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トラックのニュートラル?AT車のNレンジの存在意義や使用方法とは?

トラックのニュートラル?AT車のNレンジの存在意義や使用方法とは?
一昔前まで自動車のミッションシステムはドライバー自身がアクセル・クラッチ・シフトレバーを操りながら変速を行うMTが主流でしたが、1980年代に自動変速システムの技術革新が行われ現在ATシステムは乗用車では10%近い普及率を誇っています。
しかし従来のATシステムとトラックとの相性には問題があったことからMTトラックが主流でしたが、近年ATシステムのさらなる技術革新でATトラックの数が増加しています。トラックに搭載が進むATシステムでニュートラルを示すNレンジの存在意義や使用法を紹介します。

ニュートラルはMT・AT共にトラックのトランスミッションに存在する

ニュートラルはMT・AT共にトラックのトランスミッションに存在する
トラックへの搭載が急速に進むAT(オートマチック・トランスミッション)ですが、一般的にATシステムのシフトレンジはP(パーキング)・R(リバース)・N(ニュートラル)・D(ドライブ)・D1(ドライブ1)で構成されています。

変速システムが異なっても、トランスミッションの基本機能が前進・後退・変速であることに変わりはなく、MT・ATを問わず基本機能が搭載されニュートラルであるNレンジもMT・AT双方に存在します。

中立を意味するニュートラルはトランスミッションに必要不可欠?

ニュートラルが「中立」を表す言葉であることは知られていますが、トランスミッションシステムにおけるニュートラルは前進・後退・変速を行わないレンジであることを示します。

前進・後退・変速が行える状態のトランスミッションは各ギアがかみ合っていますが、中立であるニュートラルの状態ではギアがかみ合わずエンジンの動力と駆動システムが切り離された状態になっています。

ドライバーがシフトチェンジを行うMTトラックではニュートラルの使用率が高い

ドライバー自身がアクセル・クラッチ・シフトレバーを操りながら変速を行うMTシステムでは、各ギア段の中心にニュートラルが設定されるシフトポジションのため1→N→2や4→N→3のような変速パターンで変速が行われます。

変速の度に一旦ニュートラルのポジションを通過する必要があり、MTシステムでのニュートラルポジションの使用頻度は非常に高いと言えるでしょう。これに対してATシステムでは前進するDレンジから後退のRや停車時に使用するPレンジへの切り替え時のみニュートラルのNレンジを通過します。

MTとATではトランスミッションサイドPTO使用時のギア位置が異なる

MTとATではトランスミッションサイドPTO使用時のギア位置が異なる
トラックの搭載する特殊装置のなかでも車載クレーンは人気の高い装置です。車載クレーンを稼働させるための動力はエンジン出力を車載装置の動力に変換するPTOによって供給されPTOにはトランスミッション式・フライホイール式・フルパワー式が存在します。

クレーン付トラックの動力供給に用いられるトランスミッション式PTOは停車時に使用し、停車状態でエンジンを稼働させる必要がありますが、MTシステムとATシステムではPTO使用時のギア位置が異なります。

MTトラックでトランスミッションサイドPTOを使用する場合

MTシステムを搭載するクレーン付きトラックで車載クレーンを使用する際は、ギアをニュートラルにシフトしエンジン出力が駆動系に伝達されない状態で、パーキングブレーキをしっかりと効かせて使用します。

ATトラックでトランスミッションサイドPTOを使用する場合

ATシステムを搭載するクレーン付きトラックにはニュートラルレンジとパーキングレンジがありますが、ニュートラルでは、路面が傾斜している場合などトラックが動いてしまう可能性があるので車載クレーンを使用する場合はパーキングレンジを選択します。

ATトラックにニュートラルが存在する理由とは?

ATトラックにニュートラルが存在する理由とは?
走行中の変速や車載クレーンなど搭載装置への動力供給を行う際などもATシステムのニュートラルレンジを使用することはありませんので、「Nレンジは何のために搭載されているのか?」と疑問を持つ方が少なくないのではないでしょうか?

一見無駄にも見えるATシステムのニュートラルレンジですが、ATシステムにニュートラルが設定されているのにはトラックメーカーがATトラック稼働時にニュートラルが使用されることを想定しているからという理由があります。

ATトラックのニュートラルポジションを使用する場面とは?

ATトラックを1日運転しても結局1度もNレンジを使用しなかったというドライバーは少なくないかもしれませんが、トラックメーカーは次に挙げる場面を想定しニュートラルレンジをATシステムに組み込んでいます。

信号停止時の誤発進防止が可能

アクセルとブレーキの踏み間違いで発生する事故が後を絶ちませんが、ATトラック運転中に信号などで一時停止する際にDレンジからニュートラルにシフトすることで誤発進は防止できます。

緊急時でもトラック移動が可能

何らかのトラブルでエンジンが停止し自走不能状態に陥った場合でも、ニュートラルにシフトすれば車両移動が行えます。トラブル発生の緊急時に車両を安全な場所へ移動することがドライバーには義務付けられているので、緊急時に活用できるようにニュートラルレンジが設定されています。

車載ウインチのマスター巻き時に使用

車両牽引などに使用するウインチはねじれやキンクが生じないようマスター巻きを行う必要がありますが、マスター巻きを行う際にニュートラルにシフトしパーキングブレーキを軽く掛けた状態で行うと効率的です。また現在主流の電動ウインチは電力消費量が多いためニュートラルでエンジンを稼働させながら使用することをおすすめします。

ATトラック走行時にニュートラル使用はNG?トラブル発生リスクが高くなる

ATトラック走行時にニュートラル使用はNG?トラブル発生リスクが高くなる
トラック走行中にDレンジからニュートラルにシフトして惰性を利用して走行することで燃料消費量を節約するエコドライブができるような気がしますが、ATトラックの走行中にニュートラルにシフトするのは危険極まりない行為ですので絶対にやめてください。

MTシステムと比較するとATシステムではエンジンブレーキの効果が低いように感じるのも確かですが、ニュートラルの状態ではエンジンブレーキの効果を全く得られなくなるのでフットブレーキに頼らざるを得ず、フェード現象やペーパーロック現象の発生リスクが高まります。

ATトラック走行時にニュートラルを使用して生じるトラブルとは?

ATトラック走行中にニュートラルにシフトすることは危険な状態に陥るリスクが高くなるおすすめできない行為であることは既にふれましたが、走行中のATトラックでニュートラルにシフトすると車両トラブルの発生原因にも繋がりかねません。

走行時のニュートラル使用はエンジンやギア焼き付きの原因となる可能性も!

ATのミッションシステムはトランスミッション内部を、ATF(オートマチックフルード)と呼ばれるオイルで満たしています。ATFはエンジン出力をミッションシステムに伝えるのと同時に摩擦で高温となるミッションに組み込まれた金属パーツの冷却も行います。

ニュートラルの状態ではATFがミッションシステム内を上手く循環することができなくなり、最悪のケースではミッションの焼き付きやエンジン焼き付きの原因となりかねません。

走行中のニュートラル使用では燃費向上は期待できない?

走行中のニュートラル使用では燃費向上は期待できない?
既述のとおりATトラック走行中にニュートラルにシフトすることは非常に危険なうえに、車両トラブルの発生原因になりかねない絶対におすすめできない行為であることは間違いありません。

しかし「ニュートラルにシフトすることで燃費向上が望めるのか?」が気になるところではないでしょうか?エコドライブの基本が必要のない時はエンジンを停止する「アイドエリングストップ」であることはひろく知られていますが、走行中にニュートラルを使用してもトラックはアイドリング状態となるため燃料は消費し続けることとなり残念ながらエコドライブには繋がらないと言われています。

燃費走行はニュートラルの使用よりも停車時に早めのアクセルオフが効果的

トラックの燃料消費量を抑える運転は環境問題に貢献できるばかりではなく、トラックの維持費用のなかで大きなウエイトを占める燃料代を節約することもできます。

効果的にエコドライブを実践するためのポイントは、走行中のニュートラルではなく、停車や減速時のアクセルオフのタイミングで、早めのアクセルオフはニュートラルでの惰性走行より効果が高いのでおすすめです。

トラックのギアシステムを理解して安全なエコドライブの実現を!

トラックのギアシステムは、一見複雑怪奇なもののような印象を受けますが、実際には前進・後退・変速の3つで構成されていますので、ギアシステムを理解することは難しくありません。

上手なギア選択は安全なトラックの運行ばかりではなく、環境やお財布にも優しいトラックの運行を実現するために非常に重要ですので、最適なギア選択をしながら効果的なトラック運行を実践してくださいね。

強く求められる環境問題対策!トラック環境性能への取り組みやエコドライブとは?

まとめ

ATシステムのニュートラルは使用用途を掴むまでは「必要がないのでは?」と捉えられがちですが、実はトラックを上手に運行するためには欠かせない重要なシフトレンジであると言えます。
間違えやすいATトラックのニュートラルの使用方法は次の3つです。

  • 車載クレーンの稼働中はNレンジではなくPレンジを使用する
  • ATトラック走行中のNレンジ使用はエコドライブに繋がらない
  • 一時停止中の誤発進防止に高い効果があるNレンジは活用するべき

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