、最高速度は全車種50km/hと遅く、長距離走行には向いていません。急な坂道ではその巨大な車体からもわかるとおり、重量が邪魔をして素早い移動ができません。
そのため、坂の多い地域や交通量の多い場所では、渋滞の原因になってしまうこともしばしばあります。
トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンに必要な免許と資格
トラッククレーンとラフタークレーンは運転に必要な免許、クレーンの操縦に必要な免許があり、それぞれ異なります。
トラッククレーン(ユニック車) | ラフタークレーン | |
運転に必要な免許 | トラックの大きさに合わせた運転免許 (中型免許など) |
大型特殊自車免許 |
クレーン操作に必要な免許 | ・小型クレーン運転士 ・移動式クレーン運転士免許 (吊り上げ重量によって資格が異なる) |
移動式クレーン運転士免許 |
トラッククレーン(ユニック車)
トラッククレーン(ユニック車)を運転する場合は、トラックの免許が必要です。必要な免許はベースとなるトラックの大きさが鍵となります。
(例)車両総重量8トンの場合
公道を走るために中型自動車免許が必要となります。大型トラックの場合、大型免許が必要となります。
また、クレーン操縦には資格が必要です。この資格には、「移動式クレーン運転士免許」と「小型クレーン運転士免許」があり、吊り上げ重量によって必要な資格が異なります。
(例)5トン未満しか使わない場合
小型クレーン運転士の資格で操縦ができます。難易度も移動式クレーン運転士免許よりも低いため、小さなクレーンをメインで使うのならこちらがいいでしょう。
<トラッククレーン(ユニック車)で必要な資格や免許についてこちらで詳しく解説しています。>
ユニック車とは?必要な資格や免許|取得するメリットまで丸わかり
ラフタークレーン
ラフタークレーンで公道を走行するときは、大型特殊自動車免許が必要です。一般的に「大特」と言われるもので、満18歳以上で視力・聴力に問題がなければ誰でも取ることができます。
なお、大型特殊自動車免許では普通自動車を運転することはできません。これでクレーンも操縦できればいいのですが、実は大型特殊自動車免許ではクレーン操縦ができません。
そのため、クレーン操縦には「移動式クレーン運転士免許」が必要です。
移動式クレーン運転士免許は、教習所で所定の時間数の座学と実技を受け、試験に合格することで手に入ります。飛び込みでの受験もできますが、合格率は全体で60%前後。無理をせず素直に教習所に通うことをおすすめします。
教習所を終了すると、本試験の時に実技試験が免除となります。
実技試験の合格率は例年40%代と低いため、学科と実技両方を一気に受けるのではなく、学科だけに絞ったほうがいいでしょう。仮に教習所に通ったとしても7〜10日ほどで終わるので、さほど時間はかかりません。移動式クレーン運転士免許を考えている人はまず教習所探しから始めましょう。
<大型特殊自動車免許取得について、こちらの記事で詳しく解説しています。>
大型特殊免許を取得するために必要な日数や費用、コツなどを徹底解説!どんな車が該当するの?
トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンが活躍できる現場
トラッククレーンとラフタークレーンでは活躍できる現場が異なります。それぞれの活躍できる現場について紹介します。
トラッククレーン
トラッククレーンは、コンパクトさや手軽さがあり、さまざまな場所での活躍が期待できます。例えば、建設現場はもちろん、船で運ばれてきた荷物をそのままトラックに荷積みすることも可能です。
後部にアオリがついているタイプであれば、トラックを分けずに運搬までできます。
また、電気工事や車の引き上げを主とする事業者にもトラッククレーンは相性バッチリ。資材や車の積み下ろしが少人数でできるようになります。
大型重機の回送にも大活躍することでしょう。
ラフタークレーン
ラフタークレーンは、土木現場や建設現場、解体現場などで活躍しています。
舗装されていない場所でも走行やクレーン操作ができるため、トラッククレーンなどのほかのクレーン車両では作業できない場所にも進入できます。
巨大な物や重い物を吊り上げ、水平に運搬ができるので、ビルの建設現場でも使用されています。
油圧式と機械式の違い
クレーンの動作形式には油圧式と機械式の2種類があります。
ラフタークレーンもトラッククレーンもこの2種類が主流ですが、現在では油圧式クレーンが圧倒的多数で、機械式はほとんど見かけなくなりました。
油圧式と機械式は、操作方法や吊り上げ重量などの違いがあります。どのような違いがあるのかみていきましょう。
油圧式クレーン
現在のクレーンの主流が油圧式クレーンです。
作動油と呼ばれる専用のオイルの力で駆動し、機械式よりもなめらかに動くことで人気を博しています。静音性にも優れており、現役のクレーンの約80%が油圧式だとも言われています。
吊り上げ重量はメーカーやクレーンそのものの大きさによって違いますが、8〜120トンのものまであります。大型の操縦席備え付けのトラッククレーンなら操縦席から操作も可能で、雨の日でも稼働できます。
しかし、ブームの長さはあまり長くなく、作業可能半径は機械式に劣ります。それでも荷物の積み下ろしなどの軽作業なら問題ない程度。デメリットと捉えることもできますが、実際にはそこまで支障はないでしょう。
機械式クレーン
機械式クレーンは、チェーンと歯車を動力とし、車のエンジンから直接エネルギーを使って動かします。吊り上げ重量は32〜250トンと油圧式よりも大きく、ブームが長いという点が特徴です。
また、トラスブームと呼ばれるもので吊り上げ能力を上げることもできます。しかし、機械式はこまめなグリスアップが重要で、怠ると金属疲労から故障の原因にもなります。
そんな手間も相まって、最近では機械式クレーンをあまり見なくなりました。
おすすめのトラッククレーンメーカーは2社
主要なトラッククレーンメーカーは、「タダノ」と「古川ユニック」の2社です。
ちなみに、ラフタークレーンの主要メーカーは、「加藤製作所」と「コベルコ」になります。
実は、クレーンメーカーは国内だけで34社も存在します。
メーカーによって違いがあるかと言われると、大きな差はほとんどありません。それぞれの部品には互換性のあるものが多く、ある程度の汎用性が利きます。
古河ユニックのクレーンにタダノの作動油を入れても問題なく動き、故障もしません。もちろん、作動油に関しては粘度の違いはありますが、違うメーカーの純正作動油を入れたから壊れたという話は聞いたことがありません。あえて挙げるとすれば、操作性に若干の違いがあります。
例えば、クレーンを上にあげるレバーの位置がメーカーによって異なっていたり、ラジコンのボタンの配置が違っていたりすることがあります。
そのため、複数のメーカーのクレーンを導入すると、操作性の違いから正常に運転できなくなる可能性も出てくるのです。できれば同じメーカーのクレーンを導入するといいでしょう。
まとめ
今回は、トラッククレーン(ユニック車)とラフタークレーンの特徴や違い、必要な免許、活躍できる現場などを比較しました。内容をまとめると下記のとおりです。
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- 運送業界でよく使われるクレーンには、ラフタークレーンとトラッククレーンの2種類
- トラッククレーンは、コンパクトなのでさまざまな場所で活躍している
- トラッククレーンもラフタークレーンも、運転に必要な免許とクレーン操作に必要な免許がある
- クレーンには油圧式と機械式がある
- 主流のクレーンメーカーはTADANO、加藤製作所、コベルコの3社で、メーカーによる違いはほとんどない