水素ステーションの本格整備を目的とした新会社を2018年春に関係11社が合意し契約を締結

月刊ITV 2018年2月号
発行:平成30年2月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄
水素ステーションの本格整備を目的とした新会社を2018年春に関係11社が合意し契約を締結
自動車メーカーのトヨタ自動車㈱、日産自動車㈱、本田技研工業㈱、インフラ事業者のJXTGエネルギー㈱、出光興産㈱、岩谷産業㈱、東京ガス㈱、東邦ガス㈱、日本エア・リキード㈱、金融機関等として豊田通商㈱、㈱日本政策投資銀行の計11社は、2017年5月から燃料電池自動車(FCV)向け水素ステーションの本格整備を目的とした新たな協業についての検討を行い、このたび新会社を2018年春に設立することで合意し、設立に係る契約を締結した。 新会社は、水素・燃料電池戦略協議会「水素・燃料電池戦略ロードマップ」(2016年3月22日付改訂)の官民目標(2020年度までに水素ステーション160箇所の整備、FCVの4万台普及など)を踏まえ、表記11社を中心にオールジャパンでの協業によりFCV普及初期における水素ステーションの整備を加速させる目的で新会社を設立するもの。 新会社では、FCV普及初期における水素ステーション事業の諸課題を踏まえ、インフラ事業者、自動車メーカー、金融機関等がそれぞれの役割を果たし、協調することで、FCV需要の最大化が狙える水素ステーションの戦略的な整備と、それを踏まえた着実なFCVの普及、及び水素ステーション事業の自立化を目指すことになる。次世代自動車ニュース
水素を充填するFCバス。東京オリパラ時には100台以上が稼働する予定
米国で実験走行が行われているFCトラック。左はFC乗用車のMIRAI
新会社の取り組み
▽水素ステーションの戦略的な整備 新会社は、事業期間を10年と想定し、第1期としてまず4年間で80基の水素ステーションを整備することを目指す。着実な整備基数目標達成のために、表記11社のメンバーだけでなく広く新会社への新規参画を募る。 新会社は、国の補助金政策、自治体の普及に向けた取組み等を総合的に勘案しながら、独自に「水素ステーション整備計画」を策定し、日本全国で多くのユーザーにFCVを使ってもらうための環境を整備する。 ▽水素ステーションの効率的な運営への貢献 オールジャパンで水素ステーションを整備・保有する新会社は、インフラ事業者に委託する水素ステーション運営業務を通じて水素ステーションの整備情報や運営情報を収集し、その情報を有効に活用することで、水素ステーションの効率的な運営などロードマップ目標の実現に貢献する。具体的な内容としては次のものがある。 ①FCVユーザー利便性の向上…FCV需要に応じた営業日数拡大など、ユーザーが快適に水素ステーションを利用できるように、既に新規需要創出活動を実施している一般社団法人水素供給利用技術協会(HySUT)とも連携し、水素ステーションの利便性向上を目指す。 ②水素ステーションのコストダウンや規制見直しへの対応…新会社は、燃料電池実用化推進協議会(FCCJ)、HySUT等の外部機関と連携し、水素ステーション機器等の標準化や規制見直し等の検討を通じ、コストダウンを目指す。 ▽新会社で取り組みを進めるための関係各社の主な役割 ・インフラ事業者…水素ステーション整備への投資・建設を行うとともに、新会社から水素ステーションの運営業務を受託し、新会社と共に水素に関する普及啓発に取り組む。 ・自動車メーカー…新会社による水素ステーション最適配置への取組み、水素ステーションの利便性向上への取組み、水素に関する普及啓発活動への取組みなどを新会社に業務委託し、資金拠出することで活動を後押しする。また、普及初期において新会社と共にFCV普及拡大に取り組む。 ・金融機関等…新会社に出資し、その出資金を水素ステーション整備費用の一部に充当。水素ステーション事業の自立化までに必要な資金の拠出を通じて、インフラ事業者の初期投資負担を軽減し、広く水素ステーション事業への新規参入を促す。 今後、新会社を軸に幅広く水素ステーション事業者や投資家へ本事業への参画を求めながら、水素ステーション事業の早期自立化及びFCVの普及拡大、ひいては我が国の持続可能な水素社会の実現に貢献できるよう、取り組んで行くことになる。水素ステーションの本格整備を目的とした新たな協業により全国各地での水素ステーション整備が加速するとみられている
移動式の水素ステーションもすでに開発されている。右は移動式水素ステーションの水素供給を行うディスペンサー