大型トラックの隊列走行開発はどこまで進んだ?
西襄二(ニシジョウジ)
1959年より37年間,トラック販社,メーカーにおいて品質保証,商品企画・開発,提 案型営業支援システム開発,外部物流システム改善支援,等に従事。1997年,物流問題研究所設立。産業界の物流動向研究を通じ,事例・提言等を定期発表。また,各方面で講演を行う等,幅広く活動中。
隊列走行の実用化に向けた実証試験が繰り返されている。
技術開発の現状と課題、法規制の考え方、運用面の狙いと課題など内外の最近の進展をみてみよう。
国内実証試験の経過と2019年度の計画
隊列走行技術の開発は、自動車の自動運転化の一環として国内では1990年代後半に民間で着手されてから、既に20年以上の歴史がある。近年の動きとしては、科学技術基本法(平成7年11月15日法律第130号)の施行があり基本的には5年毎の見直しを重ねて今日に至っている。第5期(2016年度から2020年度の期間)の見直し時点で〝ソサエティ5.0〟なる呼び方でIT(情報技術)やA(I人口知能)の進展を見込んだ未来社会を表すことが提唱された。その中に上記の隊列走行の開発も織り込まれたのである。2018(昭和30)年の閣議決定事項の中に記載がある
(図表1)。なお、ごく最近の動きを含めて整理したのが
(図表2)である。
新東名高速上り方向を走行するトラックの隊列(平成30年1月23日、静岡県磐田市)2018年版「日本のトラック輸送産業・現状と課題2018(全ト協)」より
(図表1)最右欄のKPIは、KPI(Key Performance Index:主要業績評価指標)を表しており、年度の区切り毎に行う施策の効果を示している
(図表2) 図表1に示された各期の目標と近年の実績を再整理した
隊列走行実用化の狙い
隊列走行の開発の狙いは、物流業界の深刻な運転者不足に最大の動機がある。わが国は世界でも先端をゆく人口の高齢化と人口減少が指摘されているが、これと共に全産業の平均と較べて賃金の格差があることが二重の人手不足を招いている要因である。
物流の構成機能中でも運転職の場合は、長時間労働、不規則労働、神経をすり減らす環境下での労働、そして前述の賃金レベルの低さなどから若い労働力の参入が減少している業種である。政府が旗を振る〝働き方改革〟の重点業種の一つとされている所以だ。ここに最新の技術を注ぎ込んで改善することが隊列走行実用化の狙いである。
温度差がある実用化目的の背景
〝隊列走行〟に対応する英語は〝Platoonプラテゥーン〟が使われており、ヨーロッパやアメリカでも開発が進められている。本稿中でしばしば触れているとおり、これが実用化される場合の利点は
〝(ア)省人化(2台目以後のトラックを無人運転化し、少ない運転者で大量の貨物が輸送できる)〟と〝(イ)省エネ化(2台目以降の後続車を直前車に近接して走行させ空力抵抗の減少を利用した燃費向上効果)〟の二つに大別して考えられている。
わが国の場合、
(ア)を優先させ副次効果として
(イ)を目指しているのに対し、これまでの取材を通じてヨーロッパでは
(イ)を優先させているように筆者は理解している。アメリカもどちらかというと
(ア)を意識して開発と実証実験を進めているように観察される。
(図表3)ドライバー不足は先進国共通の物流業界の課題だ。ここに掲げた3国の場合、高齢化、若年者の参入が少ない、全産業の平均より30%前後低い賃金レベル、長時間労・不規則労働時間など多少の違いはあっても共通の課題である。ドライバーの生産性を上げる為、そして、安全性の向上を目指した自動化は共通の施策となっている。この表の数値は推定値を含むので必ずしも正確ではないが、傾向を理解する参考資料として筆者が作成した
隊列走行を支える基盤技術
基盤技術は大別してトラック単体としての自動化に加え、隊列を組んで走行するトラック相互間で瞬時に情報の交換が必要である。通信技術革新からみた隊列走行は総務省が管轄する通信領域のいわゆる5G(通信技術の進度を表す呼び方)の活用が自動運転・隊列走行を可能にする要だといわれている。
通信技術は、携帯電話(いわゆるガラケー)の普及が始まった1980年代からほぼ10年毎に通信速度とこれを利用する端末数が幾何級数的に向上するという進化をとげ、現在、第5世代(5G)の実用化目前とされている。
5Gの通信速度は4Gの100倍となる10Gbpsに達する〝超高速性〟が特徴とされるが、その他に1平方㎞当り100万台という〝多数同時接続性〟に加え、従来の10分の1となる1ミリ秒(0.001sec)程度の〝超低遅延性〟の三つの特徴を持つ。これが、「IoT」と呼ばれるあらゆるものがインターネットにつながる基盤技術となることが期待されている。
なお、法規制との関係については自動運転関連では道路交通法、通信関係では電波法などの改正と関係するが、詳細については紙幅の関係で本稿では割愛することをご了解願いたい。
ソサエティ5.0と隊列走行
人類の長い歴史の各段階を象徴する呼び方に番号を付して次のように呼ぶことがある・・狩猟社会―ソサエティ1.0、農耕社会―ソサエティ2.0、工業社会―ソサエティ3.0、情報社会―ソサエティ4.0(ウィキペディア日本語版)。そして、これから大きく変革を遂げると予想される社会を〝ソサエティ5.0〟とする。これはわが国発の呼び方で、その変革とは〝これからの世界はディジタル化をベースに広範な分野での技術革新が進む〟ことの総称だ。
物流分野に例をとれば、既に物流センターで実用化が進む自動化が挙げられるが、大型トラックの隊列走行も運転者不足や省エネ等に対する対応策の一つのカギとして開発が進められているのである。
実用化は何時から?
隊列走行の実用化の時期だが、前述したが、政府が平成30年6月5日の閣議で決定した『未来投資戦略2018―「ソサエティ5.0」「データ駆動社会」への変革-』による実行計画によれば、2019年度の実証実験で技術的課題をクリアしたら、次の5年間の内に商用運転を目指す目標がある。
(図表4)2019年度実証実験・後続車無人システム概要(出所:経済産業省・国土交通省)
極東開発…テールゲートリフタ「パワーゲートGシリーズ」モデルチェンジ
ゲート…極東開発工業
大幅な軽量化などを実現
極東開発工業㈱は、後部格納式テールゲートリフタ「パワーゲートGⅡ1000/GⅢ1000」(最大許容リフト荷重1,000㎏)をモデルチェンジし、2019年6月3日に発売した。
今回のモデルチェンジは、構造を根本から見直すことで、剛性を確保しながら同社従来機種に比べGⅡ1000タイプのアルミ仕様で最大で約60㎏のキット重量の軽量化をはじめ、プラットホーム先端形状の変更による業界トップクラスの台車乗込み性能や、キャスターストッパおよびプラットホーム(荷物搭載部)表面の改良などで、さらなる安全性と使いやすさを実現させている。
テールゲートリフタは、トラック荷台の後部に取り付けたテールゲートが地面と荷台の間を昇降する装置で、荷物の積み降し作業の効率化・省力化を図るもの。極東開発では、垂直昇降式(V型)、アーム式(S型)、後部格納式(G型)、床下格納式(CG型)など、様々な機種のテールゲートリフタをニーズに合わせて開発し、シリーズ化している。
大幅な軽量化を実現「パワーゲート GⅡ1000」
プラットホーム先端形状の変更で台車の乗込み性能を向上させている
キャスターストッパの改良で使いやすさが向上
「パワーゲートGⅡ1000/GⅢ1000」の特長
(1)キット重量の大幅な軽量化
プラットホームを構成するブロックの構造変更と、ブロック同士の接続部を少なくすることによるプラットホームの軽量化や、リフトフレームとリフトアームの構造変更によるリフトメカの軽量化などにより、剛性を確保しながらも同社従来機種に比べ、キット重量を最大で約60㎏(GⅡ1000タイプLアルミ仕様)軽量化し、ワンランク上の積載量の確保を実現。
(2)プラットホーム先端形状変更で業界トップクラスの台車乗込み性能を実現
プラットホームの先端形状を変更することで、同社従来機種に比べ、荷積み時のカート台車押し込み操作力を最大約24%低減するとともに、荷卸し時におけるカート車輪接地時の衝撃を最大約30%低減させ、業界トップクラスの台車乗込み性能を実現。
(3)キャスターストッパの改良でさらに使いやすく
プラットホーム後端部のキャスターストッパの形状を根本から見直し、キャスターの脱輪を防止する構造としたほか、足で操作するレバーも変更し、接触部位を「点」から「線」とすることで、さらに使いやすくなった。
(4)プラットホーム表面の滑り止め効果向上でより安全に
プラットホーム表面の形状を見直し、突起の高さを際立たせることで、同社従来機種に比べ、ウェット時の場合で最大約50%滑り止め効果がアップ。雨天時等においても安全な作業を実現。
(5)独自のサービス支援システム「K-DaSS(Kyokuto Data Sharing Service)」とスイッチパネル内のエラーランプ搭載でサービス性を向上
極東開発が専用に開発したスマートフォン用アプリ「サービスツールアプリ」と近距離無線通信機能での通信により、車両メンテナンスやデータの収集を可能とする独自のサービス支援システム「K-DaSS」サービスツールシステムを搭載するとともに、点滅によって機器の状況を知らせるエラーランプをスイッチパネルに新設することで、サービススタッフによる稼動状況やエラー履歴の確認を可能とし、サービス性の向上を実現。
希望小売価格と販売目標
・4トン車級GⅡ1000タイプM(アルミ仕様オートターン)バンボデー車取付の場合…販売価格:101.5万円~(取付費込み、消費税抜き)
・販売目標台数…2,400台/年(Gシリーズ全体)
滑り止め効果を向上させたプラットホーム先端形状
「K-DaSS」サービスツールシステムのイメージ図
スイッチパネル内に搭載されたエラーランプ
いすゞ…小型トラック「エルフ」の一部車型を改良し発売
改良…いすゞ自動車
ハイブリッド車に先進安全装置を標準装備
いすゞ自動車㈱は、小型トラック「エルフ」のハイブリッド車と車両総重量7.5トンを超えるディーゼル車を改良し、2019年5月30日より全国一斉に発売した。
今回発売した「エルフ」のハイブリッド車に、平成28年度排出ガス規制に対応したエンジン「4JZ1」を搭載。同時に国内小型トラック初のステレオカメラを採用したプリクラッシュブレーキ等、先進安全装置を標準装備。さらに、通信端末を標準搭載することによりコネクテッド化し、車両コンディションの遠隔把握及び本データを活用した高度純正整備「PREISM(プレイズム)」の実施が可能となった。
また、車両総重量7.5トンを超えるディーゼル車には、安全性能向上のために新たにブレーキ・オーバーライド・システムを全車標準搭載。同時に、高度OBDに対応させている。
先進安全装置などが搭載された小型トラック「エルフ」
「エルフ」ハイブリッド車の主な特長
・クラストップレベルの燃費
性能燃料噴射量フィードバック制御技術をはじめ、主要コンポーネントを一新し、フルリニューアルした最先端ハイパフォーマンスディーゼル4JZ1エンジンを搭載。平成28年排出ガス規制への対応と燃費の両立を実現し、平成27年度燃費基準+15%を達成。結果、低排出ガス車認定取得となり、新車購入時の自動車重量税・自動車取得税がともに免税となる。なお、特例措置は自動車重量税は令和元年5月1日~令和3年4月30日までの登録車で、自動車取得税については平成31年4月1日~令和元年9月30日までの登録車が対象となる。なお、車両総重量7.5トンを超えるディーゼル車の重量税については、令和元年5月1日~10月31日までは75%減税、令和元年11月1日~令和3年4月30日までは50%減税となる。
・先進安全装置を標準装備
小型トラックの使用シチュエーションに応じて市街地など低速域での事故を想定し、検知に優れたステレオカメラを国内トラックで初めて採用。これにより、昼夜を問わず車両・歩行者・自転車といった障害物を立体的に検知し、万が一衝突の恐れがあると判断した場合には警報および制動装置を作動させ、衝突被害を軽減あるいは衝突回避を支援する。また、これらの先進安全装置の搭載により、ASV減税の対象となる。
新型エルフ搭載の先進安全装置は、①プリクラッシュブレーキ(衝突被害軽減/衝突回避支援)、②車間距離警報、③誤発進抑制機能(スム―サーEx車のみ)、④車線逸脱警報(LDWS)、⑤先行車発進お知らせ機能、⑥電子式車両姿勢制御システム「IESC」、となっている。
・通信端末を標準搭載
今回、「エルフ」のハイブリッド車にコネクテッドトラックとして通信端末を全車標準搭載。車両心臓部のコンディションを、インターネットを介してユーザー自身で把握可能。同時に、いすゞも詳細データを把握。
「PREISM」は、車両コンディションデータの活用により“未然に防ぐ・すぐ直す”をコンセプトとした高度純正整備で、休車時間の短縮に貢献するサービスである。また、いすゞのキャプティブファイナンス会社であるいすゞリーシングサービスとのメンテナンス契約により、いすゞが責任を持って「PREISM」を実施する「PREISMコントラクト」の提供も開始。車両の稼働最大化に貢献している。
価格と販売目標
▽車型(2SG-NJR88AN)、主な仕様(ディーゼルハイブリッド車/平成28年度排出ガス規制適合/平成27年度重量車燃費基準+15%達成/キャブ付きシャシ)、エンジン(4JZ1-TCS/110kW(150PS))トランスミッション(6速Smoother-Ex)…5,273,000円(消費税抜/東京地区希望小売価格)
▽車型(2RG-NPR88YN)、主な仕様(平成28年度排出ガス規制適合/平成27年度重量車燃費基準+10%達成/木製平ボディ)、エンジン(4JZ1-TCS/110kW(150PS))、トランスミッション(6速Smoother-Ex)…5,226,000円(消費税抜/東京地区希望小売価格)
・目標販売台数…44,000台/年(エルフ全体)
最先端ハイパフォーマンスディーゼル4JZ1エンジン
先進安全装置
国内小型トラック初のステレオカメラを採用するなど先進の安全性のレベルを向上させている
FUSO…オーストラリア市場に新型大型トラックを投入
オーストラリア…FUSO
日本、香港、シンガポール、ニュージーランドに続く
三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、2019年5月16日、オーストラリアのブリスベンで開催された「Brisbane TruckShow」で新型大型トラックを発表し、2019年6月1日に発売を開始した。
FUSO大型トラックは、オーストラリアとニュージーランドでは「Shogun(ショーグン)」の名称で呼ばれている。欧州排出ガス規制「ユーロ6」に準拠し、コモンレールシステムを採用した11Lの「OM470」型エンジンを搭載。従来車と比較して、燃費向上を実現している。さらに、新型の12速機械式自動トランスミッション(AMT)「Shift Pilot(シフトパイロット)」で、積載量の変動や道路条件の影響に左右されにくいスムーズな運転を実現。また、5万㎞近くに及ぶ走行試験をオーストラリア国内で実施し、現地での運用においても、同車両の優れた燃費性能や先進的な安全機能は確認済みである。これらの安全機能には、車間距離保持機能付オートクルーズに自動停止と自動発進機能をプラスした「プロキシミティー・コントロール・アシスト」、前方の停車車両だけでなく歩行者の動きも検知できる改良型「アクティブ・ブレーキアシスト4(ABA4)」が含まれる。
同車種の開発にあたっては、ドライバーの快適性を最重視した上で、シートベルトを内蔵したベルトインシートを全車に採用。前後移動やリクライニング時など、シートの位置に関係なく、常に良好なフィット感が得らる。また、ブレーキペダルを離すことで始動できるクリープ走行機能も新たに追加し、渋滞時の操作負担の軽減を図っている。オーストラリアおよびニュージーランド向けの車両開発では、両市場のドライバーに特有のシフト操作を考慮して、シフト・マッピングの最適化を実施。さらに、振動の軽減を強化するとともに、エアサスペンションのサポートでクッション性を高めたシートを採用したことで、荒れた路面の長距離走行においても疲労が大幅に軽減される。
新型大型トラックは2017年5月に日本で21年ぶりのフルモデルチェンジとして販売を開始し、同年8月に香港で国際デビューを飾っている。その後、同車両をシンガポールやニュージーランドなど、アジア太平洋地域の市場にも投入されている。
日本、香港、シンガポール、ニュージーランドに続きオーストラリア市場に投入されたFUSOの新型大型トラック
三菱商事都市開発、MCUD鶴ヶ島に着工、全棟賃貸借契約締結済
三菱商事都市開発は、埼玉県鶴ヶ島市富士見で開発計画を進めてきた物流施設「MCUD鶴ヶ島」について、このほど安全祈願祭を行い、全棟賃貸借契約締結済みで着工した。竣工は来年春の予定。入居テナントは東京ロジファクトリー。
実装が進むヨーロッパのMaaS・スマートシティ【後編】
資源エネルギー庁は、省エネルギー技術戦略2016の「重要技術」を改定し、新たに自動走行システムやスマート物流システムなどを追加した。
日野車、安全システム進化2題大型バス及び中型トラックで、衝突予防自動停止システム搭載
トラックとバスの運用に伴う事故発生の危険をシステムとして軽減、或いは排除する技術開発が次々と進化している。日野自動車が6月に行った発表・試乗会から、自動化が一段と進んだ二つのシステムを紹介する。