【完全ガイド】ディーゼル車規制とは?規制対策・車検対策・罰則について
しかし、規制内容が専門的であるため、「どこまで遵守すればよいのか」「具体的に何が規制されているのか」といった点が、不明瞭なままであることも少なくありません。
特に、ディーゼル車を利用している方々は、法的に必要な措置や今後の対応策を明確に理解しておくことが求められます。
本記事では、ディーゼル規制条例の基礎から詳細な内容までを解説し、どのような規制が適用され、どのように対応すべきかを分かりやすく説明いたします。
ディーゼル車規制条例とは?
ディーゼル車規制条例とは、規制対象であるディーゼル自動車の運行や通行を規制した条例のことを指します。
2003年から規制が開始され、東京都(島しょ部を除く)や神奈川県、埼玉県、千葉県など特定の地域で条例が定められています。
次にディーゼル車規制条例の目的や具体的な条例の内容、規制の対象者について解説していきます。
ディーゼル規制の目的
ディーゼル車規制の主な目的は、大気環境の改善と公害への対策です。ディーゼルエンジンは、高い耐久性と輸送力を持ち、物流を支える重要な技術として普及しました。しかし、排気ガスに含まれる窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)は、大気汚染の原因となり、健康被害や環境への悪影響をもたらします。これにより、過去には公害問題が社会的な課題として浮上しました。
このような背景を踏まえ、国が制定した「自動車NOx・PM法」や対象地域の自治体によるディーゼル車規制が導入されました。これらの規制は、特に古いディーゼル車に対して厳格な排出基準を設定し、基準を満たさない車両の運行を制限することで、大気中の汚染物質を削減することを目的としています。
これにより、住民の健康被害を防ぎ、持続可能な社会の実現に向けた取り組みが進められています。ディーゼル車規制は、環境保護を重視し、未来に向けたより良い大気環境を構築するための重要な手段と言えるでしょう。
どのような条例?
ディーゼル車規制条例は、環境への負荷を減らすために各都道府県の地方自治体が制定した条例で、基準を満たさないディーゼルエンジン搭載車両の使用制限を実施するという内容です。特に、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)の排出量が多い旧式のディーゼル自動車が規制の対象となり、これらの車両は特定地域内での運行や通行が禁止される場合があります。
この条例は、首都圏を中心とした地域で厳格に適用されており、「自動車NOx・PM法」に基づいて、各自治体が独自の基準を定めています。規制対象の車両が基準を満たすためには、排ガス削減装置の取り付けやエンジン改良、あるいは車両の買い替えが求められることがあります。さらに、規制基準は時代に合わせて段階的に強化される傾向にあります。
ディーゼル規制の対象者
ディーゼル車規制の対象となるのは、自動車の購入や配置、整備など、車両運行に関する全ての権限を持つ運行責任者(例:企業の代表者や事業主)です。また、荷物を発送する荷主も規制を遵守できるよう適切に配慮する責任があります。
ディーゼル規制対策は3つ
ディーゼル車の規制の対象は下記の3項目に大別されます。
①規制地域 ②規制ナンバー ③規制区分 |
それぞれのディーゼル規制の対象区分について、解説していきます。
①規制地域
ディーゼル規制の対象地域とは、特定の条件を満たさないトラックなどのディーゼル車の走行が制限されるエリアのことを指します。国内では、首都圏を中心とした8都道府県の市区町村が規制地域に指定されており、これらの地域では基準を満たしていない車両は運行できません。この規制は、対象エリア内を通行するだけでなく、通過することも禁じられているため、特に物流業界などでは事前のルート確認が重要です。車検証に記載された「使用の本拠位置」もチェック対象となるため、該当地域内での車両使用には細心の注意が必要です。
具体的にディーゼル規制の対象地域は下記になります。
東京都 |
||
東京23区 | 八王子市 | 立川市 |
武蔵野市 | 三鷹市 | 青梅市 |
府中市 | 昭島市 | 調布市 |
町田市 | 小金井市 | 小平市 |
日野市 | 東村山市 | 国分寺市 |
国立市 | 福生市 | 狛江市 |
東大和市 | 清瀬市 | 東久留米市 |
武蔵村山市 | 多摩市 | 稲城市 |
羽村市 | あきる野市 | 西東京市 |
瑞穂町 | 日の出町 |
埼玉県 | ||
さいたま市 | 川越市 | 熊谷市 |
川口市 | 行田市 | 所沢市 |
加須市 | 本庄市 | 東松山市 |
春日部市 | 狭山市 | 羽生市 |
鴻巣市 | 深谷市 | 上尾市 |
草加市 | 越谷市 | 蕨市 |
戸田市 | 入間市 | 鳩ヶ谷市 |
朝霞市 | 志木市 | 和光市 |
新座市 | 桶川市 | 久喜市 |
北本市 | 八潮市 | 富士見市 |
上福岡市 | 三郷市 | 蓮田市 |
坂戸市 | 幸手市 | 鶴ヶ島市 |
日高市 | 吉川市 | 伊那市 |
吹上町 | 大井町 | 三芳町 |
川島町 | 吉見町 | 上里町 |
大里町 | 岡部町 | 川本町 |
花園町 | 騎西町 | 南河原村 |
川里町 | 宮代町 | 白岡町 |
菖蒲町 | 栗橋町 | 鷺宮町 |
杉戸町 | 松代町 | 庄和町 |
神奈川県 | ||
横浜市 | 川崎市 | 横須賀市 |
平塚市 | 鎌倉市 | 藤沢市 |
小田原市 | 茅ヶ崎市 | 逗子市 |
相模原市 | 三浦市 | 秦野市 |
厚木市 | 大和市 | 伊勢原市 |
海老名市 | 座間市 | 綾瀬市 |
葉山町 | 寒川町 | 大磯町 |
二宮町 | 中井町 | 大井町 |
愛川町 | 城山町 | – |
千葉県 | ||
千葉市 | 市川市 | 船橋市 |
松戸市 | 野田市 | 佐倉市 |
習志野市 | 柏市 | 市原市 |
流山市 | 八千代市 | 我孫子市 |
鎌ヶ谷市 | 浦安市 | 四街道市 |
白井市 | – | – |
愛知県 | ||
名古屋市 | 豊橋市 | 岡崎市 |
一宮市 | 瀬戸市 | 半田市 |
春日井市 | 豊川市 | 津島市 |
碧南市 | 刈谷市 | 豊田市 (旧藤岡町 旧小原村 旧足助村 旧下山村 旧旭町及び旧稲武町を除く) |
安城市 | 西尾市 | 蒲郡市 |
犬山市 | 常滑市 | 江南市 |
小牧市 | 稲沢市 (旧祖父江町を除く) |
東海市 |
大府市 | 知多市 | 知立市 |
尾張旭市 | 高浜市 | 岩倉市 |
豊明市 | 日進市 | 愛西市 (旧立田村・旧八開村を除く) |
東郷町 | 長久手町 | 西枇杷島町 |
豊山町 | 師勝町 | 西春町 |
春日町 | 清洲町 | 新川町 |
大口町 | 扶桑町 | 七宝町 |
美和町 | 甚目寺町 | 大治町 |
蟹江町 | 十四山村 | 飛鳥村 |
弥富村 | 阿久比町 | 東浦町 |
武豊町 | 幸田町 | 三好町 |
音羽町 | 小坂井町 | 御津町 |
三重県 | ||
四日市市 | 桑名市 (旧多度町を除く) |
鈴鹿市 |
木曽岬町 | 朝日町 | 川越町 |
大阪府 | ||
大阪市 | 堺市 | 岸和田市 |
豊中市 | 池田市 | 吹田市 |
泉大津市 | 高槻市 | 貝塚市 |
守口市 | 枚方市 | 茨木市 |
八尾市 | 泉佐野市 | 富田林市 |
寝屋川市 | 河内長野市 | 松原市 |
大東市 | 和泉市 | 箕面市 |
柏原市 | 羽曳野市 | 門真市 |
摂津市 | 高石市 | 藤井寺市 |
東大阪市 | 泉南市 | 四條畷市 |
交野市 | 大阪狭山市 | 阪南市 |
島本町 | 忠岡町 | 熊取町 |
田尻町 | – | – |
兵庫県 | ||
神戸市 | 姫路市 | 尼崎市 |
明石市 | 西宮市 | 芦屋市 |
伊丹市 | 加古川市 | 宝塚市 |
高砂市 | 川西市 | 播磨町 |
太子町 | – | – |
大阪府では2022年3月31日をもって流入車規制は廃止
大阪府では「大阪府生活環境の保全等に関する条例第40条」が2022年に改正され、流入車規制は廃止になり、乗り入れが可能になりました。
条例が改正された経緯は、2009年から流入車規制を実施した結果、排出ガス基準を満たさない車両の割合が17%から0.3%に低下し、大気環境基準を達成したことが挙げられます。
また2019年以降は電動車普及などによる窒素酸化物削減効果も確認されたため、規制廃止が決定されました。
ただし、あくまで廃止されたのは流入車規制です。自動車NOx・PM法に基づく対策は継続しているので、注意は必要です。
②規制ナンバー
ディーゼル規制対象となる車両は、燃料が軽油のディーゼル車です。この規制では、車種ごとに設定された「規制ナンバー」が重要な判断基準となります。車検証に記載されたナンバーや燃料の種類を確認することで、自車が規制に該当するかどうかを判断できます。
具体的な規制ナンバーは下記になります。
種類 | 分類番号 | |
普通トラック | 1ナンバー | 10~19、100~199 |
小型トラック | 4ナンバー | 40~49、400~499 |
6ナンバー | 60~69、600~699 | |
大型バス (定員30人以上) |
2ナンバー | 20~29、200~299 |
6ナンバー | 60~69、600~699 | |
マイクロバス (定員11人以上30人未満) |
2ナンバー | 20~29、200~299 |
5ナンバー | 50~59、500~599 | |
6ナンバー | 60~69、600~699 | |
7ナンバー | 70~79、700~799 | |
特種自動車 | 8ナンバー | 80~89、800~899 |
ディーゼル乗用車 (定員11人未満) |
3ナンバー | 30~39、300~399 |
5ナンバー | 50~59、500~599 | |
7ナンバー | 70~79、700~799 |
③規制区分
ディーゼル規制の対象車両は、「車両総重量」と「排出基準への適合状況」に基づいて区分されています。この区分により、規制対象となるかどうかが判断されます。
具体的な規制区分は下記になります。
車両総重量 | 排出基準に適合しているか |
1.7t~3.5t | 平成17年の規制に適合していれば問題なし |
3.5t~ | 平成10年の規制に適合していれば問題なし |
車検を通すための対策は?
ディーゼル規制地域で規制対象だった場合は、車検が通りません。そのためディーゼル自動車を車検を通すための対策が必要です。
具体的な対策について解説していきます。
規制解除装置を取り付ける
ディーゼル規制の対象者を車検に通すには「規制解除装置」をつけることで対策できます。
規制解除装置には「DPF」と「酸化触媒」の2つがあります。
DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)
DPF(Diesel Particulate Filter)は、「ディーゼル微粒子捕集フィルター」の略称で、ディーゼルエンジン車両に取り付ける排気ガス浄化装置です。
この装置は、排気ガス中に含まれる有害な粒子状物質(PM)を捕集し、一定温度で燃焼させることで大気中への排出を減少させる仕組みを持っています。
ディーゼル規制の排出基準をクリアするために広く利用されており、多くの自治体で規制解除装置として認められています。
DPFは、比較的大型であるため設置スペースが必要で、車両の構造に適した取り付けが求められます。また、スムーズな動作を維持するためには、定期的な清掃や交換といったメンテナンスが必要不可欠です。
フィルターには耐熱性に優れた素材が使われており、一般的にはセラミックやステンレス製が採用されています。
設置費用は、50万~100万円ほどかかりますが、規制対応のための有効な手段の一つです。
酸化触媒
酸化触媒は、白金やパラジウムなどの触媒を利用して酸化反応させることで排気ガス中の有害物質を削減する装置です。この仕組みにより、一酸化炭素(CO)や炭化水素(HC)を効果的に低減すると同時に、ディーゼル車特有の排気ガス臭を軽減する効果もあります。
粒子状物質(PM)の削減能力ではDPFに劣りますが、微小粒子を含むSOF(可溶性有機分画)を減らす点で優れています。
酸化触媒は、比較的小型の装置であるため、車両のマフラースペースに簡単に装着できます。また、定期的な清掃や交換といったメンテナンスが不要で、取り付け後の管理が手軽であることが大きなメリットです。
この手軽さから、多くのディーゼル車ユーザーにとって規制対応の選択肢として人気があります。
さらに、酸化触媒の取り付け費用は、20万~40万円ほどとDPFよりもコストを抑えられる場合が多く、ディーゼル規制対策として費用対効果の高い装置として注目されています。
車の買い換えも対策の一つ
ディーゼル規制に該当する車両を所有している場合、車検を通すための有効な対策として「車の買い換え」が挙げられます。規制に対応する装置を取り付ける方法もありますが、高額な費用がかかることが多いため、これを機に規制適合車や低公害車への買い換えを検討するのも一つの選択肢です。
特にディーゼル規制の対象となるトラックやバスは、日本国内での利用が難しくなったとしても、海外市場では高い需要があります。日本車は高い品質と耐久性で知られ、中古市場でもその価値が評価されています。動作に問題がない車両はもちろん、低年式や一部に不具合がある場合でも、部品取り用として海外で再利用されることが多いです。
さらに、新しい車両への買い換えは、燃費性能の向上や環境負荷の軽減といったメリットもあります。買い換えを検討する際は、買取業者に相談し、適切な価格で売却することで、新車購入の資金を賄うことも可能です。規制に対応した車両へ切り替えることで、長期的なコスト削減と安心感を得られるでしょう。
トラックの売却&購入ならトラック流通センターへ!
ディーゼル規制車を売却し、新しくトラックを購入するならトラック流通センターがおすすめです。
特に下取りとしてトラックを売却する際は高額査定になることも多く、お客様から満足度の高い価格で買取りしてくれると評判です。
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ディーゼル車規制条例に違反したら罰則や罰金はある?
ディーゼル規制に違反した場合、厳しい罰則が科せられる可能性があります。規制対象車両に対応せずに運行した場合、まず「運行禁止命令」が下されることがあります。この命令に従わなかった場合、最大で50万円以下の罰金が科せられることがあります。また、取締りの一環として、特定の地域で自動車公害監察員(通称:自動車Gメン)による路上検査や、監視カメラによる違反車両の識別もおこなわれているため、違反は見逃されにくい状況です。
さらに、改善命令を無視し続けた場合、荷主の氏名が公表されるほか、事業継続に影響を与える重大なペナルティが課せられる可能性もあります。これらの措置は、特に、運送業などの業務でディーゼル車を使用している企業にとって、深刻な影響を及ぼしかねません。
違反を未然に防ぐためには、規制内容を十分に理解し、該当車両が対象になっているか確認することが重要です。また、新車登録された初度登録日から起算し、猶予期間が求められているため、猶予期間内に規制対応の装置を取り付けるなどの対策をとるか、もしくは規制に適合した車両への買い換えを検討することで、罰則を回避し安心して運行を続けられます。
まとめ
ディーゼル規制条例は、大気環境の改善と健康被害の防止を目的とした重要な規制です。特に、窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)を多く排出する旧式ディーゼル車に対して厳格な基準が設けられています。規制地域や規制ナンバー、車両区分に基づき、対象となる車両は適切な対策を講じなければなりません。
規制地域で車両を運行する場合、事前に条例の内容を十分に確認し、必要に応じてDPFや酸化触媒、といった規制解除装置を取り付けるなどの対策をおこなうことが不可欠です。これらの対応は、車検の通過だけでなく、持続可能な社会の実現にも寄与します。
規制内容は地域や時期によって異なるため、常に最新の情報を確認し、環境負荷の軽減に向けた取り組みをおこないましょう。
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- ディーゼル車規制条例は、主に大気環境の改善と公害抑制を目的としており、排出ガス中の窒素酸化物(NOx)や粒子状物質(PM)削減を目指している
- ディーゼル車規制は東京都や神奈川県などの首都圏を中心に広がり、基準を満たさないディーゼル車の運行や通行が制限される
- 規制対象車両には「DPF(ディーゼル微粒子捕集フィルター)」や「酸化触媒」などの規制解除装置を取り付ける必要がある
- 規制に違反した車両は、運行停止命令の罰則や罰金の対象となる場合があり、違反を繰り返すとさらに厳しい措置が取られることもある
- 規制は段階的に厳しくなり、特に環境負荷の少ない電気自動車(EV)や水素燃料車への転換が加速する中で、ディーゼル車の規制はさらに強化される可能性が高い