トラックの積載量はどう決まる?最大積載量と車両総重量の違いも解説!
トラックで荷物を運搬するときに気をつけることとして、「最大積載量」があります。
車両の後ろにステッカーが貼ってあったり、車検証に記載してあったりと、目にする機会はみなさんが思うよりたくさんあります。
しかし、「最大積載量」と「車両総重量」の違いがわからないという人もいるでしょう。今回は、トラックの最大積載量が決まる基準と決め方、車両総重量との違い、最大積載量を守らないと起こりうる事故についてお話していきます。
積載量はどう決まる?
積載量は、荷台の形状によって異なりますが、容積重量の計算で算出されます。
天井があるものは天井までの高さで、天井のないものはアオリの高さで計算されます。
小学校で習う、縦と横の長さと高さを掛けた、体積の計算と同じものです。
そして最大積載量は、車検時に検査員によって計算されます。
検査員が車検証と照合し、合致しない場合は車検がとおりません。
そのため記載と違う場合は、車検までに構造変更検査を受けておく必要があります。
また、ダンプトラックについているコボレーンが計算に含まれないという点には注意が必要です。
コボレーンとは多くのダンプトラックに搭載されており、土砂などの積載物がこぼれにくくするものです。
あくまでも補助器具のため、計算対象にはならず、最大積載量の計算には含まれません。
もしコボレーンを取り付けている場合は、容積重量計算に入らないことを知っておきましょう。
最大積載量と車両総重量の違いとは?
よくある勘違いとして、車両総重量と最大積載量を混同していることがあります。
車両総重量とは、道路法によって定められており、この法律では日本の公道を走行できる車両サイズを定めています。
気になる計算方法ですが、対象の車両の荷台に荷物を限界まで積み、乗車定員分の人が乗った状態として算出するのです。
このとき乗車する人の体重は55kgで計算されています。
対して、最大積載量とは車両総重量から車体と乗車する人をおろした状態で算出されます。
つまり、最大積載量は車両総重量の一部とされているのです。
車両総重量の計算式は以下のようになります。
「車両総重量=車両重量+乗車人員(1人55kg)×定員数+最大積載量」
トラック最大積載量の目安は車両サイズ?
トラックは、2トン・4トン・10トンと大まかに分けることができます。
よくある間違いで、その車両サイズの名称が積載量だと思われている場合もありますが、実は少し違います。
キャブの形状によってやや異なりますが、2トン車であれば4〜5トン、4トンであれば8トン、10トンであれば25トン前後が車両総重量です。
この車両総重量から、車両本体の重量と乗車定員分の55kgを引けば、最大積載量が算出できます。
10トン車の最大積載量を、この計算式に当てはめてみると次のようになります。
【例】車両総重量25トン、乗車定員2名の10トントラックの最大積載量
最大積載量=車両総重量(25トン)-乗車定員(2名)×55kgー車両重量(10トン)≒14トン
厳密ではないものの、だいたいトラックの名称ほどだと考えて間違いないでしょう。
もちろん、一概に通称の重量どおりの積載量だと言えるわけではありません。
低床の車両や車輪数、ホイールベースによって最大積載量は異なります。
なぜかというと車輪1軸にかかる重量が法律で制限されており、タイヤサイズにも左右されるためです。
また、車両そのものの重量が重い場合、最大積載量が少なくなる場合もあります。
典型的なのが4トントラックで、平ボディなどの架装物がないもの以外は最大積載量が3トン以下というものがほとんどです。
なので、紹介した計算式は、あくまで平ボディを想定した概算の算出方法として知っておきましょう。
積載量決定の仕組みと法律に関してご紹介!
最大積載量が決まる仕組みと法令があります。
容積重量の計算でもできますが、正確な積載量は車両サイズと荷台の大きさで決まってきます。
また、荷台部分を改造すれば増トン・減トンも可能です。
しかし、積載量に関しては法令も出されているため、この法令を守る必要があります。
積載量が決まる仕組み
積載量は、車両サイズと荷台の容積によって算出されます。
ここで言う荷台とは、キャブを除く、枠で囲われた部分を指しています。
バンやウイングタイプであれば天井までの高さで、平ボディ・ダンプなどの天井がない形状であればアオリの高さまでが計算の範囲です。
そして算出された最大積載量は、車両後部にわかるように表示することが義務付けられています。
そのため、ステッカーを貼っている車両が多いのですが、中にはマジックで手書きしている車両もちらほら。
一番手軽な方法ですが、書き間違えると、あとあとの修正が大変になるので注意しましょう。
たまに、2トントラックなのに最大積載量が20トンもあるような書き間違いも見受けられます。
もちろん、実際にはありえないただの書き間違いです。
また、このステッカーはわざわざ購入する必要はなく、テプラのような、雨天時剥がれにくいものであれば何でもOKです。
いずれにしても、車両後部への最大積載量の表示は必要なので、忘れないようにしましょう。
増トン・減トンの方法
最大積載量を変更することで、増トン・減トンが可能です。
燃料タンク容量の変更や、積載量に変更が出た場合も増トン・減トンに含まれるのです。
任意で増トン・減トンの変更は可能ですが、変更した際は必ず、車検とは別の「構造変更検査」を受ける必要があります。
構造変更検査とは、その変更が車両の安全な走行に悪影響を及ぼさないかを検査する制度のことです。
車検と同時に受けることもできますが、この場合は車検にあわせて該当する変更を行わなければなりません。
トラックの積載量に変更が生じた場合もこの検査が必要です。
その理由は安全な走行が可能かどうかはもちろんのこと、内容によっては運転できる免許区分が変わる可能性があるためです。
また、最大積載量が増えるということは、車両総重量もおのずと増えますし、自動車税も増えます。
逆に、減トンすれば自動車税が安くなることもありますので、積載量を変更した場合は必ず構造変更検査を受けましょう。
積載に関する法令
トラックの積載に関する法令は、「道路交通法」がその代表です。
また、車両の形状も同じく定められており、車の安全に関わるすべての規定が記されています。
それによると、最大積載量を越えてものを乗せた状態を過積載といい、法律で罰せられると規定されています。
罰則は免許の点数6点の減点と6ヶ月以下の懲役、または10万円以下の罰金です。
法律違反は車にも、運転手にも、そして事業所にもメリットは何ひとつありません。
ただし、どうしてもやむを得ない状況の場合は話が別です。
管轄の警察署にて「特殊車両通行許可」をもらうことで、公道走行が可能になります。
積載量を守らない場合のトラックのトラブル事例
過積載の状態で走行を続けると、トラックにはどんな影響が出てくるのでしょうか。
ご想像のとおり、トラックにとっていいことは存在しません。
「バレないから」と油断していると、最悪の場合、事業継続が不可能になるような大事故につながりかねないのです。
ここでは、代表的な、過積載が原因のトラックの不調・故障についてお話します。
観音扉・アオリの損傷
主にバンタイプのトラックに多いのが、過積載による荷崩れが原因の観音扉・アオリの損傷です。
急ブレーキをかけたり、急発進をしたりすると、荷崩れをおこし、それが観音扉やアオリにあたって破損するという事故です。
最悪の場合、これらの囲いが飛んでいってしまうこともあります。
もちろん、過積載だけが観音扉やアオリ破損の原因とは限りません。
乗せているものが、大型機械のような重量物や、重さのある鋼材でも十分に起こりうる事故です。
しかし、過積載による損傷の場合、最悪、後続車に貨物が激突するという二次被害が発生することも考えられます。
荷物は積み込みすぎず、ゆとりのある運転を心がけるだけで対策はできます。
多くの荷物を運搬する場合は、手間ですが別のトラックも手配しましょう。
クラッチ盤の破損
トラックの多くは、クラッチの切り替えが手動で必要なミッション車です。
これは、トラックの車体そのものが重たいという理由もありますが、役割的にものを運ぶことが多いため、パワーのコントロールが任意で出来るようにミッション車が採用されているという経緯があります。
しかし、いかに力強かったとしても過信は禁物です。
過積載状態で走行を続けていると、その分シフトチェンジのたびにクラッチにかかる負荷は増えます。
動かしている車体そのものが重たいのですから、当然の話です。
これが限界を越えてしまうと、クラッチ盤がすり減るのではなく、砕け散ってしまうことになります。
当然、コントロールができなくなってしまうため、非常に危険な状態になります。
また、クラッチを切ったりつないだりする、スラストベアリングという部品にも負荷がかかり、破損することも。
クラッチ盤は無事でも、スラストベアリングが壊れてしまえば、同じように動かなくなってしまいます。
どちらの場合も、クラッチオーバーホールという重い整備になるので、修理には多額の費用と時間がかかります。
これらの問題に直面しないためには過積載をしないことが大切なのです。
ハブベアリングの損傷
過積載は、最悪の場合、車両火災の原因になることもあります。
その代表例が、各ハブドラム内に取り付けられているハブベアリングの損傷・劣化です。
ハブベアリングの素材は鋼鉄であるため、そう簡単に劣化するものではありません。
しかし、そこに荷重がかかりすぎると回転するはずのハブベアリングが回転しなくなり、強烈な摩擦を起こします。
そのまま走行を続けていると、摩擦熱が高温となりハブの部分から出火。
結果、車両火災へと発展するのです。
もし本当に車両火災が起きてしまったら、修理費が膨大なのはもちろんのこと、ほかの車を巻き込んだ多重事故につながる可能性もあります。
過積載だけが原因とは言い切れませんが、常に過積載の状態を続けていれば、ハブベアリングの損傷・劣化は避けられません。
そして、車両火災となれば、事業所への捜索などの刑事責任も問われます。
このような事態にならないためにも、過積載はするべきではないのです。
また、車検時にハブベアリングの交換を言われた場合は、素直に交換するようにしましょう。
まとめ
トラックの最大積載量と車両総重量についてお話してきました。
車両総重量が、車に乗るすべての荷物・人を乗せたトータルの重さなのに対して、最大積載量は、車に乗る荷物の量のことを指します。
この荷物の量を守らなければ、とんでもないことになりかねません。
法律で決められているのはもちろんですが、安全にすべての車が走行できるように配慮が必要です。
トラックも、運転手も、そして事業者も守るために、積載量の基準は守るようにしましょう。
積載量がニーズにあっていなければ、増減も出来るので、よく検討してより効率的な運送事業を運営しましょう。
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- トラックの最大積載量とは積載できる最大量のことを指す
- 車両総重量とは最大積載量も含めた車両重量
- トラックの大きさごとに容積は異なる
- 任意で積載量を増減させることができるが、構造変更検査は必ず必要
- 積載量に関する法律と違反した場合の罰則内容は決して軽いものではない