クレーン付きトラックの自主点検と定期点検の頻度・内容・費用は?
汎用性の高さから広く普及するクレーン付きトラックですが、新車価格が高額となるため中古トラック市場で活発に取引されるボディタイプの1つに挙げられます。中古トラック市場で人気のメーカーやモデル、中古車両購入時に確認しておきたいチェックポイント、購入後に必要となる自主点検・定期点検の内容や頻度を費用などと併せて紹介します。
ベース車両の車両区分によってクレーンの能力が異なるクレーン付きトラック
クレーン付きトラックの能力はブーム部分の伸縮距離で決まる作業可能範囲とクレーン部の吊り下げ荷重で決定されます。作業可能範囲が広く吊り下げ荷重の大きなクレーンほど高性能だと考えられますが、クレーン付きトラックはアウトリガーを支点にトラック本体の重量が吊り下げ荷重より重い状態でのみ作業可能なため車両総重量はクレーンの能力に大きく影響します。
コンパクトな小型トラックで何トンもの荷物を吊り上げることは不可能ですので、中型や大型など車両総重量が重いほどクレーン付きトラックの能力が高くなると言えます。またクレーン自体に重量があるため、車両総重量が小さな車両では積載量に余裕がなくなり荷役性が損なわれるので、ある程度の能力のクレーンを搭載するためには中型以上の車両区分が必要となります。
クレーン付きトラックのクレーンは点検が義務付けられている
安全な作業の実現のためにクレーン付きトラックのクレーンには、作業前点検・月次点検・年次点検の3つの点検が労働安全衛生法のクレーン等安全規則で義務付けられています。
作業前点検のポイント
・巻過防止・過負荷警報・転倒防止やその他の警報装置の動作確認
・手動レバーやリモコンの操舵で正確な作動があり、操作レバーが中立位置に自動で戻るかの確認
・リモコン本体や各スイッチ・操作レバーに変形や破損、ゴムブーツの劣化がないかの確認
月次点検のポイント
・作業前点検の内容・ワイヤーロープとフックの損傷有無の確認
・配線と配線コネクタの接続状態の確認
・各部のオイル漏れの確認
年次点検のポイント
・作業前点検と月次点検の内容確認
・荷重試験の実施
自主点検で以上を確認した場合は補修を行う必要があります。年次点検は特定自主点検とも呼ばれ自主検査資格講習修了者が行う必要があります。
特定自主点検を有資格者の所属する整備工場に依頼する場合は次に挙げる書類が必要となります。
・直近1~3年分の月次・年次点検記録
・クレーン設置報告書
・クレーン検査証
・検査に立ち会えない場合は委任状
特定自主点検の費用は20,000円が目安となり、自主点検の記録は3年間の保存義務があるので大切に保管してください。
中古トラック販売所で行うべきクレーン付きトラックのチェックポイントは?
新車価格が高額なクレーン付きトラックを、コストを抑えて導入するのには中古トラック販売店の利用が効果的です。中古のクレーン付きトラック購入時のチェックポイントを紹介します。
車両本体のチェックポイント
クレーン付き車両を選択する際にはどうしてもクレーンに注意が向いてしまいますが、既に紹介したとおりクレーンの能力を左右するのはトラックの車両総重量やクレーンの動力源となるトラックのエンジン出力となります。
クレーン付きトラックのベース車両に用いられているトラック本体のチェックポイントは次のとおりです。
ベース車両の車両区分や年式
車両区部区分によってトラックに搭載されるクレーン能力が異なるので、車両総重量を含めた車両区分の確認は重要です。車両区分は維持費に直結する車検費用や自動車諸税、高速料金にも影響しますし、必要となる運転資格も異なります。
また、近年トラックの燃費性能が向上していることから高年式車両は走行やクレーン操縦時の燃料消費量を押さえることが可能です、車両維持費の中で大きなウェイトを占める燃料費を考慮すると高年式な中古クレーン付きトラックの選択がおすすめです。
各部のオイル漏れや滲み
エンジンやトランスミッション部分からのオイル漏れや滲みは、中古車両購入時にチェックしておきたいポイントです。オイル漏れがある車両は車検を通過できないこともあるので注意して下さい。また荷台に搭載するクレーン部分でもオイル漏れの有無を確認しておく必要があります。
PTOの起動状態
停車状態で作業を行うクレーン付きトラックは、エンジン出力をトランスミッションサイドPTOでクレーンの動力に変換して稼働します。PTOの起動切断を繰り返し確実にPTOが起動し停止することを確認する必要があります。
クレーン本体のチェックポイント
中古クレーン付きトラックの購入時にはもちろん実際にクレーンを動かしながらクレーンの作動確認を行う必要があります。
遠隔操作装置の有無
クレーン付きトラックはトラックへの搭載部分にレバー式の操作装置が装着されていますが、リモコンで遠隔操作できるものも多く存在します。本体付属操作盤からでは吊り荷の状態を遠くから確認しながらの操作になりますが、リモコンがあれば吊り荷の近くから確認しながら操作できるので便利です。
アウトリガーの状態
クレーン付きトラックはクレーンにかかる荷重をアウトリガーで支えて稼働しますので、アウトリガーは非常に重要なパーツだと言えます。腐食や破損がなく伸縮し、クレーンの荷重を確実に支えられる状態であることを確認します。
ブーム長による作業範囲
クレーン付きトラックの作業範囲はブームの長さで決定しますので、ブーム長は長い方が作業効率が高くなります。ブーム長の長さが使用用途に合っているかどうかを確認します。
吊り上げ荷重
クレーン操作に必要となる資格や免許はクレーンの吊り下げ荷重によって異なりますので、中古クレーン付きトラック購入時にはフックに記載されている吊り下げ荷重の確認も必要です。
吊り下げ荷重による必要資格の違いは次のとおりです。
・吊り下げ荷重1トン未満:小型移動式クレーン運転の業務に係る特別教育修了者
・吊り下げ荷重1~5トン未満:小型移動式クレーン運転講習修了者
・吊り下げ荷重5トン以上:移動式クレーン運転士免許
ブーム格納方向
クレーン付きトラックはクレーンのブーム収納方向によって最大積載重量が変化するので、走行時のブーム収納方向が車両登録時に決定されブームにステッカーで表示されています。積み荷の状況でブーム収納方向を変更して公道を走行すると道路交通法違反として取り締まりの対象となるので、クレーン付きトラックの中古車両購入前にブームの格納方向も確認しておきましょう。
中古トラック市場で人気の高いクレーン付きトラックのメーカーとモデルは?
クレーン付きトラックを導入することで仕事の受注幅を大きく広げられることが期待できますが、新車では導入コストが高くなり、導入を躊躇する方もいるのではないでしょうか?
しかし中古トラック販売店を利用することで、導入コストを抑えながら効果的にクレーン付きトラックの導入が行えます。中古トラック市場で人気のクレーン付きトラックのメーカーとモデルを紹介します。
日野自動車
商用車両専門メーカーとして小型から大型まであらゆる車両区分を生産し多くのドライバーから高い支持を得ているのが日野自動車です。豊富なボディタイプのバリエーションにはクレーン付きトラックも含まれています。
レンジャー
車両総重量8~20トンクラスの中型トラックとして1964年から55年以上生産され続けているのがレンジャーです。現行モデルは2015年発売の6代目となりクレーン付きトラックも用意されています。
いすゞ自動車
ディーゼルのいすゞの異名を持ち、2002年から商用車両専門メーカーとしてトラックの製造に専念しているのがいすゞ自動車です。多くの車両区分に用意された幅広いラインナップにはクレーン付きトラックの用意もあります。
エルフ
いすゞの小型・中型トラックシリーズとして1959年から60年以上生産され続けているのがエルフです。6代目となる2006年発売の現行モデルにもクレーン付きトラックがラインナップされています。
三菱ふそう
2003年に三菱自動車から分離独立し商用車両専門メーカーとしてトラックやバスの生産を行うのが三菱ふそうトラック・バス株式会社です。三菱ふそうが引き継ぐ1917年からトラックの生産を続ける三菱の歴史にはクレーン付きトラックも含まれています。
キャンター
三菱の小型トラックシリーズとして1963年から50年以上生産が続いているのがキャンターです。低燃費に定評のある力強いエンジンを搭載したクレーン付きトラックは中古トラック市場でも高く評価されています。
まとめ
新車価格が高いクレーン付きトラックの効果的な購入方法として中古トラック販売店の利用がおすすめですが、購入時にはクレーン付きトラックならではのチェックポイントがあり、購入後にも定期的な点検を受ける必要があります。
購入の際のチェックポイントと購入後の定期点検のポイントは次のとおりです。
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- クレーン能力に影響するベース車両の車両総重量の確認
- クレーン操作の資格や免許に影響する吊り下げ荷重の確認
- クレーンには作業前・月次・年次の点検が義務付けられている