バッテリー液の補充方法|バッテリー液が減少する理由や少ない時のリスク、補充時の注意点も解説
バッテリー液が少ない状態で運転すると思わぬ故障やトラブルにつながります。そのためバッテリー液は、定期的にチェックし補充する必要があります。
自身でバッテリー液の補充をしたいと考えている方の中に、「バッテリー液の補充には何が必要かわからない」「バッテリー液の補充時に気をつけるべきことはある?」などの疑問を持っている方も多いのではないでしょうか。
本記事では、バッテリー液の補充方法や注意点を解説します。あわせて、バッテリー液が減少する原因や減少した状態で放置するリスクについても解説するので、ぜひ参考にしてください。
バッテリー液とは?
バッテリー液とは、バッテリー内部に入っている液体のことです。「電解液」とも呼ばれています。
車を動かすには、ガソリンが必要ですが、電力も必要です。電力供給のために必要となるのがバッテリーで、電力がなければ、エンジンをはじめ、ヘッドライトやカーナビなども使えません。
電力を生み出すためには、バッテリー内に入っている極板と希硫酸が化学反応を起こすことが必要となります。化学反応の結果、充電と放電を繰り返し、電気が作られるという仕組みです。
バッテリー液自体は、無色透明の液体で、硫酸と精製水が混ざった希硫酸です。硫酸は金属を酸化させるほどの強い酸性を持ち、皮膚に付着すると、炎症を引き起こす原因となるため、取扱には十分注意しましょう。
バッテリー液が減少するのはなぜ?
バッテリー液は徐々に減っていくものです。まずは、バッテリー液が減少する主な3つの原因を解説します。それぞれ詳しく見ていきましょう。
過充電
バッテリーが過充電の状態になると、バッテリー液が電気分解を起こします。バッテリー液が電気分解されると、精製水が分解されることになり、酸素ガスと水素ガスとして蒸発してしまいます。
特に、劣化が進み、電圧が下がっているバッテリーでは、バッテリー液が大幅に減ってしまう可能性があります。こまめにバッテリー液をチェックしましょう。
自然蒸発
バッテリー液が減少するもう一つの理由は、自然蒸発です。エンジンルーム内の気温などが原因で、どうしてもバッテリー液が自然蒸発してしまいます。
ただし、自然蒸発では、急激にバッテリー液が減ることはないので、そこまで気にする必要はありません。
液漏れの可能性
バッテリー液の量が急激に減っている際は、液漏れしている可能性があります。自然蒸発や過充電が原因の場合は、バッテリー液が急激に減ることは稀です。
液漏れは、バッテリー自体が劣化していたり、バッテリーの取り付けがうまくできていないと起こります。
液漏れしてしまった場合、バッテリー液を補充しても、バッテリーを使用できなくなることが多いため、整備工場やディーラーで交換が必要です。
バッテリー液が少ない状態だとどうなる?
バッテリー液の残量を確認せず、少ない状態に気付かないで放置していると、危険がともないます。ここでは、主な2つのリスクを詳しく見ていきましょう。
金属部分を劣化させてしまう可能性あり
極板などの金属部分は、バッテリー液が通常時、液体に浸かっている状態です。金属部分は、バッテリー液が少なくなり、露出時間が長いと劣化してしまいます。
極板が一度劣化すると、バッテリー液を補充しても元の状態に戻りません。また極板などの金属部分が劣化すると、バッテリー本体の性能が落ち、バッテリーあがりにつながるケースもあります。
爆発や火災の危険性あり
バッテリー液が少ないと、極板が露出し、腐食します。腐食したまま稼働し続けると、火花が発生する可能性があり、危険な状態です。エンジンルームには、電力分解で発生した水素ガスが発生しますが、火花が水素ガスに引火し、爆発を起こす事例も報告されています。
また、バッテリー液の量が少ないと、水素ガスの発生量が増え、火災につながるケースもあるため、大変危険です。
バッテリー液の補充方法
では、バッテリー液の補充方法を確認します。
①バッテリーの液口栓を開ける
②「UPPER LEVEL」まで液を補充する
手順はとてもシンプルです。バッテリーには「LOWER LEVEL」と「UPPER LEVEL」の表示があります。バッテリー液を補充する際は、「UPPER LEVEL」ラインに近づくまで補充しましょう。
エンジンルーム内はとても暗く、バッテリー液の水位が見づらいです。そのため、小さなライトを準備し、バッテリーの裏側から照らすことで水位をしっかりと確認しながらおこなうと安全に補充できます。
ちなみに、バッテリーには隔離された6つの小さな部屋があります。それぞれのバッテリー液が独立しているため、補充する際は全ての部屋に、なるべく均等に入れるようにしましょう。
バッテリー液の補充に必要なもの
バッテリー液の補充時に必要なものは以下の通りです。
■蒸留水(精製水、バッテリー補充液など)
■身を守る道具(ゴム手袋やゴーグルなど)
・ゴーグルは、バッテリー液が跳ねても目に入らないものを選ぶと安心
■ドライバー(コインなどでも代用可)
・バッテリー液を入れる部分の蓋を開ける際に必要
■スポイト
・バッテリー液の細かい調整に便利。入れすぎた際にも吸い取ることが可能
■小さなライト
・エンジンルームは暗いことが多く、ライトがあると作業がしやすい
■雑巾や水道水の入ったペットボトル
・バッテリー液が飛び散ってしまった際に拭いたり、洗い流したりするためにあるとよい
バッテリー液補充時の注意点
バッテリー液を補充する際は以下4つの注意点を押さえておきましょう。
作業時は、火気に注意する
バッテリールームには、引火性の高い水素ガスが充満している可能性が高いため、作業時は火気厳禁です。
自身が気をつけるだけでなく、周囲でタバコを吸っていたり、ライターを使用していたりする人がいないか必ず確認してから作業をおこなうようにしましょう。
バッテリー液が自身に付着しないよう気をつける
バッテリー液は希硫酸です。服につくと穴が空いてしまったり、皮膚に付着すると、やけどをしてしまったりします。
また、目に入ると失明する危険性もあるので、バッテリー液補充の際は、ゴーグルや手袋を着用して自分の身を守る準備をしてから臨みましょう。
仮にバッテリー液が皮膚に付着してしまった際は、速やかに水で流し、必要な場合は病院で診察を受けましょう。
補充のしすぎはNG
バッテリーには「LOWER LEVEL」と「UPPER LEVEL」の表示があります。
この表示はバッテリー液の水位を確認するためのゲージであり、「UPPER LEVEL」のライン以上に補充してしまうと、バッテリーの寿命に影響します。
バッテリー液が漏れ出て、周囲が腐食してしまうケースもあるため、「UPPER LEVEL」ラインに近づけるように補充はしますが、超えてしまわないよう注意しましょう。
バッテリー自体が劣化している場合は補充しても意味がない
バッテリー自体が劣化している場合、バッテリー液を補充しても十分に効果が得られません。
一般的にバッテリーは2年以上の使用で寿命がくるとされています。バッテリー液が半年以内に急激に減ったり、バッテリーの6ヶ所それぞれでバッテリー液の減少量がバラバラだったりする場合は、バッテリーの劣化を疑いましょう。
バッテリー劣化の疑いがある場合は、バッテリー液補充よりも、バッテリー自体の交換が必要なケースもあります。まずは整備工場やディーラーに相談してみてください。
バッテリー液補充が不要なメンテナンスフリーとは?
「メンテナンスフリー」と呼ばれる、バッテリー液を補充する必要がほとんどないバッテリーも存在します。
メンテナンスフリータイプは、従来のバッテリーよりも性能が高く、価格も高価な傾向にあります。
また、人体への影響が指摘されている、水素ガスの発生を抑える高い技術が組み込まれているバッテリーも存在します。
近年は、さまざまなバッテリーがあるので、トラック選びの際は、バッテリーに注目してみてもよいかもしれません。
バッテリー液の補充に関するQ&A
最後に、バッテリー液の補充に関してよくあるQ&Aを紹介します。
バッテリー液が見えないトラックの場合はどうする?
無理をせずに整備工場やディーラーにバッテリー液の補充を依頼するようにしましょう。
見えづらい中で作業をしようとして、バッテリー液が自身に付着したり、周囲に飛び散ってしまったりすれば、自身の怪我やトラックの故障につながってしまいます。
バッテリー液の補充に水道水を使っても大丈夫?
バッテリー液補充時に水道水の使用はおすすめできません。水道水には、不純物が多く含まれており、極板に不純物が付着すると「局部電池」ができてしまいます。局部電池ができると、車の電力供給に悪影響がでてしまいます。
バッテリー液を補充する際には、市販されているバッテリー補充液や蒸留水、精製水などを使用しましょう。
バッテリー液の補充頻度はどのくらい?
バッテリー液が減るスピードは、車種や季節などさまざまな要素によって変わるため、はっきりとした頻度は提示できません。
しかし、バッテリー液の残量確認は、1ヵ月〜半年に1度ほどの頻度でおこなうのがおすすめです。特に、極端に寒かったり、暑かったりするとバッテリー液の減りが早くなる可能性があるため、普段よりこまめなチェックを心がけるとよいでしょう。
バッテリー液補充にかかる料金はどのくらい?
バッテリー液をカー用品店で購入する場合、数百円〜五百円程度で購入できます。その他、ゴーグルや手袋などを買い揃えても、数千円程度で済ませられるでしょう。
まとめ
今回は、バッテリー液の補充方法について詳しく解説しました。バッテリー液が少ないままのトラックを放置すると、故障や事故につながる場合があります。バッテリー液の残量を確認する習慣をつけ、必要があれば適切にバッテリー液を補充しましょう。
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- バッテリー液は車の電力供給のために必要なもの。バッテリー液は、希硫酸のため、補充時の扱いには十分注意が必要
- バッテリー液が減る原因は、「過充電」や「自然蒸発」に加え、「液漏れ」の可能性もある
- バッテリー液が少ないまま放置すると、火災や爆発につながるリスクがある
- 補充の際は、自身の身を守るための手袋やゴーグルなどを装着し、火気に気をつけておこなう。なお、バッテリー液の補充のしすぎでもバッテリー劣化につながるため注意