タンク車の購入を考えている人必見! タンク車の概要と種類・危険物を移送する場合の遵守事項
タンク車は一般的なトラックと違い特殊車両にあたります。
会社でタンク車の購入が必要であれば、事前にタンク車の概要や種類などを理解しておくべきでしょう。
そこで記事では、タンク車の概要や構造・材質・種類・危険物を移送する際の遵守事項等を解説します。
タンク車とは
タンク車とは、荷台にタンク(油槽)が付いている貨物のことです。荷台のタンクには、石油類(ガソリンや灯油など)や科学薬品・劇薬類・飲料水・食品等(ハチミツや牛乳など)を入れることができます。
また、積み荷の種類によっては「気体」「液体」「粉体」など形状を変えて移送することも可能。粉体はセメントが主な移送物となります。
その他、水槽付の消防車も分類上タンク車と呼ばれ、そのうち、危険物を移送するタンク車を「移動タンク貯蔵所」と呼びます。
タンク車とタンクローリーの違い
タンク車に似た言葉に「タンクローリー」があります。
一見すると別の車両を意味しているようですが、タンクローリーは荷台にタンク(油槽)が付いているトラックのことを意味します。
実は、タンク車は貨物全体を指す言葉であり、トラックなどの自動車だけでなく貨物列車も含みます。つまり、タンク付きのトラックを探している場合は「タンクローリーを探している」のほうが適しています。
タンク車(タンクローリー)の構造や材質
まず構造ですが、タンクの厚さは消防法によって鋼板で3.2mm以上の厚さに設計しなければならないことが義務付けられています。
そしてタンク内の圧力は、圧力タンクの場合は最大常用圧力の1.5倍、その他のタンクの場合は70kPa(キロパスカル)の圧力で10分間おこなわれる水圧試験に合格しなければなりません。
高圧ガスを積載しているタンク車は、可燃ガスの場合が最大18,000リットル未満まで、毒ガス(アンモニアを除く)の場合が最大8,000リットル未満までしか積載できません。
タンク車の素材は、高圧に対する耐久力に優れ、積載物の漏えいや化学反応を防ぐことができるという理由から、高張力鋼や溶接組み立ての普通鋼が用いられるのが一般的です。その他には、チタンやアルミニウム・FRP・ステンレスなどの素材が用いられます。
タンク車(タンクローリー)の種類
タンク車には、いくつかの種類があります。
用途別にどのようなタンク車があるのか、以下にまとめてみました。
燃料タンク車 | 消防タンク車 | 給水タンク車 | 集乳タンク車 | 粉粒体運搬車 | 汚泥吸引車 |
ガソリン等の揮発油を運搬する 専用のタンク車 |
ガソリン等の揮発油を運搬する >専用のタンク車 |
給水を必要としている場所に非常用飲料水などを運搬できるタンク車。 病院や福祉施設等で受水槽がない場所などに水を届けられる |
酪農家で生産された牛乳を運ぶためのタンク車。 主に、牛乳を冷却するためのクーラーステーションや牛乳工場まで運ばれる |
粉粒体運搬車(ふんりゅうたい うんぱんしゃ)は、粉粒体の運搬に用いられるタンク車。 粉粒体とは粉や粒状の物質のことで、『砂』や『セメント』『小麦粉』『コロイド』『磁性流体』などが該当する。 別称として『バルク車』と呼ばれる場合もある |
汚泥や廃水処理の際に吸引し運搬するためのタンク車。 タンク内を減圧させ、大気圧との差圧を利用して汚泥水や産業廃水を吸入ホースからタンクに吸い込む |
タンク車(タンクローリー)で危険物を移送する場合は?
タンク車で積載する貨物のなかには「危険物」に該当するものがあります。危険物を移送する場合は、適切に順守しなければならない項目が多くあります。なお、消防法では「移送」と「運搬」は意味が明確に異なります。
タンク車(タンクローリー)で危険物を運ぶことを「移送」と呼び、ドラム缶などの容器に入れて危険物を運ぶことを「運搬」と呼びます。移送と運搬では、適用される法令の規則も異なりますので、以降説明する内容は「移送」に関する順守事項であることを抑えておいてください。
必要な資格と届出
タンク車で危険物を移送する際は、危険物を取り扱うことができる資格を持った「危険物取扱者」を常務させる必要があります。加えて、「危険物取扱者免状」を車内に携帯させておく義務があります。ただし、タンク車を運転する人が「危険物取扱者免状」を保有している場合は、運転者1人のみで運転ができます。
危険物の種類
危険物の定義は、危険物の種類と数量によって定められています。移送する種類ごとに数量が異なりますので、注意して順守しましょう。なお、指定数量が少ないほど危険度が高いです。
類 | 品名または性質 | 数量 |
第一類 | 第一種酸化性固体 | 50 |
第二種酸化性固体 | 300 | |
第三種酸化性固体 | 1,000 | |
第二類 |
硫化りん・赤りん | 100 |
硫黄 | ||
第一種可燃性固体 | ||
鉄粉 | 500 | |
第二種可燃性固体 | ||
引火性固体 | 1,000 | |
第三類 |
カリウム・ナトリウム | 10 |
アルキルアルミニウム | ||
アルキルリチウム | ||
第一種自然発火性物質及び禁水性物質 | ||
黄りん | 20 | |
第二種自然発火性物質及び禁水性物質 | 50 | |
第三種自然発火性物質び禁水性物質 | 300 | |
第四類 |
特殊引火物 | 50 |
第一石油類(非水溶性) | 200 | |
第一石油類(水溶性) | 400 | |
アルコール類 | ||
第二石油類(非水溶性) | 1000 | |
第二石油類(水溶性) | 2,000 | |
第三石油類(非水溶性) | ||
第三石油類(水溶性) | 4,000 | |
第四石油類 | 6,0000 | |
動植物油類 | 10,000 | |
第五類 | 第一種自己反応性物質 | 10 |
第二種自己反応性物質 | 100 | |
第六類 | 酸化性液体 | 300 |
※ 引用元:全日本トラック協会「危険物輸送の基本」
※ 第四類は数量単位がリットル。その他の類はキログラム
移送時の貯蔵基準
タンク車で危険物を移送する際に、以下の貯蔵基準を守る必要があります。
1.タンクには、貯蔵し、または取り扱う危険物の種類、品名及び最大数量を表示すること。 2.タンクおよびその安全装置その他の附属の配管は、さけめ、結合不良、極端な変形、注入ホースの切損等による漏れが起こらないようにするとともに、タンクの底弁は、使用時以外は完全に閉鎖しておくこと。 3.被けん引自動車に固定されたタンクに危険物を貯蔵するときは、被けん引自動車にけん引自動車を結合しておくこと。 4.タンクコンテナ以外は、危険物を貯蔵した状態でタンクの積替えを行わないこと。 5.タンクローリーには、完成検査済証、定期点検記録、譲渡引渡し届出書、品名・数量または指定数量の倍数の変更の届出書を備え付けること。 6.アルキルアルミニウム、アルキルリチウム等の危険物を輸送する場合は、タンクローリーに緊急時における連絡先その他王宮措置に関し必要な事項を記載した書類(イエローカード)及び総務省令で定める用具(防護服、ゴム手袋、弁等の締付け工具、携帯用拡声器)を備え付けておくこと。 |
※ 引用元:全日本トラック協会「危険物輸送の基本」
※ 原文ママ
取扱(荷扱)時の遵守事項
タンク車で危険物を取り扱う際には、以下の遵守事項を守る必要があります。
1.タンクローリーから危険物を貯蔵または取り扱うタンクに液体の危険物を注入するときは、タンクの注入口にタンクローリーの注入ホースを緊結すること。 2.タンクローリーから液体の危険物を容器に詰め替えないこと。 3.静電気による災害が発生するおそれのある液体の危険物(ガソリンやベンゼン等)を、タンクローリーに出し入れするときは、タンクローリーを接地すること。また、タンクローリーの上部から注入するときは、注入菅を用いるとともに、注入菅の先端をタンクローリーの底部につけること。 4.引火点が40℃未満の危険物を、タンクローリーから貯蔵タンク等に注入するときは、エンジンを停止させること。ガソリンや貯蔵していたタンクローリーに灯油や軽油を注入するときや、その逆の行為を行うときは、静電気等による災害を防止するための措置を講ずること 5. ガソリンや貯蔵していたタンクローリーに灯油や軽油を注入するときや、その逆の行為を行うときは、静電気等による災害を防止するための措置を講ずること。 |
※ 引用元:全日本トラック協会「危険物輸送の基本」
※ 原文ママ
移送時の遵守事項
タンク車で危険物を移送する際には、以下の遵守事項を守る必要があります。
1.移送の開始時に、タンクローリーの底弁その他の弁、マンホール及び注入口のふた、消化器等の点検を十分に行なうこと。 2.1人のドライバーの連続運転時間が4時間を超える場合や、1日当たり9時間を超える場合は、2名以上の運転要員を確保すること(動植物油類等の移送は除く)。 3.タンクローリーを休憩、故障等のため一時停止させるときは、安全な場所を選ぶこと。 4.タンクローリーから危険物が著しく洩れるなどの災害が発生するおそれのある場合には、災害を防止するため応急措置を講じるとともに、もよりの消防機関その他の関係機関に通報すること。 5.アルキルアルミニウム、アルキルリチウムなどの危険物の輸送をする場合には、輸送の経路その他必要な事項を記載した書面を関係消防機関に送付するとともに、当該書面の写しを携帯し、その内容に従うこと。 |
※ 引用元:全日本トラック協会「危険物輸送の基本」
※ 原文ママ
タンク車の購入は中古がおすすめ?
特殊車両に該当するタンク車は、製造から販売までにトラックメーカーと架装メーカーが関わります。
新車購入のニーズを受けて、オーダーメイドに近いかたちで製造されるため、購入までに時間がかかり費用も高くなりがちです。
一方、タンク車は中古車販売市場にも多く流通しています。
そのため、業務でタンク車が必要になったとき、新車を時間と費用をかけて購入する選択肢ではなく、中古車販売サービスで効率よく購入することも検討する価値があります。
弊社サービスの「トラック流通センター」でも、中古のタンク車を取り扱っています。以下のリンク先より、現在取り扱っている中古タンク車を確認できますので、ぜひチェックされてみてください。
〈『トラック流通センター』の中古タンク車情報〉
FIND TRUCK ボディ形状 タンク車
まとめ
記事では、タンク車の概要や構造・種類や危険物を移送する際の遵守事項などについて解説してきました。一般的なトラックと比べるとタンク車を購入する機会は稀(まれ)なことと思います。数少ない購入機会にコスパの悪いお買い物をしないためにも、新車購入だけでなく中古車購入も視野に入れて検討すべきでしょう。
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- タンク車とは、荷台にタンク(油槽)が付いている貨物のこと
- タンクローリーは荷台にタンク(油槽)が付いているトラックのこと
- タンク車の構造や危険物移送時のルールには、消防法によって複数の基準が定められている