全国の酷道ランキング|走行の注意点、トラックドライバーが気をつけたいポイントを紹介
今回の記事では、日本三大酷道とされる酷道に加え、国内で有名な10酷道の合わせて13酷道の特徴と、走行時の注意点を紹介します。また、酷道走行まえにしておきたい事前準備も紹介しますので、酷道を走る可能性のある方は、ぜひ参考にしてください。
酷道とは?
酷道は、一般の国道であるものの、整備がされておらず通行が難しい道のことを指します。「国道(こくどう)」をもじって「酷道(こくどう)」とつけられた俗語です。山間部などに通っていることが多く、落石や路肩崩壊などの災害発生の確率が高い危険な道とされています。
酷道の特徴
ここでは、酷道とされる道路の特徴を確認していきましょう。
・道幅が狭い(酷道によくみられる道幅は、一台分しか通れないような非常に狭い道であるため、狭隘(きょうあい)と表現されることも多い)
・普通車でも車のすれ違いが困難
・山間道が多い
・冬場は積雪や路面凍結のため通行止めとなることが多い
・土砂崩れや落石などの災害の影響で長期間通行止めとなっている
・崖道でもガードレールがない
・周囲にガソリンスタンドやお店がない
・見通しの悪いカーブが連続(カーブミラーがないことも)
酷道は、国の管理下の道路ではあるものの、他の道路に比べて交通量が少なく、整備が後回しになってしまっています。
一部では、酷道を好む「酷道マニア」が存在し、危険を承知で走る方もいますが、トラックで走行する場合は相当な覚悟が必要です。
険道との違い
「酷道」と混同されることの多い言葉に「険道」があります。険道は「県道」の俗語です。
文字の通り、酷道と同じく、道路が整備されておらず走行が困難な道を指します。
「酷道」と「険道」の違いは、距離や道幅にあります。
国道は複数の県にまたがっている、国が管理している道路です。県道は県が管理している道路のため、該当の県のみにまたがっています。そのため、国道である酷道は、険道よりも総距離が長くなります。
また、明確な違いは定義されていませんが、道幅は険道の方が細い傾向にあります。普通車がギリギリ通れるくらいの険道も少なくありません。
日本三大酷道|全国の酷道ランキングTOP3
まずは、酷道の中でも特に危険とされている箇所の多い国道TOP3をみていきましょう。
国道439号(通称ヨサク)
国道439号は、四国山地を横断するように徳島県徳島市から始まり、高知県の高知県四万十市まで続く国道です。
総距離は、348.3キロメートルあり、四国内の国道の中で第2位の長さがあります。
道幅は2.5mほどで、ガードレールもなく、川の水が流れて滑りやすくなっていたり、落ち葉が積もっていたりと危険なエリアが多数存在します。特に、徳島県と高知県の県境に位置する京柱峠は、走行が難しい地点とされています。くねくねと細かい道が連続している様子から「羊腸の小径」と称され、道幅が狭く、見通しのきかないカーブが続きます。凍結のため、冬季期間は通行止めです。
■走行時注意ポイント
・京柱峠付近は特に走行に注意
・冬季期間は雪と凍結で通行止めとなることも多い
国道425号(通称シニゴー)
酷道425号のマップはこちら
国道425号は、紀伊山地を横断するように存在している酷道です。全長は約200kmで、三重県尾鷲市から和歌山県御坊市までをつなぐ国道です。
紀伊半島の海岸沿いには、国道42号線があり、地図上で見ると国道425号の方がショートカットする道のようにも見えます。しかし、国道425号は、ほぼ全線が山岳道で舗装されていない酷道です。運転に慣れている方でも走行が難しいため、走行時間としては長くなってしまいます。
また、国道425号は、道幅が狭く、すれ違いのための待機スポットもありません。しかし、近くに温泉地があり、観光客などの車通りも割と多くなっています。過去には、観光客が転落事故に巻き込まれたこともあり、走行には十分注意が必要です。
さらに、落石や路肩崩落といった災害発生のため通行止めとなるケースもあり、山道のため冬季は凍結のため通行できません。通行する際には、事前の交通情報チェックを欠かさず行いましょう。
■走行時注意ポイント
・落石や路肩崩落といった災害が多い
・災害や凍結のため通行止めとなることが多いため、走行前は交通情報のチェックが必須
・道幅が狭く、待機スポットもない
国道418号
国道418号は、福井県から岐阜県を経由して長野県にまたがる国道です。起点は、福井県大野市で、長野県飯田市が終点地点です。
国道418号には、道路幅が狭い温見峠や尾並坂峠、青崩峠、木の実峠などの峠道が多くあります。
国道418号の大きな特徴の一つが、道路の一部が廃道となっている点です。廃道区間は、岐阜県加茂郡八百津町から恵那市笠置ダム付近で、以前起きた落石の影響で、長期間災害通行止めとなっており、実質廃道となってしまったという経緯があります。また、現在では丸山バイパスという代替の道が開通しています。
廃道の付近には「超酷道区間」と称されるエリアも存在します。酷道マニアの間では、「キングオブ酷道」とも呼ばれています。また、エリア内の「二股トンネル」は心霊スポットとしても有名です。
■走行時注意ポイント
・峠道が多い
・「超酷道区間」は通年通行止めとされ、代替道路が開通している
その他日本の有名な酷道一覧
国内には、三大酷道ではないものの、同等に走行が困難な酷道が多くあります。ここでは、10の酷道をそれぞれの特徴を紹介しながら走行時の注意点を解説します。
国道157号
国道157号は、石川県金沢市を起点とし、岐阜県岐阜市を終点とする酷道で、総距離は200km、東北地方と北陸地方を最短の距離で結んでいる道路です。
「落ちたら死ぬ!!」と書かれた看板が有名で、実際に転落死亡事故も発生しています。
特に、岐阜県本巣市能郷から黒津の間は、超酷道区間に指定されているエリアです。急勾配や急カーブが多くありますが、カーブミラーやガードレールがない道がほとんどとなっています。
沢の水が道路に流れ込む「洗い流し」がある箇所も多く「川を渡る国道」ともされており、大雨が降った際は、水量が多く通行不可となることもあります。
災害の影響で8年近く通行止めとなった区間もあるほど落石や土砂崩れの影響を受けやすい危険な酷道です。
■走行時注意ポイント
・道路に川の水が流れ込む「洗い流し」箇所多数
・急勾配や急カーブが多い
・災害による通行止めも多数あり)
国道152号
国道152号は、長野県上田市を起点に静岡県浜松市まで続く酷道で、赤石山脈の山岳地帯を通っています。
国道には、活断層エリアがあり地盤が脆いため、崖崩れや土砂崩れ、落石などに注意が必要です。
また、青崩峠と地蔵峠の2箇所は不通区間とされています。不通区間があることから、マニアの間では、「分断国道」とも呼ばれている酷道です。そのため、林道の迂回ルートを通る必要がありますが、車1台がギリギリ通れる道幅で冬季は閉鎖されます。
地盤の脆さが原因でトンネル工事もできない状況でしたが、2023年5月ついにトンネルが開通しました。迂回ルート通行には30分ほどかかっていましたが、トンネルの開通で5分に短縮して走行が可能となりました。
■走行時注意ポイント
・不通区間(青崩峠・地蔵峠)が2箇所あり
・地盤が脆いため、崖崩れや土砂崩れ、落石などに注意
国道324号
国道324号は、長崎県長崎市から熊本県宇城市を結ぶ酷道です。
一番の特徴は、「浜町アーケード」という商店街を通過する点で、浜町アーケードは、長崎の中でも繁華街とされているエリアで、人気観光スポットの一つでもあります。
ただし、国道でありながら、車が走行できる時間は、午前5時から午前10時までの5時間しかありません。走行時間が限られていることから、酷道とされています。走行可能時間以外は、歩行者専用道路の扱いです。
また、国道324号には海上区間があり、2013年までは車に乗ったまま、フェリーでの通行が可能でしたが、現在フェリーは廃止されてしまいました。高速船があるため、車を降りての通行は可能です。
■走行時注意ポイント
・商店街を通過する酷道
・午前5時から午前10時までの5時間しか通行できない
国道291号
国道291号は、群馬県前橋市から新潟県柏崎市をつなぐ酷道で、法律上は国道とされていますが、現在は、事実上走行不可となっている箇所もあります。明治時代にはすでに国道として指定された歴史のある道路です。
国道291号は、地図上で点線でしめされていることから、「点線国道」ともされています。点線で示されている部分は、登山道があることも多いですが、登山道としても通行が難しいほどの状況となっているケースもあります。
度重なる土砂崩れや雪崩、橋の流失、トンネルの崩壊などの災害が発生し、峠の前後28kmほどの間が通行不可となり、事実上の廃道となっている箇所もあります。徒歩でも通行不可とされるほど危険なエリアです。
■走行時注意ポイント
・山岳地帯を通り「点線国道」の一つ
・自然災害が多く発生し、事実上の廃道とされている箇所もある
国道265号
国道265号は、宮崎県小林市から熊本県阿蘇市に伸びる酷道です。道幅が4.5mの細い道がほとんどで、カーブも多いため、「九州最凶酷道」とされています。ガードレールもないことが多く、まさに酷道です。
九州山地を南北に縦断する国道265号は、絶景ポイントがあることでも有名な酷道です。阿蘇山付近の箱石峠の道は、観光スポットにもなっています。「ひむか神話街道」という観光道路にもつながっているため、比較的交通量が多い酷道です。
■走行時注意ポイント
・道幅が4.5mの細い道がほとんど
・カーブが多く、ガードレールもないため、「九州最凶酷道」ともされている
国道471号
国道471号は、石川県羽咋市から岐阜県高山市をつなぐ酷道です。このエリアは豪雪地帯であるため、冬は通行止めとなる箇所が多くあります。奥飛騨の山岳地帯を通過する富山市から岐阜県飛騨市の一部は、12月から翌年の5月までの間、つまり1年の半分ほどの期間が通行止めです。そのため「開かずの酷道」としても有名で、その期間は、歩行者も含めて一切通行ができません。
積雪の影響で道路が損傷を受けやすく、冬季の通行止めのあとも復旧工事などで通れないことも多く、通行止め期間が長くなり、走行可能期間がかなり限定されている酷道です。
■走行時注意ポイント
・豪雪地帯のため、半年ほど通行止めとなる箇所あり
・雪崩や滑落の危険性が高い道路
国道299号
長野県茅野市を起点に、埼玉県入間市まで通じている国道299号線は、関東唯一の酷道です。長野県茅野市から麦草峠を越えるルートは「メルヘン街道」と呼ばれ、観光道路でもあります。
国道299号は、峠道が続く山岳地帯で、道幅が3.5m未満しかない場所も多数あります。十石峠付近は最難関箇所とされ、道幅は普通車1台がようやく通れるほどしかありません。観光シーズンとなれば交通量も増えるため、走行に負荷のかかる酷道です。
■走行時注意ポイント
・峠道が続く山岳地帯
・道幅が3.5m未満しかない箇所もある
・長野県には「メルヘン街道」と呼ばれる観光道路もあり
国道352号
国道352号は、新潟県柏崎市から栃木県河内郡三川町に続く酷道です。新潟県と福島県の県境を除き、他の国道と重複している箇所が多い点が特徴です。
急勾配や急カーブが続き、切り返しが必要なほどの急カーブもあります。川の水が流れる洗い越しや断崖絶壁もあり、走行には危険が伴います。豪雪地帯のため、冬は通行止めとなることも多い酷道です。
■走行時注意ポイント
・切り返しが必要なほどの急カーブもある
・川の水が流れる洗い越しや断崖絶壁も
・豪雪地帯のため、冬は通行止め
国道166号
国道166号は、大阪府羽曳野市から始まり、三重県松阪市まで続く国道です。
山間部エリアもありますが、国道166号の最大の特徴は、住宅街の狭い道を抜ける点で、「都市型酷道」、「軒先酷道」とも呼ばれています。大型車はもちろん、中型車の通行も難しい酷道です。
■走行時注意ポイント
・住宅街の狭い道を抜ける都市型酷道
・中型車や大型車の通行は不可
国道339号
青森県弘前市を起点に、県内の東津軽外ヶ浜町に続き、津軽半島を北上する国道339号は、日本で唯一、階段が国道に指定されており、「階段国道」の愛称で親しまれています。階段のため、車両は通行できず、迂回が必要です。
ちなみに、362段ある階段は竜飛灯台に続き、絶景が楽しめる観光スポットとなっています。
■走行時注意ポイント
・住宅街の狭い道を抜ける都市型酷道
・中型車や大型車の通行は不可
・竜飛岬は強風で有名なスポット。天候の影響で走行が危険となる場合もある
酷道マニアも気をつけたい!酷道を走る際の注意点
酷道の中には、途中に観光地や有名な絶景ポイントが存在するものもあります。
しかし、普通の道路と同じ感覚で走行していると、思わぬ事故に遭う危険性があるため、ここでは、酷道を走るときに注意すべきポイントを紹介します。
雨が降ったあとは数日走らない
雨が降ったあと数日は、酷道を走らないようにしましょう。
酷道は未整備な道路がほとんどなため、ただでさえ走行が難しいうえに、土砂崩れなどの自然災害の発生リスクが高くあります。
雨が降ったあとは地盤が緩くなり、土砂崩れや路肩崩壊の危険性がより高まってしまうものです。
また、ガードレールが設置されていない酷道も多いため、雨が降ったあとは酷道を通らないようにするのが安心です。
どうしても通らなければいけない場合は、ゆっくりと慎重に走り、万が一に備えて迂回路も必ず探しておきましょう。
酷道での休憩中にエンジンは切らない
酷道は、総距離200〜300kmほどあるものがほとんどで、基本的に長距離の道路です。周囲にはコンビニエンスストアをはじめ、休憩のできるお店がほとんどないことも多くあります。その場合、道中で休憩することになります。
道中で休憩する際は、エンジンを切らないようにしましょう。
また酷道は山間部を通る場合が多く、携帯電話の電波が通じないケースや、ガソリンスタンドもほとんどないため、酷道走行前は、燃料を満タンにしておきましょう。
トラックで酷道を走る前に確認したいポイント
運送会社所属のトラックが、酷道を走ることはほとんどありませんが、個人で運送業を営んでいる方の中には、酷道をどうしても走らないといけない場合もあります。トラックで酷道を走る場合は、事前準備が重要です。どのような準備が必要なのか、詳しく見ていきましょう。
緊急脱出用アイテムを購入する
一つは、緊急脱出用のアイテムをトラックに載せておくことが挙げられます。
酷道は未舗装な場所が多いうえ、ぬかるみや落ち葉で足を取られて立ち往生するケースも多くあります。
そうした状況に備え、「ぬかるみ脱出マット」を車内に用意しておきましょう。ぬかるみなどにはまったタイヤの下に敷いてアクセルを踏めば脱出できる仕組みです。価格相場は、3,000円ほどです。
(出典元:【楽天市場】スタックラダー SV-6070 ワイヤー入りゴム製ラダー)
「ぬかるみ」と商品名についていますが、砂利道や雪道でも使えます。
また、片輪が脱輪した時のために、「けん引用ワイヤー」も載せておくと安心です。
(出典元:Amazon | TiCoast 牽引ロープ )
酷道で起こりうるさまざまなトラブルを回避するため、事前に準備できるものは車内に載せておくとよいでしょう。
ロードサービス内容を確認しておく
加入している保険などのロードサービス内容を、事前に確認しておきましょう。
ロードサービスと聞くと、JAFを思い浮かべる方も多いと思いますが、実はJAFの対応範囲は、ガス欠とカギのとじ込みを除き、2トン以下のトラックまでです。
4トン以上のトラックでロードサービスを受ける場合は、任意保険の付帯か、ガソリンスタンドの法人カード特典としてついているものが基本です。
酷道走行以外でもロードサービスを使う機会はあるので、緊急時に対応できるように、電話番号などすぐに確認できるように控えておくことをおすすめします。
酷道を走る前にできる簡単な点検をしておく
酷道を走っている最中に突然トラックが故障してしまい、走れなくなってしまっては大変です。
完全なリスク回避はできなかったとしても、自分でできる最低限の点検を行うことも重要な事前準備の一つです。
例えば、タイヤの空気圧や残り溝の計測、ハブナットのゆるみがないかなどの簡単な点検をしておけるとよいでしょう。特にタイヤの空気圧は、途中でパンクするリスクを抑えるためにも高すぎず低すぎない、規定値通りに入れておくのがおすすめです。
また、キャビンをあげて、エンジンオイルの量や冷却水の量、ベルトの状態もチェックしておきましょう。オイルや冷却水が足らなかったり、ベルトに亀裂があったりした場合は、酷道を走る前に整備工場で修理・交換が必要です。
まとめ
酷道と一言にいっても、山間部を走るもの以外にも狭い住宅地や商店街を抜けるものなどさまざまあります。
ただ、酷道は自然災害が起こりやすい山間部を通ることが多く、通行止めをしている場合も多くあります。
走行前には、まず走行可能な状態かの確認が必要です。その上で、車両のチェックや緊急時への備えなど入念な準備をして酷道に臨みましょう。
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- 酷道とは、国が管理する国道で、未整備な道路のことを言う
- 険道との大きな違いは、管理しているのが国か都道府県かの違い
- 三大酷道以外にも全国には酷道が複数ある
- 酷道を走る際は、雨が上がって数日は避け、休憩中はエンジンを切らないことを意識する
- トラックで酷道を走る際は、入念な事前準備が必要