トラクタヘッドの特徴や中古トラック市場での人気メーカー、中古車両購入時のチェックポイントを紹介!
大型トラックも多くの積載物を搬送できますが、さらに高い輸送力をもつトレーラーが物流インフラの中心に君臨していると言えるでしょう。
しかしトレーラーは自走能力を持たないため牽引車両に牽引されない限り運行できません。トレーラー運行に欠かせないのが牽引車両トラクタですが、車両価格が非常に高価であるため中古トラック販売店を利用したトラクタヘッド導入が注目されています。トラクタヘッドの特徴や中古トラック市場で人気のトラクタヘッドのメーカーやモデル、中古車両購入時のチェックポイントなどを紹介します。
国内の物流を支えるトレーラーを牽引運行するトラクタヘッドとは
既にふれたとおり、トレーラーは自走機能が搭載されておらず、牽引車両であるトラクタヘッドに牽引されて初めて運行することが可能となります。トラクタと聞くと農耕車両をイメージする方がいるかもしれませんが、被牽引車を意味するTrailer(トレーラー)に対する牽引車Tractor(トラクター)から名付けられたもので、農耕車両も牽引車両であることから同じ名前で呼ばれています。
トラクタヘッドとトレーラーは単純に牽引部分で連結するだけではなく、連結後トレーラーのブレーキ機能や保安部品をトラクタヘッドと同期するためのブレーキラインや電気コネクタが搭載されています。
ブレーキ操作を行うとトラクタヘッド・トレーラー双方のブレーキが作動し、ブレーキランプ・ウィンカー・バックライトなどの保安部品の同期が完了した状態でトラクタヘッドとトレーラーの連結が完了します。
トラクタヘッドは2種類に分類される
牽引車両のトラクタヘッドは牽引できるトレーラーの形状と牽引方法でセミトラクタとフルトラクタの2つに分類されます。
現在物流業務に用いられているトレーラーはセミトレーラーが多くセミトラクタが一般的ですが、2019年にダブル連結トラックの全長に対する規制緩和が行われ、今後はフルトレーラーを牽引するフルトラクタに対するニーズの高まりが予想されます。
セミトラクタ
セミトラクタは後輪のみ装着し、前部の補助足でトレーラー前部を支えなければ自立できないセミトレーラーの牽引用トラクタヘッドです。車両後部に荷台はなくセミトレーラーとの連結装置のみが搭載され、トレーラー前部を背負うような形で連結・牽引します。
フルトラクタ
フルトラクタは前輪と後輪を装着し、自走機能は持たないものの自立できるトレーラーを牽引するためのトラクタヘッドです。自走機能を持たない貨車が列車に牽引され走行するのを想像するとイメージしやすいのではないでしょうか?
トラクタヘッドが牽引できるトレーラーのサイズや最大積載量は?
荷役性や運送効率の高い大型トレーラーに対する物流業界からのニーズは、年を追うごとに高くなっていると言えます。しかしトレーラーは道路交通法で定める最大全長や最大積載量の範囲内で運行することが求められるため、トラクタヘッドが牽引可能なトレーラーのサイズや最大積載量には制限がかけられていると言えるでしょう。
トレーラーの最大全長に関しては2017年と2019年に行われた道路法改正で規制が緩和されているので次項で詳しく紹介します。
運送業務に広く用いられているセミトレーラーの最大積載量は1軸で約16トン・2軸で約20トン・3軸で約22トンとなります。しかし単体物ではない鋼材や材木などの積み荷のバラ積みに対しては「バラ積み緩和」が適用され、車軸数を増やせば車両総重量36トンまで許可されます。
車両総重量36トンであれば最大25~28トンまで積載が可能となります。また単体の積み荷の場合単体物許可を取れば走行ルートが限定されるものの、軸重10トンの規制がなくなり最大積載重量の上限がなくなりますが、トラクタヘッドの最大牽引能力(第5輪荷重)を超えると許可されませんので注意して下さい。
2019年の規制緩和でフルトレーラーの全長が25mまで可能となった
以前はセミトレーラーの最大全長は17m、フルトレーラーの最大全長は21mまでに制限されていましたがセミトレーラーは2015年、フルトレーラーは2019年の法改正で規制緩和が行われました。
改正後の道路交通法ではトレーラー連結時の長さをセミトレーラーは最大全長18m、フルトレーラーは最大全長25mまでと定めており、フルトレーラーはダブル連結トラックとして最大全長25mまでの連結が可能となっています。
しかし、高速道路はセミトレーラー16.5m・フルトレーラー18m、一般道はセミトレーラー・フルトレーラー共に12mまでに最大全長が規制されているため、運行には従来通り特殊車両の通行許可が必要となります。
一般的なトレーラーであるセミトレーラーは全長16.5mのものが多いと言えますが、今後の規制緩和次第ではセミトレーラーやフルトレーラーの全長に変化が見られることが予想されます。
またダブル連結トラックは高い運行効率が期待できるため、一般的なトレーラーが現在のセミトレーラーからフルトレーラーにシフトすることも考えられ、トラクタヘッドもフルトラクタが主流となる可能性も考えられます。
中古トラクタヘッド購入時のチェックポイントとは
積み荷を積載した巨大なトレーラーを牽引するため、トラクタヘッドには一般的なトラックよりもパワフルであることが求められ、頑丈な連結機能を搭載する必要があることなどから車両価格が高値となってしまします。
またトラクタヘッドが特殊車両であることなどから納車までに時間がかかるため、トラクタヘッドの購入は納車期間が短く新車よりもお買い得な中古トラック販売店で購入することをおすすめします。
ただし中古トラクタヘッドは過酷な環境で使用されてきたものが多いため、購入前の車両コンディションチェックは慎重に行いたいものです。
トラクタヘッドの牽引能力は第5輪荷重で確認
既に紹介したように一般的なトラクタヘッドであるセミトラクタは、車両後部にトレーラーの前部を背負うような形で連結し牽引します。連結部分はカプラーとキングピンという特殊構造のパーツで構成され強力な連結力を実現します。
カプラーとキングピンは馬車の連結部の呼称である「Fifth wheel coupling(フィフス・ホイール・カップリング)」を訳した第5輪と呼ばれ、トラクタヘッドの牽引能力は第5輪荷重で表されます。
一般的なトラックは荷台に積載できる最大積載量が車検証に表記されていますが、牽引能力が重要となるトラクタヘッドは車検証の最大積載量の欄に「最大積載量 ○○kg(△△kg)」の表記があります。
○○kgはトラクタヘッドが牽引できる最大重量、△△kgは牽引できる最大重量を積んだトレーラーを牽引する際に第5輪にかかる重量を表しています。トラクタヘッドの牽引能力を表す第5輪荷重はトレーラーとの連結部であるカプラーとキングピンの引っ張り強度で表されます。
中古トラクタヘッド購入時には車検証に表記される、第5輪荷重を必ずチェックする必要がありますね。
中古トラック市場で人気の高いトラクタヘッドのメーカーやモデルは?
国内の物流業界で活用されるトレーラーは大型のものが一般的であることから、中古トラック市場で取り扱われるトラクタヘッドは大型クラスのものとなります。各メーカーの最高峰モデルが投入されるトラクタヘッド市場で人気の高いメーカー・モデルを紹介します。
日野・プロフィア
1981年に発売されたスーパードルフィンのフルモデルチェンジが行われ、モデル名にプロフィアが加えられた1992年リリースの大型トラックシリーズが日野・プロフィアです。大型トラック長距離運行に用いられることから居住性を重視した設計となっており、トラクタヘッド市場の中でも人気の高いモデルだと言えるでしょう。
いすゞ・ギガ
1947年に幕を上げたいすゞの大型トラックシリーズの後継モデルとして、1994年にリリースされたのがギガです。現行モデルの2代目ギガはキャブ骨格や構成部品の多くをフォワードやエルフと共通化し、ヘッドライトとミラー類は初代後期モデルのものを継続使用していますが、トラクタヘッドの定番モデルとして高く評価されるモデルです。
日産UD・クオン
日産UDの前身となる日産ディーゼル工業が2004年にリリースした大型トラックシリーズがクオンです。大型クラスでは初となるSRSニーエアバッグ&ニープロテクタや総輪ディスクブレーキ化が採用され高い安全性能がトラクタヘッド市場でも高い人気のモデルです。
まとめ
法改正が推し進められトラクタヘッドやトレーラーを取り巻く環境は、大きく変化しつつあると言えます。しかし荷役性や運送効率の高い大型トレーラーに対するニーズは高まり続けると考えられるため、トラクタヘッド導入はビジネスのフィールドを広げるチャンスに繋がると言えるでしょう。
特殊車両であるトラクタヘッドは車両価格が高価なことや納車までに時間がかかる傾向にあることから中古トラック販売店の利用がおすすめですが、中古トラクタヘッド購入の際には次の3つのポイントに注意するべきだと考えられます。
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- 現在主流のセミトラクタが牽引するトレーラーは16.5mが一般的
- 2019年の法改正でフルトレーラーの最大全長が25mに緩和された
- セミトラクタからフルトラクタに牽引方式が変化する可能性がある