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  3. 自動化大型トラックによる隊列走行欧州初の広域実験成功裏に完走
  4. 自動化大型トラックによる隊列走行欧州初の広域実験成功裏に完走

    ITV_2016年5月号表紙

    月刊ITV 2016年5月号

    発行:平成28年5月1日 発行所:(株)日新(HP) 執筆:大島春行・大西徳・伊藤慎介・井上元・岡雅夫・佐原輝夫・鈴木純子・中田信哉・西襄二・橋爪晃・宮代陽之 表紙・レイアウト:望月満 記事&編集:横路美亀雄・於久田幸雄

    自動化大型トラックによる隊列走行欧州初の広域実験成功裏に完走

    翻訳・構成

    西 襄二
    リポート

    スヴェン─エリク リンドストランド
    欧州で半自動化大型トラックによる隊列走行が在欧全6メーカーが参加して行われ成功裏に全車が完走した。各メーカーの本拠地を出発地とし、ゴールはオランダのロッテルダム港。初の広域隊列走行の記念すべき成果を現地から報告する。

    早春のアウトバーンを隊列を組んで走るメルセデス・ベンツ車。右側車線はトラック用で耐重量コンクリート舗装。隣の乗用車車線はアスファルト舗装で適正なコスト配分が行われていることが分かる。それにしても広い路側帯と路肩だ……。...ザ・トラック

    早春のアウトバーンを隊列を組んで走るメルセデス・ベンツ車。右側車線はトラック用で耐重量コンクリート舗装。隣の乗用車車線はアスファルト舗装で適正なコスト配分が行われていることが分かる。それにしても広い路側帯と路肩だ……。

    隊列走行とは

    一定のレベルで自動運転化された複数台の大型トラックが隊列をなして走行する様子を英語では〝プラトゥーニングplatooning〟という。夫々の車は搭載されたWiFi機能を通じて周囲の交通状況と相互車両間の情報を交換しながら、従来の夫々が独立して専らドライバーの運転技量に異存して走行していた運転方法では考えられない近接した車間距離で隊列走行するのである。インターネットによる通信(コネクティヴィティ)と自動化された運転システムの調和が実現させた新時代の道路輸送の姿だ。 意図して隊列を組むトラックの相互車間距離は、レース車の世界で使われる究極の(前車に極端に接近して後続走行すると前車の後部の渦流による低圧ゾーンを利用する)〝スリップストリーミーング〟走行方式のようにエンジン出力に余裕が生ずるので、隊列の2台目以降のトラックは省燃費効果が享受出来るメリットがある。一方で、他の一般通行車両は自由に走行出来るのがこの試みの特徴でもある。 隊列の先頭車は常に運行経路と走行速度を決定する。WiFiによって隊列走行相互車輌間では制動機能(ブレーキング)が同期して作動する。タイムラグは理論的に生じないとみてよいから、近接車間間隔は制動時にも維持される。傍から見ていて車間距離が伸び縮みするアコーディオン現象は生じない。 トラック隊列走行は最大10%の省燃費効果を発揮し、同時にこれはCO2の排出削減に通ずる環境性能を発揮する。事業主にとっては燃料費節減を意味する。

    オランダが主導して企画

    欧州共同体EUは加盟国が6ヶ月毎に持ち回りで大統領の地位を担うことになっている、2016年前半期はオランダがその任に当っている。実は、今回の欧州トラックメーカー6社が等しく参加して行われた「半自動トラックによる隊列テスト走行」は、この期間にEU圏内の交通規則の調和について加盟国間の協働歩調を確立したいというオランダの強いリーダーシップにより象徴的イベントと位置づけられて実行されたのである。いわば、公道を使って隊列走行の優位性を広く世界に発信する為の壮大なデモンストレーションである。 このイベントの支持者達によれば、隊列走行は道路輸送について環境負荷を低減させ安全性が高まり輸送効率も高まるとしている。そして、欧州の大型トラック6ブランド車が夫々の本拠都市からオランダのロッテルダム港へ向かって、各社が開発した技術による隊列走行車を走らせ、4月6日に全車が無事到着した。

    オランダ国土交通大臣を務めるMrs.メラニー・シュルツ。今回の「隊列走行ラリー」を企画推進した。自国のDAF車に乗っても、演台でのプレゼンも堂に入ったものだった。...ザ・トラック

    オランダ国土交通大臣を務めるMrs.メラニー・シュルツ。今回の「隊列走行ラリー」を企画推進した。自国のDAF車に乗っても、演台でのプレゼンも堂に入ったものだった。

    これは一大ラリーだ

    3月29日から始まったこのイベントは一種の「ラリー」といってもよいだろう。参加したDAF、Daimler、IVECO、MAN、SCANIA、VOLVOの6社グループの参加隊列車は、夫々の母国を起点にゴールのオランダの国際商業港目指して隊列走行車を走らせるというものである。 今回の「ラリー」(訳者注:S-ELによる原文では今回の企画をコンボイconvoyとしているが、目的地を定めて各地から隊列を組んだトラックが集まる内容から、訳者の感覚でモータースポーツのラリーに例えた。)には、ヨーロッパ自動車工業会ACEA所属のトラックメーカー6社グループ〈DAF、Daimler、Iveco、MAN、Scania、Volvo〉が全て参加している。(訳者注:車名でいえばルノーRenaultがないではないかとの指摘があろうが、これはVolvoトラックスグループに含まれる。)

    DAFはセミトレ2台隊列で参加。同社は資本系列では米PACCAR社のグループに属するが、アメリカのオーナーオペレーター層に根強い人気を保持しているKenworth車及びPeterbilt車のモダナイゼーション(近代化)に大きな影響を与えている。...ザ・トラック

    DAFはセミトレ2台隊列で参加。同社は資本系列では米PACCAR社のグループに属するが、アメリカのオーナーオペレーター層に根強い人気を保持しているKenworth車及びPeterbilt車のモダナイゼーション(近代化)に大きな影響を与えている。

    IVECOもセミトレ2台隊列で参加。欧州内のシェアは大きくはないが、イタリーを代表する自動車・産業機械/車両当の総合メーカーとして存在感を示している。...ザ・トラック

    IVECOもセミトレ2台隊列で参加。欧州内のシェアは大きくはないが、イタリーを代表する自動車・産業機械/車両当の総合メーカーとして存在感を示している。

    VOLVOの隊列は3台構成。本拠地瑞イエテボリから1300km走行してゴールした。フランスのトラック名門Renoult Trucksと米Mackという歴史有るブランドを傘下に持つボルボは、二重投資を避けて今回のラリーにはRenault車は参加させなかった。同車のユーザーは微妙な受け取り方であったかも知れない。...ザ・トラック

    VOLVOの隊列は3台構成。本拠地瑞イエテボリから1300km走行してゴールした。フランスのトラック名門Renoult Trucksと米Mackという歴史有るブランドを傘下に持つボルボは、二重投資を避けて今回のラリーにはRenault車は参加させなかった。同車のユーザーは微妙な受け取り方であったかも知れない。

    交通法規上の障壁について

    現在、EU域内各国は半自動トラックの隊列走行を許可する基準と手続きが夫々に異なっており、若し国境を跨いで隊列走行車を運行しようとすると、全通過経路の管轄国に申請して認可を得なければならない。各メーカーの通信方式も統一されているわけでは無い。だから、隊列走行車のブランド間に互換性があるとはいえない。従って混成ブランド車による隊列走行は現実的ではないのが現時点の実情である。 近年、一定の完成を見たばかりの隊列走行技術だが、今回は関係各国間で特別の許可を得て行われた。広くヨーロッパを縦横にトラックで隊列走行しようという場合には、未だ様々な障壁がある。技術的には一応の水準に達したのだが統一されているわけではなく、交通法規を含めた様々な法規上の違いもEU構成国間に横たわっており、相違点については今後かなりの調整が必要である。 「自動運転の隊列走行車を本格的に実用化しようとすれば、関連法規の調和が欠かせませんね」と語るのはACEAの商用車部会を代表するDAF社の社長兼CEOのハリー・シッパー氏である。

    更なる試験が重要

    隊列走行の実用化に向けては、様々な観点から試験を重ねることが次の重要な局面である。開発が進められた最新仕様車を用いて各種の試験を行おうとするメーカーに対して、国として支援を表明している政府も少なくない。従って、一般大衆の関心を高め理解の輪を広めてゆく努力も求められるところである。重ねていえば、全ヨーロッパ規模の展開が蓬莱の普及に向けて極めて重要なカギとなる。

    MANの隊列はセミトレ2台構成。独ミュンヘンから845km走行してゴールした。スウエーデンのSCANIAと共に独VWのグループに属している現在、隊列走行技術には両車が共有する部分は多いものと推測される。...ザ・トラック

    MANの隊列はセミトレ2台構成。独ミュンヘンから845km走行してゴールした。スウエーデンのSCANIAと共に独VWのグループに属している現在、隊列走行技術には両車が共有する部分は多いものと推測される。

    冒頭の基調講演

    今回の記者会見の冒頭に基調講演したジェレミー・リフキン博士は未来学者としても著名であるが、「今回の自動隊列走行を含むトラックの自動運転を第三の産業革命として、IOTと言われるモノのインターネットが今後のビジネスを今後のビジネスを根底から改革して新たな参入機会を生み出すだろう」と述べている。 一方で、「今回のラリーは史上初の試みで有りその成果は将来の可能性を予言するものです。手に手を携えて経験するこのイベントは近くアムステルダムで開催される欧州運輸大臣会議の重要テーマになるでしょう。私達が自動運転車の実用化に向けた法規上調和を討議する場面でこの成果は貴重な材料となります」と語るのは今回のラリー企画を推進したオランダ国土交通大臣を務めるメラニー・シュルツ女史である。

    SCANIAはセミトレ3台の隊列で参加。瑞ストックホルム市隣接の本拠地ソーデルタルエから1500㎞走行してゴールへ。同社のトップがMANのトップに就任する事例は過去にあるが、昨年はボルボグループのトップにスカウトされたことで話題を呼んだ。...ザ・トラック

    SCANIAはセミトレ3台の隊列で参加。瑞ストックホルム市隣接の本拠地ソーデルタルエから1500㎞走行してゴールへ。同社のトップがMANのトップに就任する事例は過去にあるが、昨年はボルボグループのトップにスカウトされたことで話題を呼んだ。

    代表的な技術的特徴

    ボルボの場合

    ボルボグループはいち早くこの計画に参加することを3月18日に開催された記者会見で公表した。この時、半自動化されたトラックの実車3台が駐車場に待機しており、オランダが誇る欧州最大のコンテナターミナルであるロッテルダム港に向けて出発するところであった。 スウエーデンを本拠とするボルボは、3台のトラックを次のように構成した。即ち、先頭車はヨーロッパで標準的な連結全長16.5mのセミトラクタ/トレーラである。2台目は、スカンディナビアで多用されているBトレインと称される全長25.25mのフルトレーラ。そして最後尾には、これもスカンディナビアでよく見かけるデュオ/ダブルスと呼ばれる全長32mのダブルスである。連結車両総重量GCWは、中間を走るフルトレは74トン、最後尾のダブルスは90トンである。最大積載重量は前から順に16トン、24トン、32トンである。スウエーデン国外の欧州諸国での走行時には、ボルボのセミトラクタは3軸の標準的セミトレを牽引して連結全長16.5mで走行している。

    人口希薄なスカンディナヴィア地域では、欧州圏内でも道路輸送効率を高いレベルで維持することは物流上の要諦である。ボルボが作成した資料は、欧州の一般路では運用されていない大型長大連結車の規格が示されている。上段:連結全長16.5mのセミトレ(欧州全域で標準的仕様)/積載容積100㎥/積載重量16ton/燃料消費率37L@100㎞、中段:連結全長25.25m/積載容積160㎥/積載重量24ton/燃料消費率48L@100km、下段:連結全長32m/積載容積200㎥/積載重量32ton/燃料消費率53L@100㎞。VOLVOやSCANIAブランド車に600馬力級の大出力エンジン搭載車があるのはこうした需要に応える為でもある。...ザ・トラック

    人口希薄なスカンディナヴィア地域では、欧州圏内でも道路輸送効率を高いレベルで維持することは物流上の要諦である。ボルボが作成した資料は、欧州の一般路では運用されていない大型長大連結車の規格が示されている。上段:連結全長16.5mのセミトレ(欧州全域で標準的仕様)/積載容積100㎥/積載重量16ton/燃料消費率37L@100㎞、中段:連結全長25.25m/積載容積160㎥/積載重量24ton/燃料消費率48L@100km、下段:連結全長32m/積載容積200㎥/積載重量32ton/燃料消費率53L@100㎞。VOLVOやSCANIAブランド車に600馬力級の大出力エンジン搭載車があるのはこうした需要に応える為でもある。

    車間距離は3分の1へ

    隊列走行の形態として最も分かり易いのは車間距離の短縮だろう。3台のボルボトラックスは通常のドライバーによる運転では考えられない超接近した車間距離で走行する。隊列を組む3台は互いに無線で交信状態を保ち、必要に応じて3台があたかも同時に加速したり減速したりすることが出来る。 欧州では通常、80km/H(秒速22mに相当)走行時には車間距離を3秒速に相当する66m以上保つ事を義務づけられているのに対し、接近車間距離というのは、隊列走行時には上の原稿基準に対し3分の1の22mの距離で追従するように設計されている。

    今回のラリーには参加しなかったが、SCANIA、VOLVO両社は(上の写真)に掲げた北欧特有の長大連結車でも隊列走行技術の開発を行っている。鉄道の希な地域を走る路上列車と言ってもいいだろう。...ザ・トラック

    今回のラリーには参加しなかったが、SCANIA、VOLVO両社は(上の写真)に掲げた北欧特有の長大連結車でも隊列走行技術の開発を行っている。鉄道の希な地域を走る路上列車と言ってもいいだろう。

    ダイムラーの場合

    3月21日にデュッセルドルフで行われた記者会見の席上、ダイムラートラックスは独自に開発した一連の自動運転トラックを公開した。〝ハイウェイ・パイロット・コネクト〟がそれである。自動運転車の隊列走行での他社との違いについて、メルセデス・ベンツは次のように説明している。隊列の先頭車は交通状況が許す条件で自律走行を行い、追従する2台目以降はこの動きに従って同じ挙動で隊列を維持する。

    2014年に初走行

    ダイムラー社は2014年7月にドイツ国内マグデブルグで最初の自動運転トラック「ハイウエイ・パイロットシステム」を披露している。この時のデモ走行は一般車が走行しない特定のハイウエイで行われた。翌2015年には、早くも一般路で自動運転走行を披露している。これに用いられたのはアメリカのフレートライナー車で、場所はネバダ州であった。 ダイムラーは記者会見当日、デュッセルドルフ近郊のアウトバーン52号線で3台の隊列走行車を走らせ、これをヘリコプターからの空撮中継映像を交えつつ、運転席内の様子と共に隊列走行の模様を公開した。アウトバーンの出口に差しかかった際、隊列走行車の間に乗用車が割り込んで来た場面では、その後部の隊列車は安全な車間距離をとって進路を譲り、乗用車が出口を出た後は元の短い車間距離に戻った。そして、記者会見の会場駐車場に整然と進入して来て見守る記者達に深い感銘をもたらした。

    ダイムラーは2014年に閉鎖路で隊列走行の試運転に成功している。翌2015年には一般公道で公開した。今回はセミトレ3台編成での参加であった。独シュッツガルトから620㎞走行してゴールした。...ザ・トラック

    ダイムラーは2014年に閉鎖路で隊列走行の試運転に成功している。翌2015年には一般公道で公開した。今回はセミトレ3台編成での参加であった。独シュッツガルトから620㎞走行してゴールした。

    まとめ

    トラックの自動隊列走行は道路輸送をより安全で環境に優しく、高効率化する上で大きな可能性を秘めている。隊列走行によって人間の運転では実現し得ない近接車間距離走行が実現し、定速で加速や制動操作の少ない走行が実現し、結果として10%程度の燃料消費低減に結びつけば温暖化ガスCO2にも寄与して一層環境に優しい輸送システムが実現する。外部情報を走行条件に反映させる(コネクテッド)運行システムは安全性の向上にもつながる。というのは、人間が運転する場合には視認によって制動操作の必要を感じてから実際にブレーキ操作が開始される迄の反応時間がありこの間は空走するわけだが、自動運転車ではこうした反応時間はほぼゼロであるから安全性は向上する。 その隊列走行が実現すると、既存の道路の運用効率が改善され有効輸送容量(キャパシティ)を向上させることが出来るから、貨物のデリバリーに要する時間は短縮され交通渋滞も減少が見込まれる。速度も環境性能も向上する新たな道路輸送方式は、世界的にも競争力を高めるだろう。

    〈訳者補足〉

    世界同時進行で進む自動化隊列走行大型トラックの隊列走行は、自動化運転技術の進展に伴い実用化に向けて世界同時進行の様相を呈してきた。今回は欧州の最新動向をスウエーデン在住のスヴェン-エリク リンドストランド記者がリポートしてきたが、わが国の場合、大型トラック4社の主力車を互いに一定の統一自動化仕様で準備し、各車1台の合計4台が隊列走行する試験を2013年に成功させている。これについて訳者がリポートした記事(2016 The TRUCKガイドブック)を以下に再掲しておくので欧州の場合と比較してほしい。

    わが国の場合

    NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)が2008年度から2012年度にかけて行った「大型トラックの自動運転・隊列走行実験」の例がある。5か年間に44億円を投じた大きなプロジェクトであった。国内トラック4社の当時の量産車ベースで実験用装備を施した実験車が使われた。本プロジェクトではAIST(国立研究開発法人産業技術総合研究所)つくばセンターのテストコースで実験が繰り返し行われ、最小車間距離は同一メーカー(日野)車どうしでは4mまでの接近が実現可能と確認でき、さらに、異なるメーカー車の隊列にも成功したと報告されている。第二東名道路の神奈川県海老名JCT・愛知県豊田東JCT間の開通時期が2020年と計画されているが、この高規格道路での実用化を視野に入れた開発である。 狙いは、隊列を組みその車間距離を実用上最小と目される4mに維持して80㎞/Hの高速走行を行い、運転者の疲労軽減、空気抵抗の低減による省燃費、通行車両の単位時間当たり通行量の極大化などが挙げられている。こうした成果を支える要素技術としては、以下が採り上げられている。 〔1〕隊列形成(個々の車両の位置を認識して隊列を形成し管理する技術) 〔2〕車線保持制御(道路端の白線を認識して操舵を制御する技術) 〔3〕車間距離維持制御(車車間通信と車間距離検出によって車間距離を制御する技術) 〔4〕障害物との衝突回避制御(障害物を検出し、レーンチェンジや非常ブレーキ制御を行う技術) 〔5〕先頭車追尾制御(分合流部、降雪や悪天候時などの白線認識不可時に先行車を認識し追従する技術) 現在は単車、或いは連結車がそれぞれ単独で走行し、安全車間距離は80km/Hで走行するなら80mが推奨されている。大型トラックの外形の特徴は大きな立方体であり、荷室内の積載効率を優先する角ばった形状が一般的だ。この形状は切り立った後面に乱流を生じて低圧領域を形成するから“ドラッグ(後方へ引かれる力)”が生じて空力的抵抗となる。この車体形状の特徴を継承しつつドラッグの軽減策として後面に整流板を取り付けて空力特性を改善して走行燃費改善に実効を上げている対策手法もあることは本誌でもリポートしてきた。 NEDOプロジェクトのリーダーを務めた名城大学理工学部情報工学部津川定之教授(当時)の着眼点は、ITによる自動制御を高度に効かせて車間距離を極小化し、隊列を組んだ後続車が前車が引き起こす後部乱流域内に車頭を突っ込んでドラッグを逆手に利用して燃費改善効果を引き出す、というものだ。実は、これはサーキットレースの世界では昔から利用されてきた後続車の省エネ手法“スリップストリーミング”そのものである。NASCAR(全米自動車競走協会)が主催するレースでこの手法を利用して長い隊列が生じる現象がみられることがあることをこの方面に関心の高い読者は記憶されているだろう。

    隊列走行中の国内大型4車の実験車:AISTつくばセンターのテストコースにて=提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)=...ザ・トラック

    隊列走行中の国内大型4車の実験車:AISTつくばセンターのテストコースにて=提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)=

    開発コンセプトの詳細は本文参照=提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)=...ザ・トラック

    開発コンセプトの詳細は本文参照=提供:新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)=

    実験に供された4車のトラック主要諸元...ザ・トラック

    実験に供された4車のトラック主要諸元

    今後の開発計画

    具体的な計画を表立って明らかにしている国内メーカーは2015年12月現在無いが、内部の開発の動きは熱が高まっていることが推察できる。その刺激になるのが第二東名道路の長距離全通時期が近づいてきたことであることは間違いない。第二東名の計画段階では、道路施設側に電子誘導設備を埋設し、これを利用して専用車線を“トラック列車”を走らせるようなアイディアもあったと記憶するが、トラック側で“オートノマス”自動運転が完結すれば自由度が大きく応用範囲も広い筈だ。 第二東名区間に限って実用を認可する動きも考えられれば、欧米の動きにキャッチアップするのもそう時間がかかることではないだろう。楽しみに見守りたい。 トラックは陸上輸送機関の中で最も一般消費者の日常生活に深くかかわっているが、トラックドライバーの不足がわが国では現実の問題となりつつある。また、一たび事故を起こせばその影響は重大となることが多いことも考えると、この自動運転車の普及は長い目でみてどうしても必要とされるだろう。

    いすゞ…トラクタと軽量シャシを実現する新型エンジン搭載車

    大型トラック…いすゞ自動車

    大型トラック「ギガ」シリーズに追加車型を設定

    いすゞ自動車株㈱は、大型トラック「ギガトラクタ」をフルモデルチェンジしたほか、大型トラック「ギガ」に新型の軽量化エンジンと専用トランスミッション搭載の追加車型を設定し、2016年4月11日に全国一斉発売した。 法規改正によりさらなる大量輸送を実現したトラクタ+トレーラ輸送は、輸送業界の深刻なドライバー不足への対応に資するものとして大いに期待されている。 今回の法規改正は、平成27年5月1日施行された「道路運送車両法(保安基準)改正」では、①4×2セミトラクタ(段差通過試験「適合」のエアサス車)の駆動軸重上限値引き上げ《10t→11.5t》、②セミトレーラ(特例8車種)の車両総重量限度引き上げ《28t→36t》、③セミトレーラ(特例8車種)の長さ限度引き上げ《12m→13m》、となり、平成27年6月1日施行の「道路法改正」では、①バン型等セミトレーラ(特例8車種)連結車の駆動軸重引き上げ《10t→11.5t》、②セミトレーラ連結全長引き上げ《17m→18m(ROH規定あり)》、③45フィートコンテナ等輸送における許可基準の改正、になる。 新型「ギガトラクタ」は、環境や安全、運行コスト低減に加え、ドライバーの疲労軽減のニーズに車両性能向上で応えるとともに、情報通信による遠隔モニタリング「MIMAMORI」を使用した稼動サポートを通じて、トラクタの大量輸送を高度に支えることになる。 なお、年間目標販売台数は大型トラックギガシリーズ合計で11,000台としている。

    大型トラック「ギガトラクタ」がフルモデルチェンジされた(左)居住性と機能性を充実させた「ギガトラクタ」の運転席(右)...ザ・トラック

    大型トラック「ギガトラクタ」がフルモデルチェンジされた(左)居住性と機能性を充実させた「ギガトラクタ」の運転席(右)

    新型ギガトラクタの主な特長

    【エクステリア・インテリア】 ◇新空力骨格キャブにより、空気抵抗を低減させると同時に、昇降ステップやグリップ等を効率よくレイアウトするなど、使い勝手と経済性能を両立。また、大型フロントグリルおよび大型インタークーラーにより冷却性能が向上。 ◇運転操作性の向上として、セミラウンドインパネを採用。スイッチ類をメーター・インパネ周りに集約し、また使用頻度に合わせてゾーン分けして機能的に配置することで、運転時の操作性や識別性が向上し、より効率的な操作を可能にした。また、ステアリングスイッチと4インチ液晶モニターのマルチインフォメーションディスプレイを採用することにより、安全で負担のない操作を可能にしている。 ◇ショートキャブの標準ルーフを新たに設定。また、ハイルーフの室内高を160㎜拡大し、開放感を高めた。 ◇シートのホールド感や調整機能、通気性などを改善し、より快適な室内空間とした。 【エンジン】 ◇6WG1/6UZ1ともにラジエーターサイズを拡大。通常の運転操作でエンジンの自動停止と再始動が可能な「ecostop」の採用により、一部車型で平成27年度燃費基準+5%を達成。 ◇6UZ1エンジン本体を改良。ターボチャージャーの仕様変更、インタークーラーとラジエーターの大型化、EGRクーラーの高効率化、サプライポンプの変更、新インジェクターの採用、超高圧コモンレールの採用により、低・中回転域のトルクアップを図り、燃費を向上。また、エンジンリターダを採用し、充分な補助ブレーキ力を確保した。 ◇6UZ1エンジンに排気管噴射方式を採用。従来のDPD再生用の燃料噴射を気筒内で行う方法ではなく、排気管内に設置したインジェクターにより噴射することでDPD再生の性能を向上。 【トランスミッション】 ◇単車系ギガと同様に、進化した自動式変速トランスミッション「Smoother-Gx」により、スムーサーのシフトショックを低減し、より滑らかな発進を実現。また、トラクタではすべてのスムーサーGxの車両に車両走行慣性を有効活用した省燃費運転「Smartグライド」を設定。 【トータルセーフティの追求】 ◇積荷の偏りなどによる横転につながる不安定な走行状態であることを検知した場合、警報音とマルチインフォメーションディスプレイへの警告表示でドライバーに減速を促す「ロールオーバーウォーニング(ROW)」をエアサス車に標準装備。電子式車両姿勢制御システム「IESC」の制御と合わせて、トラックの横転回避を高度に支援。 ◇単車系と同様に安全装備を拡充。衝突回避支援機能を追加したプリクラッシュブレーキは、ミリ波レーダーとカメラを併用した二重検知により、前方の検知精度を大幅向上。また、車線逸脱警報(LDWS)も採用。 【高積載の確保】 ◇道路運送車両法(保安基準)および道路法の改正により、4×2エアサス車セミトラクタの駆動軸重が10トンから11.5トンに引き上げられ、さらにフルモデルチェンジによる重量増を最低限に抑制。けん引できるトレーラの種類を広げた。 【情報通信による遠隔モニタリング】 ◇単車系ギガと同様に、データ通信とインターネットを融合し車両データを遠隔で解析する仕組み「MIMAMORI」を標準搭載。 ◇「MIMAMORI」で事前に入手した車両データを活用した高度純正整備「PREISM」により、正規ディーラーならではの高品質な整備で、ユーザーの車両の稼働確保を強力にバックアップ。

    新型ギガ追加車型の主な特長

    新開発の7.8リッター6NX1エンジンの搭載により、クラストップレベルの軽量シャシを実現。ローリ用途等に余裕で応えるすぐれた積載性を確保した。 【新型エンジン6NX1】 ◇小排気量と2ステージターボの採用により、低速域から高速域まで広い回転域で安定したトルク特性を発揮する軽量コンパクトな7.8リッターエンジン6NX1-TCS(340PS)エンジン。 ◇エンジンリターダを採用し、充分な補助ブレーキ力を確保。 ◇通常の運転操作でエンジンの自動停止と再始動が可能な「ecostop」を全車に標準装備し、アイドリング時の燃料消費削減に貢献。 ◇排気管噴射方式を採用。従来のDPD再生用の燃料噴射を気筒内で行う方法ではなく、排気管内に設置したインジェクターにより噴射することで、DPD再生の性能を向上。 【新型トランスミッション】 ◇シンクロ全段の大容量のカーボンシンクロを採用し、より低い操作力で、より速い変速を可能にした。9速ならではのワイドなギヤレンジですぐれた動力性能を発揮し、なめらかに加速する。6NX1エンジンとの組み合わせで、9速MT、9速AMTの設定がある。

    東京モーターショーに展示されていた7.8リッター1カム4バルブ6気筒の「6NX1-TCS型」エンジン...ザ・トラック

    東京モーターショーに展示されていた7.8リッター1カム4バルブ6気筒の「6NX1-TCS型」エンジン

    自動式変速トランスミッション「Smoother-Gx」は、スプリッター・レンジ機構による前進12段、後退2段の多段トランスミッション。電子制御による自動変速により、ドライバーの疲労を軽減し、エンジンとの協調制御を取り入れることで、変速時間の短縮、ドライブフィーリングの向上を実現させている...ザ・トラック

    自動式変速トランスミッション「Smoother-Gx」は、スプリッター・レンジ機構による前進12段、後退2段の多段トランスミッション。電子制御による自動変速により、ドライバーの疲労を軽減し、エンジンとの協調制御を取り入れることで、変速時間の短縮、ドライブフィーリングの向上を実現させている

    東京地区希望小売価格

    ◇いすゞギガトラクタ(QKG-EXD52BD)フルキャブハイルーフ、リヤエアサスペンション、平成27年度燃費基準達成、ポスト新長期排出ガス適合、平成21年低排出ガス車認定取得、プリクラッシュブレーキ・ミリ波車間ウォーニング・ミリ波車間クルーズII・車線逸脱警報(LDWS)・ロールオーバーウォーニング(ROW)・IESC・ecostopを標準装備、6WG1-TCC338kW(460PS)エンジン、12速AMTで、19,424,880円(消費税込)。 ◇いすゞギガ(QKG-CYG60BM)フルキャブ標準ルーフ、平成27年度燃費基準達成、ポスト新長期排出ガス適合、平成21年低排出ガス車認定取得、プリクラッシュブレーキ・ミリ波車間ウォーニング・ミリ波車間クルーズII・車線逸脱警報(LDWS)・IESC・ecostopを標準装備、6NX1-TCS250kW(340PS)エンジン、9速AMTのシャシで、15,924,600円(消費税込)。

    「ギガトラクタ」にはカスタム仕様も用意されている...ザ・トラック

    「ギガトラクタ」にはカスタム仕様も用意されている

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    小型トラック…日野自動車

    PCS、車線逸脱警報の装着車を設定

    日野自動車㈱は、小型トラック「日野デュトロ」を改良し、2016年5月6日に発売する。 日野は、安全装備を標準装備として普及を促進することが交通事故削減に効果的と考え、従来より標準装備化を推進してきたが、今回の改良では、新たに衝突被害軽減ブレーキ「PCS(プリクラッシュセーフティ)」および「車線逸脱警報」を標準装備とした車型(標準幅キャブ、車両総重量5t未満、2WDのディーゼル車のカーゴ車)を設定し、既に標準装備されている車両安定制御システム「VSC(Vehicle Stability Control/LPG車には設定なし)」や「電動パーキングブレーキ(ダブルキャブ・ルートバン・LPG車には設定なし)」とあわせて、安全装備の一層の充実を図った。 今回新たに装着車型を設定したPCSは、フロントバンパー中央に装着したミリ波レーダーに加え、フロントウインドウの上部中央に単眼カメラを装備しており、歩行者を検知することが可能で、低速で走行する先行車や、歩行者を含む停止障害物に対して衝突回避または衝突被害軽減を支援する。また単眼カメラは車線逸脱警報の車線認識センサーとしても機能する。なお、PCS装着車の設定に伴い、標準幅キャブ車のフロントバンパーのデザインを変更している。 今回発売する「日野デュトロ」のディーゼル車およびハイブリッド車は、ASV減税またはエコカー減税の対象となる。 ASV減税は、先進安全自動車(ASV)技術を備えるトラック・バスについて自動車取得税、自動車重量税を軽減する特例措置で、PCSとVSCの両方を装備している場合は、取得税は取得価額から525万円控除、重量税は75%減税、またVSCのみの場合は取得税は取得価額から350万円控除、重量税は50%減税となる。 エコカー減税は、ディーゼル車は取得税40%、重量税25%の減税、ハイブリッド車は取得税、重量税ともに免税となる。 なお、年間販売目標台数は日野デュトロシリーズ全体で27,400台としている。

    衝突被害軽減ブレーキ「PCS(プリクラッシュセーフティ)」や「車線逸脱警報」などが標準装備された「日野デュトロ(TKG-XZC605M-TQMMB)」...ザ・トラック

    衝突被害軽減ブレーキ「PCS(プリクラッシュセーフティ)」や「車線逸脱警報」などが標準装備された「日野デュトロ(TKG-XZC605M-TQMMB)」

    代表車型の概要と価格

    【車名・型式・仕様】日野デュトロ(TKG-XZC605M-TQMMB)標準幅キャブ、標準長ボデー、全低床、スタンダードグレード、PCS標準装備、カーゴ完成車、【エンジン/トランスミッション】N04C-UN…100kW(136PS)/5速MT、【最大積載量】2.0トン、【東京地区希望小売価格(消費税込)】4,315,140円。 【車名・型式・仕様】日野デュトロハイブリッド(TSGXKU710M-TQUQC)ワイドキャブ、ロングボデー、全低床、スタンダードグレード、カーゴ完成車、【エンジン/トランスミッション】N04C-UL…110kW(150PS)/ProShiftⅤ(5速AMT)、【最大積載量】3.0トン、【東京地区希望小売価格(消費税込)】5,551,740円。

    「トヨタ安全運転インストラクター養成プログラム」でベトナム初の『安全運転インストラクター』が誕生安全運転の知識や技術を広める活動を展開

    トヨタ自動車は、交通事故の無い社会を目指し、各国でさまざまな交通安全に関する社会貢献活動を行っている。その一環として、事業開始から20周年を迎えたベトナムトヨタがベトナム公安省の交通警察局と共同で「トヨタ安全運転インストラクター養成プログラム」を実施。このたび、ベトナム初となる8名のインストラクターが誕生した。

    札幌ボデー工業㈱(札幌市西区発寒)優れた技術力でオーダーメイドの特種車を製作新分野へ積極的に取り組む企業姿勢

    【創業67年目を迎えた北のテクノロジー発信基】地本誌がまだ「特装車とトレーラ」時代に北海道と東北地区を担当していた。その関係で今回訪問する札幌ボデー工業㈱には何度も訪ねている。40年近く前、記者になりたての若造時代に同社を取材訪問してそのボデー製造レベルの高さに驚いたことがある。特に、FRPを利用した成形技術のすばらしさは今でも忘れていない。

    運賃の適正化と同時に車両稼働率の向上を先ず今のドライバーに夢のある待遇が急務

    今年2月12日、東京・新宿の京王プラザホテルで全日本トラック協会・青年部会の全国大会が開催され、若手経営者約730名が一堂に会して、運送経営のあり方など論議した。(本誌3月号参照)この全国大会を指揮したのが笠原史久青年部会長である。平成2年に施行された物流二法で事業者免許や運賃等が規制緩和されて以来、トラック運送業界は厳しい経営を強いられている。中でも少子高齢化に加えて3Kイメージが残るこの業界はドライバー不足が深刻の度を深めている。運送事業者の中には将来に不安を抱く経営者も少なくないが、笠原史久部会長は自らが経営するNTSロジの売上げをこの10年間で約2.5倍に引き上げる積極経営を展開したほか、運送業界の結束にも尽力する若きリーダーである。今後のトラック運送のあり方などお聞きした。