もっと走れる車を目指して機能を進化 いすゞ大型トラック「ギガ」を改良して発売
月刊ITV 2020年8月号
いすゞ大型トラック「ギガ」を改良して発売
大型トラック改良……いすゞ
もっと走れる車を目指して機能を進化
いすゞ自動車㈱は、大型トラック「ギガ」を改良し、2019年12月26日より全国一斉に発売した。
今回の改良では、「ぶつからない」を目指して、歩行者検知機能付プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減/衝突回避支援)をはじめとした各種先進安全装備を拡充。また、「つかれない」を目指して、快適性・居住性向上のアイテムを追加。さらに、「こわれない」を目指して、コネクテッド機能を進化させ、遠隔地でも確認可能な車両モニタリング項目の拡充を行った。いすゞは今回の「ギガ」改良で、「もっと走れる明日のために。」をコンセプトに掲げており、商品力に一層磨きをかけ、これからも「運ぶ」を支えていくとしている。
なお、東京地区希望小売価格は、GVW25トンGカーゴ(2PG-CYJ77C)ハイルーフキャブ・エアサスペンション、ウイングバン完成車で25,978,700円(税込)。年間目標販売台数はギガシリーズ全体で10,000台としている。
「ギガ」の主な特長
【先進安全装備の充実】
ハイビーム走行時、先行車や対向車の光をカメラで検知し、光が当たる箇所を自動的に遮光する。自車速に応じた集光(高速)・拡散(低速)制御や、国内トラックでは初めてコーナー方向に集光する電子スイブル制御を搭載。これにより夜間の視認性を向上し、安全運行に貢献する。
・ドライバーステータスモニター(DSM)ドライバーの脇見、開眼、運転姿勢の状態をピラーに搭載されたカメラでモニターし、前方への注意不足を検知すると警告を発し、注意喚起により、居眠り運転等の事故抑制に寄与。
・ブラインドスポットモニター(BSM)新たにキャブの四方に近距離ミリ波レーダーを配置し、死角エリアの自転車や歩行者、自動車、バイクを検知してアラームとピラー部の警告灯でドライバーに警告。右左折時の自転車や歩行者の巻込みや交差点での出会い頭、車線変更時などの事故抑制に効果を発揮する。
【快適性・居住性の更なる向上】
・新ハイルーフ&専用大型ヘッダーコンソール居住性の向上、空力と空間を両立させた、全高3.8m級の新ハイルーフを新たに開発。ハイルーフ内の前面には専用の大容量大型ヘッダーコンソールを配備し、クラストップの室内高と収納容量を実現。
・高機能シート(運転席)欧州で高い実績を誇るイスリングハウゼン社の高機能シートを採用。シートバック中折れ機能(ショルダー調整)やサイドサポート機能等、ドライバー個々の体形に合わせた細かい調整が可能となり、安定した着座姿勢を提供。また、シートヒーターやシートベンチレーション機能により、長距離・長時間運行での快適な乗り心地を実現する。
【自己診断機能およびセーフティドライブ報告機能を拡充】
・自己診断機能従来から診断可能であったエンジン、DPD、スムーサーGxなどの車両心臓部のモニタリングに加え、尿素水残量やエンジンオイル交換までの残走行距離、バッテリー電圧やタイヤ空気圧の状況を車両自身が診断。遠隔地の運行管理者にパソコン画面を通じて知らせることで、より確実な運行の実現に貢献。
・セーフティドライブ報告機能安全装置の作動状況や使用状況を、遠隔地の運行管理者にパソコン画面を通じて知らせる。運転に潜むリスクを見える化することで、さらなる安全運行に向けた運転指導が可能となる。また、プリクラッシュブレーキ作動等の緊急度の高い状況が発生した場合には、パソコン画面へ即時知らせ、迅速な状況把握を可能とした。
いすゞとAB VOLVOが戦略的提携に関する覚書を締結
商用車分野での戦略的提携
いすゞ自動車㈱とAB VOLVOは、商用車分野における戦略的提携に向けた覚書を締結した。
自動車業界は、100年に一度といわれる大変革期に直面しており、特に商用車の分野においては、物流業界におけるさまざまな課題や、世界各地のユーザーの幅広いニーズに応えるため、先進技術への対応を含めた新たなソリューションの創出が求められている。このような課題を共有した両社は、対等かつ良好な関係を構築し、それぞれが得意とする商品や展開地域を相互に補完しながら、商用車業界に新たな価値を生み出していくための最適なパートナーであるという認識が一致し、長期的な協業機会について検討していくこととなったもの。
今後両社は、トップマネジメントにより組織するアライアンスボードのもと、主に「先進技術/CASE対応に向けた技術的な協力体制の構築」「日本およびアジアを中心とした海外市場での大型トラック事業強化」「来るべき物流革命に向けた中・小型トラックの幅広い協業可能性を追求」について協業の形態や対象範囲を検討していくことになる。
AB VOLVO社のMartin Lundstedt CEOは、「AB VOLVO社といすゞはゆるぎない信頼関係のもと、価値観やWin-Win精神を共有してきました。先進技術やその他あらゆる分野で幅広い協業を進めて行くことでお客様や事業パートナーのニーズに応えていきます。また、本協業はUDにとって更なる成功への旅立ちになるでしょう」と述べている。
また、いすゞの片山正則社長は、「いすゞとAB VOLV 社は、商品、技術、地域の視点で両社のマッチングは最適であり、協業可能性はあらゆる商用車領域で世界各地に存在すると確信しています。両社の協業は、来るべき物流革命の時代にお客様と社会の新たな価値を生み出す機会になるでしょう」と語った。
両社は、上記の戦略的提携の第一弾として、特に日本およびアジア地域での事業を強固にしていくことを目的に、ABVOLVO社が保有するUDトラックス㈱およびUDブランドで展開している海外事業について、いすゞに譲渡するための手続きを開始することに合意している。今後は、対象事業の決定、いすゞによるデューデリジェンス、および関連当局の認可を経た上で、最終的な譲渡価格を合意し、2020年末までの手続き完了を目指すとしている。
いすゞとAB VOLVO社は、この戦略的提携を通じて、物流の将来課題に挑み、社会とユーザーに提供する価値の最大化と、商業車業界の新たな価値の提供を目指すことになる。
■会社概要
・いすゞ自動車株式会社本社:東京都品川区南大井6-26-1 大森ベルポートA館 事業内容:自動車、輸送用機械器具、原動機等の製品およびその部品ならびに関連する資材・用品の製造、販売
・Aktiebolaget Volvo(AB VOLVO)本社:SE-405 08 Gothenburg, Sweden 事業内容:トラック事業、バス事業、建設機械事業、船舶用エンジン事業
いすゞとHondaが共同研究契約を締結
FC大型トラックの共同研究契約
いすゞ自動車㈱と本田技研工業㈱の研究開発子会社である㈱本田技術研究所(本社:埼玉県和光市、三部敏宏社長)は、燃料電池(FC)をパワートレインに採用した大型トラックの共同研究契約を締結した。
現在、世界的な課題である環境負荷低減に向けて、自動車業界としてモビリティの排出ガス低減や低炭素化、そしてエネルギーセキュリティ観点での再生可能エネルギー活用への取り組みが求められている。
こうした環境下、いすゞは、「運ぶ」を支える商用車メーカーとして、低炭素で持続可能なエネルギーの活用を目指しクリーンディーゼルや天然ガス自動車(NGV)用エンジン、電気自動車(EV)など、ユーザーの用途やニーズに合わせたパワートレインの研究・開発に取り組んでいる。また、Hondaは、カーボンフリー社会の実現に向け、ハイブリッド車やEVなどに加え、究極の環境技術として燃料電池車(FCV)の研究・開発に30年以上にわたり取り組んでいる。
FCや水素エネルギーの利用拡大には、現在はコストやインフラ整備など普及に向けた課題がまだあり、1社のみでなく業界で広く取り組んでいく必要がある。そうした中、いすゞの大型トラック用次世代パワートレインのラインアップ拡充に向けた検討と、Hondaの水素社会実現に向けたFC技術の乗用車用途からの活用拡大の検討という、両社の技術研究目的が一致し、このたび、FC大型トラックの共同研究を行うという合意に至ったもの。
いすゞの大型トラック開発技術とHondaのFC開発技術という、長年培ったそれぞれの強みを生かし、FCパワートレインシステムや車両制御などの基礎技術基盤の構築を目指すことになる。この共同研究を通じて、いすゞとHondaはユーザーに求められるクリーンで低騒音、低振動な大型トラックを実現するとともに、FCトラックや水素エネルギー活用が物流業界をはじめとした社会全体の産業の発展と水素社会の早期実現に貢献できるよう業界で広く検討を進めている。
■会社概要
▽いすゞ自動車株式会社・本社:東京都品川区南大井6-26-1 大森ベルポートA館 ・事業内容:自動車、輸送用機械器具、原動機等の製品およびその部品ならびに関連する資材・用品の製造、販売
▽本田技研工業株式会社・本社:東京都港区南青山二丁目1番1号 ・事業内容:輸送用機器(二輪車、四輪車、汎用製品など)の製造、販売
新明和…コミュニケーションツールを開発
ツール…新明和工業
特装車の稼働状況を把握
新明和工業㈱はこのたび、特装車の稼働状況をスマートフォンで把握するコミュニケーションツール「新明和スマートコネクト」を開発。利用者への公開に先行し、2020年4月より同社製品のメンテナンスを行う新明和オートエンジニアリング㈱による運用を開始する。
「新明和スマートコネクト」は、新たに開発した専用アプリケーションの操作により、導入した特装車の稼働状況をスマートフォンを介して容易に確認できるコミュニケーションツールである。ツールの簡易診断機能を使用することで、稼働時に生じがちなトラブルの早期発見が可能となり、その解消をサポートする仕組みとして、修理窓口の案内機能も備えている。
2020年10月からは、対象製品を所有しているすべてのユーザーに「新明和スマートコネクト」を提供できるよう、環境整備を進めるとともに、今後は段階的に対象製品を増やし、同社製品の稼働率と品質向上に貢献していくとしている。
なお、適用スマートフォンは、Android Ver.8以上、もしくはiOS13以上のソフトがインストールされたスマートフォンとなっている。
■アプリの機能
(1) 接続サポート機能スマートフォンと製品(初回は「テールゲートリフタ」)近距離無線の接続を確実かつ容易に行える。
(2) 簡易診断機能診断ボタンをタップすると、製品の稼働状況が表示される。
(3) 修理窓口案内機能簡易診断の結果やトラブル発生時の対応窓口として、最寄りの修理窓口の連絡先を表示し、当該場所までナビゲーションをする機能を搭載。
(4) 新着情報表示機能登録された製品に関する“お役立ち情報”を随時表示。
(5) 簡易取扱説明機能動画や説明文書の表示により製品の取扱い方法をわかりやすく解説。
■サービス対象製品
2020年4月以降に販売する「1トンかくのうゲート(RAK10)」と「1.5トンマルチゲートⅡ(RAX15)」の新明和工業製テールゲートリフタが対象製品となる。
■費用
アプリは無償での提供となるが、各種機能を利用した際のサーバー利用料、および通信費は利用者負担となる。
自動運転バスの公道実証を神姫バスなどが実施
播磨科学公園都市発のサービス実用化へ
神姫バス、ウエスト神姫、アイサンテクノロジー、埼玉工業大学、ティアフォーなどが参画し2019年12月5日~9日の5日間にわたり、兵庫県の播磨科学公園都市で自動運転の公道実証運行が行われた。
この公道実証運行では、公園都市内の公道約3㎞をマイクロバスタイプの自動運転車両を走行させたほか、期間中には小型自動運転EVの乗車体験なども実施された。 実証地の播磨科学公園都市は、兵庫県南西部の西播磨地域の山間部に位置しており、大型放射光施設の「SPring-8」やX線自由電子レーザー施設の「SACLA」をはじめとする先端技術の研究拠点のほか医療施設なども設置されている。すでに、2018年5月には兵庫県、神姫バス、ウエスト神姫、SBドライブが共同で、フランス・NAVYA社の自動運転EVバス「NAVYA ARMA」を用いた実証実験も行われている。
今回の公道走行実証では、神姫バスとウエスト神姫がドライバーと運行管理、アイサンテクノロジーが実証運行の全体調整と高精度3次元地図を作成、アイサンテクノロジーから委託を受けた埼玉工業大学が自動運転車両を提供、ティアフォーが自動運転技術の提供と実証オペレーション支援をそれぞれ担当した。
「バスタイプリエッセII」をベースにした車両にドライバーとオペレーターが搭乗し、遠隔監視を行った状態で、自動運転ソフトウェア「Autoware」と事前に作成した3D地図により走行。実装した機能は自己位置推定や障害物認識(停止、回避)などで、都市内の公道約3㎞(芝生広場から理化学研究所まで)の区間を走行し、理化学研究所関係者のほかに一般市民からも試乗者を募った。埼玉工業大学によると、兵庫県の公道を本格的な自動運転AIが搭載された自動運転バスが走行するのは今回が初めてとのこと。
また、公道走行の実証期間中には、小型自動運転EVの乗車体験も実施された。車両はヤマハ発動機製の電動ゴルフカートにティアフォーが自動運転システムを搭載した「Milee(マイリー)」を使用。車両はアイサンテクノロジーが提供した。今回の乗車体験では、遠隔型自動運転により時速7㎞(車両最大速度は時速19㎞)で、構内の駐車場を走行した。
そのほか、実証期間中には「スマートシティ・ラボ@播磨科学公園都市」が開催(主催:兵庫県企業庁・西播磨県民局)され、次世代のモビリティサービスなどを体験できる機会として、電動キックボードや超小型EVの試乗体験、遠隔診療やドローン搬送のデモ、自動運転実用化に向けた課題やスマートサービスをテーマにしたフォーラムも行われた。
なお、2018年5月20日~23日の4日間、播磨科学公園都市の理化学研究所の播磨事業所敷地内で行われた「自動運転EVバスの実証実験」は、兵庫県、神姫バス、ウエスト神姫、SBドライブが共同で行ったもので、その詳細は次の通りである。
実証実験が行われた播磨科学公園都市は山あいに囲まれた南北6㎞東西2㎞の学術公園都市で、人と自然と科学の調和をコンセプトにしている。大型放射光施設SPring-8やSACLA等の科学技術拠点、粒子線医療センター等の医療施設、兵庫県立大学、播磨光都サッカー場、産業団地、住宅地等があり、現在の交流人口は60万人を超えている。SPring-8へ来訪する研究者、サッカー場を利用する子供や学生などからの移動の需要はあるものの、自家用車を持たない利用者も多い。実証実験は、各拠点までのアクセス手段を自動運転技術によって確保するための可能性を検証するため行われた。
実証実験は、理化学研究所播磨事業所の北管理棟から研究交流施設までの往復約1.7㎞を、自動運転EVバス「NAVYA ARMA(ナビヤアルマ)」2台が自動運転レベル3(条件付き自動運転)で走行した。「NAVYA ARMA」はハンドルやブレーキペダルがないフランス製の15人乗りの車両となっている。平均走行速度は時速15㎞で、4箇所(中央管理棟、北管理棟、研究交流施設、食堂西)ある停留所を15分間隔で運行。4日間で約900人が乗車した。また、遠隔運行管理システム「Dispatcher(ディスパッチャー)」により、走行現場から15㎞離れたウエスト神姫の相生営業所で2台同時に監視を行った。