世界初『モバイルモスクカー』が完成、全世界に報道されて話題沸騰、W杯やオリンピックでムスリムをおもてなし
月刊ITV 2018年9月号
発行:平成30年9月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄
世界初『モバイルモスクカー』が完成
全世界に報道されて話題沸騰 W杯やオリンピックで ムスリムをおもてなし
2020東京オリンピック・パラリンピック開幕まで後2年となった7月23日、愛知県豊田市の豊田スタジアムには、内外の報道関係者約300名が出席して、珍しい『モバイルモスクカー』の発表に驚嘆した。この『モバイルモスクカー』は、世界三大宗教のひとつであるイスラム教徒の人達が来日した際に、“おもてなし”としてお祈りの場を提供する目的で株式会社YASU PROJECT(東京・銀座、井上康治社長)が企画、オオシマ自工株式会社(山口県柳井市、秋元徹郎社長)が製作したもの。 日本にはイスラム教徒が少ないのでお祈りをするモスクが少ないが、2年後に開催する東京オリンピック・パラリンピックでは、大勢のムスリム(イスラム教徒)が来日する。しかし、1日5回のお祈りを習慣にしているムスリムにとっては、モスクの極めて少ない日本は、居心地が悪いに違いない。また、ISのイメージがあるのでイスラム教に対する間違った解釈をしている人も多い。そこで、モバイルモスクカーで、来日するムスリムを暖かく迎え入れることで、イスラム教に対する偏見を払拭して世界平和に貢献することが主な狙い。 ムスリムはお祈りする時間は概ね決まっていることと、事前に手足を洗うなどの作法があるほか、男女が同じ場所でお祈りすることもない。 これらの条件を事前に調査したところ、短時間に大勢のムスリムが使用できるようにする為には、広い空間が必要となる為、ベース車両は大型低床3軸車(日野プロフィア)とし、室内は50名程度が同時にお祈りできる広さが必要となることから、左右拡幅式ボデーを新たに開発する必要があることや真夏の使用を考慮して、空調を装備する必要も生じてきた。 オオシマ自工は電動式リフトウイング、水平式脱着ボデー、ドラム缶積載車など物流車両のほか、移動式の理美容車、店舗車、商品展示車等で拡幅車両の製作が豊富であることから、『モバイルモスクカー』の開発に着手、油圧シリンダーにより、折り畳んだ床を水平にすると同時にボテーも左右に拡幅する新方式を考案した。これによって、幅約2.5mの荷台は約6mに広がり、約50㎡の部屋を創出、自動格納式階段も備えているので、ムスリム50名以上が同時に短時間でお祈りすることが可能となった。 室内は4機のエアコンを備えているので季節に関係なく使える事、車体は前後4本のアウトリガによって常に水平を保つことが出来るほか、左右どちらに集中荷重がかかってもバランスを保つことができる。 また、この『モバイルモスクカー』の大きな特徴は、目的場所に到着後、数分で拡幅を完了することが可能なので、あらゆる現場でスピーディに対応することが出来る。 7月23日、豊田スタジアムでの発表会には、日本の報道関係者の他に、海外メディアにも呼び掛けた事から、国際色豊かな発表イベントになった。また豊田スタジアム前社長で株式会社メイダイの創業者でもある小幡鋹伸会長のご助力を頂いた事から地元から大村秀章愛知県知事、太田稔彦豊田市市長、八木哲也衆議院議員のほか、世界各国の大使館関係者の出席もあって大いに盛り上がった。 この『モバイルモスクカー』を企画したモバイルモスクプロジェクト実行委員長の井上康治社長は挨拶の中で次のように述べた。 「世界には多くのイスラム教徒の皆様が活躍しておられる。皆様が様々なシーンで礼拝をスムースに行うためには移動式の礼拝施設が必要だと考えて、大型トラックでのモバイルモスクカーを計画した。実現に当たっては、コンサルの立場で助言頂いた日新の横路社長、製作に当たったオオシマ自工の秋元社長の献身的なご支援があった。また、海外への理解と協力のために、政府関係者をはじめ多くの皆様のご助力があり、この一号車の報道発表となった。心から感謝している。2019年には日本でラグビーW杯が開催され、2020年には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、多くのイスラム教徒が来日する。また、このモバイルモスクカーは既に海外でも注目されている。私はこのモバイルモスクカーが世界平和に貢献すると確信している。」 7月23日、豊田スタジアムでの報道発表は、テープカットのオープニングセレモニーのあと、モバイルモスクの具体的な説明とムスリムによる使用体験、来賓挨拶などがステージカーを活用して行われた。 このモバイルモスクカーについては、国内の新聞・テレビが大きく報道したほか、世界でも200局以上が取り上げた事から、海外からも多くの引き合いを得ている。 また、このモバイルモスクカーは、空調の効いた広い室内を短時間で実現出来ることから、多目的な用途の拡大も見込まれている。トヨタFC大型商用トラック改良型を追加投入
大気汚染対策へのさらなる貢献を目指す米国カリフォルニア州の実証実験を拡充
トヨタ自動車㈱はかねてより、水素を将来の有力なエネルギーと位置付け、水素社会実現に向けた取り組みを続けている。米国カリフォルニア州においては、ファーストエレメント・フューエル(First Element Fuel)社のステーション運営を資金面で支援しているほか、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)社とは水素ステーション網の拡充に向けた協力を進めている。また、日本ではすでに東京都でFCバスの販売を開始しており、今後2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに、東京都を中心に100台以上のFCバスの導入を予定している。さらに、トヨタグループとしては、FCフォークリフトなど燃料電池の幅広い応用を含めた技術開発・商品展開を推進しており、水素社会の実現に向けてのさらなる取り組みを進めている。 その関連で、燃料電池(FC)大型商用トラックの実証実験を2017年夏から米国カリフォルニア州で行っている。このたび、同実証実験で大きな動きがあったので本号で紹介することにした。 トヨタの北米事業体であるToyota Motor North America,Inc.(TMNA)は、現地30日(米国時間:2018年07月30日)、米国の研究機関であるCenter for Automotive Research(自動車産業の課題や米国経済への自動車産業の影響などを研究・分析する独立機関)が主催するイベントにおいて、航続距離や居住性を向上させたFC大型商用トラックの改良型を公開した。TMNAは、昨年夏からカリフォルニア州で行っている実証実験に、今秋より今回発表した改良型が追加導入することになる。 同実証実験は、トヨタの物流施設から排出されるCO2をゼロにすることを目標とした『トヨタ環境チャレンジ2050』の取り組みの一環で、1台目の実験車は実際に港湾エリアの貨物輸送を行い、これまでに約16,000㎞を走行している。 今回の改良型は、これまでの実証実験で得た様々な結果を活かし開発が進られてきた車両である。具体的には、居住性と操縦性を向上させる取り組みとして、運転席のスペースに簡易ベッドを備えたスリーパーキャブを採用したほか、FCユニットの配置を工夫し、ホイールベースを延長することなく先代より広い車内空間を確保している。また、水素タンクの本数を4本から6本に増やし、通常走行における満充填時の推定航続距離を約320㎞から約480㎞に伸長させている。 同プロジェクトのアンドリュー・ランド(Andrew Lund)チーフ・エンジニアは、「私たちは、テストコースやロサンゼルス市の公道でFC大型商用トラックの性能を評価することにより、トラックの組立工程や車両性能の改善点をリストアップしてきました。改良型の開発においては、実験車としての性能を向上させるだけでなく、実用化も視野に入れる必要があったのです」と語っている。 現在、ロングビーチ港やロサンゼルス港では環境負荷の高い16,000台以上の貨物輸送トラックが走行しており、その数は2030年までに約32,000台に増加すると推定されている。また米国全体では、43,000台以上の貨物輸送トラックが大気汚染物質を排出しながら港湾エリアを行き来しており、周辺のコミュニティにとって深刻な課題となっている。そのような課題の解決を目指し、トヨタは、水素利用の拡大に取り組んでいる。カリフォルニア州においては、FC大型商用トラックの実証実験に加え、バイオマスから水素・電気・水を生み出す発電施設「Tri-Gen(トライジェン)」の建設も予定している。 TMNAの電動車・先進技術部門のクレイグ・スコット(Craig Scott)シニアマネージャーは「FC技術の大型商用車への応用可能性を検証するという目標は達成することができました。今後は、FC大型商用トラックの実用可能性について検証します。私たちは、水素利用の拡大を通じて、ロサンゼルス港のみならず、米国や世界における大気汚染対策に取り組んでいきたいと考えています」と述べている。 今回の改良型FC大型商用トラックは、居住性と操縦性を向上させたほか、満充填時での走行距離を約480㎞に伸長させたことで実用化にさらに近づいたことになる。今後、実証実験でのテータを基にした研究・開発が進み、FC大型商用トラックが量産化されればトラック輸送の世界が大きく変化することになるだろう。港湾での大気汚染対策とFC技術の大型商用車応用を検証
米国カリフォルニア州ロサンゼルス港で、FC技術の大型商用車への応用可能性を検証するためにTMNAが昨年夏より行っている実証実験には、「MIRAI」のFCスタック(発電機)2基と12kWhの駆動用バッテリーを搭載したFC大型商用トラックが利用されている。この初代車両は、約500kWの出力と、約1,800N・mのトルク性能を確保し、貨物を含めて総重量約36トンでの走行が可能で、通常運行における推定航続距離は満充填時で約320㎞となっている。 実証実験の開始に先立って(2017年04月19日)行われたイベントには、CARB(カリフォルニア州大気資源局)やCEC(カリフォルニア州エネルギー委員会)などの州政府関係者が出席していた。席上、ロサンゼルス港の港湾開発を担当するTony Gioiello(トニー・ジォイエッロ)港湾局副局長は「港湾貨物輸送へのFC技術応用を検証することができ大変うれしく思う。これまでロサンゼルス港は、関係者とともに大気汚染物質の削減を主導してきた。FC大型商用トラックは、『港湾大気浄化行動計画』の長期目標達成に向けたさらなる解決策となり得る」と語り、CARB(カリフォルニア州大気資源局)のMary D. Nichols(メアリー・D・ニコルス)局長は「今回の港湾におけるFC大型商用トラックの実証をきっかけに、他社による後続の取り組みを期待したい。CARBは、よりクリーンで燃費に優れた大型トラックの拡充につながる最適な規制とインセンティブを検討しており、今回の実証実験の進捗に注目していく」と将来への期待を語った。また、CEC(カリフォルニア州エネルギー委員会)のJanea A. Scott(ジャネア・A・スコット)氏は「カリフォルニア州が温室効果ガス削減、大気改善、化石燃料依存低減に取り組むうえでFCVが果たす役割は大きく、CECとしてもFCV普及を後押しするインフラ拡充に取り組んでいる。CECはこの最先端技術を大型商用トラック実験車に応用するトヨタの取り組みを称えたい」と述べている。 トヨタの実証実験は、FC技術の応用拡大に向けた取り組みであるとともに、カリフォルニア州の港湾における環境対策への貢献の一環でもある。2006年に策定された「港湾大気浄化行動計画(Ports Clean Air Action Plan)」を通じて、ロングビーチ港やロサンゼルス港は大気汚染物質の削減に取り組んできたが、今でも大気汚染物質の多くは大型商用トラックから排出されているなど課題は残る。今回、FC大型商用トラックの改良型が追加されたことにより、FC技術応用による課題解決がさらに加速し、さらなる環境改善に貢献することが期待できる。日野…世界初AI活用の勾配先読みハイブリッド制御採用
ハイブリッド車…日野自動車
画期的システム搭載の大型ハイブリッドトラック
先日、報道関係者を集めての試乗会が行われた日野大型ハイブリッドトラック(試乗会レポートは前号に掲載)の発表資料が届いたのでその詳細情報をここに掲載する。 日野自動車㈱は、CO2排出量削減に向けて、大型トラックにハイブリッドシステムを搭載した「日野プロフィアハイブリッド」を開発した。この車両は、25年以上にわたるハイブリッド開発の実績を基に、これまで難しいとされていた、高速走行が多い車両で燃費効果の発揮できるハイブリッドシステムを実現。すでにディーゼル車で好評を得ている先進安全技術も備え、環境性能と安全性能を高次元で融合させた革新的な大型トラックとして、2019年夏に発売するものである。 日野は、豊かで住みよい世界と未来を次の世代につなぐため、2017年10月に「環境チャレンジ2050」を策定。その中で「新車CO2ゼロチャレンジ」として、製品走行時のCO2排出量90%削減を掲げている。この達成のためには、日野車全体のCO2排出量の約7割を占める大型トラックの燃費性能を向上させることが必須と考え、技術開発を進めてきた。大型トラックは、高速道路での定速走行が中心で発進・停止の頻度が少ないことから、これまでハイブリッドには不向きとされていた。日野は、その質量の大きさゆえに下り坂での減速エネルギーが非常に大きいことに着目。3D地図情報などをもとにルート上の勾配を先読みし、AIが走行負荷を予測し最適なハイブリッド制御を行うという、世界初の技術を採用した新ハイブリッドシステムを開発。これにより、減速エネルギーを効率的に回生し活用することで、大型トラック特有の走行条件における燃費効果を実現させている。日野社内試験では、ディーゼル車に対し約15%のCO2削減効果が得られている。 ユーザーにとっては、積載性や航続距離といったトラックとしての基本性能および使い勝手はディーゼル車と同等のまま、燃費低減による運行経費の節減が見込める。さらに、モーター走行による走行中の騒音や振動を低減し、ドライバーの疲労軽減にも貢献できる。また、外部への給電機能も備えており、災害時の非常電源装置としても活用することが可能となっている。新ハイブリッドシステムに採用した主な技術
(1)AIを利用した勾配先読みハイブリッド制御【世界初】…GPS等による自車位置情報と3D地図情報から、走行ルートの勾配を先読み。それをもとにAIが走行負荷を予測し、燃費の最適化及びバッテリーマネージメントを行う。 (2)ブレーキ協調回生制御…フットブレーキ操作時、減速エネルギーを最大限回収するために、回生ブレーキが優先されるような制御を行う。 (3)リチウムイオンバッテリーの採用…大容量バッテリーで、大型トラックの大きな減速エネルギーの充電が可能。UDトラックス…重荷重(高積載)仕様のGVW40モデルを追加
中東市場…UDトラックス
中東市場で大型トラック「クエスター」
UDトラックス㈱は、中東市場で販売している新興国向け大型トラック「クエスター」に、6×4(後輪2軸駆動)のGVW40tモデルを新たに追加し、中東市場においてニーズの高い積載重量の大きなモデルを導入することで、大型トラック市場において、さらなる拡販をめざすとしている。 「クエスター」は、UDトラックスが初めて新興国向けに特化して開発した大型トラックで、長年にわたり培ってきた大型トラックに関する技術と経験を活かし、各国の市場ニーズに合った大型トラックを提供する、というコンセプトの下に開発された車種である。中東市場には、2016年に導入され、強固で耐久性の高いシャシー、様々な架装に対応できるフレキシビリティ、UDネットワークによるアフターセールスサポートが高く評価されている。 今回、「クエスター」に新たに追加された6×4(後輪2軸駆動)のGVW40tモデルは、中東の顧客が特に重視する「積載量」に着目し、従来のモデルラインアップと比べ、積載量を拡大している。また、ダンプ車をはじめ、コンクリートミキサー車、タンクローリーなど幅広い車型に対応することができると共に、日本企業ならではの品質と熟練技術、ボルボ・グループが保有する世界最高レベルの技術、そして何よりも「現場」での長年の経験による地域に根ざしたユーザーニーズが反映された商品となっている。 中東では、インフラ開発、そして「2020年ドバイ国際博覧会」の開催などにより、建設需要が底堅く推移している。それに伴い、大型トラック市場も堅調で、1970年代初頭から中東地域に参入しているUDトラックスは、こうした市場の状況に合わせ、新しいモデルを追加し、主に建設関係のユーザーを中心としたニーズに応えるとしている。 中東地域担当のムラット・ヘドナ、マネージングダイレクターは、今回のモデル追加に関して「中東では、様々な地形、高い気温のみならず、重量物の輸送に耐えうる性能が求められます。我々は新しいモデルが、お客様のニーズを確実に満たせる様に、実際の使用状況と同じ環境下でテストを繰り返してきました。実績のある低燃費エンジンと、UDトラックスの品質を兼ね備えるクエスターは、中東市場において、新しい効率性の基準を示すものと確信しています」と述べている。TOYOTA…ハイエースとレジアスエースの特別仕様車を発売
特別仕様車…TOYOTA