国土交通省・自動車局 加藤進新貨物課長に聞く、官と民のコミュニケーションが大切トラック運送事業の労働力確保は最重要課題
月刊ITV 2016年9月号
発行:平成28年9月1日
発行所:(株)日新(HP)
執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之
表紙・レイアウト:望月満
記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄
国土交通省・自動車局 加藤進新貨物課長に聞く、官と民のコミュニケーションが大切
トラック運送事業の労働力確保は最重要課題
国土交通省でトラック運送事業に最も関係が深いのが自動車局貨物課である。現在のトラック運送事業者数は約6万3000にものぼる。平成元年に規制緩和を柱とする物流二法が施行されてからの28年間で約2万社以上も増加、トラック運送業界は熾烈な過当競争を繰り返しているが、ここに来て少子高齢化と若年層のトラック離れによる労働力不足が深刻になってきた。自動車局貨物課では、トラガール促進プジェクトを立ち上げるなど労働力確保に積極的に取り組んでいる。この貨物課長にこのほど就任したのが加藤進氏である。早速インタビューをお願いしたところ快くお受け頂いた。国交省に入省以来多岐に渡る経験
□秋林路 まず、生まれ育ちなど伺いたいのですが、どちらのご出身ですか。 ■加 藤 現在48歳ですが、生まれたのは神戸市内です。父が転勤の多いサラリーマンでしたので、小さい時分は転々としましたが10歳で神戸に戻って高卒の18歳まで過ごしました。 □秋林路 神戸は横浜と並んで文明開化の玄関になりましたので、今でも異国情緒が残る良い街です。 ■加 藤 そうですね。背後には六甲山があり表は港ですから、海に向かって開けている開放的で良い街です。 □秋林路 平成7年1月17日には阪神・淡路大震災が発生して大きな被害が出ましたが、その後の神戸は市民あげて復興に取り組んで来ましたので、人々のハートも一段と良くなっているように感じます。 ■加 藤 阪神・淡路大震災が発生した時、私は27歳でしたが、ちょうど大阪に勤務していましたので、実家であの激震を体感しました。今思い出しても震えがくる程です。 □秋林路 関西には本誌の広告主もありますので、震災後間もなく訪ねましたが、社屋に亀裂の入っている会社もありました。震災を経験しておられるということは、大卒後は神戸で勤務ですか。 ■加 藤 大学(東京大学・法学部)を出て当時の運輸省に入ったのですが、その後地方勤務ということで、近畿運輸局で旅客船・内航海運の担当課長をしていました。 □秋林路 そうでしたか。国土交通省ではこれまでどのような職歴ですか。 ■加 藤 最初は船の検査等の安全行政や船員の労働行政等を担当する海上技術安全局(現在の海事局)に配属されました。そこでは、条約で定められた国際基準を国内法令に取り込むことなどを担当していました。その後は航空局の管制保安部、海上交通局、近畿運輸局に行き、その後また航空局、海事局外航課といった具合で前半は海と空の関係が多かったです。 □秋林路 前半という事は30代半ばまで? ■加 藤 そうですね。その後、鉄道局や総合政策局、観光庁などを経て、九州に転勤になり、本省に戻って航空局で成田空港担当、更には内閣官房に出向し、この度本省に戻って貨物課長に就任という事です。 □秋林路 入省後は目まぐるしく移動しておられるのですね。運輸行政も多岐に渡りますから、若い時分に広く経験して、最終的に全体を見るお立場に就かれるのだと思いますが、お役人さんも大変なお仕事だと思います。 ■加 藤 そんな事ないのですが、自動車部門は始めてですので、業界の皆さんとコミュニケーションを密にして諸問題に取り組んでいきたいと考えています。 □秋林路 約10年前からは日中韓の大臣会合で3カ国が連携してスムーズで効率的な物流環境をつくり出す作業が進められていますが、これから国際物流も大きなテーマになると思います。トラック事業者もクローバル化に向かって動いていますので、行政の面でもこれまでの豊富なご経験が活かされるのではないかと思います。 ■加 藤 そうですね。国際間の物流は別に担当部門がありますが、貨物課も深い関わりがありますので、連携して取り組みたいと思います。女性や高齢者を労働力として確保
□秋林路 トラック運送業界もいろいろ課題がありますが、とりわけ大きなテーマとしてはどのような事をお考えですか。 ■加 藤 やはり、構造的に労働人口が減少する中で人手をどうやって確保するか。これが最大の課題だと思います。とくに経済活動においてトラック輸送は必要不可欠で、どんなに技術が進んでも人手を掛けなくて運ぶことは出来ません。その為には、人材をいかに確保するかということに加え、これまで参入が少なかった女性や高齢者の方なども活躍していただく、そういう施策も大切だと思います。 □秋林路 すでにトラガール推進プロジェクトが貨物課でスタートしていますし、労働環境の改善を目的に中継輸送方式の実証運行にも取り組んでおられます。最近は、官自らがトラック輸送のあり方について積極的に取り組んでおられるように感じています。 ■加 藤 やはり行政も、今何が必要なのか、どんな社会にして行こうとしているのか、そのメッセージを発信することは、とても大事だと思っています。その意味では安倍総理が“女性活躍”の旗を振って来た事は大きな意味があったと思います。 □秋林路 官のリードもありますが、最近は事業者の考え方も大きく変わってきたと思います。佐川急便さんのように具体的に目標数字を示して、女性労働力の活用を進めている事業者もあります。 ■加 藤 まだ女性が活躍できるところは沢山あると思います。 □秋林路 そうですね。その為には企業としての取り組みとは別に、社会としての仕組みづくりが必要なところも沢山あるように思います。例えば、男性と同じドライバーの仕事を熟すことが出来ても、仮眠できる女性専用の部屋やシャワー室のないドライブインも多い状況では働けません。トラックの居住空間も女性を意識したものは少ないように思います。 ■加 藤 そういう意味では女性や高齢者が働き易い環境をつくる為にはどうすれば良いのか、我々の大きな課題でもあります。 □秋林路 本誌はどちらかというと物づくりの業界に立脚しているのですが、技術の進歩との関係もあるように思います。道路事情も良くなるしナビゲーションの高度化、人工頭脳などで自動化技術もますます向上すると思います。安全の面でもドライバーの健康状態や睡魔に襲われて判断力が低下していないかなど、車両自体がリアルタイムで検知して安全を確保するようになるかも知れません。今話題の自動運転も一緒です。そうなるとドライバーに求められる内容も変わる事になるので、むしろ女性に適した職業になるかも知れません。 ■加 藤 そうですね。技術の進歩は大いに期待されます。安全・環境に加えて労働環境の改善にも貢献することになることを期待しています。 □秋林路 ただ、最近はユーザーニーズが物づくりに反映されにくい状況になりつつあるのは気掛かりなところです。 ■加 藤 やはりユーザーとメーカーもコミュニケーションが大切です。一般へのイメージアップが大切
□秋林路 そうですね。トラック運送業界が労働力不足に陥っている要因のひとつに、若者の多くがトラック運送に魅力を感じていないという問題があります。社会的地位とも関係がありますが、職業の憧れ対象として見ていないのです。これは多分にイメージの問題が大きいように思います。 ■加 藤 大きな震災が発生すると緊急物資輸送にいち早く活動するのはトラックですから、非常に社会的役割の大きい職業ですが、一般には浸透していないという事でしょうか。 □秋林路 全日本トラック協会やある程度組織力のある事業者はイメージアップに熱心に取り組んでいるのですが、業界全体としてはあまりにも事業者数が多くて、過当競争に陥っています。この事は運賃とも関係しますが、この業界の賃金が低すぎるし、働く人もプライドが持てないという事だと思います。それと事業者の大多数が零細で、経営者が社会性の高い事業に従事している認識が希薄のように思います。 ■加 藤 経済活動の中でも物流、とりわけトラック輸送は極めて重要な役割を担っていますので、もしトラック輸送が立ち行かなくなると物流が混乱し、日本経済も立ち行かなくなる事を意味します。そういう意味で非常に重要な業界です。 □秋林路 トラック運送は、インフラである道路を使用する仕事ですから、非常に社会性の高い仕事ですが、まだ3Kとトラック野郎のイメージが色濃く残っているように思います。 ■加 藤 神戸で震災に遭遇した時にも感じましたが、いち早く物資を届けてくれるのはトラックなんですね。有り難いと感じました。 □秋林路 今回の熊本地震や5年前の東日本大震災の時も、緊急物資輸送の時だけは、マスコミもトラック輸送を非常に高く評価しますが、平穏を取り戻すと忘れ去られてしまうし、何かにつけて悪者扱いされるのは不平等です。 ■加 藤 それは仕事の内容が、一般の方々を対象にしたBtoCのところは目立つけれども、その手前のBtoBは縁の下の力持ち的なところがあって、普段はなかなか目にとまらないということではないかと思います。 □秋林路 そうですね。本当は物流を支えているという意味では同じ役割なんですけどね。 ■加 藤 労働力の確保とも関係しますので、トラック輸送の社会的役割をもっと広く啓発する必要があるのではないでしょうか。 □秋林路 そうですね。テレビや新聞で実情を伝える事も大切ですが、今はインターネットが大きな役割を果たしていますから、トラック事業者の組織力を活用してネット活動すれば大きな情報発信になるように思います。例えば全日本トラック協会をキー局にして地方トラック協会から一般に情報発信しても効果は大きいと思います。 ■加 藤 実は我々の貨物課も“トラガール”をホームページで発信しているのですが、どの程度一般に届いているのかを考えながら、さらに工夫する必要があるのかも知れません。 □秋林路 ホームページもお役立ち情報が一緒にセットされていると、見てくれるように思います。例えば民間が調査した“今週のトラック運賃”なんてコンテンツがあっても面白いかも知れません。そうなると宅配や引越は一般市民も荷主ですから、見積もりを取り寄せなくてもインターネットで料金を知ることが出来るし、企業荷主も不当な値引き要求をしなくなるかも知れません。 ■加 藤 確かにいろいろ工夫する必要がありそうですね。 □秋林路 最後に…、スポーツやご趣味のことも伺いたいのですが、学生時代は何か運動を? ■加 藤 小・中は野球で、高校ではバスケットを少しだけやりました。大学ではテニスです。それほど熱心に打ち込んだ訳ではないのですが、身体を動かすことは嫌いではないです。最近では少し走ることに取り組んでいて、何時かは、フルマラソンを完走したいと考えています。 □秋林路 それは素晴らしい事です。ランニングもコツコツ鍛えないと距離が伸びません。 ■加 藤 そうです。サボっていると直ぐ元に戻ってしまいます。(笑) □秋林路 健康のためにも適度に身体を動かすのは良いことです。 ■加 藤 走りながら難しい事は考えないので、リフレッシュする為にも運動はいいですね。 □秋林路 そうですね。私の場合、リフレッシュはお酒に依存し勝ちですが、時々やり過ぎてしまいます。(笑)ご趣味はいかがですか。 ■加 藤 父が囲碁を打っていましたので、小さい頃は訳も分からず碁会所に通わされた事もありましたが、ちゃんと打てるまで上達はしなかったです。周りの皆さんが歳をとってから困るから何か趣味を始めたほうが良いと奨めて下さるのですが、今のところ仕事優先になっています。 □秋林路 囲碁は良いと思います。頭脳労働でボケ防止にもなるそうです。全ト協の皆さんは楽器が上手な方が多いのですが、音楽はいかがですか。 ■加 藤 ジャズなんかを聴くことは好きですが、楽器は出来ません。 □秋林路 私は仕事よりも趣味優先ですが、貨物課長のお立場ですと仕事優先も仕方ないかも知れませんね。暫くはトラック運送業界との関わりが多くなると思いますが、どうか健康にご留意して活躍されますことを祈念しております。本日はご多忙のところ有り難う御座いました。ブリヂストン…トレーラ向けオールシーズンタイヤ「M746」発売
トレーラ向けタイヤ…ブリヂストン
フリーメンテナンス性と経済性を両立
㈱ブリヂストンは、トレーラ向けオールシーズンタイヤ「M746(エムナナヨンロク)」を2016年10月1日より発売する。発売サイズは1サイズ(11R22.514P)で、価格はオープン価格になる。 「M746」はDRY性能とWET性能のみならずSNOW性能を兼ね備えており、浅雪路でも使用可能なオールシーズンタイヤとなる。また、トレーラ特有のねじれ入力に配慮した専用設計パタンを採用することで、ブロック耐久性や耐偏摩耗性の向上を追求。これによりタイヤローテーションの頻度低減に貢献し、フリーメンテナンス性と経済性の両立を実現させている。 また「M746」は、トラック向けタイヤと同様の高い台耐久性を保持しているため、一次摩耗終了後のリトレッド用台タイヤとしても使用可能(使用状況等によりリトレッドができない場合もある)となっている。ちなみに、台タイヤとは新品時から使用し溝が浅くなったタイヤのこと。 推奨車種としては、コンテナ輸送、重量物運搬、紛体運搬、ローリー等の舗装路走行を主に走行するトレーラとなっている。 同社では、輸送事業者に対し新品とリトレッドを組み合わせたソリューションを提案することで、今後もユーザーの安全運行、環境経営、経費削減に貢献していくとしている。ヤマト運輸&DeNA…「ロボネコヤマト」プロジェクト実用実験を始動
次世代物流サービス…ヤマト運輸・DeNA
自動運転を活用した次世代物流サービス開発に向け
㈱ディー・エヌ・エー(DeNA)とヤマト運輸㈱は、自動運転を活用した次世代物流サービスの開発を目指し、実用実験の実施にむけた計画策定に合意した。実用実験のプロジェクト名は「ロボネコヤマト」と呼称し、実施期間は2017年3月からの1年間を予定している。 DeNAは、インターネットサービスの分野において培ったノウハウと自動運転技術とを連携させ、新しい道路交通サービスの開発や、私有地向けの移動サービスの提供を進めている。また、ヤマト運輸は、ライフスタイルの変化などにより受け取りのニーズが多様化していることを受け、ユーザーが望む時に望む場所で受け取れるよう、コンビニエンスストアやオープン型宅配ロッカーなどへ受け取り場所を拡大したり、クロネコメンバーズを活用した利便性の拡大を進めている。 今回、物流領域での自動運転技術の活用を模索していたDeNAと、より利便性が高くユーザーの生活に寄り添ったサービスを目指すヤマト運輸が協力し、次世代物流サービスの開発を目指した「ロボネコヤマト」プロジェクトを始動する運びとなったもの。 「ロボネコヤマト」プロジェクトでは、DeNAのIT技術を活用した自動運転関連のサービス設計ノウハウとヤマト運輸の物流ネットワークを組み合わせることで、より利便性が高く、自由な生活スタイルを実現する物流サービスを目指す。両社の取り組みは、今後様々な事業者の参画も視野に入れたオープンなプロジェクトとして進められることになる。なお、実施場所は現在、国家戦略特区のいずれかの地域を検討中である。主な実用実験の内容
「オンデマンド配送サービス」と「買物代行サービス」の2種類のサービスの実用実験を開始する予定となっている。 ◇オンデマンド配送サービス ユーザーが望む時に望む場所で荷物を受け取ることができる配送サービス。スマートフォンで荷物の現在地や到着予定時刻の確認も可能。共働き夫婦や一人暮らしの人を主な利用者と考えている。 ◇買物代行サービス 地域の複数商店の商品をインターネット上で購入し、「オンデマンド配送サービス」にて一括で運んでもらうことが出来る。小さな子どもを持つ家庭やお年寄りを主な利用者と考えている。 実用実験では、ユーザーニーズに応えられているかどうかの検証と、サービス利用におけるユーザーからの細かな要望などの収集を行うことになる。また、実験期間内で、一部自動運転を導入したサービスなどを展開する予定だ。三菱ふそうとSYCが台湾で輸入・卸売事業の合弁会社設立
台湾事業…三菱ふそう