トラックドライバーが足りない世界の現状日本・米国・欧州
月刊ITV 2017年3月号
発行:平成29年3月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄
トラックドライバーが足りない世界の現状日本・米国・欧州
ドライバー不足が深刻度を増している。わが国だけでなく海外でも先進国・地域の共通課題となっている。現状を多面的にとらえ解決策を探ってみたい。再確認~わが国の場合
ヤマト運輸労働組合荷受総量抑制を要請
2017年2月23日の各紙及び電波メディア等によれば、ヤマト運輸の労働組合が2017年の春期労使交渉で、宅急便の荷受量の抑制を会社側に初めて要求したことが明らかになった。 増員を重ねてきた現人員態勢(ドライバーなど約6万人)では取扱数量の増加に対応仕切れない、組合員(従業員)の生活の質を現在以上犠牲にできない、という切実な声に基づく組合運動として注目を集めている。 一般に「宅配便」「メール便」と呼ばれる末端需要家向けの配送サービスは、実態として大多数を占める個人需要家向け(B2C)に加え小口の企業内組織向け(B2B)も含まれるが、特に前者はネット通販の急激な普及で取扱数量が急増傾向にある。加えて、かつては〝郵便物〟であった私信以外の印刷物をメール便として運輸企業が取扱品目に加えたことも広義の宅配便の数量増加に結びついている。 宅配便はヤマト運輸(宅急便)が総量の半数近くを扱い、次いで佐川急便(飛脚宅配便)、日本郵便(ゆうパック)両社がこれに続いて3社で全体の90%超を扱う寡占市場である。中でも「宅急便」は平成27年度の対前年伸び率が106.7%、平成28年度の中間実績でも平成29年1月現在で対前年伸び率が109.7%を記録して群を抜いている。ブランドの浸透、不断の営業努力、加えて受け取り側の希望に応えて長時間帯(午前8時~午後9時)の稼働を展開していることも上記の伸びに寄与しているといえようが、これが従業員の努力の限界を超えたという皮肉な実情を生み出したといえよう。特有の多頻度少量配送が支える日本の消費構造、続けられるか
週刊現代(3月4日号)は〝日本の大問題、このままでは持たない〟の表題で宅配業界に関係する業態の輸配送従事者の手不足問題を採り上げた。ここでも代表的企業としてヤマト運輸が登場し、更に地域密着型小売業の代表であるセブンイレブン、ネット通販の大手アマゾンなどが登場する。ヤマト運輸は既に本稿の前段で採り上げた。 セブンイレブンは日本に定着したコンビニ店のリーダー企業だ。比較的小さな店舗に少量多品種の商品を揃え、温度管理が必要な米飯・加工パン類も含めて1日3回(立地によっては1日4回)の配送で鮮度保持と品切れによる売上げ損失を防ぐことをビジネスモデルの柱の一つに据えていることは良く知られている。 ジャンルの異なる商品を効率良く共同配送する仕組みも徹底しているが、最後は配送車でドライバーが一定地域内の店舗をルート配送する基本は変わらない。この部分に、路上駐車と手荷役が切り離せない為、ドライバーには負荷の多い仕事になる。自動化やこれ以上の合理化が出来ない分野である。 ドライ品に特化しているアマゾンなどの通販業界は、取扱品の価格も大きな幅があるが対して廉価で、それだけ運賃負担については当事車間で厳しいやりとりがあることが想像される。ドライバーへの仕事の質からの要求と、それに報いる報酬との関係が厳しいこともしばしば指摘されている。 このドライバーの処遇が、後述する〝ドライバーに報いる仕組み〟に欠けているか、不十分であることが、台頭著しいとされる通販業界や、地域の高齢者の便利性を支える生活のインフラを崩壊させかねない、と同誌は警鐘を鳴らしたのである。どの分野のドライバー?
トラックドライバーを大別すると、乗務するトラックの稼働の特色として地域間の運行が多い大型車、地域を限定した配送用中・小型車に大別出来るが、現在の人手不足は総体的にはどの分野のドライバーについても当てはまる状況にあるとされている。勿論、企業によって温度差はあるだろうが。有効求人倍率では?コストから見たら?
厚生労働省の傘下にある職業紹介所「ハローワーク」に集まる求職者を対象に調査したところによれば、自動車運転職・ドライバーが他の職種に概して群を抜いて有効求人倍率が高いことを示している。トラックの保有は全国で1458万台、内営業用は1330万台である(自動車検査登録情報H28年10月月報、普通・小型・軽合計)。これだけのトラックを毎日動かすには単純に言えば同数のドライバーが必要となる計算だが、保守整備にかかっている車が毎日3%あるとすれば、1290万人程度のドライバーが必要という計算になる。実際の欠員がどれ程かは別の調査を参照しなければならないが、不足の度合いが高いことはこの調査で明らかだ。 ドライバーに課せられた責務は、何より安全運転が筆頭にあり、次いで計画された輸送を確実に実行することに尽きる。しかし、他業種と較べて勤務に拘束される時間が長く、その割に給与総額が低いという実態も明らかになっている。その背景には、運輸業界の収益性の低さ、即ち、運収の利益率が近年は赤字に陥っていることこら、給与を上げたくても上げられない、という苦しい台所事情がある。 もっといえば、物流費が荷主の経費費目で常に合理化の対象で、圧縮圧力がかけられる宿命にある。これが運賃収入の改善の難しさの根底にあるので、企業間の力関係で運輸企業側にしわ寄せが常態化していると言わざるを得ない。ドライバーに報いているか
運輸業界の賃金は、他の業界と比較して相対的に低いことが長年指摘されている。 ドライバー職の場合、勤務年数による年功序列的賃金体系(右肩上がりの傾斜)が弱い、即ち、若い年代では相対的に他業界より多い給与を手にすることが出来るが、経験を重ねてもある年齢層を境に多寡現象が逆転する為に、将来への魅力に欠ける、として転職や離職が多くなる。これが慢性的な要員不足を生ずる構造的課題であるとされてきた。 年功序列運賃体系は、人生のライフサイクル、即ち、独身→結婚→子供誕生→子供成長といった段階を重ねるに従って増える支出を支える収入の実現を保証する、将来への生活設計を勤続することで安心して描ける仕組みであった。これに甘えて自己研鑽と能力開発を怠っていると能率給を重視した賃金体系へ移行して、結果、今日の一般的賃金体系に変化してきたということがいえよう。 これが、ドライバー職の離職率の高さ、相対的な高齢化現象と人手不足をもたらしているとされる。 運輸企業の顧客は荷主であり、ここが支払う運賃は経費(物流費)勘定だから、出来るだけこれを圧縮したいとする力が働く。常に、荷主から運賃引き下げ乃至は水準維持を求められる宿命を負っているのが運輸業界である。経営努力を重ねて運賃値上げは叶わないとしても維持することにB2B取引は終始しているといえよう。経営努力の重点は積載効率の向上に焦点を当て、1運行当たりの運収改善に管理面から努力している筈だが、実態はどうか。全ト協の「経営分析報告書」によれば、運輸企業の運輸部門の営業利益率は低下傾向を続け、近年はマイナスの状態を示している。これではドライバーの努力に報いること(賃金向上)はおぼつかない。アメリカの場合
20世紀末期から慢性的にドライバー不足
車社会のアメリカではどうなのか、調べてみた。 2000年に表された〝フィーチャーズFeatures誌〟の調査リポートがある。既にアーカイブ入りした資料だが、ドライバー不足問題はこの頃、既にアメリカ社会の大きな問題でありアメリカならではの地政学的考え方も読み取れるので、少し長くなるが引用(〝 〟内)して歴史的背景を明らかにしておきたい。この記事の著者は当事、該誌の女性編集者だったデボラ・フィッスラー氏である。 標題は「THE SHRINKING DRIVER POOL」となっており、ここでは〝萎むドライバー供給源〟と理解しておこう。副題は、〝産業界は新規にドライバーを見つける為に多大な努力を要す〟となっている。そして、次の様に本文を始めている。 〝産業界は新規にドライバーを見つける為に多大な努力をはらっている。ドライバー不足問題は如何に深刻か。ウォール街にとって、近年の好景気の足を引っ張る最大の脅威の一つと言うべき状態にある。〟そして次の様に続く・・ 〝アメリカにとって107ヶ月連続の経済拡大に入ろうとする現時点で、アナリスト達は今後どこまでこれが継続できるか疑問としている。膨らんだ風船を瞬時に萎ませる針に例えて、(それは道路運輸業界で)熟練労働者不足が火種である。失業率は現在4.1%であり、これは1969年来の最低レベルにある。〟 〝全米トラック協会(ATA)によれば、ドライバー離職率は1999年の第3四半期に年率換算で103%を記録した。ギャラップの世論調査によれば、トラック輸送業界は毎年403千人のドライバーを新規に雇用しないと、空席になったトラックを稼働させることが出来ない。〟リポートは続く・・〟 〝供給不足は「危機的状態」である、とするのはJ.B.ハント運輸サービス社のカーク・トンプソンCEOだ、とダウジョーンズニューズ紙が報じている。つまり、現状はドライバー干ばつ状態だというのである。〟 〝この問題は貸し切り運送事業者にとって最も深刻であり、小口配送分野の運送事業者ではまだ深刻度は低い。何故なら、後者はドライバーに前者より余計に給与を支払っているからだ。運転距離は相対的に短く、労働組合に組織されてもいるからだ。〟(注:アメリカには「オーナーオペレーター」と呼ばれる個人企業主が居て、個人所有の大型トラクタを持ち込みで荷主に提供し、積荷を搭載したセミトレーラを連結して指定の目的地まで主として長距離運行を行う。その多くは北米大陸を通常1週間かけて横断し、次の週は逆向きに運行して発地に戻るという生活を繰り返す。キャブの後方にいわば3~4畳半程度の居住区画を架装して、夫婦が交替で運転しながら車上生活を一定期間続ける、そういうドライバー達がいるのである。)稼働出来ないトラックがある
〝ドライバー不足問題は、既に運送企業に保有車の一部を車庫に眠らせる状態を招いており、新規設備の導入計画を中止せざるを得ない所に追い込んでいる。例えば、冷凍食品エキスプレス社の場合、間接業務従事者を150名削減し、トレーラ部門で20%の減車を行っている。〟 〝多くの事業者はドライバー不足問題が更に悪くなることはあっても好転の兆しはみられない、と予想している。〟 〝「このまま推移すれば、一部の事業者は疲弊が進み、売上げの低下を来すところが増えるだろう」とスティーヴンス社が予測しているとダウジョーンズ紙上でアナリストのティムキランが書いている。「傷ついている企業がない、とはいえない」というのはウォールストリートジャーナル紙の最近の記事である。この中で、大手運輸企業の採用担当者が、ドライバーの新規採用を目的に例えばテキサス州フォートワースの運転教習所に毎日のように足を運んで、そこの卒業生にこれまで以上の給与や恩典を提示しても採用の成果が上がらないと嘆いている、というのである。〟 〝この場合、運輸企業は動物の死骸に群がる一群のオオカミのようだ、と言うのはカウタウン市のある運輸企業の共同経営者のトニーセゲッティ氏である、と同紙は報じている。ヘヴィデューティトラッキング紙のベットガーバー記者は「新規卒業者を育てる運転教習所は宝の山を抱えているようなものだ」というのである。〟ドライバー教習所に体験入学
〝ガーバー記者は、自らニュージャージー州ボーデンタウン市のペトロ運転教習所での実習体験を終えて、直ちにリクルーターのアプローチを体験した。彼女は見たのだが、そのリクルーターはこぼれるような笑顔で卒業試験前に教習生に接していた。そして「私がこの6週間の間に卒業前に運輸会社を選ばなかった教習生はたった一人だけだったよ」とガーバー記者に言うのである。〟 〝「他の教習生の例では、求人する運輸会社に一旦は口頭で応募を表明しておきながら、もっと高給を出す会社を探しているのも居た。彼は二社を競わせて当初の条件より高い給与を支払わせるところまで条件を引き上げさせたのよ。もし、その教習生がすれた男だったら、当初条件より良い条件を提示したところに決めたかも知れないが、まだ、新卒の初心だったのでそこまではしなかったけどね。」とガーバー記者は書いている。〟 〝「運転教習に合格すると、私、それを報告する為に教習官達の事務所に行ったの。すると、事務所にはリクルーターが二人いて、その内の一人が早速勧誘し始めたの。お話できますか。未だどちらかと契約なさっていませんね?彼は私が何者かを知ると、明らかに失望の色をあからさまに示したわ。」ガーバーは言ったのだった。〟低失業率は業界を痛みつける
〝ドライバー職の失業率が4%少々のレベルで推移するということは、強い売り手市場であることを意味する。求職者が人口統計上でも減少傾向にあるこの時代では、製造業や建設業等により好条件の仕事を見つけることが出来る。こうした業種においては、トラックドライバーが夜道を孤独に走って家庭を空けなければならないような労働環境ではないし、待遇も年間35千ドルから40千ドルという上場の運輸企業の経験を積んだドライバーの給与レベルより好条件で働ける。〟 〝トラックドライバーの典型として、男子であり年齢は20乃至40歳、整備士経験か兵役経験がある、という人物像が浮かぶ。しかし、こうした人物像は変わりつつある。女性や刑期を終えた受刑者、或いはパイロット、文系経歴者など多彩な経歴を持つ人材が運転教習所に通うようになっている。〟 〝ウォールストリートジャーナル紙がインタビューしたカウタウン教習所の同期生のルーディタグル氏とヴァリーハリスさんの二人は両方とも型にはまらない受講生だった。タグル氏は54歳のテキサス州出身者で、カウタウン市でエンジン機械ビジネスに従事していたがこれに飽きてきたのでドライバーを指向したのだった。彼は、免許を取ったら1年間は専ら運転に明け暮れる生活を計画していた。但し、ノートパソコンで何時でも友人やガールフレンドとコンタクトをとり通信衛星の電波を自分のトラックで受信する、と言っていた。〟 〝タグル氏の場合、友人の一人が彼をトラッキングビジネスに強く勧誘したものだった。給与はまあまあだが、自由気ままな生活が出来そうだというところに強く惹かれたといえよう。きっと、大きなスリーパー付のトラックを手に入れることだろう。〟 〝一方のハリスさんの場合は、4人の子供がいるシングルマザーで、女手一つでファストフッド・アウトレット(注:宅配)業界のマネージャーとしてやってきたのだった。が、前年に上司に「自分のノルマが達成出来なかったら誰かにハンバーガーを買わせてでも目標を達成すべきではないか」と言われたことをガーバー記者に吐露したのである。〟 〝万事好調に推移すれば、次の月に彼女は教習コースを卒業していることだろう。ハリスさんは「私幸福よ、信じて。」リクルーターが初任給年間36千ドルを約束したことを打ち明け「私、自分の力で独立出来るの。誰にも束縛されずに。働いた時間だけ給与に反映されるの。うれしい。」〟経済環境はドライバーに影響する
〝この前の経済好調の時代には、人件費は上昇し、それに伴って物価も上がるインフレスパイラルの状態だった。結果、生活は楽にならなかった経験がある。〟 一部のエコノミスト達は、現下のトラックビジネスの苦境を当事の環境になぞらえてその再来の予兆を感じている。しかし、より高い給与水準が当事の事情と比較して一線を画している。サインポスト社の調査によれば、ドライバーの給与は調査対象の250社中約50社で8月から11月の期間に平均4.4%上がっている。〟 〝燃料コストも上昇しており、運賃に上乗せする燃料サーチャージの改訂を行っている。生産者価格の部分の上昇は1%未満だったが、今後の上昇率は大きくなる可能性がある。ジムヒービー・フレイトライナー社社長は、ドライバー不足と待遇改善のジレンマに対して思い切った改善策を講ずる必要があると主張している。〟 〝彼がいう解決策とは、大手運輸業においては給与を倍増させることを考えるべきである。年俸25千ドル乃至30千ドルでは正当派の関心を引き寄せることは出来ない。「我々がどれだけドライバーやオーナーオペレーターの収入改善が寄与できるかによるが、このままでは中古車価格レベルは下降を続け彼らが新車を購入する目処が立たない。」ヒービーは続ける・・「全産業に及んで、問題は良質な労働を提供する人々に正当な報酬が支払えないという課題を抱えている。」〟 〝ダウジョーンズの調査も同じ見解である。それによれば、報酬改善が実現するまでは労働力需給は安定しない。運輸企業の問題は既に資金面で行き詰まりを見せており、一部の企業においては危機的状態にある。ハートランド-エキスプレス社の場合、ドライバー不足が原因で売上げは20%低下して横這い状態にある。〟 〝一方、平均売上げの伸びは20%台から10%台央まで落ち込んでいる。〟 〝米連邦準備銀行(FRB)でもこの問題に関心を払っている。仮にドライバー不足が給与引き上げを後押しする場合、これに刺激された消費者物価の押し上げに及ぶだろう。これはインフレをもたらすだろう、と全米トラック協会のボブコステロ主任エコノミストはFRBの上記の見解を受けて述べている。〟 〝一部の運輸企業は荷主企業に対して運賃引き上げを申し入れており、その背景にドライバーの賃金引き上げ計画があることを提示している。〟ダートトランシット社と提携関係にあるフリーライン社では運送距離比例部分について5~15%の運賃引き上げを3月31日決済分から引き上げることを通告している。ドナルドオウレン社長は、この要員はドライバー不足が深刻度を増していることだとしている。〟 〝ドライバーの給与を改善する為に運賃引き上げは避けられない。これは、新たに導入される労働時間制限規定が施行されれば、ドライバーの生産性は一層影響を受けることになることも関連している。運賃改定が不可避とするシナリオ作成者も同様の見解である。〟 〝ところが、取締役会で賃金引き上げが決定される場合を除き、ドライバーの給与改善は現存する運輸企業内のドライバーの間に強い反感を引き起こすことになろう。これらのドライバーは会社間を渡り歩く傾向を持っている。給与改善が実現すれば、ベテランドライバーの退社に歯止めはかかるだろう。といって、新規ドライバーの必要性がなくなるというものではない。〟HOLA,COMO ESTA?こんにちは、お元気ですか?(スペイン語で)
〝マイクスターンズM.S.運輸社の社長兼CEOの話では、注目すべき別のやり方があるという。「わが社ではドライバーを徹底的にしごきます。今のドライバーの立場は信じられない」〟 〝メンフィス(注:テネシー州のミズーリ河に面した港町)に立地する貸し切り運輸は新たにコンサル企業ワールドワイドソリュションズ社と提携したが、プエルトリコで運転教習を実施してその卒業生を合衆国に連れてくるのだという。〟 〝トラック運輸業界は、伝統的に離職率の高い業種であるとされてきました。そのレベルは実に90乃至100%に及んでいるとワールドワイドソリューションズ社のロウレンスルグランドCEOはいうのである。「昇格が無く、自己啓発の機会もなく、人事管理面でも行き届いていない。そうした業界の環境がドライバーを志願する動機を摘んでいるのです。私達はトラック運転職種を魅力的なキャリヤ形成の職場にしようとしているのです。」〟 〝私達が提案するプログラムの長所はこうです。先ず、米国自治領のプエルトリコから来るドライバーは既に米国市民権を保有しています。プエルトリコの失業率はとても高い。彼らは英語に堪能です。しかも、現地での年収は平均して9.9千ドルのレベルです。そうしたドライバー達は訓練期間を通じてその平均レベル以上は期待しません。受講費用はプエルトリコ政府から100%補填されます。〟 〝マイナス面としては、同僚や他社からは反発がある。給料の下方圧力となることを恐れてのことです。それに加えて、本人達は慣れない生活環境でカルチャーショックを受け鬱症状に落ちることは間違い無い。しかし、訓練過程でこうした問題は克服出来る、とルグランは言うのである。〟 〝こうしたプログラムの元では、プエルトリコ内に設けられた運転訓練所「トラック運輸専門学校」で訓練生達は営業用運転免許を取得し、英語教育も受けてアメリカでの生活習慣等も教えられ、万事準備が整えられる。「トラック運輸専門学校」はプエルトリコ内のマヤゲスに本拠があり、ここから教員などが派遣される。〟 〝人材派遣会社「優秀ドライバー派遣」が米国内に開設されて受け皿となり、ワールドワイドソリューションズ社がプエルトリコで訓練したドライバーを送り込む。ドライバー達は派遣労働者として月3週間就労するという仕組みだ。就労の3週間、彼らはトラックの仮眠施設かトラック駐車場で仮眠休憩を取りながら運送業務従事する。そして4週目にはプエルトリコに帰国する、というローテイションを繰り返す。〟 〝「ドライバー不足問題には新しい、頭を使った対応策(ソリューション)を必要としています。運送業者はここに紹介するような先端事例の採り入れなどの対応を考えるべきです。いわば〈ベータテスト〉(コンピューターのソフト開発の最終段階で実際の使用条件下で行う動作試験)を行うのです。」というのはM.S.キャリヤ社のマイクリーヴス上級副社長である。〟 〝「勿論、それは危険な事です。」スターンズ氏は認める。「時が経てばこの試みが良かったかどうか判るでしょう。」〟 〝プエルトリコ工業開発株式会社のラモーネアルマダ取締役によれば、このプログラムはプエルトリコの就業率を高める助けになるでしょう。特に失業率が高いマヤゲスなどではね。」〟 〝学歴があり機会があれば働く事に意欲的な住民が余っているのです。「プエルトリコ人の多くは低賃金の仕事に我慢するか、それとも高い失業率に甘んずるかという現実に直面しています。」とアルマダは言います。このプログラムは「そうした人々に仕事で成功する機会を提供し賃金面でも良い待遇が得られます。アメリカのトラック運輸企業で働けば昇進の機会も開かれ、将来の経済的不安が解消されるキップを手にすることになります。」〟 〝M.S.キャリヤ社は受け入れ地で訓練を行う事に同意し、先ず1000人の教習を受けたドライバーを受け入れることにした。この一団はメンフィスに本拠を置く運送会社に派遣される。小切手で支払われる給与と諸手当は派遣会社が取り扱う。〟 〝「アメリカ合衆国は経済を支える良質なトラックドライバーを必要としており、プエルトリコの住人は生活手段を得る必要があり、手にした仕事で相当の収入を得てプエルリコ経済に貢献する必要がある。ワールドワイドソリューションズ社の役割は、双方の国に貢献できる解決策の一つである」とリーヴスは語るのであった。〟 〝ワールドワイドソリューションズ社の長期目標には、アメリカ国内の南西部に訓練センターを開設し、ヒスパニック人材開発計画を創設することが含まれている。更に、中央アメリカ国民に対する合法的移民プログラムを創設することも含まれており、同社の目標には良質な二カ国語が使えるドライバーをアメリカ・メキシコ・カナダのFTA協定を通じて供給することも掲げられている。〟 〝本プログラムはプエルトリコ政府が強力に後押ししていることは疑いない、とルグラン氏は言っている。同国内の失業率は深刻で、年収レベルは$9,900止まりである。教育レベルは13歳まで弛度という実態もある。人口の内、シングルマザーも多く働きに出ている間には家族が子ども達の面倒を見る強い絆もある。〟 〝前記したプログラムでは、月の内3週間は家を空けて働いたとして1週間は家に戻って子ども達と過ごせる。この間、保育所の世話にはならずに済む。〟 〝ルグランは続けて言っているが、彼等のプログラムの基で教習を受けたプエルトリコ人ドライバー達は、母国で得られる水準より高い賃金を支払ってもらえるし、訓練も継続的に受けられる上に旅費も賄ってもらえる。「空路、貸切機で彼等を運んでいます。」〟 〝ドライバー達は合衆国内で任地を変わる場合は奨励金が支払われるし、恒久的にフルタイムで働くこともできるようになる。 〝先に触れたように、プエルト人である限り移民に伴う面倒もない。彼等はアメリカ市民なのだから。〟 〝「我々もM.S.キャリヤー社も、従来のやり方でドライバー不足問題を解決しようとする必要はない。」トラック運輸業界で長年働き、数社のトラック運送事業社、例えばスパルタン・エクスプレス社、先進配送社、ジョーンズトラック貨物社などでCEOを歴任した経歴のルグラン氏は言うのである。〟 〝このプログラムは、既にプエルトリコ国内で多大の関心を集めており、ある新聞に広告を出したところ900人の応募者があったという。最初に20乃至30名の志望者を選出してM.S.キャリアに教習を完了すべく送り込んでみた。〟 〝この試みが完了した段階で、プエルリコ人トレーナーがプエルトリコ国内で訓練所を開設するだろう。〟 〝3月1日にはこの訓練所を開設したいとしている。最初のクラスでは30名のドライバーを育て、毎週新たに1クラスずつ開講してゆくことになろう。「こうして年間1500乃至3000人のドライバーを発足1年間で育てたい。」ルグランの弁である。〟 〝それでも、既に派遣を求められているドライバーの人数に対して満足出来る数ではない。ルグランによれば、ワールドワイドソリューションズ社はいずれ訓練所を合衆国内の就労数の低い地域にこの訓練方法を拡大してゆきたいと考えているという。〟FOREIGN DRIVERS 外国人ドライバー
〝少なくとも運輸企業1社は、プエルリコからのドライバー達と共にハッピーな状態をわかちあっている。インディアナ州デイルヴィル市のリッチバーンズEM&Pエクスプレス社CEOは「プエルリコ人ドライバーを数名雇ったが、会社のドライバー達と溶け込んで良いグループになっている。」と語っている。〟 〝TM&Pエクスプレス社はセミトレ用トラクターを100台保有し、自動車産業の中で貸し切りの業務展開を行っている。貸し切り運送事業者はドライバー不足の影響を最も受けているセグメントである。バーンズによれば、彼が外国人ドライバーを導入した経緯はドライバーをリース方式で斡旋する企業を通じてだった。この基に来たドライバー達は、プエルトリコ人か南アフリカ人だったという。〟 〝彼等はいずれもアメリカに来る前に充分訓練されており、「当初、彼等は訓練生をまとめて受け入れてくれるよう希望していたが、私はそれは断った。」〟 〝プエルトリコ人のドライバーは一級のドライバーだとバーンズはいう。「充分信頼が置けるし一生懸命働いてくれる。彼等は、ニューヨーク市でも余り行きたがらない目的地だろうが尻込みしない。一方、南アから来たのは気が小さい男だった。少し尻込みが過ぎたかも知れない。ジャストインタイムJITの方式になじめず、事故率も少し高かった。」とはバーンズの弁である。〟 〝当社では、労務局と事前に折衝することは無く、就労ヴィザを南アからのドライバーの為に準備する必要は無かった。こうした手続きは、全てドライバーリース会社が事前に行っていた。〟 〝ドライバー達は実習生プログラムに従って派遣されてきた。バーンズの場合、約8週間の期間に6名のドライバーを受け入れた。彼等は8週間訓練所に通い、次の6週間は就労するというサイクルだった。結果、6台のトラックを12名のドライバーが交替で動かすということになった。〟 〝当社にとってこの仕組みは良好に機能したが、バーンズによればドライバーリース企業にとっては望ましいとはいえなかった。〟 〝ドライバーリース会社は彼等を教習して運んでくるのに多くの資金をつぎ込んでいたが、我々は仕事が出来るドライバーなら誰でも良かったわけだ。〝その他の問題として、リース会社にとっては人材の離職率が極端に高いことで、多くのドライバーがホームシックにかかり、結果、ドライバーリース会社はこのプログラムの継続を断念したのである。〝一方で、TB&P社に留まったドライバー達でプエルトリコ人達は企業の財産になっていった。「何人かは現在も当社に残っていい仕事をしてくれている。」プエルトリコからのドライバーの何人かはフルタイム契約に切り替えてドライバーとして働いているし、南アからのドライバーも数は少ないが実習期間を終了してグリーンカード(米国への永住権)を取得して仕事を続けている。〟 〝結果、バーンズは外国人ドライバー育成プログラムは機能出来ると感じている。特に、現下のアメリカの就労事情を考えると「4.5%の要員不足を抱えている我々にとって、(人材という)樽の底を削っている現状を考えると、要員を雇用できるというだけでも良しとしなければならない。」バーンズはそう語っている。〟NEVE RTOO YOUNG 若すぎるということはない
〝賛否両論有るが、別の試みとして貸し切り貨物輸送協会(TCA)のドライバー要員拡大の試みもある。これについては、連邦政府の支援が必要ではないかと思われる。〟 〝願わくば、ドライバープール(待機ドライバー)を年齢制限の引き下げで大きくできないか。例えば現行プログラムではドライバーは21歳以上で無ければ州を跨いで行う営業用トラックの免許取得が出来ない。この為、TCAは連邦自動車運輸安全局に18歳まで3年間、例外的に制限を緩和できないか請願中である。〟 〝実情では、年齢制限が21歳では高卒者がトラックドライバーを職種として希望しても、21歳までの3年間待たねばならない。この間、他の職業に就く選択肢も有るわけで運転職以外の進路を選択することになってしまう。年齢制限を引き下げるのは危険でもある。1件でも18歳の教習生が事故を起こせば全ては大衆の耳目に入るだろう。そうなればハイウエイの安全を願う信頼すべき一般市民と報道機関の一斉攻撃をうけることだろう。だから、TCAや保健業界、その他関連組織は現行の規定を運用しているわけだ。〟 〝「皮肉な事だが、18歳の若者は既に18輪車を全米の2州(ニュージャージー州とネヴァダ州)を除いて州際で運転している。若し請願が許可されたとしたら、これまでのどの方式より広範囲な訓練をトラックドライバーは受けることになるだろう。」とラナバットTCA会長は言っている。〟 〝このプログラムは〝正当派〟の訓練生と〝正当派〟の雇用主が基本である、とバット会長は言う。正当派の生徒とは、運転免許は選抜された人に対する特別な権利であって一般的な権利ではないことを理解していることであり、それを表明する人物であるということだ。〟 〝運転免許証を保有しており責任有る行動をとってきた学生のみが、職業ドライバーに相応しいといえる。自己に有責の事故を起こしたことが無く、速度違反でキップを切られたこともなく、不注意や無茶な運転を行わず、周囲の状況に漫然と同調するような運転をしない人物であるということだ。〟 〝教習学校は職業トラック運転者研究所(PTDI)の認可を必要とし、教科はほぼ6ヶ月に及ぶ内容を自ら設定することが求められている。PTDIが認可する新教科はこれまでより長期間に及ぶもので、期間は22週間(又は460時間)に及ぶ。内訳として14週間(又は280時間)の学科、に加え22週間(又は160時間)の運転実習を課すものである。〟 〝こうしたプログラムに関係する運輸企業は、一定以上の安全実績が求められ、事故率は一定水準以下でなければならない。当該企業は、PTDI公認の8週間(又は460時間)のドライバー養成講座を設けて訓練実績を挙げるとともに、その間は(走行距離比例ではなく)時間に応じた週給を至急しなければならない。運輸企業と運転教習校が合意した後は、教習生は上記の教科課程修了後は18週間の実技経験を積まなければならない。〟 〝こうして48週間の訓練とその後の日常運転業務経験を経て、要約受講生は「一人で運転可」のお墨つきを教習所と勤務する運輸企業双方から得られる。この時点でCDL免許保持者となり、望めば他の職場に異動することも可能となる。但し、行き先の企業もこの教習システムの実施企業であるという条件がつく。〟 〝TCAの予測によれば、凡そ1000名の学生がこのプログラムに登録されるだろうとしている。統計上の有意な数値に基づく予測である。10校程度がこのプログラムに参画する筈である。また運輸企業の中から10社程度が加わるだろう。〟 〝若手ドライバーを養成するこの試験的プログラムは、TCAのドライバー求人・定着委員会の度量の産物である。この委員会はアーカンソー州ベイツヴィル市のロニーダウディ運送社のロニーダウディ社長が委員長を務めている。当委員会は、ドライバー不足を根本的に解決しようとするならば、真の意味においてドライバーがプロフェッショナルな仕事であると定義し、この問題に取り組む覚悟である。〟 〝これは、正規の訓練を受けたドライバーを常に管理下におき、助言を行える仕組みの基に送り出すことを意図している。「皆さんが訓練は必要だと信じるなら、我々の努力を支援することは義務です」とダウニーは主張し「もし請願が受け入れられたら、トラック運輸業界は職業ドライバー訓練校(PTDI)の認証と教科の標準化に借りを作ることになる。PTDIはこのプログラムによって信頼性を高めることになる。」と続ける。〟 〝この請願はFMCSAを勇気づけ、主要大学との間で訓練校の卒業生の仕事への取り組み、受け入れた運輸企業とドライバーなどを追跡調査・研究し評価するプログラムに契約を行っている。ここから中間及び最終報告書が得られることになっている。〟 〝トラック運輸協会(TCA)は米運輸省(DOT)が迅速に請願に基づいて行動することを期待している。それにより、ドライバー訓練校は新しい制度に応募することを検討できる。是非、各校やトラック運輸企業、各州の協会が高校卒業生達に呼び掛ける前に行動してほしいものだ。〟 〝認証されることを見越して、PTDIは関係機関との会合を3月にも開始し、訓練校及び運輸企業側双方で教程や教程終了証明方式の標準化の検討に入る計画である。本計画は既に高い関心を集めており、殊の外経験を積んだプロドライバーの間で話題になっている。〟 〝「ここに35歳になったけれどトラックの運転に習熟したとは言えない人が居たとします。」オーナーオペレーターで女性のヒーザーホージランド氏が言います。「2年間運転に専念して訓練を受けた若い子がいれば、雇いたいと思うでしょう。」〟 〝ホージランド氏は21歳まで同じ州内で運転してきた。その経験から若い子は経験を積むことが最善の道だという。「私と同じように先ず同じ州の中で運転させ、次いで21歳になったら習熟するので州を跨いで運転することも出来ます。」〟 〝「彼等は安全と事故の統計について口うるさく教え込むでしょう。その上で18歳の若者にハンドルを握らせクロスカントリー即ち実戦に送り出すのです。」〟 〝運輸業界の団体は、賛否両論はあるものの、こうした新しい教程の若い卒業生達を支持しながら(内在する)問題に気付いて居ないわけではない。然し、ドライバー不足問題はもはや見過ごせない量的限界に達しており、過去に検討した選択肢の中でも前例をみない喫緊の課題である。〟 〝全米自家用トラック協議会(NPTC)のジョンマックエイド委員長は、このプログラムの考え方は支持するが、政府筋がこの画期的構想を承認するか疑問があると語っている。〟 〝「我々はCDLの卒業生問題に注目している。自家用トラックのフリートでは初心者レベルのドライバーを数多く雇うことは無い。我々の場合、有資格で安全意識の高いドライバーを確保するという、従来から採用している手法を確保している。我々が運用している従来の方式で対象とする人材より若い男性や女性ドライバーを訓練して育成するというアイディアは、一定のドライバーの供給策として適切な方策だとは思う。〟 〝「我々はTCAが進める事に興味がある。そしてどうゆう事が起こるか注目していなければならない。しかし、FMCSAが容認するこうした試験的施策に楽観的ではない。私は相当勇気のいる仕事ではないかと見ている。」〟 〝運輸業界はこうした新しい試みを必要としていると思うが、事前の検討の結論として、これまでに提議されている新たな施策について、FMCSAが安全第一の姿勢を保ち続けられるか私には分からない。〝また、このシナリオについて見解を述べている関係者としては、編集者のアンドリューライダー、スティーヴスタージェス、デボラロックリッジ、パトリシアマッカロウ等の上級編集者達がいる。〟DRIVERPAY STILL ON THE RISEドライバーの給与はなお上昇傾向に
〝最近の15四半期の中で最初の事例となるが、貸し切りトラック運送事業社の30%が回答している全米ドライバー給与調査によれば、給与に変化が見られる。調査を行った研究者によれば、これはこれまでの回答中での変化より50%多くの企業が給与改定を行ったことを示唆している。〟 〝サインポスト社が行う四半期毎の調査によれば、400種類もの手当類が正社員ドライバーとオーナーオペレーターに支払われているという。調査対象四半期の初期には僅か37社の運輸企業で変化が見られたが、それは運転距離に応じた手当で、3年の経験のあるドライバーに対して1マイル辺り37セントを基本給に付加するというものであった。〟 〝基本給が高くなると、40%超の会社で1マイル当たり32セントを超える手当が支給されていた。NM.S.運輸の場合では、1マイル当たり4セントを上乗せしている。フラットベッド車を運用する会社の例では、平均して3.8%、バン型車を運用する会社では3.4%、冷凍車では3.3%、夫々上乗せしているという結果である。調査担当のサインポスト社では年率換算で4.2%上乗せされているという。〟 〝「貸し切り運輸会社は燃料コストの高騰、金利の上昇、流動資産の値下がりに加え、保険料率の上昇、ドライバーの賃金上昇などで悪夢を見ている。」と語るのはある市場調査実施者のデイヴグッドソン氏だ。「中でも大きな負担となるのはドライバーの賃金上昇だ。〟SWIFT EXPANDS TO ATTRACTD RIVERSスウィフト社の場合:ドライバーを引きつける
〝スィフト運輸㈱の場合、カリフォルニア州の地域のターミナルを南部ストックトンの狭い一角からサスロップの交通便利で施設も拡張可能な工業団地に移転した。アメリカ国内第3位の貸し切り運送会者の当社は、拡張施設に見合うドライバーも800名増員する計画である。〟 〝新ターミナルは建設に1千万ドルを投入する見込みで、これは同社が国内業界No.1となる野心的は投資である。加えて、年間売上げも25%拡大するというものだ。これはターミナル長で地域副社長のリチャードヴァレンタインが明らかにした計画である。〟 〝「スウィフトは投資を行うことを恐れてはいない。ドライバーを募集するにはこうしたドライバーが喜ぶ施設を建設することである。〟 〝わが社の場合、この新ターミナルの新設でドライバーには自由に使えるシャワー、邪魔されない休憩所、自由にアクセスできるインターネット設備、自動販売機などドライバーに魅力的で永くわが社に留まってくれる筈だ。」とヴァレンタイン氏は自信を持っている。〟 〝「我々はドライバー達に居心地の良い施設だと喜んで貰いたい。」〟 〝わが社は他にも魅力的な条件をドライバーに提示する。車両は新車、初任給は凡そ年3万ドル、という具合だ。〟 〝ラスロップの485台のトラックの大多数は車齢18ヶ月以下の準新車だし、2日に1台は増車して新車が入って来る。」とも付け加えている。〟 〝以前の施設では駐車スペースは手狭であった。しばしば窮屈な思いをしたり、最悪、路上駐車を強いられることも希では無かった。あの場所はざっと4000平方フィート、たった6エーカー敷かなかった。対照的に、新ターミナルは1万5千平方フィートあり総2階建てで敷地は30エーカーを確保した。〟 〝サンヨアキン郡の雇用経済開発局のジョンソリス局長は、局としてスウィフト社と接触しておりこれまで待遇に恵まれていなかった求職者達が新ターミナルに関心を示しているという。〟 〝「我々の課題はこの郡内に絞り込んで就職希望者に職を斡旋することです。職の無い人は大勢います。スウィフト社の求人の求めはインターネットで全カリフォルニア州から応募が可能です。ソリス局長はそう言っている。〟 〝サスロップのスウィフトのセンターは、保有トラックの保守整備のハブとしての機能も備える。契約によって他社の車の整備も受け入れる。スウィフト社の業務はB2Bで地域の物流倉庫や大規模小売店への配送が主なところである〟。〝およそ500名のドライバーと250名の管理要員がラスロップセンターの従業員である。ここはカリフォルニア週内の同社の最大拠点で、全米でいうと3番目の規模に相当する。フェニックスに本拠を持つ他社が規模の点でライバル関係とるだろう、とヴァレンタイン氏が語ってくれた。〟 =引用は以上でおわり=最近のアメリカの状況
最初にお断りしたが、上記の引用資料は2000年に執筆されたもので、その後かなり年月が経過している。この為、筆者は同業のスヴェン-エリクリンドストランドの意見を聞いて見た。かれは、現在の仕事に就く以前、ボルボ・ノースアメリカ社に勤務していた経歴があり、アメリカのトラック業界に造詣が深いからである。 すると、彼曰く「基本的には同じ状況にある」というのである。勿論、信頼すべき意見であるが、念の為、筆者自身で裏をとってみた。その結果を要約すれば以下の通りである。Forbes誌電子版2016/09/16
トラックドライバーの年収は2000年の28,500ドルから14年の38,000ドルに上昇している。しかし、これはインフレ率にほぼ比例しており実質的上昇はほぼ無いということになる。因みに、この間のインフレ率はほぼ年率2.4%であった計算である(34頁下右図)。この為、ドライバーのなり手は少なく人手不足状態にある。Smart Trucking誌電子版2016/8/8
トラックドライバーの給与問題は長年の課題である。現在の給与水準は物価上昇を考慮すると、相対的に80~90年代の水準を引きずっている。 アメリカの現在の水準は平均して週40時間就労して年間37,000ドルのレベルである。週給740ドル、就労時間が週70時間とすると時給にすると10.6ドルという計算になる。 更に、長距離運行ドライバーは拘束時間に対して充分報いられているとはいえない。新規にドライバーを志望する人材は相対的に少数で人手不足感は緩和されない。 他のメディアの掲載もあるが、似たような内容であることは確認できた。ドライバー不足の度合いは?
ドライバー不足はアメリカでも深刻な問題で、様々な対応策が試みられている。 そのアメリカに「ドライバー問題解決策Driver Slutions」という特殊法人が設けられている。新規にドライバーをトラック運輸企業に送り込む為に、未経験者に営業免許(わが国の二種免許に相当)を取得する教習所の運営、教科の標準化と普及策、などを手掛けている。ここが最近発表した数字によると、全米のトラックドライバーの需給状態は〝不足〟状態が続いており、2014年に不足数は4万人であったものが、2017年には10万人、2022年には16万人に拡大すると予測している。これは2014年のドライバー平均年齢が49歳で、これが今後退職年齢を迎えること、有資格ドライバーの供給が退職者数をカバーしきれないこと、経済状態がなお拡大傾向を持続するみとおしであること、などが背景となってドライバー不足は深刻度を深める見通しであるとされている。欧州の場合
同じ手法でヨーロッパの場合についても調査した。結果をいくつか掲載する。