リーチフォークリフトとは?フォークリフトの種類から操作方法やポイント|運転のコツと免許の種類
本記事では、リーチフォークリフトの基本的な種類や特徴、運転方法を詳しく解説します。安全に運転するためのポイントや、運転に必要な免許についてもまとめました。リーチフォークリフトの購入や導入を検討している方は、ぜひ参考にしてください。
リーチフォークリフトとは?
リーチフォークリフトとは、運転者が車体右側に背中をもたせかけ、立った姿勢で操作する種類のフォークリフトを指します。
マストやフォークを前後に動かせるため、停止状態でも容易に荷物を取り扱えます。さらに、リーチフォークリフトは前後のタイヤ間が短いのも特徴です。車体を90度近くまで旋回できるため、小回りが利き狭い場所での作業に役立ちます。
一方、対照的なカウンターフォークリフトは、オペレーターが座った状態で運転・操作するタイプです。後方の鉄の重りでバランスを取り、荷物を安定的に運搬できる特徴があります。安定性が高く、屋内外問わず幅広いシーンで活躍します。
リーチフォークリフトは、車体が小さく重心が高いため、安定性はカウンターフォークリフトに比べてやや劣ります。
リーチフォークリフトを運転、操作するには、専門的な技術が必要であり、所定の免許が不可欠です。また、実際に使用するフォークリフトの操作方法について、事前にしっかりと確認してから取り扱うことが求められます。
リーチフォークリフトの構造と各部の名称
(引用元:厚生労働省「フォークリフトに関する基礎知識」)
リーチフォークリフトは、狭い場所での荷物の積み上げや運搬作業に特化した構造をしています。各部の構造を理解することで、より安全かつ効率的な操作が可能です。
厚生労働省の資料を参考に、リーチフォークリフトの荷役に関する主な装置の名称とそれぞれの役割・特徴を下表にまとめました。
名称 | 役割・特徴 |
フォーク | ・荷物を載せるためのL字型のアーム ・通常は2本組で使用 ・フォークは高品質の炭素鋼や特殊鋼から作られており、耐久性が高い ・ただし長期使用や過負荷で摩耗や曲がり、破損が発生することもある |
インナーマスト | ・厚い鋼板を使って作られた門型構造の部品 ・断面はコの字型 ・上部はクロスビームでつながれている |
リフトシリンダ | ・アウターマストの両側に取り付けられた油圧シリンダ ・インナーマストを上下させる役割を果たす |
リフトチェーン | ・リフトシリンダの上部に取り付けられたチェーンホイール(滑車)が上下に動くことで、フォークを取り付けたリフトブラケットを持ち上げたり下げたりするチェーン |
リフトブラケット | ・フォークを取り付けるためのフィンガーバーが前面に溶接され、側面にはリフトローラが付いているパーツ ・リフトチェーンで吊り下げられている ・インナーマスト内で上下に動く仕組み |
バックレスト | ・積み荷がマストの後ろへ倒れないようにするための支えとなる荷受け枠 |
ティルトシリンダ | ・油圧シリンダで、マストやフォークを前後に傾けられる装置 |
ヘッドガード | ・フォークリフトの屋根部分に取り付けられている ・荷物落下時にオペレーターを守る |
(参考元:厚生労働省「フォークリフト|第3章 走行装置の運転操作」)
リーチフォークリフトの種類
リーチフォークリフトは「構造や機能」によってさらに分類されます(動力源はバッテリーに限られています)。
本章では、リーチフォークリフトの代表的な種類とそれぞれの特徴を解説します。
なお、ここで取り上げるのはJIS規格に準じたリーチフォークリフトに限定しています。
プラットフォームスタッキングトラック
(引用元:MITSUBISHI FORKLIFT TRACKS)
プラットフォームスタッキングトラックは、プラットフォームがアウトリガー(※)の上に設置されたリーチフォークリフトです。
車体から張り出すアウトリガーで安定性を確保しています。
このタイプは、広いプラットフォームを備えており、さまざまなサイズや形状の荷物を積載・運搬できます。倉庫や物流センターなど、さまざまな場面で多用されているのが特徴です。
※
アウトリガーとは、車体を安定させるために地面に突っ張りを伸ばす装置のことです。
ラテラルスタッキングトラック
(引用元:Made-in-China)
ラテラルスタッキングトラックは、車両の進行方向に対して両側または片側に荷物を積載できるフォークリフトです。
細身の設計が特徴で、側面方向に荷物を積み上げられるため、特に幅の狭い通路やスペースの限られた場所での作業に適しています。
三方向スタッキングトラック
(引用元:Maxmal)
三方向スタッキングトラックは、前方および両側面に荷物を積み込めるリーチフォークリフトです。
高所まで届くマストが特徴で、棚への収納や高い位置への積載が容易にできます。これにより、倉庫や物流センターなど、狭いスペースでの作業に用いられます。
垂直空間で効率的な稼働ができるのは、三方向スタッキングトラックならではです。
オーダピッキングトラック
(引用元:TOYOTA L&F)
オーダーピッキングトラックとは、運転台が荷役装置とともに上下に動く種類のリーチフォークリフトです。
「ピッカー」とも称され、高い場所でのピッキング作業をスムーズにできるのが特徴です。
運転台と荷台は、倉庫内の天井近くまで持ち上げられます。手すりや安全帯といった安全装置が装備され、転落事故を防ぐ工夫も施されています。
パレット(※)上の荷物を高い棚に収納したり、棚の上にある荷物をパレットに積んだりといった操作・作業もスムーズにできるのが魅力です。旋回や方向転換しやすいタイヤ構造のため、狭い通路でも効率的にピッキングできます。
(※)
パレットとは、フォークの差込口がついた、貨物を置くための台のことです。
【番外編】フォークリフトの種類
リーチフォークリフト以外にも、さまざまな種類のフォークリフトが存在しています。用途に応じて適したタイプのフォークリフトを選ぶことが大切です。
本章では、フォークリフトの種類について「動力」「形状」「タイヤ」の3つの観点から紹介します。
フォークリフトの種類【動力】
フォークリフトの動力の種類には「ディーゼル」「LPガス」「電気」があります。それぞれの主な特徴を下表にまとめました。
荷重 | 走行スピード | 環境汚染 | 使用場所 | |
ディーゼル | 0~50トン程度 | 25-40km/h程度 | 大きい | 屋外 |
LPガス | 0~6トン程度 | 25km/h程度 | 普通 | 屋内・屋外 |
電気 | 0~3トン程度 | 25-40km/h程度 | 小さい | 屋内 |
それぞれの動力について、メリット・デメリットを順番に解説します。
ディーゼル
ディーゼル車とは、軽油を燃料として駆動する車両のことです。高い出力とスピード性能に優れ、約50トンもの荷重に対応できます。
LPガス
LPG車とは、LPガスを燃料として動く車両で、ディーゼル車とEV車の中間的な特徴を持っています。ガソリン車と異なり、燃料費を抑えられる点が大きな利点です。LPガスは環境に優しいとされ、LPG車は最大6トンまでの荷重に対応可能です。
電気
EV車は充電した電力で動くため、排気ガスを出さず、燃料費がかかりません。多くがコンパクトな設計で、倉庫内での操作性にも優れます。
この特性により、物流倉庫など屋内で使用されるケースが多いです。ただし、ディーゼル車に比べるとパワーやスピードに劣り、重い荷物の運搬には向きません。
フォークリフトの種類【形状】
フォークリフトの主な形状は、リーチフォークリフトを除くと以下の4種類があります。
- カウンターバランスフォークリフト
- サイドフォークリフト
- ウォーキーフォークリフト
- マルチディレクショナルフォークリフト
それぞれの特徴について、用途と併せて解説します。
①カウンターバランスフォークリフト
(引用元:TOYOTA L&F)
カウンターバランスフォークリフトは、転倒しにくい安定性が魅力の車両です。力強いパワーと高い安定性を求める場合に適しています。
後方に重りを搭載しているため、前方のフォークで荷物を持ち上げたときにバランスを保てる仕組みです。ただし、後方の重りによって車体全体が大きいため、小回りが利きにくく、狭い場所での作業には向きません。
②サイドフォークリフト
(引用元:シンフォニアテクノロジー株式会社)
サイドフォークリフトは、車体の横側にフォークが設置されたフォークリフトです。パイプや木材といった、長尺の資材を運搬する際に使用されます。モデルによって異なりますが、約3メートルの資源を運べます。
③ウォーキーフォークリフト
(引用元:TOYOTA L&F)
ウォーキーフォークリフトは、歩きながら荷物の積み上げや運搬ができる手押し式のフォークリフトです。片手でハンドル操作ができ、人力では運搬が難しい重い荷物もスムーズに移動させられます。
車両に乗る必要がなく、事故のリスクも低いです。フォークリフトの運転免許も不要で、誰でも取り扱えます。
④マルチディレクショナルフォークリフト
(引用元:TOYOTA L&F)
マルチディレクショナルフォークリフトは、前後左右に自在に動けるフォークリフトです。通常のフォークリフトは前後の移動を基本とし、曲がる際には旋回が必要なところ、このタイプはそのまま真横に移動できます。
旋回をせずにあらゆる方向へ動けるため、操作性や多用途性を重視する現場で高い評価を得ています。
フォークリフトの種類【タイヤ】
フォークリフトが装着するタイヤの種類は、次のとおりです。
- 3輪
- 4輪
それぞれの特徴を順番に解説します。
3輪
3輪式フォークリフトは、旋回半径が小さく高い機動性を発揮するため、狭い通路での作業に適しています。
ただし、最大積載重量は約2.5トンで、積載がこの重量に近づくと、旋回時に転倒のリスクが高まります。また、砂利道や起伏のある場所での使用が困難です。
4輪
4輪式フォークリフトは高い耐久性を持ち、砂利道や凹凸のある地形でも使用できます。走行時の安定性が高く、急な斜面でも転倒しにくい設計です。ただし、旋回半径が大きいため、狭い場所での小回りには向きません。
リーチフォークリフトの操作方法
リーチフォークリフトの運転席に搭載される、走行や荷役操作に大きく関わる各部名称を紹介します。
名称 | 操作 |
リフトレバー | レバーを手前に引くとフォークが上昇し、前方に押すと下降します。安全のため操作時は急に動かさず、ゆっくりと動かすように心掛けてください。 |
チルトレバー | 手前に引くとフォークの先端が上向きに、前方に押すと先端が下向きに傾きます。 |
リーチレバー | レバーを手前に引くとフォークが車体側に引き寄せられ(リーチイン)、前方に押すと前に突き出されます(リーチアウト)。荷を積んだ状態で急に旋回すると転倒の危険があるため、荷物を載せている場合は必ずリーチインの状態で走行してください。 |
アクセルレバー | 前進・後進および速度を調整するレバーです。まずブレーキペダルを踏んでブレーキを解除し、進みたい方向にレバーを倒すと動き出します。レバーを前方に倒すと前進、手前に引くと後進します。 |
電源緊急カットボタン | 緊急時にこのボタンを押すと電源が遮断され、すべての操作が即座に停止します。ボタンを時計回りに回すと、操作が再び可能な状態に戻ります。 |
ホーンボタン | ボタンを押すと警告音が鳴り、周囲に存在を知らせます。 |
ステアリングハンドル | 左手でハンドルノブを握り、右手はアクセルレバーに添えてフロアプレートに立つのが基本姿勢です。 |
続いて、厚生労働省の資料をもとに、リーチフォークリフトの基本的な操作方法の説明をまとめました。
動作 | 操作方法 |
始動 | ①バッテリコネクタが外れている場合は、まずコネクタを接続します。 ②アクセルレバーや操作レバーが中立の位置にあることを確認したうえで、始動スイッチにキーを差し込み、「入」位置に回して運転の準備を整えます。 |
発進・加減速 | ①まずブレーキペダルを踏んでブレーキを解除します。 ②その後、アクセルレバー(前後進レバー兼用)を進みたい方向に倒すと発進します。 ③走行速度はアクセルレバーの倒し具合で調節可能です。 |
前後進切換え | ①前後進の切替は、アクセルレバーの倒す方向を変えることで行い、進行方向も切り替わります。 ②走行中にアクセルレバーを進行方向とは逆に操作すると、プラギング操作が作動します。 |
操向・制動・停止・駐車 | ①ブレーキペダルから足を離すと自動的にブレーキがかかり、車両は停止します。 ②長期間使用しない場合(約1か月以上)は、バッテリコネクタを外しておきましょう。 |
(参考元:厚生労働省「フォークリフト|第3章 走行装置の運転操作」)
運転のコツと注意点
リーチフォークリフトを運転する際のコツと注意点は、次の4つです。
・荷物運搬の仕事を行う際はマストを引き寄せ、フォークを後方に傾けて走行しましょう。
・急カーブや高速走行中の急旋回は転倒や荷崩れのリスクがあるため、旋回時は必ずスピードを落としてゆっくりハンドルを回転することが重要です。
・運転中に足や体をステップの外に出したり、上半身を外へ傾けたりすると、障害物にぶつかる危険があるため、正しい姿勢で操作を行いましょう。
・車輪が滑ってブレーキが利きにくくなるため、事故防止のため基本的に浸水した路面や不整地の走行は避けましょう。
※不整地とは、凹凸が激しく、舗装されていない未整備な土地のことです。
リーチフォークリフトはバッテリーで稼働するため、バッテリーに優しい運転が長持ちの秘訣といえます。バッテリー液の温度も寿命に影響するため、温度管理とリフト操作の関係を理解しておくことが大切です。
また、リーチフォークリフトの操作スキルを向上させるには、荷物の運搬練習が必要不可欠です。パレットに正確に車体を付ける技術が上がれば上がるほど、効率的に作業できるようになります。
リーチフォークリフトの免許の種類
リーチフォークリフトを操作するための免許・資格は、大きく以下の2種類に分けられます。
・フォークリフト運転技能講習:最大積載荷重1トン以上のリーチフォークリフトの運転
・フォークリフト運転特別教育:最大積載荷重1トン未満のリーチフォークリフトの運転
※最大積載荷重とは、そのフォークリフトが荷役できる限界の重さのことです。
これらの免許・資格は、取り扱う業務内容に応じて求められる要件が異なるほか、受講資格や取得方法、費用もそれぞれ異なります。
なお、リーチフォークリフトとカウンターフォークリフトの操作に必要な免許・資格に違いはありません。
まとめ
リーチフォークリフトの基本的な種類や各部名称、他のフォークリフトとの違いや運転のコツ・注意点について解説しました。
リーチフォークリフトとは、リーチ機能を生かしたマストの前後移動や小回りの利くタイヤ構造により、効率的かつ安全に作業を進められます。
リーチフォークリフトを使用は、操作方法や機能を事前に理解しておくことで、実際の作業環境に適したモデルを選定できるようになり、コストや時間の削減にもつながるでしょう。
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- 狭い倉庫内や限られたスペースでの荷物の積み下ろしに最適なフォークリフト
- リーチフォークリフトを使用するには、所定の免許・資格の取得が必要
- リーチフォークリフトは、メーカーごとに、さまざまな特性、サイズのモデルが提供されている