【図解】ダンプトラックの荷台の名称とは?各種ボディの名称一覧
ダンプトラックは、廃材や土などを積み込んでおろす作業で活躍します。特徴として、荷台を持ち上げ、積載物を一気に降ろせる、そして荷台にはさまざまなパーツが取り付けられています。名称や取り付けられている意味を知らなければ、正確に使用ができません。また、使用用途によって種類があります。そこで今回は、ダンプの使い方や種類、荷台の名称をご紹介します。
ダンプトラックとは
ダンプトラックとは、荷台を傾け土砂などを一気におろすことができる車両です。
荷台をあげ、荷物を一気におろすことができるため、土砂や廃材などを流れ落とせる特徴を持ちます。
そもそも『ダンプ(dump)』とは英語で、『荷物をさっとおろす』の意味を持ちます。
つまり運んだ土砂を荷台を傾けることで流しながらおろすことができるため、この名称がつけられました。
一般的に『ダンプ』や『ダンプカー』などとも呼ばれており、荷台に荷物などを積載し運搬するトラックに対し、ダンプは土砂や廃材などを運搬する際に使用します。
荷台の前側が浮きあがることで、積み荷を流れ落とすことができるため、その使い方を活かして、主に土砂やゴミなどを運ぶときに使われることが多いのです。
トラックでも廃材などを積み込んで運搬することは可能ですが、ダンプはごみ収集場などで簡単におろすことができるため、トラックと分けて使用されます。
大きさや形などが似ているので、一見するとダンプなのかトラックなのかわからない方もいるでしょう。
そのような場合、荷台が動いているかどうかで判断できます。
ダンプトラックの荷台の名称
ダンプトラックの荷台にはいろいろな部品が取り付けられています。
そして、それぞれに名称があるので、使用用途と合わせてご紹介していきます。
コボレーン(飛散防止装置)
コボレーンとは、ダンプの荷台側面や上部から、土や砂などがこぼれ落ちないようにする飛散防止装置です。
ダンプは土砂だけでなく産業廃棄物なども運送します。
走行中に搬送物が落下すると事故につながり危険なので、コボレーンをつけ搬送物を落下させないように工夫されているのです。
コボレーンを使用しないときは、荷台の内側に収納しておくことができます。
いざ使用する場合、側面に立たせ高さを稼いでくれるので、安全に土砂などの積載物を搬送できます。
足かけ(荷台ステップ)
荷台の上で作業する場合、足かけを使い荷台にのぼります。
この足かけを別名『荷台ステップ』とも呼び、側面に設置されている場合がほとんどです。
のぼる場合だけでなく、おりる際にも足かけを使用すれば安全に移動できます。
プロテクタハシゴ
プロテクタハシゴとは、ダンプの上部、つまり鳥居に上るために設置されています。
設置場所は荷台の先端側。
上り下りと同時にダンプを守る役割も担っています。
サイドガード
左右側面に装着されているサイドガードは、歩行者などの巻き込み防止のために設置されています。
ダンプ側面のタイヤの間に取り付けられており、タイヤ間の隙間を埋めています。
巻込防止装置とも呼ばれ、保安基準でも義務付けられている装置です。
普通自動車などに比べ内輪差や死角の多いダンプは、カーブを曲がる際に人や自転車を巻き込んでしまい事故を起こす可能性も。
そのような悲しい事故を未然に防ぐため、サイドガードが設置されています。
アオリ
アオリとは荷台の枠を指します。
左右と後方の3面に設置されており、開閉させることで積載物の積卸を楽にします。
積載物の転倒防止にも役立ち、アオリのフックにロープをかけ固定すればより安全に搬送できます。
アオリはダンプだけでなく、平ボディ形状のトラックすべてに設置されている装置です。
また、積載量にも関係しています。
アオリが高ければ積載量が多く設定でき、低ければその分積載量は少なくなります。
そのためアオリの高さを変更する際は、構造変更手続きが必要です。
鳥居
鳥居とは荷台とキャビン(運転席)の間に設置されている装置です。
神社の鳥居に形が似ていることから、この名前が付いています。
荷台の積み荷が崩れて、運転席側に転がってきても大丈夫なように設置されています。
ホイスト機構
ホイスト機構とは、荷台を上下させるピストンです。
荷台の上げ下げに使います。
ホイスト機構には油圧式と電動式の2種類があり、荷台が下がった状態では荷台の下に隠れていますが、荷台があがったとき見ることができます。
ヒンジ
ヒンジとはアオリを閉めたまま固定するためのパーツです。
アオリを開け閉めするので使用頻度が高いため、動きが悪くなったり、壊れることが多いパーツでもあります。
壊れたまま走行すると、アオリが突然開き積載物落下の原因になってしまい危険です。
壊れたときは速やかに修理しましょう。
メインフレーム
荷台の骨格をメインフレームと呼びます。
荷台の底やアオリなどを支える重要な部分で、人間でいうと骨にあたります。
腐食などによって強度が下がるので、錆びないように清掃をおこないましょう。
安全棒
ダンプの荷台をあげた際、想いもよらぬ落下を防止するための装置を安全棒と呼びます。
ダンプによって安全棒の数は違いますが、1~2本が一般的です。
仮にホイスト機構が突然故障した場合でも、安全棒で一時的にでも支えることで逃げる時間を稼ぎます。
そのため荷台をあげた際は必ず安全棒を使用しましょう。
デッキ
荷台の底の部分をデッキと呼びます。
『デッキ(deck)』とは英語で床や甲板を意味します。
ダンプの荷台は平たく広いため、この名称がつけられました。
積載物を載せる際、最も使用する部分であり、デッキの広さで積載量も変わります。
ダンプトラックの操作は装置の種類で違いがある
ダンプの荷台を動かす装置をホイスト機構と呼びますが、ホイスト機構にはPTO式と電動モーター式の2種類が存在します。
ではそれぞれの違いを見ていきましょう。
PTO式
PTOとは『パワーテイクオフ(power take off)』の略であり、エンジンなどからの動力を荷台の上げ下げに使用します。
パワーテイクオフとは日本語で動力取出装置の意味を持ちます。
つまり、ホイスト機構を動かす際、エンジンの動力を取り出すためこの名前が付けられました。
ホイスト機構は、ダンプだけでなくミキサー車やクレーン車にも搭載されています。
エンジンやトランスミッション、もしくはその中間に取り付けられたPTO装置によって荷台を動かす仕組みです。
エンジンの動力を油圧に変換し、動力を取り出します。
そしてPTOのなかにも、トランスミッションPTO、フライホールPTO、フルパワーPTOと大きく3種類あります。
【トランスミッションPTO】
トランスミッションに取り付けられており、停車時のみ起動できます。
主にクレーン車や高所作業車などに使われています。
【フライホールPTO】
エンジンに直接PTOが取り付けられているので、停車時でも走行中でも起動させることができます。
ミキサー車など走行中に動かす車に採用されています。
【フルパワーPTO】
エンジンとトランスミッションの間にPTOが取り付けられており、停車時に操作可能です。
エンジンの動力を100%引き出せるため、大きな動力を必要とする車に採用されています。
ダンプはこのタイプに該当します。
PTO式の操作方法は、
①エンジンをかける
②PTOスイッチを押す
③ダンプレバーの上げ下げで荷台を操作する
この3ステップです。
注意点は、PTOスイッチを入れる際、必ずクラッチを踏みながら操作する点です。
クラッチを踏まなければ操作できません。
また操作後、スイッチを切るのを忘れないようにしましょう。
電動モーター式
電動モーター式はバッテリーの電圧を利用し、モーターの力によって油圧ポンプを操作します。
バッテリーとモーターが荷台にあり、それらがホイストシリンダーにつながることで動く仕組みです。
また室内には荷台を動かすためのスイッチがあります。
アイドリング時にも荷台を操作でき、モーターなのでPTO式に比べ静かな点が特徴です。
また、ボタン一つで操作可能な点も魅力の一つ。
使用する場合は、ACCまたはエンジンをオンにして、スイッチのUPボタンやDOWNボタンで操作します。
ダンプトラックの種類を徹底解説!
ダンプといっても、トラックのようにさまざまな種類があります。
小型から大型まで大きさによっても分別されますが、荷台やアオリ、積載量などによっても種類が違います。
また何を積載するのかでも変わるため、どのような種類があるのかを見ていきましょう。
標準ダンプ
3方開放型で、左右と後方のあおりが開く標準的なダンプです。
最大積載量は1.95~3トンであり、荷台の大きさは長さ3100mm×幅1600mm×高さ320mmサイズと標準的な大きさなものが多くあります。
このタイプにコボレーンを着けるなどの架装をして実際に使用していきます。
強化ダンプ
強化ダンプはデッキ板が通常よりも厚く作られていることに加え、フロントパネル、サイドゲート、リヤゲートなども強化し耐久性に優れたダンプです。
しっかりとした荷台なので、最大積載量が1.95~4トンと積載できる量も増えます。
土砂や大型廃棄物など、重量がある積載物を運ぶ際に活躍しているタイプです。
三転ダンプ
三転ダンプは、荷台が後ろだけでなく左右の3方向に傾けることができるダンプです。
通常のダンプは後方だけしか傾けることができません。
その反面、三転ダンプはいろんな方向に傾けることができるため、少し変わったタイプになります。
天井が低い場所や側溝の埋め戻しなど、車の回転ができないような狭い道路や、一方通行で活躍するダンプです。
ダブルキャブダンプ
ダブルキャブダンプは、キャビン(運転席のある空間)に後部座席を設けたダンプです。
約5~6人と通常のダンプよりも多く乗ることができるので、人出が必要な現場で活躍します。
しかし、キャビンが大きくなるため、荷台の面積が狭くなります。
セーフティローダーダンプ
セーフティローダーダンプとは、荷台が下までスライドしてくれるダンプです。
通常のダンプは荷台が持ちあがるだけですが、セーフティローダーダンプは下までスライドしてくれるので、高く持ちあげられない積載物を積卸する場合に活躍します。
主に重機の搬送などで使用されています。
土砂の運搬だけでなく、車両も運搬する必要がある現場では1台で2台分の活躍が期待できるでしょう。
農業用ダンプ
農業用ダンプはデッキが広くあおりが低いダンプです。
そのため、家畜の飼料など軽く大きなものを運ぶのに適しています。
農業に関しては一般的なダンプより使い勝手がよく、作業効率をアップしてくれます。
船底ダンプ
船底ダンプとは、アオリ底の内側に傾斜をつけるよう両サイドを削り落とし、船底のような形状をした荷台を持つダンプです。
垂直のダンプと比べて傾斜がある分、土砂が詰まらないため、水気の多い土砂を運ぶ作業に適しています。
リアゲート付ダンプ
リアゲート付ダンプとは、水平ゲートやリアゲートフラットなどとも呼ばれ、リアゲートがフラットに開くダンプです。
通常リヤゲートは上側が固定されて下側が開くようになっているのに対して、上側が開きフラットにできます。
フラットにできることで、土砂などが引っかからずスムーズにおろすことができ便利です。
深ダンプ
深ダンプとは別名、土砂禁ダンプとも呼ばれ、一般的なダンプよりアオリを高く作ったダンプです。
土砂などの重量物の搬送は禁止されており、飼料や木材チップなど軽量で体積の多い積載物を搬送するのに適しています。
産業廃棄物などの処理現場で使われることもありますが、清掃業者などがペットボトルなどを搬送する際にも用いられます。
アオリを高く作っていますが、積載量はアオリの高さと比例しないので注意しましょう。
ダンプトラックを操縦する際はいつもより慎重に
ダンプの荷台を操作する場合は細心の注意をはらい作業をおこないましょう。
ダンプは荷台をかなりの高さまで持ちあげることができ、また多くの土砂を一度に落とすので、慎重な操作をしないと大きな事故につながる恐れがあります。
注意点は、きちんと目的の場所に停車しているか、周囲に人や物がないかを十分確認することです。
ダンプの荷台操作では毎年たくさんの事故が発生しています。
実際にあった事故事例でいえば、ダンプの荷台をあげての作業時に周りの障害物の確認を怠ったため、荷台が電線に引っかかってしまった事例です。
この事故により、送電線の一部が切断され、近所の家庭が停電になり電気会社による損害賠償請求がおこなわれました。
もう一つは自動車整備士が油圧ホース交換のため、安全棒を使用せず荷台をあげた際、荷台が落下し挟まれて死亡した事故です。
原因としては油圧が抜けたことですが、安全棒を差し込んでいれば未然に防げていた事故でもあります。
このように安全を確保せずに作業していると、事故を起こす可能性が高くなり危険です。
ダンプの荷台事故は未然に防げたものも多く、『いつもしているから大丈夫』といった気のゆるみで発生することがほとんどです。
そのためダンプの運転中はもちろんのこと、荷台の操作でも十分安全を確認し作業をおこないましょう。
まとめ
ダンプとは荷台を持ちあげることで荷物をさっとおろすことができる車両です。
土砂などの積載物を搬送することが多く、トラックにはない特徴があります。
荷台にはたくさんのパーツが使用されており、日常的にダンプを使うのであれば各パーツ名称は覚えておきましょう。
また、ダンプと一口にいっても種類はさまざまです。
一般的な荷台が後方に持ちあがるタイプから、横にも傾けることができるタイプ、アオリが高く軽量物を大量に運ぶことができるタイプなど使用用途によって形状の違いがあります。
また、ダンプ操作を誤ったり不注意による事故が毎年たくさん発生しています。
重量物を運ぶことの多いダンプだからこそ、安全面には十分注意し作業をおこないましょう。
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- ダンプは荷台を持ちあげ積載物を流し落とすことができる特徴を持つ
- 荷台だけをみてもさまざまなパーツが使用されている
- 形状や使用用途によってダンプの種類も豊富にある