【対談】大須賀正孝 静岡県トラック協会 会長
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正月の楽しみのひとつが、東京・大手町から神奈川県の芦ノ湖を往復する箱根駅伝の観戦で
ある。東海道を徒歩で行き来していた時代、小田原を過ぎ“天下の険”と歌われた箱根の
山を越えると駿河(静岡県)に入る。新幹線だと三島辺りから右手車窓には雄大な富士山が見
え、左には駿河湾が広がる。静岡県は大きく東部、中部、西部に分けられ、全域が太平洋
側気候であるが、標高差が大きいため地域による寒暖の差が激しい。冬の平野部や沿岸部は
黒潮の影響で本州の中でも非常に温暖で、寒気の影響を受けにくいので放射冷却によって朝
晩は氷点下まで下がることがあっても、日中は10℃を超えることがほとんどである。今は県
をあげて住んでよし、働いてよし、訪れてよし…と、「富国有徳の日本の理想郷」を目指して
施策に取り組んでいる。産業は第二次産業の割合が高いが、緑茶やみかんに代表される農業
やマグロ・カツオ・桜エビなどで有名な漁業のほか、伊豆半島・赤石山脈(南アルプス)・浜
名湖など観光・サービス業も盛んである。静岡市を中心にプラモデル会社・工場が集中して
おり、全国売上シェア90%以上を占め、富士市では製紙産業が盛んである。また、浜松市・
磐田市周辺では楽器製造・オートバイ・自動車製造・光電子技術産業が盛んである。浜名湖
周辺では養鰻業が盛んであったが最近は他の産品にも転換、スッポンが養殖されているとこ
ろが多い。周辺海域では、高級魚として人気の高いトラフグの養殖も行われ、新たな特産品
となっている。この静岡には約2000社の運送会社があるが、その内の約1400社が加盟
するのが一般社団法人静岡県トラック協会(以下、静岡県ト協)であるが、この協会長を務め
るのが一代にして東証一部上場を果たした株式会社ハマキョウレックス代表取締役会長の大須
賀正孝氏である。今回は、浜松市にあるハマキョウレックス本社に大須賀正孝会長を訪ねた。
トラック協会長インタビュー《静岡県》
大須賀正孝
(ハマキョウレックス代表取締役会長)
ドライバー不足の根本を
解決しないと日本経済が破綻
人を育てることが
物流業の全て
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一般社団法人静岡県トラック協会の大須賀正孝会長
□秋林路 会長のご著書『やらまいか』(月刊ロジス
ティクス・ビジネス)を楽しく拝読させて頂きました。創
業期には大変なご苦労もあったようですが、当時のト
ラック運送事業の様子がよく分かりました。
■大須賀 いま振り返れば良くやったなと思うけど、
当時は一所懸命だから苦労だとは思っていないんだ
よね。進学もせず何も分からないでこの業界に入った
ので、直球勝負でやって来ただけです。
□秋林路 当時は白ナンバーで実績がないと運送事
業免許が下りにくい時代でしたが、トラック協会から
免許を取れと呼び出しを喰らって、殴り込みを掛けた
と書いておられます。今はその静岡県ト協の会長で
す。(笑)
色んな業界に業界団体がありますが、そもそも業
界団体は何の為にあるのか、その辺りからお伺いし
たいと思います。
■大須賀 確かに業界団体は色々あるけれども、この
トラック運送業界が一番難しい。現在、トラック運送業
者は全国に6万3000社あるが、全体の95%以上が
中小零細で規模の格差が甚だしい。この状況で零細
まで含めてまとめ上げることが出来れば神業ですよ。
何しろ、皆がオーナーで一匹オオカミだし、会員がト
ラック協会に期待するのは運賃アップです。しかし、こ
れを協会としてやることは法律(公正取引)の問題もあ
るので難しい。結局、運賃は個々の事業者が荷主と
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直接交渉するしかない訳だけれども、代わりの事業者
も沢山居る。値上げを要請しようと思っても、切られる
と会社は破綻してしまうので、思っていても口に出せな
い。運賃が上がらないので、ドライバーに良い給料を
払いたくても払えない。若い人は色んな職業があるの
で、給料も低いし仕事も厳しいこの業界を好んでは来
ない。ドライバー不足も含めて、この業界の全ての問
題は適正運賃が貰えない事に帰結するんです。
□秋林路 確かに運賃を上げる為に協会が結束す
ると、談合だといって公取から睨まれると思います。
でも現実は物流二法を施行して以来、弱者にしわ寄
せがくる形で多くのトラック運送業者が経営難に喘い
でいるし、若い世代も職業対象として魅力を感じてい
ません。協会として出来ることもあるのではないでしょ
うか。
■大須賀 いま、トラック運送事業は簡単な手続きで
何時でも始めることが出来る。保有台数が5台や10
台では荷主の言いなりにならざるを得ない。だから私
は合併してでも保有台数を20台以上にする。そうす
れば管理費も出るし、荷主と運賃交渉する原価計算
を作るゆとりも出来る。そこまでやらないと、この業界
の運賃は上がらないと思っているんです。勿論、協
会として出来ることは何でもやるけれども、協会として
出来ることと出来ない事があります。
□秋林路 物流二法が出来る前は、当時の運輸省
が法定運賃として目安を決めていました。それが自由
化されたので、運賃は民間の需給関係に任せること
になりました。
■大須賀 確かに自由化も規制緩和も良い。でも最
低でも安全管理が出来る台数でラインを引いて緩和
するなら良いが、5台では無理です。ある程度台数
があり、社員もいれば労働基準法も守れる。それが
野放し状態ではこの業界は秩序も保てないし運賃も
上がりません。アウトサイダーの中には3人しか居な
い事業者もいる。これで、どうやって安全管理が出来
ますか?
□秋林路 零細事業者を3ちゃん企業といいます
が、トラック運送事業は、荷主対応に加えて、様々な
報告義務もあるので、3人では難しいですよね。
■大須賀 経済は物をつくる人と売る人、それに金
融があって成り立つが、物を届けないことには完結し
ない。この4つの要素の内、生産、販売、金融はしっ
かり管理されているが、輸送だけが極めて不安定な
状態に置かれている。しかし、ここが狂ってくると経
済は大混乱に陥る事になる。
□秋林路 現実にドライバー不足は深刻です。勿
論、少子高齢化の背景もありますが、職業として求
心力の弱い業界になっていることが問題です。やはり
待遇を良くしないと若者は集まりません。
■大須賀 料金というものは需要と供給のバランスに
よって決まる。例えば今、観光バスの料金は8割アッ
プだし、ホテルは一時の3倍に跳ね上がっている。と
ころがトラックの運賃は上がらない。なぜかというと、
ドライバーが足りないと言いながらも、現実には運ん
でいるからです。バスやホテルは主に観光だからまだ
良いが、物流は経済に直結しているから、ドライバー
不足でホントに物が運べなくなると、運賃は急激に上
がる。輸送というのは、例えば自動車の部品ひとつに
して原材料のところから輸送費がかかっているし、完
成した物を組み立てラインに運ぶのもトラックだから、
あらゆるところで運賃がかかっている。この料金が無
秩序に上がり始めると、物価が跳ね上がり国際競争
力がなくなる。心配されるのはこの点です。
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H26.9.10に開催した「人材・安全確保/適正運賃収受緊急推
進大会」
□秋林路 なるほど。ドライバーを集めるためには給
料を上げて待遇を良くしなければならない。その為に
は運賃を上げざるを得なくなる訳ですが、無秩序に
上げると、物価に跳ね返ってグローバル経済の中で
国際競争力を失う危険性があるという事ですね。こ
れは避けなくてはなりません。
■大須賀 今、日本経済が辛うじて世界をリードして
いるのは、我々トラック業者が物流を下支えしている
からです。今ここで、しっかりした方針を打ち出し、
安定した物流を構築しないと大変な事になる。だか
ら、これは国として対応しなければならない問題なん
です。
□秋林路 自由化というのはそういう怖さがあります
ね。今のトラック運送業界は事業者数が増えた事で、
生き残る為に運賃を上げる事が出来ない。ところがド
ライバー不足で需給関係が狂うと逆に止めども無く運
賃が上がって、経済そのものがおかしくなるという訳
ですね。
■大須賀 そうです。だから荷主懇談会でも私は、
トラック運送事業者に無理難題を押しつけるのではな
くて、将来にわたって安定した物流が出来るように、
適正料金を払って欲しいと訴えているんです。
□秋林路 物流二法が施行されてからほぼ四半世
紀ですが、この業界は身を粉にして必死になって荷
主の要望に応えて来たと思います。それが結果とし
て国際競争力を下支えして来たと思います。しかし、
今回のドライバー不足は、少子高齢化の趨勢に加え
て若者の価値観の変化(自動車離れ)によって起きて
います。ですから根本的なところにメスを入れない限
り、解決しないと思います。
■大須賀 その通りです。その時期も待ったなしのと
ころに来ている。
□秋林路 昨年は大須賀さんが後援会長をなさって
いる片山さつきさんを始め、トラック輸送議員連盟の
政治家10名に取材しました。その時に今回のドライ
バー不足は“物流マヒ”を引き起こしかねないと訴え
ました。国交省は荷主との取引の見える化(ヘーパー
化)や女性労働力の活用、高齢者の延長雇用などを
打ち出していますが、俄に効果が出るとは思えません。
■大須賀 それは目先の対応であって根本問題に触
れていないからですよ。このトラック運送業界に物流
コストのしわ寄せが来ないように仕組みそのものを変
えないと何も解決しません。
□秋林路 トラック運送事業者の最低規模を安全管
理が出来る20台程度に線引きすることですね。
■大須賀 そうです。現在のトラックドライバーの年
齢構成は、30歳以下が全体の1.8%です。一方、
55〜65歳は40%です。私も学校に出掛けて高校生
と話す機会がありますが、トラック運転手になりたいと
いう子供はひとりもいない。それに親御さんも運送は
社会的地位が低いと見ているから、子供の進路とし
て奨めない。これでは募集しても若いドライバーは来
ない。これを良くする為には、働く環境を改善したり、
賃金も上げる必要があるんです。昔は長距離は賃金
が良かったから乗りたいという人も多かった。今は、
その日に自宅に戻れないから長距離を敬遠する人が
多くなっている。この業界は賃金が低いだけでなくて
ボーナスもなし、社会保険にも入っていない業者が居
るんです。そういう事では大変な事になるから、早急
に改善しようと訴えているんです。それに対して国は
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女性を使えとか、高齢者を使えとか言う。そんな事で
は変わらないですよ。
□秋林路 荷主のロジスティクス、物流というのは、
企業の経営戦略と密接に関係しています。末端では
価格が競争力のひとつになりますから、経営戦略とし
ては、物流コストを可能な限り抑えることになります。
会社がそういう方針ならトラック運送事業者に荷物を
発注する窓口も、運送費を下げる事が会社に貢献す
ることになるので、業者が値上げを言ってくれば、別
の業者に切り変えようとする。物流二法による規制緩
和で6万3000業者に膨れあがったトラック運送業界
は、安く運ぶ予備軍が幾らでもいるという状況です。
■大須賀 荷主は我々のお客さんだから要望には応
えなければならない。しかし、そんな事をやっていた
のではドライバー不足で荷物が運べなくなるし、運賃
は無秩序に急上昇します。そうなってからでは遅いの
で、我々は荷主と一緒になって、国に対して要望しな
くてはいけないんです。荷主が我々を下請けと思って
いる内は変わらない。パートナーとして一緒になって
取り組んでくれないと変わらないんです。
□秋林路 そうですね。著書の中で会長も「運送事
業者にとってドライバーは宝だ。」と述べておられます
が、トラック運送事業者は荷主に代わって物を運んで
いる訳ですから、同じように切り離すことの出来ない
パートナーだと捉えてくれれば、自然に取引環境も変
わってくるのではないかと思います。
■大須賀 そう。我々は荷主と一体となって初めて
パートナーなんです。
□秋林路 相手の事など考えないで絞るだけ絞る荷
主はパートナーとは言えませんね。
■大須賀 我々は荷主さんに代わって物を運ぶ訳だ
から、安全からマナー、言葉遣いまで教育してトラッ
クに乗せている。荷主が無人で走るトラックを造って
自分で運ぶというなら別ですが、そんな事は出来な
い。だからパートナーとして一緒になってドライバー不
足に取り組んで欲しいと申し上げているんです。
□秋林路 正直言って、このドライバー不足は根っ
こは深いところにあって、運賃を上げれば解決す
るほど単純では無いように思っています。例えば、
私が高卒なり大卒で社会に出る時に、子供心に
でもトラック運送を憧れの対象として見ていなければ、
就職対象の選択肢にも入れません。新幹線の運転
手、飛行機のパイロット、警察官、消防士、お医者
さんなど、子供はカッコ良いとか社会に役立つ仕事と
してイメージしています。ところが、このトラック運送
は極めて公共性の高い仕事をしているのにも関わら
ず子供達には無視されています。それだけではなくて
社会からも白目で見られるというか正当な評価を得て
いないように思います。その点は、もっとマスコミを上
手に使うとか、自らもアピールする必要があると思いま
す。
■大須賀 荷主の中には、運賃をちょこっと上げれ
ば、業者は幾らでもいるし、場合によっては自分で運
べば良いと考える企業があります。それがどういう結
果を招くのか、真剣に考えていない。国の経済が破
綻したらこの国は終わりです。そういう事を国も政治
家も本気になって考えなくてはいけない。
□秋林路 トラック運送はひとつの業界を成している
訳ですから、やはり秩序が必要です。ところが公共
性が高い仕事なのに誰でも簡単に参入できるので秩
序を保ちにくい。同じ交通でもバスとかタクシーは秩
序を保っているように思います。
■大須賀 それは運ぶ対象が人だからですよ。我々
が運ぶのは荷物ですから、相手は企業です。人を
運ぶ事に対しては国もピリピリしているけれども、トラッ
クに対しては手を打とうとしない。
□秋林路 でも荷物の届け先は川下(消費者)に向
かっている訳ですから、ドライバー不足で物が届かな
ければ文句が出ます。
■大須賀 まだ文句が出ないのは、我々業者が必死
になって運んでいるからですよ。それも限界に来てい
るんです。例えばタクシーと比べてみても、大型トラッ
クはタイヤが10本も付いていて一台2000万円もす
る。当然、燃費もかかるし、高速道路代も我々が支
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こども110番の車
払います。一方、タクシーは、車両価格は1台300
万円程で、燃費も良くなっているし、高速代はお客が
払う。信号待ちで止まっていてもメーターが上がる。
タクシー料金は1㎞約430円ですが、トラックの運賃
は1㎞200円から230円(トンキロベース)ですよ。
□秋林路 タクシーとそんなに格差があるんです
か。大きな違いですね。
■大須賀 タクシーの実車は地方の場合、1日平均
2時間半です。それでも儲からないから料金を上げ
るという。トラックは昼も夜もフルに走っているから、そ
の料金で成り立っているんですよ。それでも運賃は上
がらない。この状況でトラック運送業界は経営が成り
立つ訳ないんです。その結果がとんでもない事になる
事を責任ある立場の人は真剣に考えないといけない。
□秋林路 ASEAN統合の動きもありますし、経済
はこれからどんどんグローバル化に向かうので、国際
競争力が無くなると国は大変です。
■大須賀 私は声を大にして言うけれども、これは
我々の存在を無視し続けて来た結果だし、国の怠慢
ですよ。今日、明日のことを見ているだけではダメ。
やはり5年先、10年先を見据えた政策を打たないと、
国も企業も破綻してしまいます。
□秋林路 確かに、需給関係に任せておくと、とん
でもない事になりかねませんね。
■大須賀 今度の国勢調査を見ますと、今年定年に
なる人は210万人で、成人する人は170万人です
から、1年間で就労人口は40万人も減る。それで、
昨年生まれた人は約100万人ですから、定年になる
人の約半数です。こういう形で日本は働く人の数が
年々減ってくる。その中でドライバーになる人がどれだ
け居るのか、とんでもない事になるのは目に見えてい
るんです。
□秋林路 ところで、静岡県ト協の活動も少し伺って
おきたいのですが、基本的にはどんな取り組みなので
しょうか。
■大須賀 会員の要望の一番は運賃アップですが、
活動は色々取り組んでいます。トラック運送事業は、
産業経済に係わる諸資材から生活必需品まで、暮
らしを守るライフラインとして重要な役割を担っていま
す。しかしその一方で、輸送需要の伸び悩み、運
賃水準の低下、新規参入事業者の増加、高速道路
料金制度の問題、ドライバーの高齢化と若年層ドライ
バーの不足など、トラック運送業界をとりまく環境は厳
しくて、克服課題も山積しているのが現状です。こ
うした諸問題を克服するために、トラック運送事業の
健全な発展をうながし、社会に貢献し、社会と共生
できる事業を育成していくのが、事業者団体であるト
ラック協会の重要な役割であり、使命でもあります。よ
り質の高い輸送サービスを提供するために、交通安
全、環境、情報化等各種対策や事業者が必要とす
るあらゆる分野を事業対象に、さまざまな事業活動を
展開すると同時に、よりよい輸送・経営環境づくりを
めざしています。
□秋林路 具体的にはどんな取り組みですか。
■大須賀 いろいろ多岐に渡りますが、社会的取り
組みだけを少し紹介しましょう。まず、新型インフルエ
ンザ等対策に関する業務計画があります。当協会は、
「新型インフルエンザ等対策特別措置法」および「静
岡県新型インフルエンザ等対策行動計画」等に基づ
き、平成25年10月に、静岡県より地方指定公共機
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道路清掃活動トラックの森づくり事業
関として指定され、新型インフルエンザ等の発生段階
の区分に応じ、地方指定公共機関としての責務の
遂行及び人命尊重の視点からの感染防止を講じるた
め、「新型インフルエンザ等対策に関する業務計画」を
定めています。
□秋林路 トラック協会としては珍しい取り組みです
ね。
■大須賀 そうだと思いますが、社会的意義は高い
と思います。それと、「こども110番の車」運動があり
ます。これは、平成18年10月から静岡県警本部、
県教育委員会の後援を得て実施しています。子ども
たちが登下校時などにトラブルに巻き込まれる事件、
事故が多発していることを受け、地域をくまなく走る緑
のナンバートラックの機動性を活かし、こうした犯罪の
抑止と地域の子供を守り安心して暮らせる街づくりに
少しでも役に立てればと実施しています。安全・安心
な街づくりとフレンドリーなトラック輸送を目指し、県下
で当協会のマスコットキャラクターの「グッとらっくん」が
見守り役として目を光らせています。
□秋林路 それは良いことですね。他のトラック協会
でも出来ますから、全国に広めたいですね。他の取
り組みをまとめて紹介して下さい。
■大須賀 分かりました。まず道路清掃活動があり
ます。これは、道路上(非常駐車帯や中央分離帯)
へのドライバーによるゴミのポイ捨て行為が後をたた
ず、環境美化の面で問題化していることから、環境
対策事業の一環としてトラックが通行する頻度の高い
県内国道非常駐車帯等の清掃活動を行っています。
次に、トラックの森(静岡県森町・伝倉沢)づくり事
業を推進しています。
この事業は、森林保護育成を図ることで、地球温暖
化の大きな要因となるCO
2
の削減に寄与することを目
指したものです。
また、トラック交通安全教室も開催しています。こ
れは、おもに地域の子どもたちを交通事故から身を
守る知識と安全意識高揚を図る場として、県下各地
(小・中・高)で「トラック交通安全教室」を昭和57
年から開催しています。実際試乗させたりしながら、
トラックの特徴であるミラーの役割とその死角、内輪
差、ダミー人形を使用した左折時の巻き込み事故な
どについて説明を行い、「見て、考える」安全指導を
交通マナーの向上に努めています。
更に、少年・少女サッカー支援もあります。これは、
社会貢献事業の一環として、少年たちがサッカーを通
じ礼儀、思いやりを身につけるとともに、お互いの友
情と連帯意識を深め、もっと健全な青少年の育成を
図り、加えて、物流を通じて社会的な責任を果たして
いるトラック運送業界について理解を求めることを目的
としています。
□秋林路 地域やこどもを大切にする取り組みですね。
TheTRUCK2015年12月号 31
交通安全教室
交通安全教室
少年・少女サッカー
給食用ナプキン
■大須賀 まだあります。新入学児童には全員に給
食ナプキンを贈呈しています。これは、平成19年度
から県下小学校に入学する新入学児童(県内の公
立、私立543校 約3万9千人)あてに、給食用ナ
プキン(ミニテーブルクロス)を製作し贈呈するもので
す。ナプキンは、横断歩道を渡る児童を、協会のマ
スコットキャラクターである「グッとらっくん」が見守るデ
ザインで、「みぎみて、ひだりみて てをあげて」わたり
ましょうと呼びかける内容になっております。
絵本読み聞かせもやっていますよ。トラック運送事
業は、国民生活を支えるライフラインとして、非常に
重要な役割を果たしており、欠かすことのできない事
業ですが、その活動については一般の方々によく知
られていません。こうした中で社会貢献活動の一環と
してトラックに関する絵本を静岡県内の公立幼稚園で
絵本の読み聞かせを行い、トラック運送事業が担う大
切な役割を子ども達の目線で感じ、夢や憧れを抱い
てほしいと思っています。
□秋林路 素晴らしい活動です。実は我田引水に
なっては恐縮なので、発言を控えようかと思っていた
のですが、来年のトラックの日(2016年10月9日)を
皮切りに4日間、当社は幕張メッセで『トラックショー』
の開催を計画しています。今回のテーマは勿論ドライ
バー不足ですが、ジョイントイベントとして、トラック運
送事業者のご家族をご招待する“こどもトラックショー”
も行います。こども達に親御さんと一緒にトラックを見
学して頂いて、社会性の高い親の仕事を知って貰う
TheTRUCK2015年12月号 32
ハマキョウレックスのトラック
ことが狙いですが、写真や絵画、作文のコンテストも
行います。また、政治家や官僚、荷主も交えたシン
ポジウムや講演会も行う予定です。このようなイベント
をマスコミに報道して貰って、トラック運送業界の実情
を広くアピールしたいし、トラック産業界も一緒になっ
て、この問題に取り組んで欲しいと願っているのです。
■大須賀 それは良い企画ですね。トラック運送業
界のバックアップにもなる。本来は我々がやらなくては
いけない活動です。全面的に支援するので頑張って
下さい。
□秋林路 有り難う御座います。実は、既に関東地
区のトラック協会からは協賛のお声も頂いているんで
す。この『トラックショー』を実施するためには、まだ多
くの難関があるのですが、会長の励ましは勇気百倍
です。
トラック運送業界は規模が大きいだけに課題も多い
訳ですが、トラック産業界に対しても少しお考えを伺
いたいと思います。
トラックは運送に使う道具ですから、運送事業とは
切っても切り離せない縁があります。少し前まで、トラッ
クメーカーは、各県別に販売会社を置き、更に地域
を分けて営業所からユーザーに綿密な営業活動を展
開していました。そのプロセスで得たユー
ザーニーズはメーカーに報告され、物づく
りに反映されていました。定温輸送やユニッ
トロードに対する車両も各種開発され、食
品輸送や物流の効率化にも貢献して来ま
した。しかし、最近はトラックメーカーも大
型4社の内、2社が外国資本に呑み込ま
れる程、経営が悪化して、販売体制も大
きく変わって来ています。
物づくりに当たって、最も大切なことは
ユーザーニーズを把握することですが、最
近はメーカーとユーザーの距離が遊離して
いるように感じています。その点、いかが
でしょうか。
■大須賀 確かにトラックメーカーに要望
したい事は沢山ある。しかし、要望すると
車両価格が高くなる。そのコストをお客(荷
主)は見てくれないんですよ。我々の業界
は逆にそういう要望が多すぎる。私は仕
事に使うトラックはシンプルで良いと思って
いるんです。勿論、安全でなくてはいけな
いし、ドライバーが疲れるようなシートでも
困るが、必要ないものまでつけなくてよいと
思う。
□秋林路 トラックは運送の仕事に使う道
具ですが、荷主物流とも関係しています。
TheTRUCK2015年12月号 33
例えば、荷主がトラックにパレットを二段積みしたいと
言えば、荷室の高いトラックを提供する必要がありま
す。また、荷主の物流を詳しく研究すれば、それに
適したトラックを提案することで、新たな荷主を獲得で
きる可能性もあります。ところが、トラック産業界との
関係が希薄になると、そういうニーズがメーカーに伝
わらないし、メーカーの技術も進化しません。これは
相互にとって不幸な事だと思うのですが…。
■大須賀 確かにそういうケースがあるかも知れない
が、一品一品手造りしていたのではコストが上がるの
は当然ですよ。ボデーの仕様も共通にして大量生産
した方がコストが下がる筈だし、品質も安定するでしょ
う。ただ、性能アップは追求してもらわないと困る。
□秋林路 私が申し上げるまでもありませんが、今の
トラックは非常にデラックスに出来ています。ドライバー
はカッコ良いクルマに乗りたいという心理がありますか
ら、デザインを良くしないと売れないとメーカーは言い
ます。
■大須賀 確かにそういう事もあるでしょう。タクシー
も車両は一般車に比べればシンプルです。トラックも
仕事で使うクルマはシンプルで良い。ただドライブレ
コーダーなど安全や環境に関係する装置は国が指定
して最初から付けておいた方が良いと思う。
□秋林路 仕事に使うトラックはシンプルで良い、と言
う考えもユーザーニーズですよね。ユーザーとメーカー
の関係が希薄になると、そういう情報がメーカーに伝
わりにくくなります。私は、トラック協会の活動の一環
として、メーカーとユーザーが交流する場があった方
が良いと思っています。
■大須賀 それは当然だね。ただ、シンプル・イズ・
ベストというのは事業者に共通する考えだと思う。
□秋林路 先ほど、荷主とトラック運送事業者はパー
トナーの関係であるべきという話しでしたが、トラッ
ク運送業界とトラック産業界の関係も同じだと思いま
す。やはり、この関係がうまく行かないと、物流にも
影響するように思います。
■大須賀 メーカーと事業者の関係はそうだと思いま
す。ただ、最近はメーカーの方がユーザーと距離を
置きたいと考えているように思います。普通のトラック
でも今は注文して納車までに半年以上もかかるしダン
プなどはもっと長い。これは将来にわたって需要が続
くとは限らないので、需要があっても増産しないから
です。こういう時期には我々が苦情ばかり言うので、
接触したくないという訳だね。(笑)
□秋林路 それは一時的な事だと思います。トラック
は10年以上も使いますから景気によって需要が大き
く変動します。メーカーも将来にわたって需要が拡大
する見通しがあれば、増産体制をとると思いますが、
その見通しが立たないのが現状です。ただ、メーカー
とユーザーの関係は、時代の変化に敏感に対応でき
る事が望ましい訳ですから、良好な関係を保つべきだ
と思います。
■大須賀 確かにその通りだと思います。我々も色
んな要望をメーカーに出して、オーダーメイドのトラック
を造りたいと思うが、それもこの業界が適正料金を得
て安定しないことには難しい。
□秋林路 そうですね。行き着く先はトライバー不足
と根っこは同じですね。(笑)
折角の機会ですので、会長のハマキョウレックスに
ついても少しお伺いしますが、著書『やらまいか』の
最後の方に、「50年後に生き残っている会社として大
切な事は後継者を育てる事だ。」と述べておられます。
現在は、ご子息の大須賀秀徳さんが社長に就任し
ておられますが、そういう意味では後継者に恵まれた
訳ですね。
■大須賀 私は会社というのはオープンでなくてはい
けないし、社長は一番優秀な人間が就くへきだと言っ
てきた。私が会長に引くときに、次の社長は決めたの
ですが、次に改選する時に、私の息子は外して選ぶ
よう厳命しておいたのに、結果的に、役員は息子を
選んできた。それで、再度検討するよう突き返したの
に、また同じ結論を出してきた。皆の総意なら仕方な
いが、もし社長に相応しくなかったら全体責任だと言っ
て、全員に署名捺印させた。その結果はまだ分から
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ハマキョウレックスの本社社屋
近代的な倉庫内設備自動仕分機
ないが、ここまでは良く頑張っているように思っている。
□秋林路 ご子息は会長が一人で会社を立ち上
げ、ここまで発展させた経緯を一番身近に見てこられ
た事を、役員の皆さんが熟知しておられたのではな
いかと思います。
■大須賀 私は何事に付けても皆に考えさせるように
してきた。人にはそれぞれ能力差があるけれども、
それぞれが100%の能力を発揮すれば大きな力にな
る。人は自信を持てば知恵が出て来ます。機械は古
くなれば買い換えればいいが、人は育てないと力を
発揮しない…。
□秋林路 パートさんにもそういう事を求め、出たア
イディアは採用してやる気を出させると書いておられま
すね。
■大須賀 我々は物づくりではないから売る物はな
い。その意味では人が全てです。人も得手不得手
があるから、得意なところを見つけて、そこを伸ばし
て自信を付けさせる。20点しか取れない人に80点を
要求しても無理だが、知恵を出せば40点はとれる。
それでも2倍の能力を発揮したことになる。社員が多
ければ全体では大きな力になるんです。縁あって来
た人は育てなければいけない。これが物流業の基本
です。
□秋林路 トラック運送は人の労働によって成り立っ
ている業界ですから、言わば労働が商品なんですね。
■大須賀 その通りです。だから人が大事なんで
す。中でも社長が一番大事で、誰よりも働き、社員
が働き易い環境をつくり出さなくてはなりません。そこ
を間違えると、社員が働かないと言って怒鳴り散らし
たりすることになる。仕事をしにくくしている社長が意
外に多いんです。
□秋林路 会社訪問した際に社員の皆さんに尋ねる
と、「給料は安いけど良い会社ですよ。辞めたくない。」
という回答を聞くことがあります。それは自分にとって
働き易い、居心地が良い会社という事だと思います。
■大須賀 確かに仕事というのは大変だけれども、
その中にあっても夢を与える事は出来るものです。
□秋林路 中卒で社会に出て、18歳でダンプを買っ
てトラック輸送の世界に入って来られる訳ですが、
大きな負債を抱えて大変な時期もあったという事で
すが、そういうご苦労の中から、人の心理の掴み
TheTRUCK2015年12月号 35
大須賀会長(右)と対談する本誌・秋林路(左)。
方や経営の基本を学んで来られたのではないかと
推察します。
■大須賀 後になって、あんなこと良くやって来たも
のだと思うが、その時は必死だから、苦労だとは思っ
ていないものなんです。
□秋林路 私は夜の大学でしたから、時間は制約さ
れましたが、新しいクラブ(剣道)を創設したり、ボラン
ティアにも参加していました。今思い返せば、どうやっ
てあの時期を過ごしたのか信じがたい程ですが、苦
労だと思った事は一度も無かったです。肉体的な苦
痛は気の持ち方とか、希望のようなものがあればカ
バーできるのだと思いますね。
会長は若い時分にプロボクサーになる夢があっ
て、一度の負けもなしに中部地区のチャンピオンになっ
た経歴がおありだそうですね。
■大須賀 17歳の時ですね。私は11人兄弟の10
番目だから、何をやっても良かったがお金がない。何
とか親にラクさせてやりたいと思って、ボクシングなら
身一つで稼げると思ってやり始めたが、17歳だと親
の同意書がないと試合に出られない。ところが母親は
ボクシングは分からないから「お前を喧嘩させる為に
育てたのでは無い。」と泣いて頼むものだから、8ヶ月
で辞めてダンプに移った。(笑)
□秋林路 一度も負けないという事は相当実力が
あったのだと思います。
■大須賀 そりゃ人をぶん殴ってお金が稼げる訳だ
から、練習も励みます。
□秋林路 それだけ身体も頑強という事です
ね。
■大須賀 これまでも大病を患ったことは一度も
ない。若いときに体力が付いたという事かも知れ
ないね。
□秋林路 身体は生きる資本ですから頑強であ
ることに超したことはありません。これから何かや
りたい事お有りですか。
■大須賀 まだ沢山の公職があるので、多忙
を極めているんですよ。公職も辞めたいと思っ
ているけど、そういう訳にもいかない。これまでに
旅行やゴルフなど、やりたいことは概ねやってきた。
ただビクトリアの滝は一度この目で見たいと思ってい
る。滝というのは、最初は一滴の滴から始まるのだ
けれども、やがて川となり、大河になって下り落ちる。
そういう意味では会社が出来て大きく発展するプロ
セスと似ているので、私の人生観に通じるところもあ
るんです。
□秋林路 確かに公職が多いと時間も取りにくいと思
いますが、是非雄大なビクトリアの滝を見て頂きたいと
思います。運送事業者の中にも大須賀会長のファン
が沢山いらっしゃいますので、どうかお元気で後進の
指導に当たって頂きたいと思います。本日はご多忙の
ところを有り難う御座いました。
株式会社ハマキョウレックス
同社を創設した大須賀正孝氏は、1941年3月3日、
製麺業を営む家(旧静岡県浜北市)に生まれ、1956年
北浜中卒、ヤマハ発動機入社。青果仲介業などを経て、
71年に浜松協同運送を設立。1992年に現社名の「ハ
マキョウレックス」に商号変更している。3PLサービスに
力を入れている同社は、アパレル、食品、寝具・インテ
リア・雑貨、小売り物流、医療機器、医薬品・化粧品、
共同物流、ソリューションなどに事業を広げ、自社運営
センター数は、平成15年の18カ所から平成24年の
50カ所と10年間で3倍に増えている。
モーターショーメインゲート
東京モーターショー60周年記念パレード
TheTRUCK2015年12月号 28
今年が60年目の記念すべき開催
ビッグサイトで元気を取り戻した
The 44th
TOKYO MOTOR SHOW 2015
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
本誌レポーター
岡雅夫
(前モーターショー室長)
幻想的でカラフルなプロジェクションマッピング
スマートモビリティシティ
TheTRUCK2015年12月号 29
大型4社は屋外ブースの
つながりを配慮し前回と
同じ位置に出展
今後は、トラックへの
自動運転取り組みへの
期待が…
西ホールエスカレータの大ラッシュ
日産車体のタクシー
11月3日祭日のトヨタブース
日野自動車ブース
日野のプレスブリーフィングと市橋社長
TheTRUCK2015年12月号 30
東京モーターショーは1954年に始まり今
年60年の記念すべき年を迎えた。
60周年にちなんで60のサプライズイベン
トも実施された。お台場地区全体で東京モー
ターショーを盛り上げるイベントが行われ、
都心の日比谷、銀座では80台が参加する東京
モーターショー60周年記念パレードも行われ
た。他にもチャリティオークション、写真展、
デザインコンテスト、場内シャトルバス運行な
ど今までにないアイデアが実施された。プレ
ビューデーは前回18時から20時の2時間だ
けであったが、今回はプレスデー2日目の14
時半から20時と大変お得なチケットとなり1
万枚限定チケットは早々に売り切れて、当日は
14時半には大行列が出来ていた。ナイター券
もアフター4チケットになり500円が700
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
日野セレガ
TheTRUCK2015年12月号 31
円にはなったがゆっくり見られるようになっ
た。夜になるとメインゲートではプロジェク
ションマッピングが行われて、幻想的で非常に
カラフルな映像が見られた。
本番のショーではボルボの出展はなかった
が、フィアットグループの復帰とフランスの
DSが加わった。ボルボはモーターショーの出
展を世界で3か所に絞り、地元スウェーデン
のショーさえ出展をやめて、フランクフルト
ショーやパリショーにも出ていない。世界で
ジュネーブとデトロイト、上海・北京に絞って
しまったのである。このようにワールドワイ
ドな動きがある中で、東京は元気にメジャー
ショー第3位の来場者数を誇り、国内メーカー
もコンセプトカーを始め、さまざまな仕掛けで
来場者を楽しませていた。ちなみにメジャー
日野プロフィアハイブリッドコンセプト
日野燃料電池バス
TheTRUCK2015年12月号 32
ショー来場者数は1位パリ:125万人、2位
上海:93万人、3位東京:90万人、4位フ
ランクフルト:88万人、5位デトロイト:80
万人、6位ジュネーブ:68万人となっている
(千人以下切り捨て)。東京はリーマンショック
で来場者数が激減したが、ビッグサイトで元気
を取り戻してから今回が3回目である。
大型4社のスペースはここ3回とも定位置
となっており、屋外の車体工業会ブースとのつ
ながりも配慮されている。なお、大手乗用車メー
カーはトヨタ、日産、ホンダとVW、ベンツ、
BMWの各3社で東西ホールの配置を交代で
替えている。今回は日産とVWグループが西
ホールの配置となっている。次回はトヨタとB
MWが西ホールに配置されると思われる。
三菱ふそうはベンツグループとの隣接配置を
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
日野レンジャーダカールラリー参戦車
HINO500海外仕様車
TheTRUCK2015年12月号 33
希望してその通りの配置となり、そこから日
野、いすゞ、UDトラックス・ボルボトラック
がまとまりよく商用車ブースを形成し、小型商
用車もそのまとまりの中で収まっている。
さて、それでは今回大型4社+ボルボはモー
ターショーで何をポイントに出展したかを見て
行こう。まず【日野自動車】だが、車両6台、エ
ンジン2基の出展である。テーマは「情熱を運
ぶ。夢をとどける」。人や物と一緒に情熱や夢
も乗せて走り、人々の生活を支えるという判り
やすい表現である。プレスブリーフィングで市
橋社長は、「人、そして物の移動を支え、豊かで
住みよい世界と未来に貢献する。環境・安全・
性能に優れ、丈夫で頼りになるトラック・バス
を提供し、役割を果たすためのサポートを重視
する。QDR(品質・耐久性・信頼性)が商用車
いすゞ自動車ブース
いすゞエルフハイブリッド
TheTRUCK2015年12月号 34
の必須条件」と語った。それでは出展物のポイ
ントを紹介する。
①フューエルセルバス:新コンセプトの大型
路線バスで、燃料電池バスとして外部給電
機能も備える。「暮らしやすい社会を支える
移動」がテーマである。
②プロフィアハイブリッド:中小型トラック
やバスで実績のあるハイブリッド技術を大
型トラックに採用している。燃費低減だけ
でなく電動冷凍システムや廃熱回収発電シ
ステム、そして空気抵抗低減ボディなどの
アイテムを積み上げている。
③デュトロハイブリッド:大型トラック・バ
スに標準装備の衝突被害軽減ブレーキをさ
らに進化させ、停止車や歩行者との衝突回
避を支援する機構を搭載している。
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
いすゞのプレスブリー
フィングと片山社長
いすゞフォワード
TheTRUCK2015年12月号 35
④セレガ:ドライバーモニターを標準装備し
た大型観光バス。
⑤HINO500:QDR(品質・耐久性・信頼性)
を追求した海外向け最新モデル。本年1月
にインドネシアで販売開始、9月にはタイ
でも大々的にデビューしたアジアカー。
⑥レンジャー・ダカールラリー参戦車:2014
年モデルでクラス優勝を果たした車。
次に【いすゞ自動車】。ショーテーマは「暮ら
しのそばで「運ぶ」は未来へ」である。片山社長
がプレスブリーフィングを行った。
①最大の目玉は大型トラックのモデルチェン
ジである。一見キャブの前面、つまりフロ
ントパネルが大幅にリニューアルされただ
けのように見えるが、いすゞはフルモデル
チェンジと称しており、確かにいろいろな
いすゞTX5トン積みトラック
いすゞ新型GIGA
TheTRUCK2015年12月号 36
ところが変更されている。従来の大型キャ
ブは大型専用キャブと普通型拡大型キャ
ブの2種類あったが、今回は普通型拡大
キャブを大型化したという印象で、アジア
で「DECA」と呼ばれるキャブをさらに進化
させたようである。空気抵抗の減少や大型
インタークーラー採用など冷却性能をアッ
プさせている。ここには5つのポイントが
ある。ドライバーの快適性、燃費改善、安
全性改善、積載量増加、運行管理システム
である。セミ自動の12段ミッションは珍
しく微速コントロールのためのクラッチペ
ダルが残されている。いずれにしろかなり
キャブのイメージは新しくなった。
②エルフハイブリッド:小型トラックのハイ
ブリッド化はかなり進むであろう。
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
いすゞエルガノンステップバス
いすゞ小型トラックD−MAX
TheTRUCK2015年12月号 37
③フォワードカーゴ:中・普通型トラック。
④エルガ路線バス:新型のノンステップバス
で窓が大きく快適でフラットな床面積が拡
大している。
⑤TX80型5トントラック:初期のボンネッ
トトラックで、赤くて丸いISUAZUマーク
が懐かしい。
⑥D−MAX小型ダブルキャブボンネットトラッ
ク:タイでベストセラーを誇るモデル。
【三菱ふそう】は三輪為夫副社長(三菱ふそう
セールスジャパン本部長)がプレスブリーフィ
ングを行った。その中で大変意欲的な数字を発
表した。「成長戦略であるDTARisingにおい
て、2020年世界販売30万台を目標とする。
そこには3ステップあり、プロダクト、プロ
セス、ピープルの各段階を経て日本ナンバーワ
三菱ふそうブース
三菱ふそうスーパーグレート
Vスパイダー
TheTRUCK2015年12月号 38
ンになる。」というものである。大変大胆な発
言であった。また「大型車スーパーグレートは
2013年モデルに対し、現在のスーパーグレー
トVではー10.1%の燃費改善を果たしている
が、2016年モデルではさらにー4.5%改善す
る」という。こちらも進化のスピードは速い。
出展物は、
①大型車スーパーグレートV:バンボディで
黒と青の迫力あるボディカラーが目立つ。
②大型車スーパーグレートVスパイダー:多
目的作業車のコンセプトカーで荷台に4基
のブームが蜘蛛の足のように伸びている。
つかむ、すくう、砕く、掘るの4機能がま
とめられている。動く姿は外観以上に不気
味だ。
③キャンター電気供給車:ハイブリッド小型
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
三菱ふそうスーパーグレート
Vカーゴ
三菱ふそうのプレスブリーフィングと三輪副社長
TheTRUCK2015年12月号 39
トラックに発電機の機能を付加している。
④エアロクイーン:豪華観光バスのリラック
ス体験を体感できるモデル。
【UDトラックス】は【ボルボトラック】と共同
で村上社長がプレスブリーフィングを行った。
テーマは「スマートロジスティクスの実現に
向けて、さらに一歩先の未来へ」である。
一歩先を行くがテーマのため、それに続く3
つのポイントは、燃費・環境性能、運転性能・
安全性、稼働率と生産性、である。このコンセ
プトの集約が大型車クオンで、イメージカラー
のライトグリーンの車が正面に展示されてい
る。そして今回の世界初公開車は2台で、
①クオン・ビジョン:将来のクオンのスタイ
ルを暗示させるような、そしてクエスター
にも似たイメージのトラクタヘッドで、
コマツ。建機だが出展。
三菱ふそうキャンター電気供給車
三菱ふそうエアロクイーンリラックスシート
TheTRUCK2015年12月号 40
真っ白の車体は未来的である。
②UDエレクトリック・デモンストレーター:
中型クラスの電動実験車両で、その名の通
りコンドルをベースとしている。ゼロエ
ミッションと低ノイズ、高い輸送効率を実
現するモデルである。
③ボルボFH6×4トラクター:520psでデュア
ルビューモニターを標準装備した重トラクタ。
以上大型4社+1の紹介をしたが、今回残
念に思えた事はトラックにこそ早く実現してほ
しい自動運転の取り組みがどこにも見られな
かったことだ。まだまだ先の事と思われている
のかもしれないが、意外に早く乗用車では実現
するかもしれないと言われている。高速道路で
の大型車の事故を見る度に一刻も早く実現のめ
どを見せてもらいたいものである。
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
UDトラックス、クオンビジョン
UDトラックスのプレスブリーフィング
と村上社長
TheTRUCK2015年12月号 41
余談になるが、乗用車のディーゼル化は国内
メーカーではあまり見られなかった。VWの問
題がありあまり積極的に触れない方がいいと思
う気持ちもわかるが、当のVWはプレスブリー
フィングで、今回ディーゼルのパサートの出展
を見合わせたが来年早々にも発売すると語って
いた。ベンツは積極的にディーゼルのラインアッ
プを並べその数は5台にのぼった。BMW・アル
ピナも4台、プジョーも1台出展した。さらに余
談だが、今回は2階建て展示がほぼなくなり、
代わりに巨大なディスプレーが目立った。また
コンパニオンの女性は説明員を兼ねる人が多く
なり、質問にも的確に答えられるので気持ちが
良かった。なお、最後の余談だがコンパニオン
は総勢527名で東ホールはダイハツ、西ホール
はVWが個人的好みもあるが粒揃いであった。
UDトラックス、エレクトリックデモンストレーターボルボトラック、FHトラクタ
UDトラックス、クオン
TheTRUCK2015年12月号 42
第44回東京モーターショー「商用車」の見どころ
TheTRUCK2015年12月号 43
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来場者であふれる特別招待日
屋外の車体工業会コーナー
TheTRUCK2015年12月号 44
『働くくるま』が大集合!最新技術
東京モーターショーの屋外車体工業会コーナーにボディメーカー
東京モーターショー・車体工業会コーナー
第44回目となる「東京モーターショー2015」が
2015年10月30日〜11月8日までの10日間に
わたり東京ビッグサイトで開催された。東京モーター
ショーのトラックメーカー出展については別ページで岡
レポーターが報じているので、ここでは屋外展示場に出
展した(一社)日本自動車車体工業会(車工会)のコーナー
を紹介する。
屋外の車工会ブースに出展したのは、KYB㈱、極東
開発工業㈱、新明和工業㈱、須河車体㈱、㈱タダノ、東
邦車輛㈱、日通商事㈱、日本トレクス㈱、日本フルハー
フ㈱、花見台自動車㈱、㈱浜名ワークス、八千代工業㈱、
㈱矢野特殊自動車の13社で、トヨタ自動車東日本㈱、
トヨタ車体㈱、日産車体㈱が東展示棟屋内会場に車工会
として出展した。ここでは屋外出展13社を写真を中心
にレポートする。
「生活のそばにいつも『働くくるま』、私たちは日常生
活や経済活動に欠かせない『働くくるま』を提供していま
す」を合言葉に、今回のコーナーテーマは「『働くくるま』
日本トレクスが提供した休憩室
子供向けペーパークラフトも用意
TheTRUCK2015年12月号 45
の注目ボディが屋外会場に集結
13社が出展。スライド式ボディの油圧駆動による実演展示も実施
が大集合!」となった。
車工会は、1948年(昭和23年)に発足した自動車車
体製造の工業団体である。特装部会、特種部会、トラッ
ク部会、バン部会、トレーラ部会、バス部会、小型部
会、資材部会の8部会に所属部会なしを含めた183社
(2015年9月末現在)が会員となっている。その主な活
動としては、会員企業のための調査・情報提供をはじめ、
関係省庁などとの連携による環境・安全への取り組み、
ニーズに応える商品づくりのための技術向上支援、海外
交流などの国際対応となる。
今回の車工会コーナーは前回と同じビッグサイト東展
示棟屋外会場で、エンジンをかけての油圧駆動による
実演展示も行われた。ただ、商談スペースが許可されな
かったため「商談目的で来られたお客さんの座る場所も
ないので苦労します」と出展社からの声も出ていた。東
京モーターショーは基本B2Cだとしても、このコーナー
はB2B色が強いこともあり、今後検討すべき点ではな
いだろうか。
来場者であふれる特別招待日
TheTRUCK2015年12月号 46
日本トレクス株式会社
『フラットパネルバンセミトレーラ』
(冷凍バンセミトレーラ)
軽量で断熱性が高く、美しい外観のフラットパネルを国内で
初めて採用したバン型セミトレーラ。生鮮・冷蔵・冷凍食品の
大量輸送を実現する車両だ。
一体構造のフラットパネルはそれ自体で強度があるため、従
来必要だったアルミポストや木材等の補強材が不要で、車両の
軽量化に貢献する。今回、ベースフレームから前壁、リヤフレー
ムなどの設計を刷新したほか、ワイドシングルタイヤと国内初
採用の軽量車軸などの採用により約200㎏の軽量化
を達成。冷却効率の改善による輸送品質の向上と省
エネルギー化、さらに積載重量増加による輸送コスト
の削減を両立させている。また、積載量に応じて軸
数を変化させるリフトアクスルも装備している。
主な仕様:▽車両寸法…(L)13,990㎜×(W)
2,490㎜×(H)3,790㎜/▽室内寸法…(L)
13,200㎜×(W)2,280㎜×(H)2,300㎜/▽最大
積載量…26,600㎏/▽車両総重量…35,990㎏/
▽荷台容積…69㎥/▽断熱仕様…フロア75㎜・
サイド75㎜・フロント100㎜・ルーフ75㎜・リヤド
ア75㎜・サイドドア65㎜/▽輸送温度帯…+25
〜−20℃。
東京モーターショー・車体工業会コーナー
パネルの繋ぎ目部分に工夫が凝らされている
TheTRUCK2015年12月号 47
株式会社矢野特殊自動車
『美Bi-MAX』
防汚アルミ外板仕様パネル大型冷凍車
業界初の防汚塗装アルミ板(ファスコートクリーン)を前壁・
側面・後扉に使用した大型冷凍車。防汚性に優れたボディによ
り、清潔なイメージを大切にする冷蔵冷凍食品輸送に活躍する
車両である。汚れが取れやすいフラットパネルは、洗車時間の
短縮を実現し、ドライバーの負担軽減と効率輸送も実現できる。
庫内灯に高輝度LEDコーナーライトを採用したことで庫内
均一な照明を実現し、ラベルの読み違いや読み取りミスを防止
できる。また、パレット作業時の転落予防装置として警告用赤
色LEDライトを左右後部SUS板部に装着している。
主な仕様:▽室内寸法…(L)9,360㎜×(W)2,270㎜×(H)
2,500㎜/▽最大積載量…12,900㎏/▽荷台容積…53.1㎥
/▽断熱仕様…天井100㎜・前壁100㎜・床75㎜・側壁75㎜・
後扉75㎜。
オリジナル電気冷凍機を搭載
隔壁板で前室と後室の荷室温度をコントロール
TheTRUCK2015年12月号 48
東京モーターショー・車体工業会コーナー
13.8mのサイド開口長を持つ新法規対応ウィングトレーラ
日本フルハーフ株式会社
①電気冷凍機『e-CHILNO』搭載温度管理車(参考出品)
【左ページ】
同社オリジナルの電気式冷凍機「e-CHILNO」を搭載
し、前室はチルド帯、後室は加温帯の2温度帯対応の
車両である。
車両エンジンに取り付けられた専用発電機で発電した
電気でコンプレッサを駆動させるシステムの電気式冷凍機
は、車両エンジン停止などの影響を受けることなく常に安
定した温度管理を可能としている。アイドリングストップ時
でも最大16分間の冷却運転が可能である。
また、後室には脱着式の床加温装置を搭載。シートタ
イプの電気式加温装置なので、荷室高を狭めることなく
床面から荷室全体を均一に温めることを可能にしている。
その他、温度監視装置、コーナーLEDライト兼ダクトファ
ン、スマートエントリーキーなども装備されている。
②新法規対応『フルハーフウィングエーストレーラ』(参考
出品)【右ページ】
2015年の保安基準改正により、従来のバラ積み緩
和3軸車と比べ約1.3m長い全長14.2mを確保。サイ
ド開口長は13.8mで、飲料用パレット(1,100×900
㎜)30枚をサイドから積み降ろしできるウイングトレーラ
である。
屋根にバッテリー充電用ソーラ発電パネルを搭載し、ト
レーラ単独でのウイング開閉と室内灯の点灯を可能にし
ている。その他、軽量化を実現するスーパーシングルタ
イヤ、中間軸接地型のリフトアクスル、ボタンひとつで
昇降可能なエア式ランディングギア、安全走行のための
EBSブレーキなどが装備されている。
TheTRUCK2015年12月号 50
東京モーターショー・車体工業会コーナー
東邦車輛株式会社
『スマートウイング温度管理仕様』(参考出品)
ウイングセミトレーラ
軽量で断熱性が高く、美しい外観のフラットパネルを国内で初めて採用したバン型セミトレーラ。生鮮・冷蔵・冷凍食品
の大量輸送を実現する車両だ。
一体構造のフラットパネルはそれ自体で強度があるため、従来必要だったアルミポストや木材等の補強材が不要で、車
両の軽量化に貢献する。今回、ベースフレームから前壁、リヤフレームなどの設計を刷新したほか、ワイドシングルタイヤ
と国内初採用の軽量車軸などの採用により約200㎏の軽量化を達成。冷却効率の改善による輸送品質の向上と省エネル
ギー化、さらに積載重量増加による輸送コストの削減を両立させている。また、積載量に応じて軸数を変化させるリフトア
クスルも装備している。
主な仕様:▽車両寸法…(L)13,990㎜×(W)
2,490㎜×(H)3,790㎜/▽室内寸法…(L)
13,200㎜×(W)2,280㎜×(H)2,300㎜/
▽最大積載量…26,600㎏/▽車両総重量…
35,990㎏/▽荷台容積…69㎥/▽断熱仕様
…フロア75㎜・サイド75㎜・フロント100㎜・
ルーフ75㎜・リヤドア75㎜・サイドドア65㎜
/▽輸送温度帯…+25〜−20℃。
TheTRUCK2015年12月号 51
株式会社浜名ワークス
『エクステンダブルセミトレーラ』
伸縮式セミトレーラ
フルトラクタ+フルトレーラで総容積116リューベを確
保した一括大量輸送を実現するウイングフルトレーラだ。
昇降デッキは、トラクタ側で4t、トレーラ側で3tの
昇降能力があり、オートバイや家具など、積み重ねが
できない貨物の輸送に威力を発揮する。また、ルーフ
のリフトアップ機能により荷役作業の効率化が図れるほ
か、トレーラからトラクタ側への荷物の移動を可能にす
るウォークスルー機能を備えているのでプラットフォーム
など後部からの一括荷役も可能である。
連結全長は20,975㎜、最大積載量はトラクタ
10,600㎏+トレーラ9,100㎏となっている。
落下防止用の足場も連動して伸縮するキングピンに取り付けられたステアリング用のセンサー
走行条件に応じてステアリングするトレーラの車軸
TheTRUCK2015年12月号 52
東京モーターショー・車体工業会コーナー
日通商事株式会社
『エクステンダブルセミトレーラ』
伸縮式セミトレーラ
国内生産車両として初認可を取得した伸縮フレーム採
用のセミトレーラ。さらに、車両走行状況と連動して作動
するステアリング機構も装備している。
これまで、鋼材などの長尺物にはポールトレーラ、短
尺物にはセミトレーラとそれぞれ別の車両で輸送していた
が、トレーラ自体が伸び縮みする画期的なデッキ伸縮機構
を採用したことで、このトレーラ1台でバラ物と長尺単体
物輸送を両立させることができる。
また、高い旋回性能と安定走行を実現するステアリン
グ機構も搭載されている。各車軸のステアリング角度は、
キングピンまわりに取り付けられたセンサーからの情報と
走行速度などをコンピュータが判断し、最適な切れ角を自
動コントロールする仕組みとなっている。その他、手動リ
モコンでの操作も行えるため、バックでの車両移動にも威
力を発揮する。
荷台長は、短縮時10,700㎜、延長時16,000㎜。
最大積載量は、短縮時24,200㎏(バラ物可)、延長時
34,800㎏(単体物限定)となる。なお、作業時の安全性
を考慮して、伸び縮みに連動して足場が設定される落下
防止装置がオプションで設定されている。
TheTRUCK2015年12月号 53
株式会社タダノ
『エスライドハイブリッドSS-38F』
スライドキャリア
電動モードと従来のエンジン動力によるPTOモードが選べ
る、環境対応型ハイブリッドシステム搭載のフラット接地型1
台積みキャリアカーである。
エンジン停止状態でも作動可能な電動モードは、低騒音
(55dB以下)での作業を実現し、作業時のCO2排出と燃料
消費はゼロとなる。走行時に車両バッテリーの充電を優先しな
がら、スライド動力用バッテリーへの充電も行う自動充電シス
テムを搭載している。また、走行中の誤作動防止のため、パー
キングブレーキを解除すると電動モードが作動しないパーキング
インターロックも装備されている。
荷台作動に必要な機器を車両左側に集中配置。バッテリー交
換や電動モーター等のメンテナンスの容易化を可能にしている。
キャブ内には電動モードの作業時間を表示するアワーメーターが
装備され、各種メンテナンス時期の確認ができる。その他、す
べての操作が行える特定小電力型ラジコンも用意されている。
TheTRUCK2015年12月号 54
東京モーターショー・車体工業会コーナー
株式会社花見台自動車
『セフテーローダ・クロスオーバー』
スライドキャリア
【A】
これまでのスライドボディ型車両運搬車の定義を根底から
覆すまったく新しい発想から生まれたのがこの車両である。
わが国で初めてスライドボディ車を開発した同社は、当
初、車載専用車としてリヤオーバーハング2/3のロング
ボディにより緩やか傾斜を実現させている。しかし、今回登
場したクロスオーバータイプは、1/2の一般ボディを搭載
しながら車載専用車同様の緩やか傾斜を可能にした画期的な
スライドボディである。自社で開発したスライドボディ構造を
ゼロから見直し、ユーザーニーズと車両の汎用性を両立させ
ている。さすが、同社の開発力の素晴らしさには頭が下がる。
セフテーローダ・クロスオーバーの機構は“4節リンク式”
と呼ばれ、シャシフレームとサブフレームを繋ぐ蝶番部がこ
れまでのようにシャシ側に固定されておらず、アームリンク
構造により後方に移動する仕組みとなっている。つまり、傾
斜角を左右する大きな要素になっている支点部分を後方に
置くことでさらに緩やかな傾斜を実現させているのだ。荷台
をより後方に送り出すことがクロスオーバー最大の特長であ
る。今回出展の車両は、全長6,850㎜、荷台長5,050㎜
の一般ボディ車で接地傾斜角約8.9度を実現させている。
4節リンク式機構は、車載専用車にも搭載可能で、傾斜
角が同じでも全長をより短くした架装が可能である。また、
ホイールベース2,880㎜の4トンダンプシャシをベースにし
ながら、スライド傾斜角12度以下を実現したリヤオー
バーハング1/2の一般車両扱いの車両もすでに完成
している。
【B】
会場ブースで配布されていたカタログに能條健二社長
と社員(花見くん)との掛け合い話が載っていた。ユニー
クな内容なのでその一部を抜粋紹介しておく。
・花見くん 今度のモーターショーの出展物は超低スロー
プの車載専用車ですか?
・能條社長 いや違う。リヤオーバーハング1/2でリ
スライド支点を後方に移動させる構造の4節式リンク機構
リヤゲートのない新時代のスライドボディ車
TheTRUCK2015年12月号 55
ヤゲートも無いものだな。新しいセフテーローダを提案す
るのに車載専用車は古いよ。
・花見くん そんな〜。ご自身で開発されたものを古いだ
なんて…。
・能條社長 確かに、傾斜を緩くするための2/3は俺
が考えたけど、今では1/2でも緩くできるんだから2
/3のカタチに囚われる必要はない。それに、長いクル
マは取り回しが悪いし、リヤゲートの空気抵抗も大きい。
それはムダだしエコじゃない。ムダをなくして軽量化すれ
ば新普通免許の人でも運転できるわけだか
東京モーターショー・車体工業会コーナー
極東開発工業株式会社
『フラトップZeroⅡハイブリッド』(参考出品)
電動式1台積車両運搬車
日野デュトロハイブリッドをベースにフラット接地型1台
積車両運搬車である。
ハイブリッドシャシの駆動用モーターとバッテリーを利用
することで電動でのボディスライド駆動が行える環境性能
と作業性の向上を両立した車両となっている。エンジン
停止状態で作業を行う電動作業では、排出ガスゼロと低
騒音化を実現。作業スピードも通常のPTO式車両と同
等の能力を有している。ハイブリッドシャシの駆動システ
ムを利用したシンプルなシステム「IES(Idlereduction&
EcooperationSystem)」の採用、コンセントからの充
電を不要とした走行中のエネルギー回生による充電方式な
ど、優れた機能がこの車両には詰め込められている。
電動とエンジンPTO作動の切り替えがラジコンで行え
る利便性を備え、荷台傾斜0.9度〜12度までの角度で
荷役作業が行えるので現場に合わせた作業が可能となっ
ている。
スライド接地で建機等の荷役を合理化(写真はカタログより)
TheTRUCK2015年12月号 57
新明和工業株式会社
『ローダーダンプ』
スライドボディ付ダンプ
土砂運搬と建機輸送を1台で可能にするダ
ンプ機構とスライド機構を組み合わせた小型ダ
ンプトラック。シリーズには2〜7トン車級が
ラインナップされている。
小型建機等を積み込む場合の荷台スライド
接地操作は、リモコンもしくはラジコン(オプ
ション)で行う方式である。荷台後端がダイレ
クトに接地するので道板が不要で、スピーディ
で安全な作業が行える。スライド時の車両安
定性を増すために後部に油圧作動のローラー
付きジャッキが搭載されている。
機動性重視の小型シリーズには2〜3トン
車と4トン車があり、ダンプ機構はガーウッド
式、スライド機構はシングルアクション方式。
また、パワー重視の中型は4〜7トン車で、
ダンプ機構は天突きマレル式、スライド機構は
傾斜してからスライドするダブルアクション方
式となっている。
主な用途は、土木・建設作業をはじめガス・
水道、道路舗装で、その他、農業、酪農、
畜産での農機具運搬と収穫物、肥料等にも有
効な車両となっている。
作業員が離れると自動施錠する集中ロック装置を搭載
軽量化のため根太部分にもアルミが採用されている
TheTRUCK2015年12月号 58
東京モーターショー・車体工業会コーナー
須河車体株式会社
『ラクニーX』
ボトルカー
ボディ、扉、棚、根太部分に至るまでアルミを多用し軽量
化にこだわったボトルカーである。
新免許制度により普通免許で運転できる枠が車両総重量
5t未満から3.5t未満までに縮小される。従来タイプのボディ
で新普通免許対応の車両をつくると、ボディサイズの縮小、
最大積載量の大幅減などを余儀なくされる。そこで考えられ
たのがこの「ラクニーX」で、構造と部材を徹底的に見直し、
従来比28%という大幅な軽量化を実現させている。
また、ドア施錠に電動集中ロックが装着されており、鍵を持っ
たドライバーが一定距離車両を離れると自動ですべてのドアの
ロックがかかる方式となっている。
後部室フロアを一段低くすることで容積を拡大したほか、
台車収納スペースも設置されている。
情報化システムの車載端末
TheTRUCK2015年12月号 59
KYB株式会社
『MR5040EL』
次世代ミキサ車
ミキサ車で大きなシェアを誇るKYBは、新
設計の軽量フレームを採用した環境型次世代ミ
キサ車を出展した。
従来のミキサ車では設定のなかった「アイドリ
ングストップ対応機能」や積載生コンクリートの
状態や稼働状況を車両位置情報と共にモニタリ
ングできる「情報化システム」も紹介された。こ
れらの機能は今回参考出品となっていたが、同
社ミキサ車に近々オプション設定するとのこと。
当然、アイドリングストップ時でもドラムが回転
する機構が採用される。また、情報化システム
は事業所のパソコン画面で状況をリアルタイム
で確認できる。
八千代工業株式会社
『こまわり救急』(参考出品)
軽救急車
狭い道路でも活動できる軽自動車タイプの救急車だ。ストレッチャー
搭載のほか、AEDや人工呼吸器などの救急装置の搭載を可能したマ
ルチファンクションシェル、点滴や心電図モニターなどを固定できる
ユーティリティレールを備えている。
同社はホンダの軽特装を扱っており、参考出品されたこの軽救急車
の企画と設計はホンダが行ったとのこと。
新代表を交えての朝食付記者発表会場
TheTRUCK2015年12月号 60
これまで23年間パリモーターショーのトッ
プを務めたティエリー・エス氏に代わり、欧州
最大のインテリアデザイン見本市「メゾン・エ・
オブジェ」を創設、「パリ・キャピタル・ドゥ・ラ・
クレアシオン」会長を務め、イベントプロデュー
スにかけて国内外から絶大な評価を受けている
エティエンヌ・コ
シェがパリモーターショーの
トップに就任した。1898年に創設され、世界
で一番長い歴史を誇るパリモーターショーを彼
がどのように変えていくかに業界の注目が集
「パリモーターショー2016」
新トップで内容刷新
ショーテーマは
「車を楽しみましょう」
「車と映画」の特別企画やB2BとB2Cに
プログラムを分けた「モビリテ・パリ」も実施
展示会情報
本誌レポーター:
岡雅夫
パリモーターショーポスター前でコシェ社長と筆者
(編集部註)筆者の岡氏は前モーターショー室長でパリショー
前代表のテリー・エス氏と親交が強かった
パリショーの新代表となったエティエンヌ・コシェAMCプロ
モーション社長
TheTRUCK2015年12月号 61
まっている。
前回2014年のショーでは世界103カ国か
ら125万人を超える来場者と1万人あまりの
報道関係者が集まった。これは世界一の規模で
ある。また世界初公開車両は65台で、次回は
さらに増えることが想定されている。18日間
という会期はメジャーモーターショーの中で最
長である。会場面積規模ではフランクフルトに
及ばないが、奇数年のフランクフルト、遇数年
のパリと、秋のモーターショーの代表格として
期待されている。
現在世界の主要モーターショーの来場者数比
較では、パリが1位で125万人、上海が93
万人、東京が90万人、フランクフルトが88
万人、デトロイトが80万人となる。残るメ
ジャーショーではジュネーブが68万人となっ
ている。
パリショーはいわゆる総合ショーであり、二
輪車は無いが中古車を含む事が特徴的だ。展示
台数は少ないが商用車も展示される。商用車に
関しては同時期にドイツ・ハノーバーで世界最
大の商用車ショーが開催されるので、国をまた
いではしごで視察する事が出来る。さらに二輪
車もと言う方はハノーバーとパリの中間にある
ドイツ・ケルンで、これまた世界最大の二輪車
ショー「インターモト」も見る事が出来るとい
う贅沢さだ。ドイツには大規模な交通博物館も
あり、乗り物好きや自動車業界関係者にはヨー
ロッパでこの時期のモーターショーツアーは大
変充実したものになる。
来年10月の開催を前に、新トップのコシュ
氏が東京モーターショーに合わせて来日し、
2015年10月30日に東京ビッグサイトに隣
接した有明セントラルタワーでパリショーの概
要発表会を開催した。従来開催年の春先に出展
規模が固まったところで発表会を行うのだが、
今回は1年前のタイミングで新たなショーの
構想を発表することとなった。
プレゼンテーションの内容を要約すると以下
の通りである。
「パリは何事においても中心地であり、光り
輝く都市パリに集まる人々に豊かなモビリティ
と自動車業界のあらゆるセクターが一堂に介す
世界唯一のショーをお届けする。インテリア見
本市では日本人の友情やノウハウ、知性、感性
今回の記者発表で世界初公開された「モビリテ・パリ」のロゴマーク
特別企画「モビリテ・パリ」会場イメージ図。エントランスの設計者は日本人だ
TheTRUCK2015年12月号 62
を感じて来たが、こうしたものに国境はない。
車の革新性と共に感性というものを特に大事に
していきたい。2016年のショーテーマは『車
を楽しみましょう』で、ポスターデザインも世
界各国の車のヘッドライトが集まるイメージ
で、車が生活の一部として楽しく、自由を感じ
ることを表している。そして特別企画は前回の
『自動車とファッション』に引き続き『車と映画』
を採りあげる。映画に登場したスター車、カ
ルト的な人気を誇るシリーズ(多分007だろ
う)や有名なゲームに登場した車(おそらくプレ
イステーショングランツーリスモであろう)な
ど、象徴的なモデル約50台をコレクションし
た特別展となる。
新たな取り組みとして『モビリテ・パリ』を5
日間開催する。内容は都市化による渋滞解消、
自動運転アプローチ、スマート
シティ体験などで平日はB2B、
土日はB2C対象のプログラム
とする。今年のフランクフルト
モーターショーで同様の展示
があったが、その担当者と協力
して10年計画で奇数年はドイ
ツ、遇数年はパリで交互に行う
計画である。東京ショーのスマートモビリティ
シティも興味を持って見せてもらいたい。欧州
のマーケットは大きくはならないが、革新は欧
州が中心である。その意味でパリに注目しても
らいたい」とコシェ新代表は語った。
モビリテ・パリをもう少し解説すると、全て
の年齢層に向けて車の可能性を示すということ
で5つのテーマを掲げている。①超小型都市モ
ビリティ、②電気自動車、③モビリティサービ
ス、④つながる車、⑤自動運転、の5つである。
さらに体験コーナーや屋外試乗などを用意し、
プレゼンテーション、ネットワーキング、クイ
ズショー、パフォーマンスなどB2C要素も多
く含まれるが、B2Bとしても濃い内容になり
そうだ。
こうして見ると東京モーターショーのスマー
トモビリティシティが既に3回目でコ
ンセプトも内容もかなり似ている事が
判るから、おそらく東京のスマートモ
ビリティシティに相当関心を持って参
考にしたいと考えているであろう。
来年のパリモーターショーは2016
年10月1日から一般公開が始まり
16日間の会期で行われる。報道関係
者は9月29日と30日がプレスデー
となる。開催会場は従来同様、パリ市
内のポルト・ド・ヴェルサイユ見本市
会場である。
展示会情報
TheTRUCK2015年12月号 63
広告
国内トラックメーカー比較研究
賑わう11月1日日曜日の会場内風景
入場当日、再入場を希望する場合は手首に封印付
き目印を付ける
TheTRUCK2015年12月号 60
場内の賑わい、数字で表せば
会期〈10月29日㈭〜11月8日㈰〉に先立つ28
日のプレスデイ、1日の日曜日の都合2日の取材を通
じて、筆者の印象では前回より人出が多いように思わ
れた。主催者(日本自動車工業会、以下、JAMA)
に確認すると、会期中の入場者は512,550人で前
回より10%の減少であったという。またプレスセン
ターに入場した取材陣は延べ10,800人で、前回よ
り300人多かったという。雨天の日があったからこの
日の会場はかなり空いていたとする
と、天候が良い日の場内の人出はや
はり相当なものであった。
トラック4社社長
ブリーフィングと
展示にみる
各社の目指す方向
TOKYOMOTORSHOWは2011年に東京ビッグサイトに戻ってきて今回
が3回目。東1号館の定位置にトラック4社が結集する会場風景は定
着した。また、西側に面したドアを開放して車体工業会会員企業の屋外
展示場へつながるレイアウトも前回と同じ。ここでは、トラック4社を概観
し日本の物流を担うこの業界が向かおうとしている方向をリポートする。
西襄二
TheTRUCK2015年12月号 61
自動運転表立った展示・言及無し
トラック・バス専業4社の出展
いすゞ自動車、日野自動車、三菱ふそうトラック
バス、UDトラックスの商用車専業4社の出展コン
セプトはキャッチコピー(表1参照)から具体的に読
み取ることは必ずしも容易ではない。しかし、自動
運転を通じて重大事故の解消に向けた取り組みにつ
いて具体的に触れたコメントは無かった。欧米で既
に始まった限定的ではあるが公道を利用した自動運
転実験など、車両メーカーと行政機関との連携や法
制整備についての先導取り組みがある(本誌掲載の
筆者別項参照)こと、新(第二)東名高速道路の御
殿場−小牧間全線開通(平成28年2月予定)が目
前になったことなど国内の環境整備が進展している
こと、などから何らかの言及が期待されたのだが・・。
4社の社長ブリーフィングを取材して、トラックが物
流の切り口で生産活動及び消費者寄りの双方の領域
で国民生活に重要な関わり合いを持っているから、社
会的責任を環境面の性能で訴求し、運用する物流企
業に対してはTCO(TotalCostofOwnership:車
両を保有し運用する全期間を通じて発生するコスト)
の極小化と、これに対するTRV(TotalRevenue
perVehicle:運用車両1台当たりの売上高)の極大
化をもって運用者(顧客)に貢献したい、というところ
に共通の目標を持っていると筆者は理解している。
出展品は車両というハードウエアだが、TCOの極
小化と相対するTRVの極大化にはサービス及び部品
部門の適切な活動が欠かせないことを、表現は少し
づつ違ってはいたが4社に共通していた。
出展された車両については(表1)に比較してまとめ
たが、各社の目玉となっていた展示車について印象
を述べておこう。
(表1) 第44回TOKYOMOYORSHOW2015で見たトラック/バス各社のキャッチコピーと目玉展示車両
(社名50音順)
(社名50 音順)
社名メイク ISUZU HINO FUSO
UDTrucks/VOLVO
キャッチコピー
AlwaysNexttoYou
−暮らしのそばで、
「運ぶ」は未来へ−
Deliveringyourdreams
Ourpassion
情熱を運ぶ。夢をとどける。
Runningahead
〜走り続ける。明日をドライブ
する人のために〜
GoingtheExtraMile
その一歩先へ
主要展示
WP大型トラック「ギガ」
フルモデルチェンジ車
WP大型バス燃料電池車
路線バス仕様(参)
大型トラック
「スーパーグレートV」
2016モデル(市販車)
WP大型トラック
「クオン・ビジョン」
WP 大型トラック
CNG(圧縮天然ガス)車(参)
WP大型トラック「プロフィア」
ハイブリッド車(参)
大型トラック
「スーパーグレートⅤ」
スパイダー(参)
WP中型トラックUD
エレクトリックデモンストレーター
(実験車両)
中型トラック「フォワード」
高度安全技術装備車
WP小型トラック「デュトロ」
ハイブリッド衝突被害軽減
ブレーキ搭載(参)
小型トラック「キャンター」
f電機供給車(参)
大型トラック
「ボルボFH」6×4トラクタ
小型トラック「エルフ」
ハイブリッド車(市販車)
大型バス「セレガ」
市販車
大型路線バス「エルガ」
ダウンサイジングエンジン採用
乗客空間の拡大(市販車)
WPHINO500シリーズ
海外途上地域向け堅牢車
(注1)WP=世界初公開 (注2) (参)=参考出品 作表:筆者
(表2) トラック4社国内販売実績比較
(単位:台)
期間
メイク ISUZU HINO
FUSO UDT
区分 国内販売 国内販売 国内販売 国内販売
2014 年1 〜 12月
合計
74,556 48,189 42,509 11,072
内、中大トラック
30,230 32,005 15,069 10,809
2015年1 〜 10月
合計
74,556 57,422 42,509 11,072
内、中大トラック
25,159 27,023 12,905 9,055
出典:自販連統計データに基づき筆者作表
国内トラックメーカー比較研究
いすゞスタンド全景
注目を集めるフルモデルチェ
ンジした「GIGA」。フロント
グリルを黒染めとしたモデル
いすゞ自動車・片山正則社長のブリーフィング。フルモデルチェンジした
「GIGA」に絶対の自信を示し、安全性の充実を誇示。また“つながる
車”の先陣として「みまもりくん」として発祥し、現在は「MIMAMORI」に
進化したシステムの歴史と実績を示して、人々の暮らしに欠かせない存
在であり続ける、と決意表明。
TheTRUCK2015年12月号
62
■いすゞ自動車
・フルモデルチェンジした大型トラック「ギガ」
わが国特有の小径タイヤによる8×4軸車仕様の
バン型車を最大の目玉車両に据えた展示であった。
ベストセラー車「エルフ」のイメージを上級大型車にも
展開するキャブ外観デザインコンセプトが無理なく美し
く表現できている。
もう1台、燃料の多様化の展開でCNGシャシの提
案があった。架装性を重視したレイアウトで東京−大阪
間の燃料無補給走破を可能とした意欲的な車である。
・先進安全装備搭載の中型トラック「フォワード」
今後の標準装備化が適切な価格で進むことが期待
される。
・ベストセラー小型トラック「エルフ」
ハイブリッド車を展示。当初からのトランスミッショ
ンサイドPTOを利用する独特のパワートレーンを成
熟させ、先行する競合車を猛追する構えだ。
・エンジンのダウンサイジングで客室空間を拡大した
大型路線バス「エルガ」
日野自動車と合弁で運営するジェイバスで生産さ
れ、路線バスはいすゞが主導してパワートレーンはい
すゞ製品を共用。ダウンサイジングした4気筒5.2L
エンジン採用でエンジンルームが縮小。客室容積拡
大とレイアウト変更でバリヤフリー性も向上。
注目を集めるフルモデルチェンジした「GIGA」。フロントグリルを黒染めとしたモデル
完全リストアされて展示された「TX型トラック」。1950年代に一世を風靡したエンジンは世燃焼室式ディーゼル。
4気筒高出力エンジンを採用してエンジンルームが小さくなり、客室が広がった路線バス「エルガ」。低床+ニーリング機能で
バリヤフリー性にも磨きがかかった
TheTRUCK2015年12月号
63
国内トラックメーカー比較研究
日野自動車・市橋保彦社長のブリーフィング。商用車ビジネスの必須条件を再確認し、大・中型トラックで首位を堅
持することを誓い、トヨタ自動車との連携による燃料電池バスの実用化への意欲を示した
2015年ダカールラリー出場車。2016年同ラリー出
場者はショーの基幹に出発地点のチリに向けて輸送途
上にあった
ダカールラリー出場チームのトークショー。少ない人数のチームながら中量トラッククラスでの優
勝を重ねているのはチームの団結力の賜物であるという。前列左から右へ、坂巻Navi、菅原
Driver(父)、菅原Driver(ジュニア)、杉浦Navin皆さん。後列は全国の販社から応募選
出されたServiceEngineerの皆さん
TheTRUCK2015年12月号
64
■日野自動車
・燃料電池バス
数年来、各地で実用走行試験を重ねている日野
が燃料電池車用専用ボディを開発して出展。トヨタ・
MIRAI燃料電池車の燃料電池スタックを基本的に共用
する設計で、商品化も近いことをうかがわせる出展だ。
・商用車のハイブリッドモデルで最大級「プロフィア・
ハイブリッド」
パワートレーン中の発電機/モーターの機能に加
え、廃熱利用の発電機も搭載して電力容量を拡大。
電動温度管理機能(電動冷凍システム)を搭載した意
欲的車両。
・衝突被害軽減ブレーキを搭載した小型トラック「デュ
トロ・ハイブリッド」
市場で普及を先導する日野「デュトロ・のハイブリッ
ド車」に安全性を高めた仕様を追加提案。
・大型観光バス「セレガ」
これもジェイバスで生産されるが、観光バスは前出
の路線バスとは逆に日野が主導しパワートレーンは日
野製品をいすゞブランド観光バスと共用する。
・HINO500シリーズ海外専用モデル
過酷な走行条件の海外地域向けの車両。GVWが
16トン迄許容されている。
・ダカールラリー出場「レンジャー・ラリー仕様車」
わが国からただ1社参加を継続中の日野でしか経
験できない様々な経験と来年1月のラリーに向けた
抱負などをトークショーで会期中に重ねて開催、来場
者の高い関心を集めた。
燃料電池大型バス。既に複数台数の試作車が各所で供試運行されてきたが、今回“世界初公開”としたのは量産型に限りなく近づいたということとい
えよう。トヨタのMIRAI燃料電池車のフューエルセルスタックを2連で使う設計だ。後部に軽量トレーラを連結して電動自転車への充電も可能、との
演出で展示した
輸出モデル「HINO500」。架装性重視のフレーム構造を訴求した展示。ドアの“1626”は欧州車に見られる表示法で、GVWを表す“16”とエンジ
ン最高出力を表す“26”の組み合わせと理解
日野の最新エンジン。左:A09C型
プロフィア車用・最高出力360PS、
右:A05C型レンジャー車用・最高
出力250PS
TheTRUCK2015年12月号
65
国内トラックメーカー比較研究
三菱ふそうトラックバス・三輪為夫
福社長(兼三菱ふそうセールスジャ
パン本部長)のブリーフィング。
2020年までに世界で30万台販
売を、国内もシェア上位をそれぞれ
目指すことを明らかにした。ダイム
ラーグループとしての数字でなく、
FUSOブランドでの目標と理解
大型トラックSuperGreatⅤ“SPIDER”と名付けた展示車。エンジンは6R10(T8)型・最高出力460PS
TheTRUCK2015年12月号
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■三菱ふそうトラックバス
・当社第5世代大型トラック「スーパーグレートV」
親会社ダイムラーなどの海外の大型トラックで普
及が進む、運行路線の地形地図と交通事情に対応し
て、周囲の交通環境が許される場合にクラッチを切
断してコースティング(惰性走行)できる「エコドライブ
パッケージ」機能を搭載し燃費向上の先端機能を提案
する6×4車。わが国の交通・道路事情に適合可能
性に関心が集まる。
その他、来場者を喜ばせる各種グラブクレーンを複数
搭載したショー演出車も出展した。
・小型トラック「キャンター・ハイブリッド」電源供給車
通常時は配送用等の用途に供するハイブリッド車の
ハイブリッドモーターを、災害時などにエンジンで駆
動して商用電源なみの電力供給を可能とした。
大型トラックSuperGreatⅤ2016市販車モデル。エンジンは6R10(T3)型・最高出力380PS
小型トラックCanter電気供給車。エコ・ハイブリッド車ベースでハイブリッドモーターをジェネレーター(発電機)として運転した場合に、外部給電が可能。
エンジンは4P10(T2)型・最高出力130PS
TheTRUCK2015年12月号
67
国内トラックメーカー比較研究
UTトラックス・村上吉弘社長のブリーフィング。アジア新興地域向けのQUESTAにも
触れてボルボグループ内での存在感を強調した
UDTの会場風景。
主力のQUONヴィジョン。スマートロジスティクスを標榜し、車自体の高性能・高安全性・高収益性・環境性能に加え、アフター
セールスにおけるきめ細かな顧客サポート体制が当社の目指すところであるとした
TheTRUCK2015年12月号 68
■UDトラックス/ボルボトラック
・大型トラック「クオン・ビジョン」
ハード的に燃費・環境性能を高める多方面の効率化
を結集し、ソフト的には運転操作を燃費向上に向けて
支援するシステム、加えてTCOを極小化するアフター
セールス・サポートシステムの提供をこの出展者で象
徴した。
・中型全電動トラック「UDエレクトリック・デモンスト
レーター」
中型電動車の可能性を検証する目的の実験車。
・大型トラクタの内、6×4に限定して日本市場で販
売するVOLVOFH
4×2トラクタはUD車、6×4トラックはVOLVO
車と棲み分ける
フルモデルチェンジしたFH型の中で6×4トラクタを日本向けに販売し、UD・QUONの4×2トラクタとの住み分けを明らかにしている
右:エンジンGH11型・最高
出力380PS/左:ESCOT-V
AMT。基本的にボルボ車と共
通のパワートレーンだ
TheTRUCK2015年12月号 69
モーターショーのあり方について
トラック及びバス専業の4社はこのショーの性格が
名称のMotorが示す乗用車寄りの路線に馴染んでい
ない、というのがトラック関係者の大方の見方ではな
いかと思われる。乗用車と商用車、特に大型トラック・
バスを一堂に集めるショーは成熟した市場では珍しい
といってよい。新興国や途上国ではこの形態が依然
多いが成熟市場では分離した専門ショーが常識である
ことを考えると、筆者がこれまで何度も言ってきたこ
とだが、これからの東京モーターショーのあり方を真
剣に考えることが関係者の課題ではないか。
わが国の自動車製造にかかわる企業が組織する団
体(総称して自動車工業団体:いずれも一般社団法
人)を一覧すると、日本自動車工業会(自工会)は車
体メーカーを会員とせず、車体メーカーは日本自動
車車体工業会(車工会)を、部品メーカー日本自動車
部品工業会(部品工業会)があり、それぞれ独立した
組織である。自工会主催の東京モーターショーから
商用車を切り離すことは自工会を割ることになりでき
ない。
翻って、ドイツの自動車工業会VDAは、日本の「自
工会」「車工会」「部品工業会」を束ねたような文字通
り自動車製造にかかわる産業の集積団体で、乗用車
と商用車を切り離して隔年でショーを開催しているこ
とは周知のとおり。それぞれのショーがIAA乗用車、
IAA商用車として世界でも代表的なショーとして期待
に応えて運営されている。こうしたことを考えると、
トラック産業の振興を考えるショーへの期待がますま
す高まる。
TheTRUCK2015年12月号 64
東京エアロスペース
シンポジューム
2015
東京ビッグサイト
澤田征二
シンポジュームなので、メーカの展示説明だけで
なく研究開発機構や大学、地方公共団体等 色んな
組織・団体が情報を発信しているイベントである。
本誌は直接これらの業界と関わることは少ない
が、自動車との関係から将来への知識・トレンドな
どを仕入れておく為にもいくつかの情報を掲載して
おこうと思う。
☆電動飛行機(航空機の電動推進システム)
自分が車を買って運転するようになって、こんな
事を考えたことが有る。「坂を上るときは、位置のエ
ネルギーを得るために、ガソリンを余分に使う。そ
れなら、坂を下る時にエンジンブレーキを掛けたら
その余分に使ったガソリンがタンク内に湧き出てく
るという装置ができないものだろうか?」。工学部
出としては、エネルギーと言う物質でないものが直
接物質に変換される訳がないことくらい理解できる
から、『こんなことを考えたことが有る』と言う形で
記憶に留めて置いた。
勿論、エネルギーの「回生」という事だけであれ
ば、バネの変形やはずみ車の回転によるエネルギー
の貯留と言った機構を使う他にも、摩擦を使って熱
に代えてそれを利用する機械を入れるといった大掛
かりなものだって考えられるが、使いやすく判り易
いのは「電気」だろう。
音や排ガスといった環境に悪いものが出てこない
し、効率も良さそうだ。
飛行物体は自分が移動するために使うエネルギー
の何倍ものエネルギーを自分を浮かす為に使う。自
Tokyo Aerospace Symposium 2015
TheTRUCK2015年12月号 65
電動モーターの実装状態
動車はガス欠になってもそこに車を置いてガソリン
の入手を考えればよいだけだが、航空機は墜落して
しまう。
そこで、燃料そのものの重さ、それを保管してお
くタンクやエネルギーを蓄える電池の重さ、関連す
る機器の重さに対して、出せる出力の大きさ:出力
/重量比が検討の対象になる。
このことから、航空機の動力源としては石油燃料
を使う内燃/外燃エンジンが殆どの機種で採用され
ている。
しかし、モーターに発電機能を持たせれば回生ブ
レーキを使って直接電気エネル
ギーを取り戻せるし、モーター
は自身で騒音を出さないし、石
油エネルギーのように排ガスも
出ない。
自動車はエンジン車に回生の
為の発電機兼駆動用モーターを
取り付けた「ハイブリッド車」を
実用化し、高機能(リチューム)
電池を使って「電気自動車」も実
用化した。そして、電池の容量
と重量を小さなままで水素×酸
素による発電機構である燃料電
池を組み込んだ車の開発まで進
んできている。
こういった新しいシステムの
実用化に当たっては、全く新し
い部品の開発が必要であり、そ
の後に別の業界で同じような機構を考える後発の企
業は新規開発に必要な手間が省け変更/改良/適応
だけを考えればよい。
飛行機でも、騒音、排ガスのデメリットが無くて
エネルギー回生の容易なこのシステムの採用を検討
するのは当然であろう。そして、自動車で築き上げ
られた技術がお手本になるのは幸運と言える。
JAXAが開発している直列多重化モーターの構
造は、トラックエンジンのハイブリッド化でも採
用された機構で、高トルク化を図る為に、モーター
を直列に配置していることから航空機にとっては
TheTRUCK2015年12月号 66
展示ドローン色々
前面投影面積を小さくして空気抵抗を小さくし、
多重化によって耐故障信頼性を高くすることが出
来ている。
この航空機用電動推進システム技術の事をJAXA
では「FEATHERF」と名付けている。
パンフレットには、2015年2月には国内で初
めて有人による場周(飛行場周辺)飛行を行った、と
なっている。
システム構成の図形を添付したが、今後はこれに
燃料電池機能、ガスタービンエンジン発電機などの
追加による大出力化を検討するとの事。
モーターは磁石や銅線を使うので出力の割には
重たく、これでジャンボジェットクラスを飛ばす
のはまず無理だろうが、今年2015年は「バック
トゥザフューチャー」の映画が想定していた1985
年から30年先の未来。地面から浮いて進む「スケ
ボー」等実現したものもあり、TVコマーシャルで
使われている『人が想像できるものは実現できる』
と言う格言からすれば、近い将来には小型飛行機
にプロペラを電気モーターで駆動するものが出て
くるのだろう。
☆ドローン関連
首相官邸への墜落事件から、急激に関心が深まっ
た機種である。
全く関係のないアイテムであるが、『クラウド』と
は『雲』であり、空の上に大量のデータが存在してい
るというイメージである。ドローンは空の上から「何
でも見えているヨ」という、クラウドとちょっと似
た感じを持っている。 共に何となく、気味悪く感
じるのは共に何となく「上から目線」を感じる事で、
デジタルデバイドで被害者意識が強くなった70歳
を超えた年齢のせいかもしれないが・・・。
この新しい機種の可能性に対して非常に多くの
人が興味を示し、このシンポジュームにも色んな
メーカは勿論、大学や業界団体が展示ブースを設
けている。
ただ、用途の発展性がもう一つ見えていないため
に、安全に対する法規制が予想できなくて、とりあ
えずカメラを抱えた空撮や測量などを対象とした機
種展示が殆どであった。 本誌としては、アメリカ
Tokyo Aerospace Symposium 2015
TheTRUCK2015年12月号 67
フライトシミュレータの操作 パイロット気分!
でアマゾン等が検討している宅配手段に使える機種
なり構想の展示があればよかったのだが、そのジャ
ンルに関しては造る方も使う方も様子見であると感
じられた。
代表的な機種の写真を添付するにとどめておく。
なお、展示場のコーナーにネットで囲った、小さ
なゴルフ練習場に似たデモフライトエリアが有っ
て、そこで何種類かのドローンを飛ばすことが出来
る。来場者(素人)がコントローラを持って操作する
のだが初めてだと殆ど「ノーコン」であった。
☆その他
航空機に使われる部品は加工精度・強度等が非常
に高度な割に、自動車等と較べると圧倒的に小ロッ
ト生産である。
また、その分だけ納期がしっかり確保されてい
る。だから、特別メーカの近くで生産しなくても
良い。
地方で伝統的に刃物や金属加工、精密加工等
に秀でた企業が請け負うことが出来るので、こ
の展示会には多くの地方自治体がそういった企
業をバックアップするべく小間を確保してPRし
ている。
チタンの特殊形状の溶接や、一見どのような加工
方法か判らない複雑な形状の立体部品など、感心し
てしまう。
航空機に関する技術は非常に高度で複雑と思われ
ているので、一般の人に親近感を持ってもらう為に
装置に触れてもらうコーナーも用意してある。
フライトシミュレータが操作できるコーナーは人
気で行列が出来ている。横で見ていると、多くの人
が墜落か・とんでもないところへ向かって飛ばして
いる。
今年のメインスポンサーとなった「Shell」のブース
オープニングセレモニーでの来賓と主催者の記念ショット
TheTRUCK2015年12月号 72
タイ国内で展示会運営と出版業を行っているTTF
インターナショナル社(TTFInternationalCo.,
Ltd.)が主催するバスとトラックの展示会「BUS&
TRUCK2015」がタイ・バンコク市内にある国際展
示センターBITEC(BangkokInternationalTrade
&ExhibitionCenter)で、2015年11月5日〜7
日の3日間の会期で開催された。サブタイトルは「The
12thAECCommercial&SpecialPurpose
VehicleExposition」でASEANの経済統合の状
況も視野に入れている。会場は、BITECの屋内1館
(約5,000㎡)とそこに接続する屋外スペースで総
面積は15,000㎡を使用した。
主なトラックメーカー系の出展としては、SCANIA、
VOLVO、UD、FUSO、MCC、BESTLIN、IVECO
などで、運行管理システムを提供するDTCや模型
のTAMIYAも出展していた。屋外では、テストド
ライブとデコレーションバスのコンテストが実施され
た。屋外イベント会場には、日本ではNGの電飾ギ
ラギラの満艦飾トラックも集められていた。なお、今
年のメインスポンサー「Shell」となった。
主催のTTFインターナショナル社は、産廃やエネ
ルギー関連、建設系の出版物を発行しているが、そ
の中のひとつに「Bus&Truck」という週刊誌があ
り、バとトラックを主軸に各種ボデー、運送サービス
やその管理などを毎週レポートしている。その雑誌を
ベースにこの展示会は開催されている。展示会と雑
誌媒体は完全に連動していて、出展企業の記事が大
きく掲載されたりしている。
それでは写真を中心に今年の「Bus&Truck」を
レポートする。
海外レポート■タイ展示会
デコバスのコンテストも実施
バンコクで「BUS&TRUCK20154」が
開催される
レポート:
於久田幸雄
(本誌編集長)
VOLVOトラックは、傘下のUDトラックスとブースを並べ、約20年
ぶりに設計思想を根本から見直しフルモデルチェンジした主力モデル
「ボルボFH」を中心に出展した
UDトラックスは、タイで生産するクエスターを出展。ただ、VOLVO
もそうだが車両を展示しただけで、説明員などはいなかった。お付き
合い出展のイメージが強い
タイFUSOは、ダイムラー社100%出資のインド「DaimlerIndiaCommercialVehiclesPvt.Ltd.(DICV社)」オラガダム工場で生産され、
完成車で輸入しているミキサ車と、世界的に大きなシェアを誇る小型トラック「キャンター」の冷凍車を展示した。タイでは現在、道路や港など
の物流インフラ整備が進められているので、ダンプやミキサ車の需要は高い。また、コールドチェーンに対する要望も高いので、その意味で
は的を射た展示だと言える
TheTRUCK2015年12月号 73
SCANIAは、タイで人気のある同社のハイデッカバスの車両単体展
示もしていたが、ブースでの展示はトラックを中心に展開。来場者の
注目を集めていた
MCCGROUPは中国のBEIBENTRUCKを出展。広めのブース
には大型車の他に軽四サイズの移動販売車やワンボックスタイプの
保冷車も展示されていた
IVECOトラックは、タイ大手運送会社をベースとするSSKGROUP
がその販売を担当している。かなり大きなスペースにトラクタヘッド数
台を展示した
中国重汽系列のCNHTC社製トラックをタイ市場で販売するBESTLIN
GROUPは、トラクタヘッド1台を出展した。記念価格を設定して商
談していたようだ
タイでピックアップから中型トラックまでの冷凍車を製造販売する
GOODTEMP社のブース。バスの冷房装置も扱っているようでその
関係の展示物も出展していた
部品関連の出展ブース。オイルやタイヤの他、トルクコンバーターや
油圧駆動用のPTO装置などのトラックやバスの部品も出展したいた
TheTRUCK2015年12月号 74
海外レポート■タイ展示会
中国No.1のバス製造メーカーのYUTONG社はボンネットタイプのスクールバス
を出展した
屋外には数台の試乗車が用意されていた。中国製大型トラックとFUSOの小型ト
ラックが置かれていた
タイのバスはその殆どがかなり派手な飾りつけとなっている。屋外ではそんなデコバ
スのコンテストが開かれていた
主催者が毎回用意するラッキードロー抽選コーナー
タイの展示会はコンパニオンのレベルが高い
屋外に集合したデコトラ。派手さはタイならではだ
TheTRUCK2015年12月号 75
自動運転トラック研究
Actros車前面に掲げられたHighwayPilotの表示。量産標準車ベースの半自動運転が可能。ドイツ国内で初の公道
走行認可を取得し試験運行が開始された
TheTRUCK2015年12月号
76
・処女運行公開。同乗者:バーデン・ヴュルテンブルグ州知事ヴィンフリート・クレシュ
マン及びダイムラー社取締役会会長・博士ウォルフガング・ベルンハルト
・試験車はHighwayPilotハイウェイパイロットシステム(以下、HighwayPilot)
搭載のメルセデス・ベンツ量産型アクトロス車
・クレシュマン知事の話「交通新時代の夜明けだ」
・ベルンハルト博士の話「今回の世界初公開公道運行は自動運転のトラックが市場に
普及する重要な一歩だ。安全で持続可能な物流の将来にとっても大切な一里塚。」
世界初、量産型トラックで
公道走行認可取得
メルセデス-ベンツ大型アクトロストラック
ドイツ国内アウトバーンA8号線で
自動運転公開
公開された処女運行車は外観上、最新の標準Actros車と変わっているところがないが、唯一、HighwayPilotの表示が区別の目印
ドイツをはじめ欧州の自動車
専用道路(AutoBahn/Mo
torWay)ではトラックは走
行車線走行が規定されてい
る。制限速度は時速80キ
ロ。HighwayPilotをON
にして走行中、ハンドル・ア
クセル・ブレーキ・変速操作
はシステムに任せ、ドライバー
はもっぱら異常の有無を看視
することに専念する
量産型トラックベースでは世界初
ダイムラー社でトラック・バス部門の統括責任者で
ある取締役会会員で博士のウォルフガンク・ベルンハ
ルトとバーデン-ヴュルテンブルグ州知事のヴィンフ
リート・クレシュマンは去る10月2日、歴史に残る
量産型で初の自動運転大型トラックのドライバーと助
手として世界初の公道走行を行った。走行したのはア
ウトバーン8号線のデンケンドルフとシュツッツガルト
間である。
この公道処女運行に供された大型トラックは量産中
の標準メルセデス-ベンツ・アクトロス車に“Highway
Pilot”を搭載したモデルである。登録に際して、ドイ
ツ道路交通車両登録規則(StVZO)の第19条の6
を適用された。認証機関のTÜVRhinelandテュフ・
ラインラントが事前に検査を終了しており、審査報告
書が発行されていた。これを受けて、バーデンーヴュ
ルテンブルグ州政府当局は同規則StVZOの第70
条を適用して特別運行許可証を発給していた。
自動運転トラック研究
処女運行はバーテンビュルテンベルク州知事のヴィンフリート・クレシュマン氏(助手席)と共に、ダイムラー社取締役会トラック・バス部門担当ウォルフガンク・
ゲルンハルト博士(運転席)によって行われた
メータークラスタの中央にHighwayPilotシステムがONで定速80㎞/
Hで運行中であることが表示されている。ドライバーは習慣的にステアリン
グホィールに手を添えている・・
りげなく配置されているHighwayPilotシステムのON/OFFスイッチ(青
色)。標準のスイッチクラスタの一等地を利用している
TheTRUCK2015年12月号
78
自動車発祥の地に因んだ
処女運行ルートと区間
“今回の処女運行を行う場所としてこの区間はま
たとない絶好のところでした。何故なら、バーデン
-ヴュルテンブルグ州は自動車発祥の地であり、ダ
イムラーの乗用車開発拠点と大規模工場が目と鼻
の先にあるからです。半自動運転と全自動運転は新
時代の移動方式として描かれているもので、現存
車より高度な情報処理機能を駆使して安全性を高め
るほか、現存の道路インフラを一層高効率で利用
できる利点が期待されます”とクレシュマン知事は
感想をのべています。更に“こうした観点から、わ
が州政府では実験区域を設けて全自動及び半自動
運転に有効な技術開発を後押ししようと計画してい
ます。このプロジェクトでは自動車専用道路及び周
辺一般道を試験用に開放することも含まれているの
です。こうした研究開発を通じて、将来の自動運転
に関わる法的枠組みの開発も視野に入れているの
です。”
TheTRUCK2015年12月号
79
公道運転、北米に次いでドイツでも
“今回の初公開自動運転デモは、成熟した将来の
自動運転トラックの普及により、安全で道路による
貨物輸送の最適化といた方面についても重要な行
程であるといえます。本年5月に北米で行った世界
初のフレートライナー・インスピレーション車による
ネバダ州内公道による自動運転認可に基づく運行開
始時に、ドイツでも間もなくHighwayPilot搭載
車が運行を開始することを発表しましたが、これが
その後5か月で実現したことになります。私はバー
デンーヴュルテンブルグ州政府が示されたこのプロ
ジェクト実現に向けた積極的なご支援に心から感謝
の意を表します。現実の交通環境の中で安全に自動
運転の試験運行を行うという事は自動運転の技術開
発と将来の普及に向けて眞に大変な決断であったと
思います。私たちはこれで先へ進むことができます。”
とダイムラーの上級取締役会のベルンハルトが述べ
ている。
HighwayPilotは半自動運転を可能とし
ドライバーはいつでも介入出来るシステム
アクトロスに組み込まれたHighwayPilotは、
現段階では半自動運転を可能にするシステムであ
る。ということは、HighwayPilotは自動車専用
道路でステアリング操作が行えるが、車の挙動につ
いての責任は依然としてドライバーが負うという考え
方だ。ドライバーは常時車の動きを看視し必要な場
面でいつでも運転に介入が可能である。これは丁度
現代の一般的航空機が自動操縦を基本としつつ、
必要な場面ではパイロットがいつでも操縦に介入す
ることができるのに対比することが出来よう。
本システムには、車両前面に搭載したレーダーと
ステレオカメラがあり、更にこれまで十分に実績の
ある周囲の交通環境に順応するクルーズコントロー
ルなどが統合的に機能して公道上の自動走行を安全
に実現する。車の主要機能との相互連携が図られ
試験済であることは勿論である。これまでの間、ハ
イウェイ・パイロットはドイツ及びアメリカ国内の試
験ルートで凡そ2万キロのテスト運行を問題なくこな
してきた。
何重もの安全対策
センサー類には冗長性(何重もの安全対策)が備わっ
ており、これまで問題は一つも発生していない。
HighwayPilotは予想不可能な事態にも適切に対応
している。天候の急変や路面のマーキングが消えか
かっているような悪条件下でもシステム側からドライ
バーに即座の介入を要請する。その際、ドライバー
が介入するのに十分な時間的余裕が持たせてある。
万一、ドライバーの反応が遅れた場合は車が自分で
安全に停止する。
将来の道路交通の姿、自動運転車を核に
ダイムラートラックスが先陣を切って示す
ダイムラートラックスはトラックの自動運転領域で先
駆者となる。2014年には世界最大の大型トラックメー
カーとして「メルセデスーベンツ未来トラック2025」を
マグデブルグで発表している。この未来のトラック向
けたコンセプトは、ダイムラートラックスが自動運転に
必要な技術を既に保有していることを示した。
その後1年足らずの本2015年5月、「フレートラ
イナー・インスピレーション」が世界初公開されたの
ち、米ネヴァダ州から公道自動走行ライセンスの発給
を受けた。
「メルセデスーベンツ未来トラック2025」も「フレー
トライナー・インスピレーション」も共にコンセプト車
であったが、今回のHighwayPilot搭載のメルセデ
スーベンツ・アクトロスは公道走行が許可された最初
の量産車ベースの車で、ここでも数多あるトラックの
先陣を切ったことになる。
“我々は多くの競合メーカーがある中で、自社がグ
ローバルに展開するビジネスユニットとブランドのいず
れでも最新テクノロジーを駆使した商品展開が可能で
あるという特異な存在であることを示しています” こ
れはベルンハルトの言である。“我々は未来の輸送の
姿を描くことを宣言している。今回の世界初公開の量
産型トラックベースの自動運転車を提供できるという
こともこの宣言に沿った行動です”と続けている。
自動運転トラックは数々の利点をもたらす
自動運転トラック研究
HighwayPilot搭載車の運行が最初に認可された独自動車専用道路A8{E52}号線。西はフランスとの国境カールスルーヘ・ジャンクションからシュッツガ
ルト(左上:Shuttugart)南部を通り、東に走ってミュンヘン(右中:Munhen)を経由して隣国オーストリアのザルツブルグへの国境:サルツブルグ西ジャンクショ
ンまで、ドイツ南部の幹線(延長2,268㎞)だ(お断わり:本道路地図は筆者がドイツ取材に際して度々使用してきたので各所に書き込みがある。U1mから
下方に向けて書き込んだ黒線は取材先地名を欄外に記入した導線痕跡です。)
TheTRUCK2015年12月号
80
自動運転には数々の利点があるが、特に貨物輸送
分野では有利なことが多い。
先ず、安全性が高まる。HighwayPilotはシステ
ム自体が疲労したり注意散漫になることがない。常に
機能し続ける。ダイムラーによる研究では、車線をキー
プするための運転操作から解放されればドライバー
の疲労は25%軽減することが確認されている。これ
は、他の安全確認のためにドライバーが注意力を活
用することができることを意味する。
次に、自動運転トラックは効率向上に有効である。
ギヤシフト、アクセル操作、ブレーキ操作等が最適化
され、燃料消費は減少する。これはCO
2
排出の低
減も意味する。ダイムラートラックスの予測では概ね
5%の燃費削減が実現する筈だ。国際コンサルタント
集団のフロスト&サリバンによれば、燃費向上は7%
に達すると試算している。
3番目に、自動運転のトラックは職場としての魅力
が膨らむ。コックピットのドライバーは、目的地までの
道程の多くの区間の運転をHighwayPilotに任せて
運行中に受けるストレスを軽減することができる。将
来、更に技術開発が進めば、負担の減ったドライバー
は他の任務について運行中の時間を利用することも
可能になる。例えば、運行記録など業務上の書類を
タブレットに入力することなどだ。
こうした様々な利点はトラックならではの特性を考え
れば大きな影響があるはずだ。何故なら、大型トラッ
クは年間走行距離が平均して13万キロに及び、乗
用車の場合の年間1万4千キロ程度と比較して凡そ
10倍であることが分かっているから。
政治家と行政組織体は協働して
自動運転関係の法的枠組みを創出すべき
HighwayPilot搭載のメルセデス-ベンツアクトロ
ス車を公道走行させるに当たり、計画地域のバーデ
ンーヴュルテンブルグ州政府から特別の認可を得なけ
シュッツガルト近郊拡大地図。記事中の処女運行経路の起点デンケンドルフDenkendorfは右下、シュッツガルト空港は中下に位置している。この間の
距離は約13㎞
TheTRUCK2015年12月号
81
ればならなかった。この特別認可により、現在は半自
動方式ながら自動車専用道路を時速80キロで走行
することができる。通行可能路線はドイツ国内全域に
及ぶ。
“我々はこの絶好の機会を利用して広範な試験項
目を遂行できるだろう。”とベルンハルト博士は談話
を発表している。
何度も言うように、ベルンハルト博士は行政組織体
が自動運転車の運用に関する法的枠組みを整備し、
それによって将来は自動運転トラックがドイツ国内を特
段の認可を必要とせずに自由に走行できるようになる
だろう、と予測している。
HighwayPilotの技術体系を商品として数年の間
に市場に送り出すことができるようにするには、ベル
ンハルト博士が主張するように、先ず、改正ウィーン
協定をドイツ国内法規に取り込むことが必要だ。それ
にはドイツ連邦共和国政府運輸省が主導的に行動を
起こす必要がある。
次に、独連邦運輸省及び車検実施当局は量産型自動
運転車についての認証体系整備に着手すべきである。
3番目に、ブラッセル(筆者注:EU本部在住地)の
関係機関は、自動運転車の認可速度は時速10キロ
とする現在のECER79指令を改正することが必要
である。
ベルンハルト博士は、連邦政府の“自動運転車
及び“つながる”車”の当初の試験地域としてバー
デンヴュルテンベルグ州議会の戦略的方針を殊の外
歓迎する旨の見解を発表している。その狙いは、ド
イツが来るべき時代に先端技術を搭載したトラックを
先導すべきであり、それは歴史上、世界初のトラッ
クが道路を走った当地に相応しいからであるとして
いる。
トラックメーカートップ人事研究
ボルボトラックのCEOに就任したMartinLundstedtマーチン・ルントゥ
シュテット氏。ライバルSCANIAから異例の転身で業界内の話題をさらっ
た。本年48歳という若さだ(撮影=TommyHollトミー・ホール)
就任の日の朝、記者会見室ではなくイエテボリ市内のボルボ最大のカ
スタマーセンター(サービス工場)で就任の挨拶を述べた。これも異例
のこと。このカスタマーセンターは昨2014年に筆者が彼の地の同僚
S-Eリンドストランドと共に取材で訪問した拠点である。本誌2014年
9月号「世界の販社研究:事例研究=スエーデンの販社」で詳しく紹介
した(撮影=同)
TheTRUCK2015年12月号 84
ライバル・スカニア社からの転身
この日はルントゥシュテット氏にとって直前の職場で
あったスカニア社との間に交わした守秘義務契約期間
6か月が終了した日であった。過去3年間、同氏は
スカニア社のCEOの職にあったのである。周知のと
おり、スカニアはMANと同じくフォルクスワーゲン
の傘下にあるから、ボルボへはライバル社からの転身
というショッキングな人事である。
初の記者会見にボルボサービスセンターが選ばれ
たというのは今回の人事の特徴的な事の一環といえよ
う。このサービスセンターというのはイエテボリ市の
隣国ノルウエイに通ずる国道に面した大きな施設で多
数の車を受け入れることができる施設だったからだ。
明らかな理由が背後にあるが、ルントゥシュテット新
社長兼CEOが就任後初の会見で彼が描くボルボで
の仕事について多くを語ることはなかった。しかし、
将来に向けて収益性を高めることについて周囲の期
ボルボトラックグループの新社長兼CEOに就任したマーチン・ルントゥシュ
テット氏は、就任当日(2015年10月30日)の朝、最初の会見を行った。
場所は恒例の記者会見室ではなく、なんとサービスセンターであった。
取材・文
スヴェン─エリクリンドストランド
訳・構成=
西襄二
サービス工場のテクニシャンのパトリック・グランベルグ氏とディーゼル
エンジンのインジェクターについて意見を交わした。技術者でもある新
CEOは技術者同士の会話を通じてボルボ車の勉強も行ったとえよう。
噴射系がスカニアとボルボで異なるのも話題になった筈だ(撮影=同)
TheTRUCK2015年12月号 85
待は大きい。ルントゥシュテット氏がボルボの組織に溶
け込み製品構成にも精通し、顧客のあらゆる業界に
精通するまでには多くの時間が必要な筈だ。近年の
ボルボトラックの製品そのものについての関心は一番
後位かもしれない。それより、グループが抱える多く
の他のブランドと製品群構成について現状分析と再編
を含む見直しが重要課題であろう。
グループとしてのブランド戦略と
多様な製品構成に蛮勇を振るえるか
かつてのボルボが乗用車部門を切り離し、トラッ
ク及び産業車両等の部門に専念するようになった以
降にM&Aを重ねてグループに取り込んだブランド
は、巡業動物園(サーカスのこと)の動物にも例えら
れて多様である。ブランドとして、本体のVOLVO
ボルボの他にアメリカのMackマック、フランスの
Renaultルノートラック、日本のUDトラックス、合
弁で展開する中国のDongfeng東風汽車などオン
ロード車両に専念するブランドだけでも5つを数える。
このほかに、インドで商用車と自転車などを展開する
EicherMotorsエイヒャーモータース、アメリカの
Poralisポラリス工業と合弁で展開するATVs(All
TerainVehicles)ラフロード用全輪駆動車、加えて
SDLG、ボルボ、Terexテレックス等のオフロード
車群、更にはPrevostプリヴォスト、Novaノヴァ、
UD、Sunwinスンウィンなどのバス事業、それに
VolvoPentaボルボペンタで知られるマリンエンジン
などの舟艇用製品など多種多様である。
ボルボのアメリカにおけるビジネスは再検討が必要
で、ルントゥシュテット氏はMackマックトラックスの
ことに精通することを望んでいるだろう。同社につい
てはルノートラックが2000年代初期に合併し、その
後、ルノートラックの買収により自動的に傘下となった
ものだが、当時、ボルボはスカニアを取得しようとし
て果たせなかった歴史がある。
新CEOの最初の仕事は・・
ルントゥシュテット氏は初仕事としてボルボのスウ
エーデン国内最大のサービス拠点で内輪の挨拶を
行った後、凡そ30年も勤めているテクニシャンのパ
トリック・グランベルグ氏と言葉を交わした。二人は
現場の作業台に並べられたディーゼルエンジンのイン
ジェクターについて勉強したかたちだ。二人はどちら
も技術に精通した者同士として精密部品について親し
げに意見を交換した。
新CEOの経歴
(訳者のコメント)
マーチン・ルントゥシュテット氏の経歴について
マーチン・ルントゥシュテット氏は2012年6月
2日付でSCANIAの取締役会決議によりより同
社CEOに指名され就任した。それから3年余を
SCANIAのトップとして采配を振るって今回の異例の
人事となった。
経歴として、ルントゥシュテット氏は1967年生
まれの48歳、自然科学系学士号を有し直前は
SCANIA社の副社長を務めていた。入社は1992
年、以後、上級職を歴任し2001年から2005年
迄の間は同社のフランス国内法人でも上級職を務め
た後、2007年までトラック部門の副社長を歴任した
エリートである。
SCANIAのトップが同じVWグループのMANに
転向してトップについた事例は過去にもある。これは
同じグループ内のことで違和感はない。しかし、今
回はいわばライバル企業への転身であり驚きをもって
受け止められている。
TheTRUCK2015年12月号 84
主催者代表の全日本トラック協会
星野良三会長
自由民主党トラック輸送振興議員連盟
細田博之会長
要望書を提出する(左から)全ト協小幡副会長、
全ト政治連盟坂本会長、全ト協星野会長
全ト協ニュース
全日本トラック協会と全日本トラック事業政治連盟が地域社会と国民生活を守るため
「平成27年度トラック業界の要望を実現する会」を開催
TheTRUCK2015年12月号 85
公明党トラック問題議員懇話会
北側一雄会長
全ト協小幡鋹伸副会長
国土交通省山本順三副大臣
全ト協伊藤昭人副会長
自由民主党トラック輸送振興
議員連盟木村太郎幹事長
全ト協嶋田康副会長
自由民主党ITS推進・道路審査会
山本有二会長
全ト協三浦文雄副会長
シュプレヒコールを行う
全ト政治連盟の坂本会長
全日本トラック協会(星野良三会長)と全日本トラック事業政治連盟(坂本
克己会長)は、2015年11月11日、都内の憲政記念館において、「地域
社会と国民生活を守るため/平成27年度トラック業界の要望を実現する
会」を開催した。
現在、行政・荷主・トラック運送事業者など関係者が一体となって、ド
ライバーの長時間労働抑制、労務負担の軽減の取り組みが推進されてい
る。その解決方策のひとつとして、更なる高速道路の利用が不可欠となっ
ている。トラック輸送にとって、高速道路の利用は、輸送時間の短縮及び
定時性の確保、ドライバーの拘束時間等労務負担の軽減、一般道にお
ける交通事故の削減や環境負荷軽減に大きな効果をもたらすものである。
それを踏まえ、全ト協と全ト政治連盟は、高速道路料金の大口・多頻
度割引最大5割の継続等平成28年度税制改正・予算に関する要望事
項の実現を確かなものとし、ドライバーの労働環境を改善し、国民生活、
産業活動を支える公的物流サービスの担い手としての重要な使命を今後
も果たしていくために、自民党トラック輸送振興議員連盟、公明党トラック
問題議員懇話会所属国会議員と共に今回の「要望を実現する会」を開催
したもの。
出席者は、自民党トラック輸送振興議員連盟所属国会議員と公明党ト
ラック問題議員懇話会所属国会議員約150名と全国のトラック運送事業
者約150名で、国土交通省、厚生労働省、総務省、財務省などからの
参加もあった。
同会での要望項目は、①高速道路料金の大口・多頻度割引最大50%
の継続、②軽油引取税を含む自動車関係諸税の軽減、③自動車税にお
ける環境性能課税(環境性能割)の軽減となった。(関連記事は○○頁)
高速道路料金の
大口・多頻度割引の
継続を実現しよう〜!
軽油引取税を含む
自動車関係諸税の
軽減を実現しよう〜!
議事を進める議長のYoo会長(中央)
タイ国陸運連盟、TheLandTransportation
FederationofThailand(LTFT)が主催する“AEC
LogisticsSummit”がこの9月に開催された「2015
タイ国際トラックショー(ThailandInternational
TRUCKShow2015=TiT2015)」会場(IMPACT
MuangThongThai)内のセミナールームでTiT会
期中の3日間(9月17日〜19日)にわたり開催された。
今回その第一回目となる“AECLogisticsSumm
it”は、AEC(ASEANEconomicCommunity)の
10ヵ国+1ヵ国(中国)の運輸物流協会の代表が一
堂に集まり、トラック輸送を中心としたASEAN物流
の現状の課題、及びその将来像について積極的な意
見交換を行うASEAN輸送業界初の会合である。参
加国は、タイ、インドネシア、シンガポール、フィリ
ピン、マレーシア、ブルネイ、ベトナム、ミャンマー、
ラオス、カンボジア、中国(南部)で、各国の輸送・
物流団体の代表が集まった。
トラック輸送を中心とした物流では各国それぞれ
の事情があり、このSummitでASEAN地域の運
輸事業の発展についての前向きな議論を交わすこと
で、各国相互の物流発展に貢献するのが目的だ。
これは、今後のASEAN経済統合(AEC)にあたっ
ての大きな力ともなり得る重要なSummitだと言え
る。また、今回のSummitで、AECの共同組織
としてアセアントラック輸送連盟(ASEANTRUCK
Federation=ATF)が設立された。これは、今後
の業界発展につながる大きな意義を持っている。
ASEAN運輸業界の活動
ASEAN運輸協会が一堂に集まり
“AECLogisticsSummit”をTiT2015の会場で開催
課題を共有するアセアントラック輸送連盟(ATF)を設立
TheTRUCK2015年12月号 86
今後のASEANトラック物流を左右する重要な会合“AECLogisticsSummit”
各国の課題や今後の展開について真剣な議論が交わされた
ATF設立に参加各国全員が賛同、MOUにサインを入れる調印式が行われた
TheTRUCK2015年12月号 87
ブルネイブルネイ
MOUへの調印も終わりTiT主催者も交え各国参加者全員で喜び合った
会期中には各国それぞれの課題を取り入れたトークセッションも行
われた
2014年にLTFTが中心となり、メコン川流域6ヵ
国の運輸物流協会代表がタイ国内に集まり、物流
の将来展望をテーマとした“GMS物流サミット(The
GreaterMekongSubregion)”が開催されてい
る。今回はその流れをくむ会合として、タイトルも新
たに“AECLogisticsSummit”とし、参加対象の規
模を大幅に拡大して開催されたもの。
今回この“AECLogisticsSummit”がTiT2015
の会場で開催されたことにより、ASEAN諸国の運
輸・物流関係者がTiTに多数来場する結果につな
がった。TiTを主催者する西尾レントオール㈱とパラ
ボックス㈱は、“AECLogisticsSummit”が会場内
で開催されたことについて「TiTが目的通り本格的な
BtoB展示会としての地位を確立したことを意味して
いる」とコメントしている。
今回組織されたアセアントラック輸送連盟(ATF)の
設立に関する了解覚書(MOU)によると、ATFのメン
バーは輸送施設・設備に関する枠組み協定をはじめ、
アセアン運輸簡素化枠組み協定、マルチモード輸送
に関する枠組み協定、国際輸送円滑化に関する枠組
み協定、などを整備し、物流&マルチモード輸送を推
進することになる。その効果として、物流と深い連関
を持つアセアン経済共同体(AEC)を通じたアセアン
地域の交流の加速化、及び促進において重要な戦略
のひとつになることをそれぞれが認識した。これによ
り、アセアン諸国間の物流の効率的な活動を推進で
きることになる。さらに、物流効率の向上の必要性お
よびアセアン地域のトラック輸送産業の持続可能な成
長の必要性も各国が確認し、アセアン諸国間の陸上
輸送、マルチモード輸送、その他越境交流の促進、
発展、強化を今後目指すことになる。
また、MOUで制定されたATFの主な目的として
は、①物流団体およびトラック輸送関連団体との協力
をもとにアセアン地域の協力ネットワークを強化、②
アセアン地域の物流およびトラック輸送の成功事例に
ついての意見交換、③アセアン地域の物流およびト
ラック輸送に影響を及ぼしうる諸問題を共有、④必要
に応じて、アセアン地域の諸部会およびフォーラムに
アセアン物流の代表者として参加する、となった。
ロジスティクス(Logistics)は、原材料調達から生
産・販売に至るまでの物流を企業が合理化するための
TheTRUCK2015年12月号 88
最終日には懇親パーティーが開かれた
トークイベントでは現状の問題や将来展望をテーマにしたASEAN物流が話し合われた
サミットのスタッフも交えての記念ショット
手段であり、サプライチェーンプ
ロセスの一部として、顧客の要求
を満たすために、発生地点から
消費地点までの効率的・発展的な
輸送、荷役、梱包、保管、及び
関連情報を組み合わせて計画実施
し、コントロールするものである。
つまり、その目的を達成させるた
めには、生産地から消費地までの
全体最適化を目指す必要がある。
今回のSummitでASEANの物
流が一本化される方向になれば、
それぞれの国の経済発展にも貢献できることになる。
なお、今回の“AECLogisticsSummit”に参加し
た組織・団体は次のとおりである。
・ブルネイ(Brunei)…FederationofTransport
andStevedoringBruneiDarussalam
・カンボジア(Cambodia)…CambodiaTrucking
Association(CAMTA)、CambodiaFreight
ForwardersAssociation(CAMFFT)
・インドネシア(Indonesia)…IndonesiaTrucking
Association(APTRINDO)
・ラオス(LaoPDR)…LaoLogisticsGroup
・ミャンマー(Myanmar)…MyanmarFreightFor
warderAssociation(MIFFA)、Myanmar
FreightTransportAssociation(FRETA)
・タイ(Thailand)…TheLandTransportation
FederationofThailand(LTFT)
・ベトナム(Vietnam)…VietnamAutomobile
TransportAssociation(VATA)、Vietnamese
LogisticsAssociation
その他、マレーシア(Malaysia)、フィリピン
(Philippines)、シンガポール(Singapore)の3ヵ
国は、今回のSummitに参加しているが、代表とな
る団体・協会はそれぞれ国に持ち帰って検討してから
決定する、としている。
次回の開催時期、及び開催国はまだ未定だが、
“AECLogisticsSummit”の創始者であるタイ
LTFTのYoo会長によれば、年に1回のペースで
開催していく、とのことである。ASEAN物流発展の
大きな力となる今後の“AECLogisticsSummit”に
期待したい。(於久田)
TheTRUCK2015年12月号 89
ブルネイブルネイ
The TRUCK News
Now
TheTRUCK2015年12月号 86
フルモデルチェンジされた大型トラック「ギガ」ギガ・ウイング車
いすゞ自動車㈱は、大型トラック「ギガ」シリーズで主力の
単車系(6UZ1型エンジン搭載車)をフルモデルチェンジし、
2015年10月28日より全国一斉に発売した。
新型「ギガ」は、労働力不足や運行コストの低減などの課
題、環境や安全に対するニーズの高まりを受け、車両単独性
能の追求から「運ぶ」システムへと進化し、ユーザーの稼働を
サポート。ユーザーニーズと次世代トラックのあるべき姿を見据
え、快適な運転環境の実現、省燃費の追求、トータルセーフティ
の追求、高積載の確保、情報通信による遠隔サポートといっ
た5つの視点で、その性能を磨き上げている。
なお、目標販売台数は8,000台/年で、東京地区希望
小売価格は23,416,560円(消費税込)となっている。
■大型トラック「ギガ」の主な改良点
【エクステリア】
・新空力骨格キャブにより、空気抵抗を低減させると同時に、
昇降ステップやグリップ等を効率よく、かつ美しくレイアウトする
など、使い勝手と経済性能を両立。
・機能美を追求したフロントフェイスで、大型フロントグリルおよ
び大型インタークーラーにより冷却性能を向上。
【インテリア】
・運転操作性の向上として、セミラウンドインパネを採用。スイッ
チ類をメーター・インパネ周りに集約し、また使用頻度に合わ
せてゾーン分けして機能的に配置することで、運転時の操作
性や識別性が向上し、より効率的な操作を可能とした。また、
ステアリングスイッチと4インチ液晶モニターのマルチインフォ
メーションディスプレイを採用することにより、安全で負担のな
い操作を可能にした。
・シートのホールド感や調整機能、通気性などを改善し、より
快適な室内空間とした。
【エンジン】
・6UZ1エンジン本体を改良。ターボチャージャーの仕様変更、
インタークーラーとラジエーターの大型化、EGRクーラーの高
効率化、サプライポンプの変更、新インジェクターの採用、
超高圧コモンレールの採用により、低・中回転域のトルクアッ
プを図り、燃費が向上。
・通常の運転操作でエンジンの自動停止と再始動が可能な
「ecostop」をカーゴ系およびダンプ系に標準装備し、アイドリ
ング時の燃料消費削減に貢献。(一部車型を除く)
【トランスミッション】
・進化した自動式変速トランスミッション「Smoother-Gx」によ
り、スムーサーのシフトショックを低減し、より滑らかな発進を
実現。また、エンジンリターダを採用することで補助ブレーキの
制動力も向上。
・6UZ1-TCSエンジン、スムーサーGx12段の車両に「Smart
グライド」を設定。下り坂などで一定走行中、アクセルを軽く
踏んでいる際に自動でクラッチを切り、車両の走行慣性を有
効活用した省燃費運転を実現。
【トータルセーフティの追求】
・プリクラッシュブレーキでは、従来の衝突被害軽減ブレーキ
機能に加え、移動障害物に対する衝突回避支援機能を追
加。障害物を検知する手段をミリ波レーダーによる単独検知か
ら、ミリ波レーダーとカメラを併用する二重検知にすることで、
前方の検知精度が大幅に向上。
・車線逸脱警報(LDWS)の採用により、カメラが走行車線を
大型車…いすゞ自動車
話題のニュートラック新製品情報・新情報
次世代トラックのあるべき姿を見据え
いすゞ大型トラック「ギガ」がフルモデルチェンジ
TheTRUCK2015年12月号 87
コンパクトな海外向け新型50t吊り
ラフテレーンクレーン
ギガ・ダンプトラック
ギガ・ミキサー車
東京モーターショー2015に展示された新型ギガ
といすゞの片山正則社長
㈱タダノは、新興国市場における都市部において需要の
高いコンパクトな50トン吊りクラスの新型ラフテレーンクレーン
を開発し、2015年10月20日に発
売した。
ひとつの運転席で、移動とクレーン
の操作が行える自走式クレーンで、不
整地や比較的軟弱な地盤でも移動で
きるほか、狭隘地での機動性にも優れ
るラフテレーンクレーンは、これまで以
上に多様なマーケットニーズに対応し
ていくため、メンテナンスが容易で、優
れたコストパフォーマンスが要求されて
いる。今回発売された「GR-500EXS」
と「GR-550XLS」は、50トン吊りクラ
スにおけるタダノのプレゼンスを高める
戦略的なモデルとなっている。
新型ラフテレーンクレーン「GR-
認識し、車両が走
行車線から逸脱する
とシステムが判断し
た場合、警報音と4
インチ液晶モニター
の画面表示で警告。
【高積載の確保】
・フルモデルチェンジ
による重量増を最低
限に抑制。
500EXS」は主にアジア、中東、オセアニア地域向け、「GR-
550XLS」は中南米地域向けとなる。なお、年間販売見込
台数は100台、標準仕様での価格は
4,500万円(税別、装備等により異なる)
となっている。
■新型ラフテレーンクレーンの主な特長
◇コンパクトなキャリヤ
現場におけるクレーン設置スペースを最
小限に抑えるため、コンパクトなキャリヤを
採用。全幅は3m以下となり、都市部
の狭い現場への進入に威力を発揮。
◇移動時の安全性向上
ブーム起伏シリンダの形状変更(ショート
Wシリンダの採用)、及びキャブ位置を従
来機より前方に移動させることにより、構
内移動時の運転席からの視認性を向上さ
せ、安全性を高めた。なお、ショートW
【情報通信による遠隔サポート】
・データ通信とインターネットを融合し車両データを遠隔で解析す
る仕組み「MIMAMORI」を標準搭載した。コンプライアンス遵
守、エコドライブ指導等に有益な様々なサービスを提供するだけ
ではなく、従来わからなかった車両コンディションが、インターネッ
トを介して、ユーザーからも容易に確認することが可能となった。
・「MIMAMORI」で事前に入手した車両データを活用した高度
純正整備「PREISM」により、正規ディーラーならではの高品
質な整備で、ユーザーの車両の安定稼働確保を強力にバック
アップ。
ラフテレーン…タダノ
話題のニュートラック新製品情報・新情報
都市部の需要が高いコンパクトな戦略的モデル
海外向け新型50t吊りラフテレーン発売
The TRUCK News
Now
TheTRUCK2015年12月号 88
安全機能の充実した中型トラック「フォワード」フォワード冷凍車
いすゞ自動車㈱は、中型トラック「フォワード」の一部車型を
改良し、2015年11月10日より全国一斉に発売した。
今回発売する「フォワード」は、安全機能の充実化を図り、
「車線逸脱警報(LDWS)」と「IESC(電子式車両姿勢制御
システム)」に加え、新たに「プリクラッシュブレーキ」と「ミリ波
車間ウォーニング」を一部車型でオプション設定している。
追加された「プリクラッシュブレーキ」「ミリ波車間ウォーニ
ング」は、ミリ波レーダーとカメラの併用により、高い精度の
検知機能を備えている。また、プリクラッシュブレーキ搭載
車専用に視認性・操作性の高いメーターおよびステアリン
グホイールを採用することで、安全で負担の少ない操作を
可能にしている。
プリクラッシュブレーキは、
先行車や渋滞末尾等の停止
車両への接近時に、警報と
自動ブレーキにより衝突回避
をサポートし、追突が避けられ
ない場合は、自動ブレーキで
速度を低減し、衝突被害の
シリンダとは、従来の海外向け50トンクラスのラフテレーンク
レーンの長い1本起伏シリンダに対し、短い2本の起伏シリン
ダを採用したもの。
◇狭い現場で威力を発揮するアンダースラングジブ
海外で一般的な横振り出し式のジブに比べ、ジブを前方に
振り出すことにより狭い場所で簡単に装着可能なアンダース
ラングジブを採用。省スペースでのジブ装着・格納が都市部
の狭い現場で有効。
◇メンテナンス性の向上
メンテナンス性・信頼性に優れたエンジン(Euromot2レベ
ル)を採用すると共に、各種メンテナンス性の追求とコストを抑
える工夫を行い、何処でも安心して使える対策を行っている。
◇環境に配慮した装備群
クレーンの作業時や移動時の燃料消費情報を常に表示する
「燃料消費モニタ」や、作業中のクレーンの不要なエンジン回
転数を制御する「エコ・モード」など、常に低燃費対応を実現。
◇
テレマティクスWeb情報サービス「HELLO-NET」を装備
軽減を図るもの。また、ミリ波車間ウォーニングは、走行中
に先行車との車間距離の変化をマルチインフォメーションディ
スプレイに表示し、任意に設定した車間まで先行車の距離
が縮まった場合に警報音を発し、注意を促す安全運転支援
システムである。
目標販売台数はフォワードシリーズ全体で18,000台/年
(国内)。東京地区希望小売価格は、GVW8トン車キャブ
付シャシ(TKG-FRR90S2)、安全装置付(プリクラッシュブ
レーキ、ミリ波車間ウォーニング、車線逸脱警報、IESC)で
8,162,640円(消費税込)となっている。
携帯・衛星通信によるクレーンの稼働状況の掌握と、
GPSによる位置情報確認、さらに保守管理のための情報を
ウェブサイトでサポート。使用されている製品の情報をユーザー
と共有し、一歩進んだサポート・サービスを提供。
■主要諸元
◇クレーン諸元
・型式:GR-500EXS/GR-550XLS
・最大吊上げ荷重:50t×2.5m
・最大地上揚程:ブーム33.5m/ジブ45.9m
・最大作業半径:ブーム30.5m/ジブ40.0m
・ブーム長さ:11.1m〜33.0m
・ジブ長さ:8.0m/12.7m
◇キャリヤ諸元
・エンジン名称:三菱6M60-TL
・エンジン最大出力:200kW/2,600min-1
・エンジン最大トルク:785N-m/1,400min-1
・車両寸法:長12,500㎜×幅2,960㎜×高3,810㎜
中型トラック…いすゞ自動車
話題のニュートラック新製品情報・新情報
プリクラッシュブレーキなどの安全機能を充実
中型トラック「フォワード」を改良し発売
TheTRUCK2015年12月号 89
ローザ4WD(TPG-BG640G/撮影用特別仕様車)フルタイム4WDトランスファ(VCU式LSDセンターデフ)
来の「ローザ」4WDを踏襲し、前後トルク配分を前4:後6
とし、前輪トルクを充分確保している。また、DUONICR2.0
のシフト制御は「ローザ」専用とし、乗客の安全に配慮した、
急発進を抑え滑らかに発進する制御を採り入れている。
グレード展開は、「ベーシック」、「スタンダード」、「アドバンス」
及び「プレミアム」と、2WDと同様の設定となっている。
◇フルタイム4WDトランスファ(VCU式LSDセンターデフ)
滑りやすい路面等で前輪/後輪に回転差が生じると、ビス
カスカップリングがトルク配分を最適に制御し、高度な走行安
定性を実現。低速旋回時のタイトコーナーブレーキング現象
も解消できる。
◇4WD標準装備
・リヤウィンドデフォッガ&リヤワイパー、・プレヒータ10kW、・
フューエルフィルターヒータ、・不凍液マイナス35℃対応、・
4WDエンブレム。
■車両スペックと価格
・車型:TPG-BG640G、・エンジン:4P10(T4)110kW/
150ps、・トランスミッション:DUONIC2.0、・最大定員:
29人乗り、・主な仕様:4WDロングボディベーシック・グレー
ド、・東京地区販売価格:8,326,800円(消費税含む)。
機構を搭載したダブルタンデムローラを走行装置に採用し、走
行時全幅を600㎜に抑えながら抜群の安定走行を実現するミ
ニ・クローラクレーンである。
石材業、造園業、設備据付業をメインターゲットに、クラス
三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、国内唯一の四
輪駆動車となる小型バス「ローザ」4WDを4年ぶりに復活さ
せ、全国の三菱ふそう販売会社及び三菱ふそう地域販売部
門から発売する。
小型バス「ローザ」4WDは、「ローザ」2WDをベースに、
前輪駆動装置を追加し、雪道や凍結路などの低μ路(滑りや
すい路面)での発進性能や直進安定性にすぐれた四輪駆動
車として新たに開発したもの。
高効率エンジン「4P10」とデュアルクラッチ式AMT「DUO
NICR2.0」の組合せによる省燃費を実現するとともに、平
成27年度重量車燃費基準+5%を達成し、従来の「ロー
ザ」4WDに対し、燃費を大幅に改善している。さらに、
BlueTecRテクノロジー(高効率エンジン+再生制御式DPF
+尿素SCR)を搭載し、平成22年度排出ガス規制(NOX
及びPM10%以上軽減)に適合し、環境にも配慮されている。
MFTBCの橋口博光バス事業本部長は、「この度、ローザ
4WDの復活を切望されていたお客様に、4年ぶりに4WD
の再ラインアップをお知らせすることができ、大変嬉しく思いま
す。新型ローザ4WDは従来車と同様に、雪道や凍結路な
どの走行において、そのポテンシャルの高さを評価いただける
と確信いたします。これからも、三菱
ふそうはお客様の声に耳を傾け、お
客様が求める車両を提供してまいりま
す」と語った。
■「ローザ」4WDの特長
四輪駆動専用のパワートレインは従
古河ユニック㈱は、ミニ・クローラクレーンの新ラインナップ
として1.73トン吊りミニ・クローラクレーン「UR-U174C」を新
たに追加し、2015年10月8日より販売を開始した。
新製品は、1.7トン吊りクラス初となる片側2個のタンデム
小型バス…三菱ふそう
クローラクレーン…古河ユニック
話題のニュートラック新製品情報・新情報
話題のニュートラック新製品情報・新情報
ユーザーの要望で4年ぶりに再ラインアップ
国内小型バス唯一の四輪駆動車「ローザ」4WDを新発売
抜群の安定走行を実現する
1.73トン吊りミニ・クローラクレーンを新発売
The TRUCK News
Now
TheTRUCK2015年12月号 90
1.73トン吊りミニ・クローラクレーン安定走行を実現(走行姿勢)
最小の接地圧での走行が可能で、クローラの路面追従性およ
び悪路走破性を向上させるとともに、作業者や周囲への騒音・
振動を大幅に軽減している。アウトリガのロックピンには片手で
抜き差し可能なボールロックタイプを採用し、アウトリガの設置
作業効率が格段に向上。ピン穴部には樹脂プレートを取り付
け、ピン穴部のキズ・塗装の剥離対策を施している。
また、「ジョイスティック式」と「選択スイッチ式」の2種類の操
作方法から選べる連動ラジコンなどを標準装備し、イメージ通り
のスムーズな連動操作を可能とし、ブーム伸縮装置の内蔵化
やフック格納機構など、ユニック独自の安心設計となっている。
従来のラインナップ(995㎏吊り、2.43トン吊り、2.93トン
吊り)に、新たに1.73トン吊りを加えることで、より幅広いユー
ザーニーズに応えられることになった。これにより、メインターゲッ
トのほかに建設業、レンタル業への拡販も図る計画である。
なお、年間販売目標は80台(2機種合計)で、価格(税
別)はUR-U174CRJ(4段ブーム:ジョイスティック式ラジコン)
とUR-U174CRS(4段ブーム:選択スイッチ式ラジコン)共に
510万円となっている。
■UR-U174Cの主な特長
◇クラス初となるダブルタンデムローラを搭載
片側2個のタンデムローラをクローラに搭載。地面の凹凸に
合わせて全てのトラックローラが稼働するため、路面追従性に
優れ、より安定した走行が可能。また、悪路走行時の騒音・
衝撃を大幅に軽減。
◇クラス最小の接地圧を実現
汎用性のある幅広(180㎜幅)クローラの採用と軽量設計
(クレーン本体質量1,200㎏)により、クラス最小の接地圧
(0.32kgf/㎠)を実現。現場にもクローラにも優しい走行が
可能。
◇クラス最速走行が可能
油圧2速走行切換機構
を搭載し、普段は高速モー
ド(0〜4.1㎞/h)でラク
ラク走行、不整地や曲が
り角では安全の低速モード
(0〜2.1㎞/h)と、状
況に応じて切り換えることが
でき、高速時はクラス最速
走行が可能。
◇アウトリガ設置作業の
効率アップ
アウトリガのロックピンに
は片手で抜き差し可能な
ボールロックピンタイプを採用し、アウトリガ設置作業効率が格
段に向上。ピン穴部には樹脂プレートを取り付け、ピン抜き差
し時のキズ・塗装の剥離を防止。
◇多彩なアウトリガの設置が可能
アウトリガの旋回用ピン穴位置をクラス最多とするとともに、
アウトリガフロートの可動域を拡大してアウトリガの水平設置を
可能にした。従来機よりもアウトリガ設置の自由度が高くなり、
狭い場所や段差路など、現場での対応力が向上。
◇アウトリガ引出用グリップを追加
アウトリガ引出用に追加したゴム製グリップが引出作業をサ
ポートするとともに、走行時のフロートストッパーの機能も兼ね、
ガタつき音を軽減。
◇標準装備の連動ラジコンは「ジョイスティック式」と「選
択スイッチ式」から選択可能
ラジコン操作によるエンジンの始動・停止、4本同時のアウ
トリガ張出・格納が可能。また、業界唯一のジョイスティック
式ラジコンは、思い通りのスムーズな連動操作により、ミニ・ク
ローラクレーンの連動操作性をフルに発揮する。
◇ブーム伸縮用装置の内蔵化
ブーム伸縮用のワイヤロープを全てブームに内蔵しており、
狭い場所や樹木のある場所での作業でもワイヤロープを引っ掛
ける心配がなく、安心して作業ができる。
◇フック格納機構を搭載
フックに触れることなくボタン1つで簡単にフックを格納できる
ため、指などを挟む危険性がなく安心。また、フックが固定さ
れるため、フック掛けに掛ける煩わしい作業もなくなる。
■主要諸元
・型式:UR-U174CP2[RS/RJ]
・ブーム段数:4段
・最大クレーン容量:1.73t吊り×1.0m(アウトリガ最大張出時)
・最大地上揚程:約5.7m
・最大地下揚程:約6.9m
・最大作業半径:5.17m
・本体質量:1200kg
TheTRUCK2015年12月号 91
GENEO-Ecoreは高さ制限のある場所でも稼働できる
新システムの搭載で長時間稼動を実現したGENEO-Ecore
1.5t積コンパクト電動フォークリフト
「GENEO-Ecore(ジェネオエコア)」
㈱豊田自動織機・トヨタL&Fカンパニーは、1.0〜2.0ト
ン積のコンパクト電動フォークリフト「GENEO-Ecore(ジェネ
オエコア)」をモデルチェンジし、2015年10月22日より、
全国40社のトヨタL&F取扱店を通じて発売した。
コンパクト電動フォークリフトは小回り性に優れ、狭い通路
幅でも操作性が高く、保管スペースの効率化が可能。主に
運輸・倉庫業、および食品業を中心に幅広いユーザーの物
流現場で利用されている。
今回のモデルチェンジでは、電動フォークリフトに普遍的に
求められる連続稼動時間の向上、作業者の安全確保や操
作性向上などのユーザーニーズに応えるため、より高いレベル
の性能・機能を追求している。
連続稼動時間(作業サイクルパターン:トヨタ30m作業サ
イクルによる測定数値)においては、新開発の高効率ACモー
ター、モータードライバ、および油圧コントロールシステム搭
載により、消費電力を大幅に低減することで従来車に比べ約
20%向上させ、クラストップの長時間稼動を実現している。
さらに、バッテリー保護機能(消費電力計付)を標準搭載し、
バッテリーにダメージを与える使い方を未然に防ぐことで、バッ
テリーの長寿命化に貢献している。
また、安全面においては、作業中の安全と作業効率の向
上に貢献する同社独自のシステム「SAS(ハンドル角、揚高
など様々な情報を検知し、制御することで旋回時や荷役時な
どに優れた安定性を発揮するシステム)」に加えて、積荷の高
さ、重さ、旋回半径によって旋回速度を自動で制御する機
能を国内のカウンタータイプフォークリフトで初めて標準搭載し
た。これらにより、初めてコンパクトフォークリフトを利用するユー
ザーでも安心して使用することができる。
使いやすさの面では、少子・
高齢化の進展、女性オペレー
ター増加への配慮から、低いス
テップ、小径ハンドル、見やす
いディスプレイの採用など、す
べてのオペレーターに優しい作
業環境が実現できる。その他、
従来車から防水性能を高め、
IPX4(防水性能に関する国際
規格の防沫型:あらゆる方向からの飛沫に対して保護されて
いる)相当の耐水性を実現し、屋外作業にも利用可能だ。
なお、主な機種のメーカー希望小売価格は、積載1.5トンの
8FBE15型(標準仕様)で2,969千円(税抜き)となっている。
■新型GENEO-Ecoreの主な特長
◇長時間稼動
⑴新開発の高効率ACモーターとモータードライバ、油圧コン
トロールシステム搭載により、消費電力を大幅に低減し、
クラストップの長時間稼動を実現。1充電あたりの稼動時
間延長により、電気代削減も可能。
⑵バッテリー保護機能(消費電力計付)を標準搭載し、バッテ
リーの長寿命化に貢献…①バッテリーの液面、液温を検
知し、基準値を超えた場合に警告灯とブザー音で警告し、
車両性能を制限することでバッテリーへのダメージを軽減。
②消費電力計を搭載し、月ごとの充電電力3ヶ月間、日
ごとの充電電力を30日分記録し、ディスプレイに表示。
CO
2
排出量も表示することができ、エネルギー管理に貢献。
◇走行制御(旋回制御付)
⑴積荷の高さ、重さによって車速(加速度・減速度・最高速)
を自動で制御する機能を標準搭載。
⑵積荷の高さ、重さ、旋回半径によって旋回速度を自動で
制御する機能を標準搭載。(国内カウンタータイプフォークリ
フト初)
電動フォークリフト…トヨタL&F
話題のニュートラック新製品情報・新情報
クラストップの長時間稼動を実現した
1.0〜2.0トン積コンパクト電動フォークリフトを発売
The TRUCK News
Now
TheTRUCK2015年12月号 92
南アに投入したFUSO中型トラック「FA」
2017年度内に発売を予定しているTOYOTAの次世代タクシー
新たな「日本のタクシー」を目指す次世代タクシー
三菱ふそうトラック・バス㈱(MFTBC)は、ダイムラー・トラッ
ク・アジア(DTA)として協業するDaimlerIndiaCommercial
VehiclesPvt.Ltd(DICV社)のオラガダム工場で生産した
FUSOブランドのトラックを南アフリカ共和国にて発売を開始した。
MFTBCは2002年以来、大・中・小型トラックを南アに
投入しており、2002年からはダイムラーAGの100%子会
社であるMercedes-BenzSouthAfricaLimited(MBSA)が
販売を担当している。
MFTBCのミヒャエル・カンパー取締役副社長兼セールス・
カスタマーサービス本部長は、「南アは商用車の総需要がア
フリカにおいて近年最も高く、当社の戦略的市場のひとつで
す。ふそうブランドの車両は、既にケニヤ、タンザニア、ザン
ビアなどのアフリカ諸国に2013年より導入しており、その高
南アフリカ…三菱ふそう
話題のニュートラック新製品情報・新情報
マーケットシェアの拡大を目指し
戦略市場の南アフリカに中型トラックFAを新投入
TOYOTAは、2017年度内に発売を予定している次世代
タクシーの概要を公表した。
次世代タクシーは、日本の街の風景を変えることを念頭に、
“おもてなしの心”を反映した内外装デザインを採用。日本で
使用するユーザーに向けた安心・快適性能を持たせることで、
環境負荷低減、超高齢化などの社会変化に対応した、新た
な「日本のタクシー」確立を目指すとしている。
具体的には、2013年東京モーターショーに出展したJPN
TAXIConceptと同様の、一目でタクシーとわかる独創的で
親しみのあるデザインを採用。低床化・大開口スライドドアに
よる優れた乗降性と、車椅子乗車を考慮した広い室内空間、
さらに街中での取り回しの良さも兼ね備えた、乗客からドライ
バーまで「みんなにやさしい」タクシー車両(国土交通省「標準
仕様ユニバーサルデザインタクシー認定要領」への適合を目指
し開発中)となる。
またパワートレーンには、タクシーの走行パターンに適した
環境性能と高い経済性を持つLPG(液化石油ガス)ハイブリッ
ドシステムを新開発し搭載。さらにタクシーとしての使用環境
を考慮し、長距離の使用に耐える高い耐久性能を目指し、
現在開発に取り組んでいる。
また、販売については、全国のトヨタ店、トヨペット店を通
じて販売する予定となっている。また、2015年10月28日
の第44回東京モーターショー2015プレスデーでは、同車
が映像で紹介された。
タクシー…TOYOTA
話題のニュートラック新製品情報・新情報
新たな「日本のタクシー」確立を目指す
次世代タクシーの概要をTOYOTAが公表
TheTRUCK2015年12月号 93
「ベトナムモーターショー2015」に出展された大型トラック「FJ」
い耐久性と燃費性能において評価を得ています。よりお客様
に満足頂ける車両を展開することで、南アでの更なるシェア拡
大を目指します」と述べている。
ふそうブランドのトラックは、車両総重量9〜16トンの中型
トラック「FA」、「FI」および車両総重量または連結車両総重量
25〜49tの大型トラック「FJ」、「FO」、「FZ」の5機種で構成
されており、顧客により幅広い選択肢を提供している。同車
は、インド南部のチェンナイの近郊に位置するDICV社オラガ
ダム工場で生産されている。
なお、MBSAは南アフリカ、ハウテン州のスヴァルトコップ
スに本拠地を置き、メルセデス・ベンツの乗用車、トラック、
バン、バスとスマート、またフレイトライナー、MFTBCとウェス
タンスターのトラックの販売を行うDaimlerAG100%子会社
である。MFTBCは車両総重量5〜26トンの小型・中型・
大型トラックをMBSAのEastLondon工場でKD生産を行っ
ており、30の拠点を通じて南アフリカ全土に販売している。
三菱ふそうトラック・バス㈱は、ダイムラー・トラック・アジ
アとして協業するダイムラー・インディア・コマーシャル・ビー
クルズ社(DICV社)のオラガダム工場で生産した大型トラック
を2015年内にベトナムで販売する。
FUSOは大型トラック「FJ」と「FZ」を、ベトナム・ホーチミ
ン市で2015年10月末に開催された同国最大のオートサロ
ン「ベトナムモーターショー2015」で披露し、同モデルに加え
てFUSOの主力商品である小型トラック「キャンター」や、小
型バス「ローザ」も展示した。
今回新たに披露した車両は
DICV社のオラガダム工場で生産
され、2013年に世界各国に向け
販売を開始している。その耐久性と
燃費性能は各国で高評価を得てお
り、2014年にFUSOの最大市
場であるインドネシアに投入し、その
後、アフリカや他のアジア諸国へと
導入を拡大。現在、世界展開を進
めている。
FUSOはアジア諸国でも特に成長著しいベトナムを戦略市
場と位置付け、同国での事業を強化すべく、2014年よりメ
ルセデス・ベンツ・ベトナム(MBV)を通じて小・中・大型トラッ
クの現地組み立てと販売を行っている。また、同国で小型の
みだった販売ラインアップを2014年より中・大型まで拡大。
以来、販売台数は前年同期比(1〜10月)で約24%増加
している。今回、新興国のニーズに合わせた新モデルの導
入により、幅広い選択肢を顧客に提供でき、同国でのさらな
るシェア拡大を目指すことになる。
ベトナムは他のアジア諸国同
様、日本車に高い信頼を置いてい
る市場である。同市場でのFUSO
ブランドの認知度を向上すべく
MBVは今年、ベトナム各地でロー
ドショーを実施している。また、
FUSOが誇るカスタマーサービスを
強化するためサービス拠点を、今年
始めの11カ所から年末までに19
カ所に拡大する計画だ。
ベトナム…三菱ふそう
ドラレコ…KYB
話題のニュートラック新製品情報・新情報
話題のニュートラック新製品情報・新情報
成長著しいベトナムを戦略市場と位置付け
新大型トラック「FJ」「FZ」投入でシェア拡大を目指す
ドライブレコーダーの拡張機能として
事故防止に繋げるワーニングマップ機能と通信機能を開発
声ガイダンスで注意を促す「ワーニングマップ機能」と、Wi-Fi
により画像を送信する「通信機能」を開発した。本機能はトラッ
KYBグループは、現在販売しているドライブレコーダーの拡
張機能として、事故多発地点や危険登録地点に近づくと音
The TRUCK News
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TheTRUCK2015年12月号 94
KYBのドライブレコーダー
コンパクトカーの「日産リーフ」
率:KYB㈱100%/◇主な事業内容:車載システム、鉄道・
産業機械用コントローラ、データ通信・ネットワーク通信機器
等の開発・製造・販売/◇従業員数:約125名。
用され、400,000㎞以上の距離を、排出ガスを一切出さずに
走行する予定だ。会議には、世界195ヶ国から2万人以上
の国連関係者が出席する予定となっている。
ルノー・日産アライアンスの会長兼CEOのカルロスゴーン
氏は、「EVは、CO
2
の排出を大幅に削減することができる、
実用的かつ経済的な移動手段です。またEVは、排出ガスを
大幅に削減するだけでなく、規制対象の排出ガス汚染物質も
低減することで、都会の大気質改善を促します。こ
れにより、民間セクターはゼロ・エミッション社会へ
の転換を加速することができます」と述べた。
COP21に提供されるEVは、ルノーのサブコン
パクトカー「ゾエ」、コンパクトカーの「日産リーフ」、
日産の7人乗り商用バン「e-NV200」の3車種を
予定しており、これらの車両は24時間体制で、ル・
ブルジェにある会場間送迎に使用される。国連が本
会議で、送迎用車両にゼロ・エミッション車もしくは
100%EVを使用するのは初めてのことになる。
ク、バス等の商業車向けに、事故が起きてからの記録だけで
なく事故の未然防止に繋げるためのものとなっている。なお、
開発・生産はKYBトロンデュール㈱が担当している。
■技術的特長
◇ワーニングマップ機能
・設定した危険地点に接近すると音声ガイダンスで運転者へ
注意を促す。・危険地点は任意で半径を設定可能。・危険地
点は運転者が走行中に「注意した方が良い」と判
断した地点で専用ボタンを押すことで登録可能。・
危険地点はパソコンの専用ソフト上で予め登録可
能。・各車両で登録した危険地点をユーザー所有
の全車両で共有可能。
◇通信機能
・事務所に車両が戻らなくてもWi-Fi通信により、
運行管理者がリアルタイムに必要なデータをモニ
ター可能。
■KYBトロンンンデュール㈱概要
◇代表者:金子衛司/◇所在地:(本社)新潟県長岡市浦
3909番地/◇設立年月日:2004年6月1日/◇出資比
ルノー・日産アライアンスは、世界最大となる台数のEV
を国際会議に提供すると発表した。パリで開催される第21
回気候変動枠組条約締約国会議(COP21)のオフィシャル
乗用車プロバイダーとして、2015年11月30日から12
月11日まで開催される同会議に200台の100%EVを提
供する。
提供されるEVは、COP21の会期中に送迎サービスに使
EV提供…ルノー・日産アライアンス
話題のニュートラック新製品情報・新情報
世界最大となるEV200台をCOP21国際会議に提供
ルノーおよび日産の従業員200名が運転を担当
TheTRUCK2015年12月号 95
日産リーフの室内
GenevaMotorShow2013に出展されたルノー「ゾエ」ルノーのサブコンパクトカー「ゾエ」の充電システム
日産の7人乗り商用バン「e-NV200」
■200名のルノー・日産従業員が
COP21提供車両のドライバーに
COP21に提供される100%EVは、200名のプ
ロドライバーチームと、ルノーおよび日産から集まった
200名の有志が運転する。ルノー・日産アライアン
スはすでにパリ在住もしくはパリ近郊に住む従業員を
対象に、COP21に参加できる機会としてボランティ
アドライバーの募集を開始し、募集終了までに志願
者は450名以上に上っている。選ばれた200名の
ルノーおよび日産の従業員は、プロドライバーとともに
同会議に向けて厳しいトレーニングプログラムを受ける
予定となっている。
ゴーン氏は、「ルノーと日産の従業員は、EV革命
の最前線にいます。彼らの多くは既にEVを所有して
おり、ゼロ・エミッションモビリティとは何か、また、そ
のメリットを実証できるベストアンバサダーなのです」と
語った。
ルノー・日産アライアンスは、戦略的拠点において
90基以上の急速・普通充電ステーションネットワークを
整備する予定で、充電ステーションは、フランスの電力
会社EDFから供給される低炭素エネルギーを動力源と
し、そのわずかに発生する残りの炭素排出分も国連の
カーボンオフセットプログラムに従い、相殺されることに
なる。急速充電器の場合、EVを0%から80%まで、
約30分で充電できる。シャルル・ド・ゴール空港にあ
る2ヵ所の急速充電ステーションに加え、オルリーとル・
ブルジェの各1ヵ所を含む3分の1以上の急速充電
器は、本会議後も活用される予定となっている。
なお、アライアンスは、2010年後半に同グループ
初のEV「日産リーフ」を発売して以来、全世界で累
計267,000台以上のEVを販売しており、グローバ
ルに販売されているすべてのEVの半数を占めている。
竣工式でのテープカット。(左から)日本トレクス西川柳一郎取締役社長、
THAIRUNGUNIONCARPUBLICのKaewjaiPhaoenchoke取締役、PraneePhaoenchoke取締役会長、
SompongPhaoenchoke取締役社長、タイ投資委員会(BOI)HirunyaSuchinai長官代行、
TREXTHAIRUNG松原宏取締役社長、極東開発工業筆谷高明取締役会長、
MITSIAMINTERNATIONALの西崎真隆機械部部長、佐藤真吾氏取締役社長
TheTRUCK2015年12月号 90
極東開発工業㈱とその子会社の日本トレクス㈱が、
タイ国で建設を進めていた工場がこのたび竣工した。
2015年10月21日に行われた竣工式には、タ
イ国に進出している海外の自動車・建機メーカーのサ
プライヤーで、カーディーラー経営や自社ブランドの
自動車販売なども行う合弁パートナーであるタイルーン
(THAIRUNGUNIONCARPUBLICCO.,LTD.)
取締役会長のPraneePhaoenchoke(プラニー・
ファォエンチョーク)氏と、取締役社長のSompong
Phaoenchoke(ソンポン・ファォエンチョーク)氏、
泰国三井物産㈱の現地子会社であるミットサイアム
(MITSIAMINTERNATIONAL,LIMITED)取締役社
長の佐藤真吾氏をはじめ、行政関係者幹部や、日系
輸送会社現地法人などの顧客、日系トラックメーカー
現地法人各社社長と幹部など、約350人が参加し盛
大に執り行われた。
席上、タイ投資委員会(BOI)長官代行のHirunya
Suchinai(ヒランヤ・スチナイ)氏は、「新工場の竣工
はタイ王国における自動車産業と物流産業の将来性を
大きく発展させ、長期間にわたりタイの競争力を次の
レベルに成長させるための良い機会になる」とコメント
した。
極東開発と日本トレクスの
タイ工場が竣工
ウイングバン、10ドアバン、ダンプトラックを生産
海外工場
文・写真:
於久田幸雄
(本誌編集長)
竣工したトレクス・タイルーンの工場全景とロゴマーク
竣工式ではトレクス・タイルーンで生産・販売を行う製品の展示・披露も行われた
TheTRUCK2015年12月号 91
竣工したタイ工場の「トレクス・タイルーン」は、日
本トレクスとしては初で、極東開発グループとしては
中国・昆山工場、インド工場、インドネシア工場に次
ぐ4番目となる海外生産拠点となる。同社は、タイルー
ンとミットサイアムとの合弁会社として、日系企業の
進出が進むタイ国で、今後日本式物流形態の導入推
進やタイ王国政府主導による大規模なインフラ整備計
画等で大きな需要が見込まれるカーゴ系車両と建設関
連の特装車両をターゲットとしている。その第一段階
としてウイングバン、現地
仕様となる10ドアバンおよ
びダンプトラックの生産と販
売を行う計画となっている。
すでに数多くの引き合いもあ
り、タイ国の物流に貢献す
べく拡販に努めて行くとして
いる。
■タイ工場の概要
◇商号:TREXTHAIRUNG
CO.,LTD.
◇所在地:【本社】No.10/
95-97Sukhumvit
13AlleyKlongtoey-
NuaSub-district,Va
dhanaDistrict,BangkokMetropolis10110,
Thailand/【工場】AmataCityInd
ustrialEstate,7/462Moo6,T.Mapyangporn,
A.Pluakdaeng,Rayong21140,Thailand(Amata
City工業団地内:ラヨーン県プルワックデーン郡)。
なお、アマタシティー工業団地はバンコクの東南
120㎞に位置している。
◇事業内容:ウイングバン、10ドアバンおよびダンプ
トラックの製造・販売
主な生産車種。(上から)ウイングバン、10ドアバン、ダンプトラックとフルトレー
ラダンプ
TheTRUCK2015年12月号 92
◇資本金:550百万バーツ
◇設立日:平成26年(2014年)5月15日
◇株主構成:極東開発工業㈱(15%)、日本トレクス㈱
(30%)、THAIRUNGUNIONCARPUBLICCO.,L
TD.(40%)、MITSIAMINTERNATIONAL,LIMITED
(15%)
◇役員:取締役会長…筆谷高明(極東開
発工業㈱取締役会長)、取締役副会長…
SompongPhaoenchoke(THAIRUNG
UNIONCARPUBLICCO.,LTD.取締役
社長)、取締役社長…松原宏【常勤】(日本
トレクス㈱執行役員)、取締役…西川柳一
郎(日本トレクス㈱取締役社長)、取締役…
PraneePhaoenchoke(THAIRUNG
UNIONCARPUBLICCO.,LTD.取締役
会長)、取締役…KaewjaiPhaoenchoke
(THAIRUNGUNIONCARPUBLIC
CO.,LTD.取締役)、取締役…西崎真隆
(MITSIAMINTERNATIONAL,LIMITED
機械部部長)
◇工場面積:(土地)約85,000㎡/(建物)
約15,000㎡
◇業績計画:(平成28年12月期)売上高
329百万バーツ(約1,102百万円)※
1バーツ=3.35円で換算
◇人員:80名
■合弁の相手方の概要
①タイルーン
◇商号:THAIRUNGUNIONCARPUBL
ICCO.,LTD.
◇所在地:
タイ王国バンコク都ノンカエム地区
◇代表者:SompongPhaoenchoke
◇事業内容:プレス製品、金型・治具の製
造・販売およびカーディーラー経営、不
動産業等
◇グループ人員:約2,000名
◇グループ売上高:(平成26年12月期)
2,255百万バーツ(約7,554百万円)
※1バーツ=3.35円で換算
②ミットサイアム
◇商号:MITSIAMINTERNATIONAL,LIM
ITED
◇所在地:タイ王国バンコク都サトーン地区
◇代表者:佐藤真吾
◇事業内容:泰国三井物産㈱子会社である
タイ国籍商社
海外工場
TheTRUCK2015年12月号 93
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