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  3. 大型トラック「スーパーグレート」2019年モデル国内初の運転自動化レベル2機能を搭載
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    ITV_2019年12月号表紙

    月刊ITV 2019年12月号

    発行:令和1年12月1日 発行所:(株)日新(HP) 執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之・谷田裕子 表紙・レイアウト:望月満 記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄

    大型トラック「スーパーグレート」2019年モデル

    新モデル…三菱ふそう

    国内初の運転自動化レベル2機能を搭載

    三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、国内の商用車市場初となるSAE(米自動車技術会)が定める運転自動化レベル2に相当する高度運転支援機能を搭載した大型トラック「スーパーグレート」2019年モデルを発表。「スーパーグレート」2019年モデルは、2019年10月より全国の三菱ふそう販売会社及び三菱ふそう地域販売部門にて販売を開始した。 「スーパーグレート」2019年モデルは、レベル2相当の高度運転支援機能「アクティブ・ドライブ・アシスト」と従来モデルから性能をさらに向上させた衝突被害軽減ブレーキ「アクティブ・ブレーキ・アシスト5(ABAR5)」を新規搭載することで、ドライバーの大幅な負担軽減とより進化した安全支援機能を実現している。 「アクティブ・ドライブ・アシスト」は、車両前部の高精度レーダーと前方認識カメラを通じて道路状況や車線の情報を分析し、従来モデルから搭載されている全車速域に対応した追従型クルーズコントロール「プロキシミティ・コントロール・アシスト」によるアクセルとブレーキの制御に加え、ステアリングを制御することで車両を同一車線内に維持する「レーンキープ機能」を搭載。この機能はレベル2の高度運転支援を実現し、ドライバーの大幅な疲労軽減と安全をサポートする。また、従来の「車線逸脱警報システム」をさらに進化させた「車線逸脱抑制機能」では、60㎞/h以上で走行中にドライバーの意図しない車線逸脱が発生した場合にはステアリングを制御し、車両を車線内に戻す。 さらに「スーパーグレート」2019年モデルでは、性能を向上させた衝突被害軽減ブレーキ「ABAR5」を新規搭載し、より進化した安全支援機能を実現。「ABAR5」では従来のレーダーにくわえてフロントガラスに搭載した前方認識カメラを組み合わせることでより高い精度で障害物を検知し、前走車が停止している場合でもより高い衝突回避能力を実現した。また、歩行者に対し、より速い車速からでも衝突回避が可能となった。 同車は新たな先進安全支援装置も搭載し、ドライバーの安全支援機能をさらに強化した。「インテリジェント・ヘッドライト・コントロール」は、フロントガラスに搭載されたカメラが前方の交通状況や周囲の明るさを検知し、自動でハイビーム又はロービームに切り替え、ドライバーが自身で行う操作のわずらわしさを軽減できる。交通標識認識機能「トラフィック・サイン・レコグニション」は、カメラが認識した前方の交通標識をマルチファンクションモニターに表示することでドライバーの交通標識の見落としを少なくする。 「スーパーグレート」2019年モデルの誕生は、ダイムラー・トラックによるSAEレベル4の自動運転車両の実現に向けたグローバルな取り組みの一部である。「スーパーグレート」は、メルセデス・ベンツの「アクトロス」、フレートライナーの「カスケディア」に続いて、ダイムラー・トラックで3番目にレベル2の高度運転支援機能を搭載した大型トラックになる。2019年にダイムラー・トラックはレベル4の自動運転技術の開発に5億ユーロを投じることを発表し、日本、欧州と米国を拠点に自動運転技術の研究開発を行うスタートアップ「Autonomous Technology Group」を設立した。また、この投資の一部には自動運転技術開発を手掛ける米TORC Robotics社への出資も含まれる。このグローバルでの取り組みは、日本における法規制が整い次第、MFTBCがレベル4の自動運転技術を搭載したトラックを発表する準備が整ったことになる。

    スーパーグレート2019年モデル...ザ・トラック

    スーパーグレート2019年モデル

    「スーパーグレート」2019年モデルの主な特長 (新たに導入した先進安全支援装置)

    (1)アクティブ・ドライブ・アシスト (ActiveDriveAssist) ・「アクティブ・ドライブ・アシスト」は、車両の前後及び横方向の制御機能と、停止・発進支援機能を加えた追従型クルーズコントロール「プロキシミティ・コントロール・アシスト(Proximity Control Assist)」により、アクセルとブレーキおよびステアリングを制御することで、ドライバーの安全走行における運転操作を補助する。 ・「レーンキープ機能」は、走行時にカメラで車線を認識し、全速度域においてステアリングを制御することで、車両を車線内に維持する。 ・「車線逸脱抑制機能(Lane Departure Protection)」では、60㎞/h以上で走行中にドライバーの意図しない車線逸脱が発生した場合にはステアリングを制御し、車両を車線内に戻す。 (2)アクティブ・ブレーキ・アシスト5 (ABAR5=Active Brake Assist 5) 「アクティブ・ブレーキ・アシスト5」は2017年モデルで採用されたABAR4をさらに進化させた衝突被害軽減ブレーキである。ABAR5ではレーダーとフロントガラスに搭載されたカメラを組み合わせた高度な監視により、前走車が停止している場合でもより高い衝突回避能力を実現。また、歩行者を検知する精度も向上し、より速い速度からでも衝突リスクの軽減を可能にする。 (3)インテリジェント・ヘッドライト・コントロール(IHC) 「インテリジェント・ヘッドライト・コントロール」は、フロントガラスに搭載されたカメラが前方の交通状況や周囲の明るさを検知し、街灯が無い等の暗い道では自動でハイビームに切り替わり、対向車や前走車がいるなどの周囲が明るい場所では自動でロービームに切り替わる機能だ。 (4)「トラフィック・サイン・レコグニション(TSR)」 「トラフィック・サイン・レコグニション」は、カメラが認識した前方の交通標識をマルチファンクションモニターに表示する。 (5)「Truckonnect(トラックコネクト)」 スーパーグレートの2019年モデルでは、2017年モデルから搭載されているテレマティクス機能「Truckonnect」の機能もさらに進化させた。遠隔診断や車両管理の機能をアップグレードしたほか、トラックが特定の場所に出入りするとリアルタイムに通知するジオフェンシング機能を追加した。

    スペックと価格

    ・車型:2PG-FU74HZ ・エンジン:6R20(T2)型294kW(394PS) ・トランスミッション:ShiftPilot12速AMT前進12段後進2段 ・主な仕様:GVW25tリヤエアサス、フルキャブ、プレミアムライン ・東京地区販売価格:21,616.10千円(消費税含む:税率10%)

    アクティブ・ドライブ・アシスト...ザ・トラック

    アクティブ・ドライブ・アシスト

    西尾が「4K拡幅中継車」を導入

    中継車…西尾レントオール

    放送機器の総合展“Inter BEE”でお披露目

    総合レンタル事業を展開する西尾レントオール㈱(本社:大阪市中央区/西尾公志社長)は、レンタル業界初となる「4K拡幅中継車」を導入し2019年12月よりレンタルを開始した。それに先立ち、11月13日~15日3日間、幕張メッセで開催された「2019年国際放送機器展(International Broadcast Equipment Exhibition 2019/略称:Inter BEE2019)」の富士フイルム㈱のブースに特別展示され、本格的なお披露目を行った。

    Inter BEE 2019の富士フイルムブースに特別展示された西尾レントオールが導入した「4K拡幅中継車」...ザ・トラック

    Inter BEE 2019の富士フイルムブースに特別展示された西尾レントオールが導入した「4K拡幅中継車」

    ゆとりある室内スペース確保のため「4K拡幅中継車」は拡幅タイプとなっている...ザ・トラック

    ゆとりある室内スペース確保のため「4K拡幅中継車」は拡幅タイプとなっている

    車両は、GVW22トンのいすゞ低床エアサス3軸車(2PG-YY77CJC-SX-M型)をベースに拡幅タイプのボデーを架装し、ゆとりを持った中継作業が実現できる広い室内空間を確保している。製造は、特種車メーカーとして知られる京成自動車工業㈱(本社:千葉県市川市/小林広人社長)が担当した。車両寸法は、全長:10,700㎜、全高:3,650㎜、全幅:2,495㎜(拡張時プラス1,000㎜)で、55KVAの発動発電機や天井型エアコンなども搭載されている。また、カメラ機材や音声機器などを運搬する車両として、いすゞの中型車(2RG-FTR90V2-GDYH-M型)をベースにした支援車もセットで用意されている。 今回展示された「4K拡幅中継車」には4Kカメラ10台がセットされており、最大で4Kカメラ25台を接続できる高機能な機器が搭載されている。搭載の中継用機器はソニー製で、カメラレンズに富士フイルム製FUJINONレンズが採用されていることから今回のInter BEE 2019の富士フイルムブースに特別展示されたもの。中継車の内部も公開したことから、会期中に約2,000人の来場者が中継車を見学した。業界の専門家が来場するInter BEEに出展したことから、この中継車のレンタルの引き合いも数多くあったと西尾レントオールの担当者は話していた。

    来場者に公開された「4K拡幅中継車」の内部...ザ・トラック

    来場者に公開された「4K拡幅中継車」の内部

    なおInter BEEは、日本随一の音と映像と通信のプロフェッショナル展で、コンテンツビジネスにかかわる最新のイノベーションが国内外から一堂に集まる国際展示会である。デジタル・トランスフォーメーション時代におけるメディア産業の新たなユーザエクスペリエンスを提示する展示会として、「コンテンツ」を中核に位置づけ、コンテンツを「つくる(制作)」「おくる(伝送)」「うける(体験)」の技術要素を網羅したメディア総合イベントととして開催されている。 Inter BEEの主催は(一社)電子情報技術産業協会で、後援として総務省、経済産業省、NHK、(一社)日本民間放送連盟、(一社)電波産業会、(一社)デジタルコンテンツ協会、(一社)放送サービス高度化推進協会が名を連ねている。運営は、(一社)日本エレクトロニクスショー協会が担当している。 今回のInter BEE 2019は第55回目の開催で、出展者数は1,158社・団体2,125小間、海外からの出展は37ヵ国・地域から632社・団体となった。会期中の登録来場者数は40,839を記録した。

    カメラ機材や音声機器などを運搬するいすゞの中型車ベースの支援車もセットになっている...ザ・トラック

    カメラ機材や音声機器などを運搬するいすゞの中型車ベースの支援車もセットになっている

    高解像度での撮影を可能にする4Kビデオカメラ...ザ・トラック

    高解像度での撮影を可能にする4Kビデオカメラ

    「4K拡幅中継車」のベースシャシはGVW22トンのいすゞ低床エアサス3軸車である...ザ・トラック

    「4K拡幅中継車」のベースシャシはGVW22トンのいすゞ低床エアサス3軸車である

    夜間における後続車有人システムの隊列走行

    公道実証…日野いすゞ

    公道実証に参加

    日野自動車㈱といすゞ自動車㈱は、2019年11月19日から新東名高速道路において経済産業省および国土交通省が実施する夜間における後続車有人システムの隊列走行公道実証に参加する。 この実証は、経済産業省と国土交通省が「未来投資戦略2018」に基づき、高速道路でのトラック隊列走行の実現を目指して2018年1月より行っている公道実証の一環となる。今回は、大型車の交通量が増大かつ周辺車両から視認性が低下する夜間に実施することで、隊列走行の周辺を走行する一般車両への影響有無といった受容性について調査する。 トラックメーカーは、ドライバー不足をはじめとする物流業界の抱える課題解決に貢献すべく、技術開発をはじめさまざまな取り組みを行っている。隊列走行も有効な手段のひとつであり、社会インフラの整備状況や社会受容性なども鑑みながら、実現可能なものから段階的に実用化すべく技術開発を進めている。隊列走行の商業化には、技術開発のみならず、運用ルールを含めた社会インフラ整備、社会受容性の醸成、事業者の理解・参画も重要となる。

    日野自動車の夜間における後続車有人システムの隊列走行公道実証車両...ザ・トラック

    日野自動車の夜間における後続車有人システムの隊列走行公道実証車両

    いすゞ自動車㈱の隊列走行公道実証車両...ザ・トラック

    いすゞ自動車㈱の隊列走行公道実証車両

    「女性ドライバー向け試乗会」を開催

    試乗会…UDトラックス

    女性ドライバーが魅力的なトラックを議論

    UDトラックスは2019年9月10日と11日に、上尾市にあるUDエクスペリエンスセンターにおいて「女性ドライバー向け試乗会および意見交換会」を開催した。この試乗会と意見交換会は、ドライバー不足が深刻化する物流業界において多様性ある人材の社会参加を支援するための取り組みの一環として、現場で働く女性ドライバーと直接意見交換を行うことを目的に開催しているもの。 ボストンコンサルティンググループが2017年10月に公表した推計では、2027年の国内のトラック運転手は約24万人不足すると予測されている。これは、貨物需要の増加と少子高齢化によるドラバイバーへの就業率の低下が主な要因とされている。今後加速するドラバイバー不足に対し、国土交通省はトラックドライバーをめざす女性を応援する「トラガール促進プロジェクト」を2014年から展開している。 UDトラックスでは、トラックドライバーの不足が社会的な課題となる中、「人を想う」という基本コンセプトの大型トラック「クオン」を2017年に投入し、女性や初心者など多様な人材が簡単に運転ができ、燃費効率の優れたトラックを提供することで、人手不足という業界課題の解決に貢献している。

    UDエクスペリエンスセンターで開催された「女性ドライバー向け試乗会および意見交換会」...ザ・トラック

    UDエクスペリエンスセンターで開催された「女性ドライバー向け試乗会および意見交換会」

    参加者は過去最多

    多様性ある人材にとり働きやすい労働環境の整備と、業界イメージの改善に資する目的で2017年から「女性ドライバー向け試乗会および意見交換会」を開催している。3回目の開催となった今回は、2日間でおよそ30名の女性ドライバーが参加。参加者数は過去最多となった。 開会の挨拶でUDトラックスの丸山浩二専務執行役員は、「当社はボルボ・グループの企業として多様性を尊重する企業文化があります。人手不足などの業界課題の解決には女性をはじめとした多様な人材の活躍が必要になります」と物流業界の課題解決へ向けた決意を強調した。 また、開催について国内車両営業本部全国法人営業部の菅谷彰一ダイレクターは、「当社は一昨年、昨年と女性ドライバー限定の試乗会を開催し、物流誌等において多くの反響を頂戴致しました。我が国の営業用トラックドライバーの不足は大きな社会問題になっております。UDトラックスでは、誰でも簡単・快適に運転できるオートマチックトランスミッション「ESCOT-Ⅵ」が、「女性ドライバーの人材確保・育成」に繋がるソリューションの1つになれば幸いと考えております」と述べた。 今回の試乗会は「女性ドライバー視点からみた女性が乗りやすいトラックとは」や「現役女性ドライバーからみた女性が働きやすい運送業界とは」を主題としたワークショップ、クオンの試乗会、工場見学会、意見交換会で構成されており、特にワークショップでは今後の商品開発や運送業界の多様性を高めるため熱心な議論が行わた。

    プライバシー空間の確保の重要性

    「女性ドライバー視点からみた女性が乗りやすいトラックとは」では、特にトラックのキャビン内において「プライバシーの観点から、外部からの視線を遮断できるカーテンなど機能の充実」や「小物入れの拡充」など女性ドライバーならではの意見が出された。 クオンの車体設計を担当した女性エンジニアの田中茂美氏は、「女性ドライバーにとりいかにプライベート空間を確保するのが大切なのかを改めて実感しました。ワークショップなどでいただいた貴重なご意見を活かし、より『付加価値の高い商品』をお届けできるように今後の商品開発に取り組んでいきたい」とコメントしている。 また、「現役女性ドライバーからみた女性が働きやすい運送業界とは」については、「長時間労働の抑制」、「子 子育て支援支援制度」、「大型トラックが駐車できるインフラの整備」、「教育制度の充実」などのテーマで積極的な議論が交わさた。

    労働環境に改善余地

    国土交通省によると、トラックドライバーに占める女性比率はおよそ2.4%にとどまっている。全産業に占める女性の割合が42.8%であることを考えると、労働環境の改善を通じ、女性ドライバーの業界参画を促進することが喫緊の課題になっている。一方で、大型免許を保有する女性は全国に13万4千人以上といわれており、潜在的なニーズは大きいと考えらている。 しかし、ワークショップでは「育児休暇の取得が困難で、過去には妊娠・出産のたびに転職せざるを得なかった」、「出産や育児で退職した場合、運転技能の維持が大変」などの意見が寄せられるなど、労働環境の整備には今後に課題があることが判明した。 一方、クオンの試乗会では「ハンドルとシート位置など小柄な女性が乗りやすい工夫がされている」、「大型トラックの良さを実感できた。今後大型車のドライバーにステップアップしたい」、「安全・安心に荷物を届けるという仕事の観点から考えると、オートマチックトランスミッションは精神的・肉体的な負担・ストレス軽減につながることが実感できました」など、前向きな意見が相次いで出された。 UDトラックスでは、フルオートマチックに加えて快適な室内、先進の安全性など、充実した装備でドライバーをサポートしている。 例えば、独自の電子制御式トランスミッション「ESCOT-VI(エスコット・シックス」は、面倒なギアチェンジを不要とし、アクセルとブレーキの操作だけで、乗用車のように楽に運転ができ、座り心地にこだわったシートは、体型に合わせて最適なポジションに調整可能で遮音性能に優れたキャブの室内はプライベートルームのような空間を実現している。また、プリテショナー付シートベルト、ニープロテクター、SRSエアバッグだけでなく、先進の安全技術が追突や走行車線から外れた場合の危険を低減する安全装置を備えている。

    多様性ある物流業界の実現へ向けて

    参加者から、「女性として、このように素晴らしいイベントを企画してくれたことを歓迎しています。物流業界が女性にとり、より働きやすい職場と変革するために、今後も継続していただきたいと思います」との評価が出るなど、第3回目となる「女性ドライバー向け試乗会および意見交換会」は好評を博した。 UDトラックスは、同試乗会と意見交換会で得られた貴重な意見を今後の商品開発に活かし、女性ドライバーだけでなく多様な特性を持つ人材に対し、より「付加価値」の高い商品を提供するとしている。また、このようなイベントを通じ、ユーザーと一体となり「女性ドライバー」だけでなく多様な人材が「働きやすく」「働きがい」のある物流業界の実現を目指すとした。

    新TRATONお披露目今後の展開に意欲的姿勢を示す

    西襄二(ニシジョウジ)

    1959年より37年間,トラック販社,メーカーにおいて品質保証,商品企画・開発,提案型営業支援システム開発,外部物流システム改善支援,等に従事。1997年,物流問題研究所設立。産業界の物流動向研究を通じ,事例・提言等を定期発表。また,各方面で講演を行う等,幅広く活動中。

    SCANIAスカニアとMANマンの両社を傘下にもつVWフォルクスワーゲン商用車カンパニーは、グループの新名称TRATONトラトンを本年10月にスウエーデンで披露し、新体制でのこれからの展開について抱負を明らかにした。

    新たな門出

    これまで(2015年~2018年)フォルクスワーゲン・トラック&バスの名の下、VWを盟主(株主)とし、ドイツのマン、スウエーデンのスカニア両社を含む三社はグループとしての名称をもっていなかったが、今後TRATONトラトンという名称でグループとしての活動を展開することとした。このお披露目は、スカニアのスウエーデン・ソーデルタルエ・デモセンターを使用し、当日は〝トラトン改革の庭〟と称して報道陣に対応した。

    新たにトラトン・グループを率いるアンドレアス・レンシュラーCEO前職がダイムラーのCEOを務めていた人だから、この人事は劇的と言うべきだろう...ザ・トラック

    新たにトラトン・グループを率いるアンドレアス・レンシュラーCEO前職がダイムラーのCEOを務めていた人だから、この人事は劇的と言うべきだろう

    トラトンのCEOに就任したアンドレアス・レンシュラー氏(以下、レ氏)は長年、ダイムラー社で乗用車の商品開発を手掛け、最後にトラック・バス部門の最高責任者を歴任して同社を退き、この度トラトンのCEOに就任したものである。いわば、ライバル社からのトップ就任ということになる。 レ氏は今回のお披露目に際し、冒頭、直前にニューヨークの国連本部で開催された気候変動サミットについて言及している。この地球を守ることは全人類に影響が及ぶとし、二酸化炭素の削減は人類が挑戦する歴史上初めての大事業であり、この目標に対し輸送部門は利害関係の中心の一つであるとし、車両システムを提供する我がグループとその顧客は共にこの課題に取り組まなければならないと語りかけた。トラトンはグループとしてこのことに明確な責任を負って持続可能なシステムの達成に向けて取り組み、脱石油輸送システムの構築に向かうとした。 2025年迄に、トラトン・グループは資金10億ドルを投じて電動化交通社会の構築実現に向かう筈とし、生産する車輌の三分の一は従来とは異なるパワートレーンを採用する。その殆どは全電動方式となるだろう。但し、この達成には充電システムなど公共設備の併行拡充が不可欠であり、こうした車両の普及を後押しする資金面での支援も欠かせない、とレ氏は続けた。

    当日、世界初公開されたスカニアの自動運転ダンプ車。キャブは不要として、思い切ったデザインに...ザ・トラック

    当日、世界初公開されたスカニアの自動運転ダンプ車。キャブは不要として、思い切ったデザインに

    将来のトラトンの車達は電動化を指向している。MAN TGM 26-ton、パンタグラフ付きのScania R450 hybrid(特定道路に架線を設置して、そのルートを走行するときは架線から集電しつつ走行する)及びCityWideLFバス、そしてVW e-Deliveryブラジル生産車が整列していた...ザ・トラック

    将来のトラトンの車達は電動化を指向している。MAN TGM 26-ton、パンタグラフ付きのScania R450 hybrid(特定道路に架線を設置して、そのルートを走行するときは架線から集電しつつ走行する)及びCity Wide LFバス、そしてVW e-Deliveryブラジル生産車が整列していた

    成功に必要な要素

    レ氏はトラトンが今後世界に展開する戦略を成功に導く施策として、四本柱に言及した。即ち、生産モジュラー化、ソフトウエアとシステムの進化、グループ内の協働、そして顧客に焦点を当てた革新、の四つである。今日、ソフトウエア部門だけでも2000名の従業員がおり、グループ全体の技術者の30%に相当する。ここで留意すべきは、トラトンが持つクラウドベースの〝Rioリオ〟と称しているロジスティクスシステムの更なる出番があるということ。つまり、トラックの運用場面で現在50~60%に留まっている運用効率をRioの活用で改善できる可能性があるということだ。

    境界を横断した協働

    創造的改革は、なにも光り輝く新しいアイディアを見つけ出すことに限るものではない。顧客を巻き込んで適材による協働で生み出すことが出来る筈。外部との協働の成功例として、日本の日野自動車の技術を導入してVWの軽量車にe-デリバリー車が誕生した例を挙げた。ここには、日野の技術によるe-ドライブラインが搭載されている。このe-デリバリー車はブラジルのビール最大手Ambevアムベフ社から1600台の大量受注を頂いた、とレ氏は披露した。

    中型トラック相当の電動車VW e-DeliveryはMAN TGMと同種の電動駆動系を搭載している。...ザ・トラック

    中型トラック相当の電動車VW e-DeliveryはMAN TGMと同種の電動駆動系を搭載している。

    日野自動車の電動ドライブラインを搭載しブラジルから参加のVW e-Delivery...ザ・トラック

    日野自動車の電動ドライブラインを搭載しブラジルから参加のVW e-Delivery

    協働による成長

    この日本の日野自動車との協働がトラトンの技術革新戦略の好例である、そう当日の会場での質問にレ氏は答えている。 現在、日本国内で欧州仕様商用車の販売を行う事は事実上できない。これは、日本国内の保安基準などの規制があるためだが、駆動システムについて言えば、車全体の価値の60%に相当する高付加価値の高い装置で、状況は異なる。というのは、高額な開発コストを利害関係者で分け合うことが可能だからだ。であるとすると、時間を要し必ずしも成功の約束のない協力企業の買収をするのではなく、提携による相互理解のもとに協働することが互いの利益になると確信すると答えている。 また、こうした提携のもとで互いにどの分野でどのような成果を挙げることができるか、システム的に決定して行くことができる。例えば駆動システムの場合、コンポーネントの調達や制御ソフトの開発などが対象となる。買収によって社内で垂直統合するのと同等のシナジー効果を、提携によっても手に入れることができる、とレ氏は結論付ける。

    既に去った人

    今回トラトンというグループ名を使うことになった3社だが、2年前の2017年にドイツハンブルグ市で開催された「第1回改革の日」と2018年IAA商用車展当時にスカニア社で開発担当統括だったアンダース・ニールセン氏はグループを去り、他の業界に転出した。この人は、スカニア社で長く社業に貢献し、最近3年間はマン社のCEOの地位にあった。

    今回のトラトン発足で退任したアンダース・ニールセンCTO最高技術責任者...ザ・トラック

    今回のトラトン発足で退任したアンダース・ニールセンCTO最高技術責任者

    新しい実力者

    トラトンのCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー=チーフ執行役員)職はクリスチャン・レヴィン(52才)に引き継がれた。彼は研究開発部門の統括とともに調達部門と外部企業との提携戦略についても担当する。例えば、ナビスターや日野自動車といった事例が挙げられる。世界各地での生産に関わる戦略立案も彼の業務の一部だ。レヴィンは本年初期にCOO職についているが、現在はスカニア社で全世界を視野に販売と市場戦略も担当している。この職分は2016年1月から担当してきたが、これはこの前職にあったヘンリック・ヘンリックソンから引き継いだもので、そのヘンリック・ヘンリックソンはマーティン・ルントシュタットが同年にボルボ社に移籍してから業務を引き継いでいる。

    ソーデルテイエの事務所

    クリスチャン・レヴィンの話だが、彼は日頃からグループ内の三つのブランド車から如何に優位な部分をみつけるか、を日課としているという。ソーデルテイエという街は製薬企業のアストラ社の所在地で、こことはスカニア社の位置からも遠くはない。重複する業務を調整するなどした研究開発業務から、このグループが世界のトッププレイヤーとなることが見えてくるとレヴィンは続ける。ブランド間で共有する〝ツールボックス(手法)〟は顧客のニーズに応え最短で結果を出すことが出来るからだとする。

    基幹顧客との関係

    レヴィンはグループにとって基幹客と言うべき顧客、即ちビールのインベヴ社のパトリック・ミュラー氏とか、物流大手の欧州シェンカー社のヘルムート・シュバイゴファCEOやノビナ社のダニエル・ノーリン氏との関係についてこうも述べている。こうしたリーディング企業は車両保有規模を急速に拡大しており、トラトンが推進する新たなモジュラー化の考え方に添って付加価値も上がることを強調する。

    トラトンにとっての重要顧客を代表する、ビール大手インベヴ社のパトリック・ミュラー、トラトンCEOのクリスチャン・セヴィン、DBシェンカー欧州社のヘルムート・シュヴァイクホファー、とノビナ社のダニエル・モーリンの諸氏...ザ・トラック

    トラトンにとっての重要顧客を代表する、ビール大手インベヴ社のパトリック・ミュラー、トラトンCEOのクリスチャン・セヴィン、DBシェンカー欧州社のヘルムート・シュヴァイクホファー、とノビナ社のダニエル・モーリンの諸氏

    限界を見極めて

    トラトンの枠組みの中で、マン社とスカニア社は協同して行う開発について合意している。これが意味する事は、エンジンや変速機、或いは車軸や排出ガス後処理システムについて共通の基盤に立って両社で運用してゆくことだ。勿論、夫々のブランド毎に細部の調整はあるだろうし、片方が特定分野に責任を持つ場合も、或いはその逆もある筈だ。

    パワートレーン

    エンジンについては、スカニア、マン両車間で共通機種を搭載し合うという進展を見せている。マン側は排気量5~10リットルの比較的小容量機種で技術的先進性を示している。一方、スカニア側は11~13リットルの比較的大型エンジンでリードしている。これは、排出ガス後処理システムにおいて、マン社が比較的小・中排気量エンジン向けで責任を果たし、スカニア社は大排気量分野で責任を果たすと言う構図だ。変速機については、マン側が比較的小・中型で責任を果たし、スカニア側は大型で責任を果たすというエンジンに倣った構図である。車軸についても同様といえる。

    新型共用エンジン

    近く発表される13リットルディーゼルエンジンCBE1型では、同じベースエンジンで両社が共通に夫々のブランド車に搭載する。およそ120名の技術者がこのエンジン開発を担当してきた。来年にはスカニア車、そしてナビスター・インターナショナル車にも展開する計画だ。マン車むけの展開はその次となる予定。

    トラトンの北米のパートナーであるナヴィスター・インターナショナルからも試乗車が参加していた...ザ・トラック

    トラトンの北米のパートナーであるナヴィスター・インターナショナルからも試乗車が参加していた

    広範囲な課題について

    セミナー開催ソフトウエアとシステム開発、モジュラー化に加え人的協業について、幅広く採り上げたセミナーも当日開催された。担当したのは、スカニアからヘンリック・ヘンリックソン、マンからヨアキム・ドレース、ブラジル・フォルクスワーゲン・トラック&バスからロバート・コーツなどがプレゼンテーションを担当した。

    試乗編

    トラトン革新の日の当日、およそ20台の脱石油駆動系搭載商用車の試乗車が準備されていた。欧州製車に混じって、トラトンのアメリカのパートナーであるナビスター連結車も見られた。この車の場合、マン製の12.4リットルディーゼルエンジンとイートン製前進10段のAMT(自動化マニュアル変速機)が搭載されていた。

    訳者あとがき

    VWグループは販売台数において言うまでもなく世界トップクラスである。乗用車が圧倒的に多数を占めるが、自身の商用車はバン型車に限らず大型トラック及びバスでも戦列に加わっている。ただ、それはブラジルで誕生しラテンアメリカ及び南アフリカ等で実績を広げてきた関係で、欧州での陰は薄かった。 一方で欧州の二つの名門商用車、即ち独MAN社、瑞SCANIA社に資本投下してグループに組み入れ商用車部門のグループ拡充を行ってきた。この間、グループの名称を〝VWトラック&バス〟と称してきたことは本文にあるとおり。しかし、ワンボックス型バンを除いての商用車ではMAN、SCANIAの両車がブランド力ではるかに高いという事実は変えられなかった。ここに、新グループ名を掲げる動機があったといえよう。 訳者の調査によれば、TRATONは全くの新造語で何の由来もないのだという。VW、NAN、SCANIAという夫々に歴史ある重たいブランドを維持しつつ、グループの商用車の勢力拡大を図る今回の動きは意表をついたものではある。それにしても、トップ人事には驚かされる。

    速報・3大ショーの商用車世界で自動車ショーの季節

    秋は自動車ショーの季節だ。TMS東京モーターショー(10月24日~11月4日・12日間)、NACV北米商用車ショー(10月28日~31日・4日間)、CCVS中国国際商用車ショー(11月1日~4日・4日間)と相次いで開催された。今回は、商用車に焦点を当ててこの3大ショーの見所を速報する。

    NACVが開催、トラック市場全体のシェアでトップを手中にした欧州発メーカーが出展

    NACV 北米の自動車ショーは乗用車と商用車を分離して年間数回に亘って開催されているが、商用車についてはオーナーオペレーター(個人企業主が車を保有し自ら運行し、主として長距離運行で活躍する)を主たる対象とする,このセクターでシェアの高い地場トラックメーカーとオーナー団体が主導する〝オトモダチ年者数の多寡でショーの成果を評価することは短絡的ではあるが、今後の継続開催の観点ではオーガナイザーのドイツ・メッセとして、企画と運営に大きな課題を残したといえる。次親睦会〟の色彩が濃いショーが伝統的であった。そこに、フリート(規模の大きい)運輸企業に構成をかけてトラック市場全体のシェアでトップを手中にした欧州発メーカーが、欧州式の商用車ショーの導入を図って開催することになったのがNACVである。今回が2回目。

    CCVSが開催、経済・産業分野では内陸地域の振興を主眼に、自動車では商用車分野の発展を目玉政策

    CCVS 現体制による建国70周年となった中国人民共和国は、共産党政府が主導で国家の発展を総合的に推進し、今やその規模と影響力はアメリカに次ぐまでに拡大している。経済・産業分野では内陸地域の振興を主眼に、自動車では商用車分野の発展を目玉政策としている。これがCCVSの開催の背景にあり、2012年に初回が今回と同じ武漢市で開催され、ほぼ隔年毎に開催してきており今回が通算4回目であった。