【対談】大髙一夫 東京都トラック協会 会長
TheTRUCK2015年4月号 18
関東地方の南西部に位置する神奈川県は、人口約9百10万人。県内33
の市町村で構成されるが、そのうち政令指定都市は横浜市・川崎市・相模
原市の3市、中核市は横須賀市の1市、特例市は小田原市・大和市・平
塚市・厚木市・茅ヶ崎市の5市である。県域はかつての相模国全域と武蔵
国久良岐郡・橘樹郡・都筑郡(現在の川崎市および横浜市の一部)からなる。
西は丹沢山地で山梨県、箱根山地で静岡県と接する。東は東京湾に面し、
東京湾アクアラインを介して千葉県と連絡する。また、南は相模湾に面し、
三浦半島が太平洋に突出する。北東部の川崎市では多摩川下流が東京都と
の境界となっている。
一般社団法人神奈川県トラック協会(以下、神ト協)は、JR新横浜駅の北
側、徒歩約10分の位置にあり、環境・安全をはじめとして様々な事業に
取り組んでいる。また、昨今、特に若年ドライバー不足が深刻になってい
ることから、県内の工業高校を中心に“出前授業”を展開し、トラック輸送
の重要性や公共輸送機関としての理解を得るとともに、業界の取組みを一
般社会等へ分かりやすくPRする目的で“トラックフェスタ”も開催している。
筒井康之会長が経営する新栄運輸株式会社は、日本の総合物流企業として
知られる株式会社日新のグループ企業のひとつで、約60年の歴史をもつ運
送会社である。
トラック協会長インタビュー《神奈川県》
筒井康之
(新栄運輸株式会社社長)
震災後二年間を費やして
新たな防災対策を構築
出前授業やイベント開催などで
業界の役割を積極的にPR
TheTRUCK2015年4月号 19
一般社団法人神奈川県トラック協会の筒井康之会長
□秋林路 トラック運送業界は運賃問題、ドライバー
不足など課題山積ですが、先般はクイーンズスクエ
ア横浜で、春のトラックフェスタ2015を開催されるな
ど、活発に活動しておられますね。
■筒 井 当協会は、平成24年度の総会で一般
社団法人への移行に併せて支部を廃止してブロック
制とする組織改革を決議しました。その後、1年掛
けて準備を進め、平成25年度から新しい組織で運
営を行っています。同一会費、同一サービスのもと
に協会運営を一本化し約3年間が経過しましたが、
この間、新組織の定着を図りつつ、会員事業者の
経営に役立つサービスの充実と一般社団法人として
の公益目的事業の確実な実施に邁進してきました。
課題はありますが、これまでの取り組みを通じて格段
にトラック運送業界の認知度は高まってきていると感じ
ていまして、社会的地位の向上にも貢献していると
思っています。更なる業界のイメージアップのために
は、今後とも一般社会に向けたPRが大事だと考え
TheTRUCK2015年4月号 20
エコドライブ講習会など環境問題にも熱心に取り組んでいる
ています。
ところで、私は、御社が開催される東京トラックショー
を見に二度行きました。発行しておられる雑誌はトラッ
ク専門誌だと思っていましたが、政治家や我々運送
事業者も取り上げておられるのですね。
□秋林路 はい、本誌は40余年の歴史があるので
すが、二年前から編集方針を大転換しております。
最近は、トラックメーカーや車体・トレーラーメーカー、
部品・材料メーカー、それにトラック整備、中古車販
売の分野に至るまでトラック産業界は非常に不安定な
経営を強いられています。その原因を突き詰めて見
ますと、ユーザーである運送業界が流通構造的に
極めて弱い立場におかれ、自己努力だけでは回復
不可能な状況に陥っているからだと思われます。ユー
ザーが良くならなければメーカーも良くなりません。
本誌は、トラック産業界の健全な発展を望む立場
であることに変わりはないのですが、その為にはユー
ザーであるトラック運送業界が健全な状態に戻ること
が先決と考えています。政治家の皆さんにも誌面に
登場頂いているのも、主たる目的はそこにあります。
■筒 井 お陰様で、我々運送業界に目を向けて頂
く政治家も多くなりました。
□秋林路 そうですね。国土交通省のドライバー確
保対策や適正運賃の収受を目的とする契約の書面
化などの施策には、多少は政治力が功を奏している
のではないかと思っています。本日は神ト協の活動を
主に伺って参りたいのですが、神奈川県の立地、産
業と物流などの特徴を簡単にご説明下さい。
■筒 井 そうですね、まず神奈川といえば横浜で
すが、2009年6月に開港150周年を迎えたところで
す。歴史的にも神戸と並び海の玄関として栄えて参
りましたので、海上コンテナなどの国際物流の拠点と
しての色彩を色濃く残しております。また、近年西の
厚木周辺には、物流の大動脈東名高速を背景に物
流施設が沢山出来ています。産業としては、日産自
動車、三菱ふそう、いすゞ自動車といった自動車メー
カーとその関連工場も沢山あるし、京浜地区には石
油などのコンビナートもありますので、これら産業を中
心とした物流が盛んな地域ということになります。
□秋林路 そうですね、最近厚木周辺は大きく変貌
しました。昭和39年の東京オリンピックの際には首
都高速道路が完成しましたが、当時の東京の環状
道路は環状6号線が主役でその外に7号線が計画
されていました。現在は首都圏の外側、千葉、茨城、
埼玉、神奈川を結ぶ圏央道(首都圏中央連絡自動
車道)が建設中で、昨年6月には相模原愛川インター
チェンジと高尾山インターチェンジ間が開通し、東名
高速の海老名と中央高速の八王子が直結しました。
これで、トラックは都内に入らなくても東西に通過でき
ますから物流は大きく変わります。
TheTRUCK2015年4月号 21
スタントマンを使用した迫力のあるスケアードストレイイト交通安全活動
■筒 井 そういう意味では、こうした道路網を活用
するトラック輸送も大きく変化していくことにもなります。
□秋林路 世界の主要都市の多くは、大型車の都
心への乗り入れを禁止していますので、東京も例外
ではなくなると思います。その意味では、神奈川は
西の玄関として重要な役割を担うことになります。
■筒 井 ただ、県内で見ますと、横浜港から東
名に通じる幹線は保土ケ谷バイパス一本しかないの
で、慢性的に大渋滞になっています。既にこの渋滞
解消のための高速道の建設は始まっているのです
が、一日も早い開通を願っているところです。
□秋林路 やはり道路が良くならないと、災害発生
時にも支障を来してしまいます。
■筒 井 4年前に東日本大震災が発生した時に
は、神ト協あげて緊急物資輸送を展開しましたが、
その経験を踏まえ翌年から東海大学教の原田一郎
特任教授を座長に招いて、当協会独自で災害発生
時の緊急物資輸送のあり方を2年かけて検討し、そ
の結果をまとめた報告書が平成25年度末に出来あ
がりました。これまでも災害発生時には緊急物資輸
送を行って来たのですが、今度は当地で災害が発生
した場合も想定しています。もし、海に面している横
浜市が巨大津波に襲われると甚大な被害が予想され
ますが、緊急物資を受け入れる場合も、道路がなく
てはどうにもなりません。そういう意味でも、横浜から
東名高速に通じる道路は一日も早く完成して欲しいと
願っているところです。
□秋林路 確かに横浜が国際物流で大きな役割を
果たして来たことは確かです。しかし、将来的には
横浜は商業で栄え、物流拠点は厚木など内陸に移
るのではないかと思います。その場合も、内陸を結
ぶアクセスは非常に大事になります。
■筒 井 この報告の中でも多くの問題が指摘され
ていますが、当協会としては翌年度から早速全事業
者アンケートによる協力事業者の確認、更には、協
力事業者へのアンケートなどからこれをデータベース
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高校に出向いてトラック輸送の社会性などアピールする物流出前授業
化して、県を含む各市町村との協定の確実な履行に
向けた体制作りを出来るところから始めているところ
です。
□秋林路 東日本大震災での活躍というか貢献度
が社会的にも認知されたので、国も震災発生時の緊
急物資輸送では、トラック運送業界に大きな期待を寄
せているようです。
ところで、トラック運送業界の最大課題はドライバー
不足です。国土交通省は、2015年度には14万人
のドライバー不足が発生すると既に三年前に予測し
ています。人材確保は、経営に直結しますので、国
としては、この問題も個々の事業者で対応することを
期待していたのかも知れませんが、トラックが止まれ
ば物流がマヒするのは明らかです。その点、神ト協
さんの取組みはいかがですか。
■筒 井 確かにドライバー不足は少子化も大きく
影響していますが、時代の趨勢として、18歳になっ
ても運転免許を取得する人の割合が昔より少なくなっ
ているんです。我々世代は18歳になれば運転でき
るので、何はさておき運転免許を取得したものです
が、若年層の車に対する価値観が大きく変わってき
たこともドライバー不足に拍車をかけています。
□秋林路 恐らくインターネット時代の到来で、車以
外にも若者がやりたい事が沢山出て来たためではな
いかと思います。
■筒 井 それに輪をかけて中型運転免許問題が
あったのですが、神ト協としては出来ることからやろう
という事で、昨年から指定教習所協会と意見交換を
続けてきた中から、PR用のDVDが作成され、「運
転免許を取得して是非、この業界に来て欲しい。」と
キャンペーンを展開しています。トラック運送業界は、
一般には3Kのイメージがあるので、ライフラインを支
TheTRUCK2015年4月号 23
える大事な仕事だ、とアピールしているのです。それ
と合わせて『Gマーク』の取り組みもPRしています。
それと、神奈川県の教育委員会に協力を願って、県
内の工業高校に出掛けてトラック運送事業を生徒達
にPRしています。これは“出前授業”と呼んでいる
のですが大変好評です。
□秋林路 昨年、全ト協さんが福岡で開催された
全国トラック運送事業者大会と、今年2月に新宿の
京王プラザホテルで開催された青年部の全国大会で
は、九州の希望が丘高校の安部幹也先生が講演さ
れましたが「もっと学校に対して事業者さんから積極
的に接触して欲しい。先生も親御さんも運送業界の
ことを正しく理解していない。」と述べておられます。
■筒 井 中型運転免許の問題を全ト協と一緒に
解決に導かれた方ですね。我々の出前授業は、そ
れを行動に移したもので、ライフラインを支える大切
な業界である事を若い世代にアピールしています。
□秋林路 やはり、これから社会に出る人たちに対
して、良いイメージを持って頂きたいですね。それが
プライトをもって仕事が出来ることにも繋がります。
■筒 井 この活動が、トラック運送業界への求心
力になることを期待している訳です。
□秋林路 すぐ行動に移されるところが素晴らし
い。やはりドライバー不足は、この業界のPR不足
の結果でもある訳です。社会の為になる仕事をした
いと思うのは若い人共通の願いですから、もっと積
極的にライフラインの役割をPRするべきで
す。
■筒 井 その通りです。業界を良くする
のは人材ですから、これからも教育の場に
積極的にアピールしていきたいと思います。
そのほか、学校に対してはスタントマン会
社に協力頂いて、交通事故の実演を生徒
さんに観て頂く活動も行っています。自転
車に乗った人が実際に交通事故に遭う状況
を実演するので、迫力があります。これも
交通安全活動として高く評価されています。
□秋林路 私は昨年11月、沖縄で横断歩道を渡っ
ていた自転車を軽自動車が跳ねる事故を目撃しまし
た。そういう意味でもこういう活動は業界のイメージ
アップに繋がると思います。
■筒 井 トラックが関係する事故が発生すると、
マスコミはトラックを色眼鏡で見る傾向があります。最
近はドライブレコーダーを搭載しているトラックも多くな
りましたので、きちんとした事故原因が明らかになる
ケースも増えて、悪者にされていたトラックが逆転す
るケースも多くなっています。
□秋林路 トラックは怖い、という先入観が一般にも
マスコミにもあるように思います。実際にはそれぞれ
の事業者が安全対策に取り組んでおられるし、ドライ
バーもプロの意識は非常に高いですよね。そういう現
実も広く知って頂く必要があります。マスコミの報道で
も大型トラックが絡む事故が発生すると「トレーラが事
故を起こした。」と表現する場合があります。マスコミ
は、大型トラックとトレーラの区別も出来ないほど、トラッ
クの知識が薄いんです。これも業界のPR不足も原
因のひとつではないかと思います。
■筒 井 そういう意味では、神ト協は積極的にこう
した交通安全活動に取り組んでいまして、神奈川県
警からもお褒めの言葉を頂いています。
□秋林路 なるほど、警察の仕事の一助にもなって
いる訳ですね。
■筒 井 東京都トラック協会の大髙一夫会長も述
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べておられますが、ドライブレコーダーとかデジタコ、
ブレーキ軽減装置などの安全・環境に関する装置は
トラックメーカーが出荷する段階から標準装備にして
頂きたいと考えています。その方がコストも下がるの
ではないかと思います。
□秋林路 そうですね。経営の苦しい業者さんは安
全装置であっても、搭載しなくて済むものなら搭載し
ない、という事になりますから、会長の言われる事を
義務化するべきですね。死角を確認するモニターも
同じ安全装置に入れて良いと思います。
■筒 井 もっと突き詰めると運賃にも関係してい
るんです。最初から車両機能として搭載されていれ
ば、そのまま原価計算に含まれますが、オプション的
に着けると荷主さんに理解されにくくなります。荷主さ
んは、安い見積もりが出れば歓迎します。その結果、
安全・環境にも配慮して、品質の高い運送を心掛け
ている事業者がはじき出されてしまうことになります。
事故が発生して困るのは荷主さんも一緒ですから、
安全・環境装置は是非標準装備にして頂きたいと思
います。
□秋林路 それを判断するのは国土交通省です
が、役所が自ら積極的に動くことは期待薄とすれば、
やはりこの業界としては政治力に期待するべきではな
いかと思います。
■筒 井 少し話題がそれますが、神奈川県は海
上コンテナの取扱いが非常に多い地域です。一時、
海上コンテナを運ぶ車両の事故が多発したことがあり
ますが、現在でも海上コンテナに積載されている荷
物に関する責任の所在は不明確なままです。コンテ
ナは密封されているので中の荷物の積み付け状況は
分かりません。それが原因かもしれない事故の責任
をドライバーや運送事業者に求めるのは無理があるよ
うに思います。
□秋林路 海上コンテナは国際物流に関係するの
で、問題は簡単ではないと思いますが、事故原因が
コンテナの内部にあってもドライバーや運送事業者の
責任になってしまうのは問題です。
■筒 井 難しい問題ですが、何とか解決の方向
が見いだせないか考えているところです。それと、
荷主さんとの関係では、年に一回適正取引のための
パートナーシップ会議を開催しています。そこでは長
時間労働、荷物の待ち時間問題も含めた運送に係
る適正取引についても話し合っています。また、ドラ
イバー不足も話題になりますが、ドライバー不足で困
るのは荷主さんも一緒なので、より良いパートナーシッ
プが構築出来なければ、ドライバーにとって益々魅力
の無い業界になってしまいます。いずれも非常に重
要なテーマであることを確認しています。
□秋林路 その通りです。政治家の片山さつきさん
との対談(2014年4月号)の中で、昨年2月の大雪
で中央高速にトラックが閉じ込められ、都内のコンビ
ニから生鮮食料品が消えた事を説明する際に“物
流マヒ”と表現したのですが、ドライバーが14万人
も不足すれば、物流への影響は全国に及ぶことにな
り、社会問題になります。これは決して荷主も他人
事では済まされなくなります。
■筒 井 そういう意味ではドライバー不足が運送
TheTRUCK2015年4月号 25
業界だけでなく、荷主さんの問題としても受け止めら
れ始めたように思います。
□秋林路 トライバー不足は、待遇とも関係していま
すので、運賃の適正化問題も、ここに来てターニン
グポイントを迎えているのではないかと思います。
■筒 井 運賃の適正化はいつも議題に上るので
すが、基本はちゃんと原価計算をして個別に交渉す
る事ですが、原価計算の仕方も知らない事業者の
方が多いことも事実ですから、この辺りが改善のポ
イントになります。原価計算が出来ないと燃料サー
チャージも正しく算出出来ないんです。
□秋林路 運賃の適正化と一言でいっても、それ
ぞれ立場が異なるので、タクシーのような訳にはい
かないし、一歩間違えれば公正取引にも関係しま
す。大変難しい問題ですが、ここを乗り切らないとト
ラック運送は常にしわ寄せを受ける業界から脱皮出
来ません。
■筒 井 神ト協としては、公正取引の問題もある
ので、運賃問題を団体として協議することは出来ま
せんから、原価計算セミナーなどの経営講習会を開
いて事業者の方々に勉強して頂いています。
□秋林路 トラック運送は昔、国が運賃を告示する
ような時期があったのですが、規制緩和で自由化に
なり、それが負のスパイラルを呼び込んで、どうにも
ならないところに来ています。荷主と運送事業者はビ
ジネスでは対等の立場であるべきですが、これだけ
事業者数が多くなると、過当競争に歯止めがかから
なくなってしまいます。
■筒 井 標準運賃の話もよく出るのですが、これ
も一律にはいかなくて大変難しいテーマですね。
□秋林路 私は、路線、重量鉄鋼、海上コンテナ、
タンクトラック・高圧ガス、生コン、引越など、運送の
事業形態別に運賃の建て方を公的に取り決めれば
良いのではないかと思っています。つまり誰が計算し
ても、原価を入力すれば同じ結果が出る計算方式で
す。時代の趨勢で運賃の底上げが必要な場合は、
原価に一定の関数を掛ければ全体の運賃もアップす
る仕組みです。この関数コントロールを国が行えば
運賃は安定します。これは取引のシステムを新たに
作るだけですから、公正取引として成立するのでは
ないかと思います。
■筒 井 確かに、そういう事が出来れば、この
業界は少し正常化に向かうことが出来るように思い
ます。ただ、この業界は、社会保険にも未加入の
事業者が居るくらい経営実態に格差があります。
法定福利費の割合も最近随分高くなっていますの
で、その点でも大きな違いが出て来ます。しかし、
運賃問題は、待ったなしのところに来ていることも
確かです。
□秋林路 そうですね。基本になるところが一元化
されないと足並みはそろいません。
■筒 井 そこのところが一番難しい。本音と建て
前の問題もありますし…。
□秋林路 自民党議員のひとりは、運送事業の許可
も更新制にして、不適切な事業者はどんどん許可を
取り上げる方向も考えるべきだと述べています。やは
り、事業者自身も身を切る想いで取り組む必要があり
ます。
■筒 井 最近は新規事業者が参入するハードル
TheTRUCK2015年4月号 26
トラックの日イベントの交通安全こどもショー
を少し高くしてきているので、良い傾向だと思ってい
ます。
□秋林路 そういう事ですね。役所も少し規制緩
和をやり過ぎた反省があるのかも知れません。ところ
で、最近、ユーザーとトラック産業界との交流が希薄
になってきた、ユーザーニーズがトラックメーカーに伝
わりにくいという声がありますが、いかがですか。
■筒 井 トラックの大きさは今、積載トン数で分類
されていますが、色々曖昧なところもありますね。
□秋林路 そうですね、以前、中型車は車両総重
量8トン以下で、積載量が4トンないし4.5トンでした。
ところが、冷凍車のように断熱ボデーや冷凍装置な
ど重い車体に架装すると積載が3トンもとれなくなって
しまう。運賃は運ぶ量と距離によって決まりますが、メー
カーが4トン積載とカタログ表示していても、実際には
4トン積載出来ないので困る。そこで、中型車にも4
トン積載出来るように、中型車の総重量枠を拡大して
欲しいと要望していました。ご存じの通り、その要望
はOKになったのですが、中型車が従来の大型車枠
に食い込んだので、中型免許の取得資格も大型車と
同じように20歳にしました。ところが、これまでは普
通運転免許を取得すれば中型車が運転出来たのに
18歳で高校を卒業してもそれが出来なくなった。これ
では、高卒者を運送業界で採用しずらいというのが
中型運転免許問題です。
本来、トラック運送業界は、道路運送車両法の車
両保安基準の改正を求めていたのに、結果的には
道路交通法に飛び火した形になってしまいました。
■筒 井 警察としては、普通乗用車でテストした
免許で、サイズの大きなトラックを運転するのは危険
と判断したのだと思います。それは間違っていなかっ
たと思いますが、受験資格を20歳とした点は問題で
した。
□秋林路 予定されている新制度では、中型車は
重量を限定して18歳から取得できるようにしようとし
ていますが、実はトラックを取り巻く法令はまだ幾つか
の矛盾点があります。
■筒 井 具体的には?
□秋林路 先般、連結車両の駆動軸重が海上コン
テナ用に限らず、バン型車なと一般車両も11.5トン
に緩和する、と発表されました。これは従来、道路
への負担が大きいとして制限していたものですから、
関係法令は道路法・車両制限
令です。車両のサイズや重量
を制限しているのは、他に道
路運送車両法・車両保安基準
と道路交通法があります。
道路法・車両制限令では、
海上コンテナなどの積載物は最
大地上高が4.2mになっていま
すが、道路運送車両法・車両
保安基準では3.8mに制限して
います。海上コンテナを積載し
たトレーラの外観はウイング車
や冷凍車などのバン型車の形
状と同じですから、通行に支
TheTRUCK2015年4月号 27
トラックの役割をキャンペーンする春のトラックフェスタ
障はない筈です。これは車両
を製作する基準と使用する基
準の相違なのですが、通行可
能な車両も製作を制限するの
は、道理が合いません。
■筒 井 なるほど、そうい
う事ですね。我々はどういう車
両が良いのかという点につい
ては、個々の事業者がディー
ラーさんとの取引の中で決める
ことになるのですが、車両の
製作制限については話題にな
りません。
□秋林路 そうですね。トラッ
クの重量やサイズについては、輸送効率の問題です
から、むしろ荷主が感心を寄せるべきテーマかも知
れません。
■筒 井 トラックに関しては以前、車両の標準化
を検討した経緯があります。
□秋林路 その車両は東京トラックショーにも参考出
品されましたが、普及するには至りませんでした。
■筒 井 トラック運送事業の経営者から見ると、ト
ラックの運転室はもっとシンプルで良いのではないかと
いう声があります。しかし、ディーラーは「運転手さん
は更にデラックスな車両を要求する。」と言います。
□秋林路 トラツクドライバーにとって運転室は長時
間過ごす職場ですから、居住性は大事だと思いま
す。来年の東京トラックショーでは、親御さんと一緒
に子供達を招待して『こどもトラックショー』も計画して
いますが、大型トラックの運転席に座ると目を見張る
と思います。確かに経済性も大事ですが、ドライバー
にプライドをもって働いて頂くためには、居住性も含
めてトラックのデザインは非常に大事だと思います。
■筒 井 そうですね。神ト協でもイベントによって
は子供さん達にトラックの運転席に乗って頂くような事
もしていますが、大変喜んでくれます。
□秋林路 人材育成の面でも子供達にトラックに親
しむ機会を提供することは大事だと思います。それ
と、総合的にはトラックメーカーとユーザーがそれぞ
れの立場で意見を交換する懇談の場があると良いの
ではないかと思います。
■筒 井 確かに、我々はディーラーさんと会う機会
は多くても、メーカーの方との接点は殆どないので、
そういう場が出来ると良いですね。
□秋林路 私も東京トラックショーの会場を活用する
など、協力できないかと考えています。
最後になりますが、ここで筒井会長さんの会社と
個人のご趣味など伺いたいと思います。インターネッ
トで新栄運輸㈱を検索すると株式会社日新のホーム
ページが一緒に立ち上がりますね。
■筒 井 そうです。当社は設立して約60年にな
りますが、父が日新で陸運部長をしておりまして、戦
後になって分社独立しています。従いまして、当社
は今でも日新の一事業部のような形で営業していま
す。主に化学品のタンクローリ輸送です。従いまし
て、安全は非常に重要視しております。
TheTRUCK2015年4月号 28
神奈川県トラック協会の筒井康之会長(右) 取材する本誌秋林路(左)
□秋林路 “日新”は当社と同名ですので、親近
感がありますが、命名も中国の古典、大学の一節
「苟
????
日に新たに、日日に新たに、また日に新たなり」
に由来していますので同じです。
■筒 井 大変良い社名だと思います。当社は先
代の父が日新のグループ企業として創業しています
ので、立場的には日新と同じです。
□秋林路 会長ご自身がこの業界に入られたのは何
歳の時ですか。
■筒 井 29歳の時です。私は6人兄弟ですが
男は私ひとりでしたから、小さいときから“あと取り”
と言われて育ちました。父は私が小さい頃から日新に
も連れて行っておりましたから、この業界への抵抗感
はまったくなかったです。
それで、私が高校生になった時に父が会社を立
ち上げたのですが、その経緯も知っているので、後
を継がなくてはいけないのかな、と思っていました。
ところが大学を卒業する段になって、父の苦労を見
ていた母が、「好きな事をして良い。」というものです
から、自分で就活して運送とは関係のない会社に勤
めることになりました。入社の面接で、父が会社を
経営していることが分かると、「途中で辞めるようなこ
とはないか。」と念を押されたので「骨を埋める覚悟」
と応えたのですが、結果的には7年で辞めることに
なってしまったんです。
□秋林路 どうして継続出来なかったのですか。
■筒 井 父がガソリンスタンドを始めるなど事業を
拡大したものですから、人手が足りなくなって戻って
来いと言い始めたのです。会社にも辞表を出したの
ですが、一年間は受け取ってくれませんでした。結
局、父も呼び出されて説明を求められる事になりまし
た。(笑)
□秋林路 どんな会社だったのですか。
■筒 井 物づくりの会社ですから、荷主の立場に
なります。結果的には良い経験を積んで、父の会社
に入ることになりました。
□秋林路 当時の運送はどんな状況だったのですか。
■筒 井 バブル経済の少し前ですが、バラセメン
トを運ぶタンク車が沢山ありました。それで、過積載
が問題になったのですが、タンク車なのにどうやって
過積みするのかと思ったら、車両を前後に揺すりな
がら積み込むとバラセメントの目が詰まって沢山積載
出来る。まだ、そんな事を平気でやっていた時代です。
□秋林路 ダンプも積載表示の2〜3倍も積載して
いました。当時のダンプの運転手は、「10年もトラック
に乗れば家が建つ」と言われるほど高級取りでした。
当時から見ると、安全も厳しくなって(それ自体は良い
ことですが)稼げない業界になってしまいましたね。
趣味・スポーツはいかがで
すか。
■筒 井 今は止めてい
ますが、ゴルフは22歳か
ら初めて、約40年続けま
した。
□秋林路 当時のゴルフは
会社の社長さんがステータ
スにしていた位ですから、
若い人は少なかったのでは
ないですか。
■筒 井 同世代の人は
殆ど居ませんでした。私は
TheTRUCK2015年4月号 29
入社した会社の先輩が運動場で教えてくれたのが
キッカケですが、休日には河原で練習したり、一時は
随分のめり込んでいました。(笑)
□秋林路 では、アベレージも相当良かったのでは?
■筒 井 シングルになるほど良くはなかったです
が、アマチュアとしてはそこそこ良かったと思います。
プロの先生に教わったことはないのですが、ある時「も
う出来上がっているので教える事はない。」と言われ
たことがあります。
□秋林路 若い時分に始めたので、教わる前に身
についてしまったのかも知れません。ゴルフ以外にも
何かスポーツは。
■筒 井 ボーリング、バスケット、スキーなど色々
やりました。でも、ある程度出来るようになると辞めて
しまう。小学校でも徒競走は早かったので、スポー
ツは合っていたのかも知れません。10年ほど前に腰
を痛めて、今はウォーキング程度です。
□秋林路 年齢に関係なく運動は健康の源ですか
ら、これからも身体を動かし続けて下さい。本日はお
忙しいところ長時間有り難う御座いました。
燃料電池車研究
TheTRUCK2015年4月号 30
■地球温暖化の脅威
先月(2015年3月)、仙台で開催された国連
防災世界会議でも地球温暖化(具体的には温室効
果ガス〈GHG〉
*1)
による大気温度の上昇、これと
関連した海水温の上昇)の影響として海洋性低気圧
(地域によって呼び方は様々:北太平洋では台風/
typhoon、南太平洋ではサイクロン/cyclone、北
大西洋ではハリケーン/hurricane等)の凶暴性の
増加、極地の氷雪の溶解とその影響などが観測され
被害も増しており、これらの被害の予測や対策につ
いて議論されたことは記憶に新しい。会期中に南太
平洋島嶼国バヌアツを襲ったサイクロン「パム」の場
合、最低中心気圧は910hPaを下回ったという。
わが国でも、2014年から2015年にかけての冬
期、数日毎に海洋性低気圧が北海道東部で発達し暴
風を伴う降雪に度重ねて見舞われたことも記憶に新し
い。
*1)〈GHG〉:京都議定書ではGHGとして次の6種
を挙げ大気への放出を管理削減すべきとしている。
[二酸化炭素(CO
2
)、メタン(CH4)、亜酸化窒素
(N2O、=一酸化二窒素)、ハイドロフルオロカーボ
ン類(HFCs)、パーフルオロカーボン類(PFCs)、
六フッ化硫黄(SF6)]
■自動車の関与とCO
2
削減対策
人・物の輸送手段で欠かせない自動車についても、
走行に伴って消費されるエネルギーを生み出す燃料か
ら排出されるCO
2
の量に上限を設け、将来に向けて
これを削減してゆく取り決めが行われている。その主
導体は目下EUである。
数量的に多数を占める乗用車では2012年から
2015年までに新車1台当たり平均CO
2
排出量を
130g/㎞以下にしなければならないとしている(欧
州議会及び理事会規則(EC)№443/2009)。達
成出来ないメーカーは罰金(2012年から2018年迄
の間の軽減措置を経て2019年以降は1g超過につ
き95ユーロ/台)を科される内容である。他方、高
性能な50g/㎞未満の車を開発し超過達成したメー
カーには台数換算で優遇策も設けている。
一方、商用車については軽量車(車両総重量3.5t
以下)を対象に同じ対象期間に新車1台当たり平均
CO
2
排出量を175g/㎞以下にしなければならないと
している。これより重量の大きい商用車については、
必要性を指摘しつつも具体的な車両区分と数値目標
は発表されていない。
2014年12月から燃料電池車(以下、FCV)でセダン型車の市販が開始
され、2015年2月から緑ナンバーの路線バスにも(地域限定ではあるが)
一般市民でも日常使いで乗れる時代が始まった。走行中には水蒸気しか
排出しない究極のクリーン車ではあるが、燃料水素の造り方によって地球
温暖化に悪影響のある二酸化炭素(以下、CO
2
)の発生量に大きな差が生
ずる。
西襄二
・欧州では大型トラックのディーゼルエン
ジン用に化石燃料を大事に使ってゆこう
という暗黙の合意がある……
(出典:日本自動車工業会JAPANHPより)
TheTRUCK2015年4月号 31
わが国の場合、大型トラック
を含む重量車について走行㎞
当たりの基準燃料消費量Lを
定めた目標燃費基準を設けて
いる。
余談かもしれないが、欧州
ではかねて大型商用車のエン
ジンについてメーカー間で水
面下の合意がある。化石燃料
は最終的に大型商用車で活
用するべく温存させなければ
社会の経済活動面で問題があ
る。乗用車や軽量商用車では
代替燃料利用やHV化、EV
化などの転換が比較的容易だ
が、物流wを通じて日常生活
に深く関わっている商用輸送
機関では輸送効率と経済性の
観点で現実的な可能性を考え
ると低公害化の改良は進めつつも内燃機関、とり
わけディーゼルエンジンの利用に依存しなければ
ならないのが中重量級商用車である、との共通
認識がある。閑話休題……
わが国でもこの認識は略共有され、中大型商
用車の代替燃料化、HV化、EV化などへの転
換の動きは未だ始まった段階である。自動車が地
球環境温暖化にどれ程関与しているかについて
は正しく認識しながら、削減努力を傾注しなけれ
ばならないことはいうまでもないが。
ここで、一般市販が始まった乗用FCVと商用
運転の始まった大型バスFCVについて、燃料水
素の製造に関わって排出されるCO
2
の大小がど
うなっているか観察しておこう。
■燃料水素の製造方式
地球自然界には、水素は単体では存在してい
ないが他の元素と結合して様々な物質として豊富
に存在している。その中から比較的簡単なプロセ
スを通じて他の元素との結合を解き水素単体を採
り出すことは技術的には可能である。
現在、既に動き出しているセクターとして都市
ガス業界がある。
燃料電池車研究
・製鉄業界挙げて取り組むCOURSE50では、CO
2
の発生を低減させ
H2の発生を増強する生産プロセスの改良が進められている。
・2030年を目処に改善された量産技術を確立し、2050年には一般に普及させる計画である。
(出典:日本鉄鋼連盟HPより)
(出典:日本鉄鋼連盟HPより)
TheTRUCK2015年4月号 32
都市ガス業界では供給量の略全
量を海外産地からの輸入に頼ってい
るが、現時点では産地でメタンガス
(CH4)を冷却し極低温の液状で海上
輸送して輸入し、受け入れ地でそのま
ま貯蔵し、必要に応じてガス化して所
定の圧力二兆世し地中管を通じて需要
家へ供給している。メタンは電力等を
利用して造る高温水蒸気と反応(CH4
+H2O→CO+3H2)させてH2を
採り出すことができる。COは他の目
的の化学プロセスに利用するとして、
貯蔵地点近くで大規模な改質工場を稼
働させFCの燃料としてのH2を製造して需要家に輸
送することが可能である(オフサイト方式)。また、商
用ガス(メタン)の供給先で改質してH2を供給するこ
とも可能である(オンサイト方式)。
ただ、いずれにしてもH2製造と流通には外部から
の電力が必要である。この電力がどの様に造られたか
によって、それ自体はH2により運転され水しか排出
しない究極のクリーンエネルギーシステムの一つであ
るFC、更にはFCで運転するFCVの総合評価が左
右されることになる。
他方で、製鉄業界では製鉄用高炉中の化学反応
でこれまでもH2は生成されており、これを採り出し
て利用することは現在でも理論的には可能である。
また、同時に大量に生成される
CO
2
は大気中に放出されて地球温
暖化の一因となっているが、これを
削減する為に鉄鉱石還元用にH2
の生成を増加させるプロセス改良も
中長期目標として業界挙げて取り
組んでいる(イメージ図参照)。
一義的にはこのプロジェクトは
CO
2
の発生を抑制する為にプロセ
スを改革するもので地球温暖化を
抑制する目的ではある製鉄業界の
内部のことである。H2の発生増
加が見込まれているといっても現
時点ではこれを外部に供給する、
それが燃料電池用を意識している
という動きでは無い。
方式名称主体業界特徴とプロセス概要
都市ガス改質水素
製造法①
=オンサイト型=
ガス業界
■ほぼ全量輸入されている都市ガス(主成分:CH4メタン)を
外部エネルギーを利用して改質しH2を採り出す。
■既存のパイプラインを利用して需要地に改質プラント兼供給
スタンド(ディスペンサー)を設置(オンサイト型)の展開が可能。
■新たな輸送手段は必要としない。
都市ガス改質水素
製造法②
=オフサイト型=
同上
■大規模な改質プラントでH2を製造し、ここで高圧ガスとし
て貯蔵。 ■必要に応じて供給スタンドへタンク車で輸送
循環型エネルギー
利用水素製造
新規セクターの
台頭に期待
■バイオガス発電、太陽光発電、風力発電等の循環型/再生
可能エネルギー(電力)を利用して水(H2O)を電気分解する等
して水素を生成する。■貯蔵・輸送に別途エネルギーが必要。
製鉄プロセスガス利
用水素製造法
(お断り:本方式は製鉄
工程の高炉中の反応に
より発生するCO
2
の抑
制の為の還元用H2の
発生促進を目指したプロ
ジェクトについて説明す
るもので、H2の外部供
給を即目指すものではな
い。)
製鉄業
日本の鉄鋼業界が挙げて取り組むCO
2
削減目的の技術開発
プロジェクト「COURSE50」で、2030年頃に技術確立、
2050年頃までに実用化を目指す地球温暖化抑制技術開発プ
ロジェクト。(CO
2
UltimateReductioninSteelmaking
processbyInnovativetechnologyforCoolEarth50.)
■高温の高炉中でCOとH2を反応させCO2とH2を生成さ
せる工程においてH2の比率を向上し、CO2の発生を低減さ
せる。 ■コークス炉ガス中のCO及びHの割合を増やす特
殊触媒を開発して、H2の利用割合を高める。 ■貯蔵・輸送
などに別途エネルギーが必要。
出典:各種資料をもとに筆者作表
水素の製造・供給方式
・川崎水江事業所にある移動式水素ステーション
(太陽日酸㈱が開発した移動式水素ステーション)
(出典:日本自動車工業会HPより)
TheTRUCK2015年4月号 33
しかし、H2社会構築へ向けた国家プロジェクトに
呼応して、今後業際的な動きが出て製鉄業界がこの
進展に貢献してゆくという可能性もあるのではない
か。お断りしておくが、これは筆者の考えである。
■製造−利用全工程のCO
2
発生評価
自動車は走るために車輪
(ホィール)を回すしくみである。
内燃エンジンであるか電動モー
ターであるかのいずれにしろ、
回転動力(モーター)が必要であ
る。内燃エンジン利用の場合、
化石燃料を地中から採り出す油田
かガス田の運転に費やすエネル
ギーから発生するCO
2
、原油なら
需要地への輸送、需要地での精
製と貯蔵、需要家への輸送、需
要家が消費する、こうした全ての
行程で発生するCO
2
を累積して
評価することを〝Wellウエル(井
戸)toWheelホィール(車輪)〟と呼ぶことは皆様ご
存知の通り。
FCVについてWelltoWheelのCO
2
排出量を比較
した場合、分かり易く整理すると次の様に表現できる。
①H2製造原料 天然ガス由来が最も優れており、
都市ガス由来が続く
②貯蔵と輸送 圧縮水素方式が液化水素方式より有利
燃料電池車研究
・FCバスは平常時の一般運行のほか、非常時の応急電源としての役割も見込まれている。避難所など大きな施設に対する給電も可能。
(出典:トヨタ自動車)
TheTRUCK2015年4月号 34
③集中生産と分散生産 集中生産方式と分散生産方
式はほぼ同等
④製造と流通に要する電力 再生可能エネルギー由
来の電力がベスト
参考資料:■環境省の傘下にある「地球環境研究セ
ンター・温室効果ガスインベントリオフィス(GIO)」に
よる「日本国温室効果ガスインベントリ報告書:2014
年4月版」、■総合効率とGHG排出の分析:(財)
日本自動車研究所刊「自動車研究」誌2011年7月
号など、■水素貯蔵技術ロードマップなど
H2製造については、何を原料とするかは様々な選
択の対象があるが、わが国の現実的な選択としては
天然ガス由来が最も優れている。近年の都市ガスは
天然ガスとほぼ組成が同じとみると同等のレベルにあ
る。別に、製鉄工程からH2を採り出す方式は有力
な選択肢であるが、不純物の除去にもエネルギーを
必要とする。
貯蔵と輸送は、出来るだけ高密度で行う事が望ま
しい。これには高圧圧縮方式と超低温冷却による液
化方式があるが、投入する加工工程エネルギーと輸
送に必要なエネルギーの双方を考慮すると圧縮水素
方式が有利である。
H2の生産は、需要地点とは距離をおく場所(オフ
サイト)で大規模に生産する集中方式と需要地点で生
産する分散方式があるが、どちらもほぼ同等レベルに
ある。
あらゆる発電方式の中で、再生可能エネルギー(太
陽光、風力、水力、バイオマスなど)による電力が
CO
2
排出の少ないことで優等生であることは理解し易
い。水力とバイオマスを除くと太陽光、風力はいずれ
も気象条件に大きく影響されることが課題だ。再生可
能方式の発電は、在来電力のピーク時補完用途以外
に、旺盛な発電が行われる間に水を電気分解してH2
を製造貯蔵し、FCVの燃料に供するなどがうまく商
業化出来ればCO
2
排出についてベストな選択肢であ
ろう。
■商用車の電動化
商用車の電動化には二次電池搭載方式のEV
(現在の市販車でいえば日産の「LEAF」、米テス
ラの「MODEL-S」など)とFCV(同トヨタの
「MIRAI」、トヨタ・日野の「FCバス」など)の二
つの方式があるが、前者は航続距離の点で課題が
大きいとされている。しかし、道路インフラとの関
係を改善して走行中にも充電できるシステムが提唱
されだしている。いずれ実現するとしてEVの課題
が大幅に改善された場合、FCVの立場はどうなる
だろうか。
トラック版EV及びFCVについては、運行地域が
限定され、1日の運行距離が経済的な航続距離に見
合う、そうした用途で環境意識の高い業界での試験
採用が将来を占うことになろう。(この稿おわり)
ECLー63sー3型
●一般セミトレーラ用の補助脚です。
●簡易防爆型制御器を使用すれば
危険物運搬用トレーラにも
取付け可能です。
ECLー263sー1型
●超重量物セミトレーラ用の
補助脚です。
ECLー163sー4型
●重量物セミトレーラ用の
補助脚です。
支
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合
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TheTRUCK2015年4月号 36
2014年12月の生産台数と/
車両の修理・メンテナンスについて
澤田征二
☆月次のトレンド
今月の前年同月比マイナスの機種数は前月より1機
種増えて6機種。ただし、このうち高所作業車、CB
クレーン、平床トレーラの3機種は98〜99%の値。
先月レポートでの不振(マイナス月の方が多い)機種
4つの内、産業機械運搬車、バキュームカー、脱着
コンテナの3機種は今月もマイナスであった。
同月比の数値として、大きく動いたものも少なくトレ
ンドとしては「巡航」というところ。
☆1年間のざっくりしたイメージ
今月分で2014年、1年分のデータが揃った事にな
る。前年同月比(去年との比較)から機種グループの属
する業界についてのコメントは次のようになるだろう。
*トラックの「標準」・「普通/深アオリ」・バン型3
機種(ドライ/ウィング/冷凍)・平床/バントレーラ・
テールゲートリフトといった、一般輸送系荷台/装置が
10か月以上プラスであった。数の多い小型クラスの
伸びが寄与していることから、配送系のビジネスが活
況であったのではないか?
*ダンプ・ミキサ・クレーンと高所作業車の建設、イ
ンフラ整備の機種もまだまだ元気がある。東京オリン
ピック前までは安泰かもしれない。
*バキュームカーや脱着コンテナといった民生/産業
の後始末関係は嫌な仕事だけに、車両や道具の改善
やシステム変更(水洗トイレ等)が行われるだろうから、
これからも長く生き続ける事はないのでは・・・。
なお、塵芥車(機械式塵芥収集車)はこの1年で前
年同期比がマイナスになったのは1回だけと健闘して
いる。
同じ後始末系の車両だが分別収集によって、同じ
ゴミの量でも出動回数が増えたり、運行経路が伸び
たりして車両数を増やす必要が出てきているのではな
いか?
☆トラックの修理/メンテナンス
ここに取り上げた18機種の内、トラック:標準荷台
/普通・深アオリを除けば、一般的に「特装車」とよば
れる。
そして、トラックの標準荷台・量産の中小型ダンプで
トラックメーカの「指定自動車」となっているもの以外の
車両の荷台には架装メーカの銘板が貼ってある。
つまり、荷台に関する責任は架装メーカにあるという
証明。
大手運送企業の中には「セパレート契約」と言ってト
ラックシャシと架装物を別々に注文する事もあるが、
一般的にはトラックディーラが取りまとめ、完成車両と
してユーザに販売する。
シャシ・架装物、個々の故障修理はディーラ/架装
メーカの指定サービス工場が行うが、統合した車両と
しての『車検』ビジネスは取り合いになる。
トラックメーカがバックアップしているディーラはシャ
シ側については専門であるが、多種多様な架装物全て
に精通している訳ではないので、外部委託せざるを得
ない。
しかし、架装メーカの指定サービス工場では自動車
整備専門学校を出た資格を持つ作業員を雇い、整備
の為の機器を揃えれば車検業務は可能である。シャシ
側の部品はディーラから購入しなくてはならないからそ
の価格についてはディーラより不利になるが、ディーラ
がその地位を利用して高く売りつけたりすることを排除
する為に整備企業が組合を造り、共同購入するなど上
手に共存している。
☆自動車整備事業を見てみよう
インターネット上で、「日本自動車整備振興会」を検索
してみた。各都道府県に自動車整備振興会があり、職
員には各地区の自動車検査場のOBが居る事が多い。
*事業場数(企業数ではなく工場の数)は約92,000
有り、コンビニ店舗数の倍に近い。
TheTRUCK2015年4月号 37
前年同月比が100%を下回ったものを赤字で表記
トラック部会
機種標準荷台普通/深アオリ1台積車両運搬産業機械運搬車
12月の生産台数1,14579331474
同上前年同月比%105.7137.9117.286.1
11月の生産台数1,07480326786
同上前年同月比%84.2107.295.7114.7
特装部会
機種リアダンプミキサ塵芥車バキュームカー
12月の生産台数3,94824836274
同上前年同月比%109.4124.1104.692.5
11月の生産台数4,30223040473
同上前年同月比%106.7111.1106.988.1
機種高所作業車テールゲートリフタ CBクレーン 脱着コンテナ
12月の生産台数3082,3751,467573
同上前年同月比%98.1114.899.676.8
11月の生産台数2752,4301,514656
同上前年同月比%66.6116.6112.788.4
バン部会
機種ドライバン冷凍車ウィングバン
12月の生産台数1,4171,3902,020
同上前年同月比%113.8114.7112.8
11月の生産台数1,3251,6622,092
同上前年同月比%109.1102.7129.6
トレーラ部会
機種平床タイプバンタイプコンテナタイプ
12月の生産台数136103163
同上前年同月比%99.3124.1119.9
11月の生産台数175149194
同上前年同月比%162.1110.4165.8
2014年12月末時点でのトラックのトレンド
〇形態別
・専業(整備売上げが50%以上):56,948
・兼業(同上50%以下):15,296
・ディーラ(メーカ/特約販売会社):16,033
・自家(主に自企業の車両整備): 3,658
〇整備要員規模別
・2〜3人:51,765
・4〜10人:35,976
・11〜20人:3,626
・21〜30人:423
・31人以上:143
要員が少ない工場が多いのは、零細企業が多いこと
も確かだが、ディーラやガソリンスタンド、オートバッ
クスといった用品販売業の建物内で車検と乗用車の一
般整備が出来るコンビニ的「認定/指定工場」が多い
のも確かである。
一昨年に、いくつかの大型トラック整備工場を紹介
したが、この様な企業は従業員も多く、非常に少ない
事が判る。
TheTRUCK2015年4月号 38
スケッチで見る世界のトラック石野 潔
JapanOriginal荷台編:様々なユーザ(荷主)と荷台メーカは日本の輸送形態の
向上を目指し欧米製品を参考にするも日本独自の荷台を工夫し発展させて来た。先月
号の車両編に続き日本オリジナルのトラック荷台を描いてみた。
かつての小型トラック等は一般貨物用に標準荷台、高床三方開荷台の2種類の仕様があった。標準荷台は
スチール製でキャブと一体となったスタイリッシュな形状がʻ売り!であったが、後部のみ開くリアゲートで使
い難かった。又リアホイルハウスが床に出っ張り積載性に不利であった。(当時パレット等の流通は限られてい
たが営業車として多くが使われていた)。現在の合理化された荷台に比べるとなぜかトラックに親しみもてる
ものだった。
(上)ʻ60年代トヨペットダイナ標準荷台:ʻ60年代にモデルチェンジされた2代目セミボンキャブオーバ車。
強靭フレーム、スタイリッシュな外観で好評だったが「エルフ」ディーゼルには勝てなかった。
(下)現代の標準平ボデー(エルフハイキャブ):各社、きれいなプレスラインのスチールカバーの全低床タイ
プの木製平ボデーを用意している。今はバン型が主流だが荷物適合で日本では根強い人気がある。
TheTRUCK2015年4月号 39
(上)超低床キャブボトルカー:ʼ90年代後半に発売された「ダイナイージライディング」ワイドをベースにした
ボトルカー。超低床だが中腰で乗降は不評だった。生ビン全盛時代のコーク集配風景。
(下)現在主流となっている代表的な2tonベースのボトルカー:側扉や後扉を使い、ペットボトルや缶を出し
入れする。回収品やカップを投げ込む大きなルーフトレイを設置している日本のボトルカー。
日本のボトルカー:昔はボトル専用は無く宣伝カーとして活躍した時期もあったらしい。戦後、駐留軍が独特
の強い味の飲料…コカコーラを日本にもたらし、ペプシも市場参入し次第に味付けも日本人好みになっていっ
た。やがて多種飲料が出回り、酒屋や喫茶店から自動販売機へと身近な存在となりボトルカーが専用配達車
として活躍して来た。生ビンから味気ないペットボトルや缶に代わり、ボトルカーも日本独自の形態の小型タ
イプとなっていった。
TheTRUCK2015年4月号 40
スケッチで見る世界のトラック
幌掛け平ボデーとウイング⒲ボデー:フェリー航送トレーラや一部のトラックに幌掛荷台は活躍しているが、
かつては路線や長距離車の殆どが幌掛けであった。ʼ70年代はじめにパブコやNフルハーフがWボデーを
開発、アルミ加工技術と併せまたたく間に世界に誇る日本の代表的な荷台に進歩した。
(上)幌枠幌掛け平ボデー:今はアルミブロック深煽り+スライド幌枠幌掛けがあるが、絵のように幌枠を車両
サイドや後端に収納した時代もあった。当時としてはモダンだった「ふそうグレート」。
(下)ウイングボデー:フォークやジョロ−ダ荷役、当て板、ベルト類で簡易固定等々、荷役性、積載性等先
人の努力で輸送品質向上へ寄与多大。軽量でコンパクトなW収納、更なる積載向上、GPS装着等の付加
価値ボデーを希求。絵は「プロフィアトップスリーパショートキャブ」10mWボデー。
TheTRUCK2015年4月号 41
日本のダンプや平床トレーラ:建機、重機や重量物輸送等はお国ぶりがみられる。狭く限られた国土の日本
は台数こそ多いが、関連法規条件もあり車両の構成規模や大きさは小さい。日本で無理して単車で運んで
いるものが欧州では仰々しく専用化されたトレーラ輸送が見られる。欧米や開発途上国等で活躍しているで
かダンプ等は日本では扱えない。コンパクトな都市型?ダンプや最近では鋼材運搬の平床トレーラが多い。も
ちろん超重量物輸送トレーラもあるが。
(上)日本のダンプ:最近は採掘場でなく都市や近郊でもトレーラダンプが見られるが、主力はGVW20ton
の日本型コンパクトダンプであろう。現在は東北、更には五輪対応の新規型を期待!
(下)日本の平床鋼材トレーラ:限られた種類で恐縮だが、まず欧州では見られず日本の都市近郊で見られる
日本の鋼材等運搬平床トレーラ。ヘッドは好評だったが生産撤退の国内向けUD3軸車。
正面入口に置かれたメインスポンサー「タダノ」の看板スポンサードした日野自動車はパリダカの写真を掲示
TheTRUCK2015年4月号 42
タイ陸運連盟、LTFT(THELANDTRANSPO
RTFEDERATIONOFTHAILAND)に加盟する団
体のひとつProfessionalCraneAssociation(タ
イ国クレーン協会/SuthichaiPiyaworasukul会
長)は、2015年2月18日、チョンブリー県パタ
ヤにある“OceanMarinaYachtClub”を会場に
2014年度年次総会を開催した。
当日は午前中に年次総会が行われ、昼食後にオー
プニングセレモニーと展示会、夕刻より野外パー
ティー形式の懇親会が行われた。展示会の出展企
業は、CHUKAIMAXCRANEMACHINERY、
ITALTHAI、ZOOMLION、TEREX、TADANO、
SOOSAN、SANY、ASIACRANES、DONGY
ANG、HINO、ISUZU、FUSO、UDトラックス、
VOLVOなどで、参加台数は中古販売約20台を含
む約50台となった。来場者は、1500人以上で懇
親パーティーへの参加者も300人を超えていた。
また、年次総会のスポンサー企業は、TADANO
タイ国クレーン協会がパタヤのヨットクラブを会場に
定例の年次総会と50台の車両が参加する
展示会を開催
文:於久田幸雄
(本誌編集長)
写真:タイ国際トラックショー事務局スタッフ
来場者誘致のために設置したタイ国際トラックショーのブース
LTFTの役員。右から6人目がクレーン協会のSuthichai会長
TheTRUCK2015年4月号 43
た。オープニングは、キャノン砲や火炎砲を使った派
手な演出に加え、タイ国海軍による吹奏楽団の演奏
と、自動小銃を構え空砲を発砲する兵士らによるイン
パクトのあるパフォーマンスが行われた。
夕刻よりはじまった懇親パーティは、涼しい海
風が心地よいヨットハーバー沿いの特設会場で行
われた。リゾート雰囲気が漂う中で、挨拶、年次
報告、表彰と続き、タイで人気の女性2組デュオ
“NEKOTYAN”のコンサート、さらに会場のバックで
は大掛かりな花火まで打ち上げられた。
この派手な演出を駆使したタイ国クレーン協会の模
様を今月号では写真グラフで紹介する。
(150万バーツ)、HINO(30万バーツ+42"LED
TV)、MAXCRANE(20万バーツ)、VOLVO(10
万バーツ)、UD(10万バーツ)、ChonburiIsuzu
Sales(10万バーツ)、AsiaCraneEuipment(10
万バーツ)、ThaiENC(10万バーツ)、ChuKai
(10万バーツ)、SahacraneService(10万バー
ツ)で、それぞれ協賛金と記念品などを提供した。
LTFTに加盟する各団体がこのような年次総会&展
示会を開催する場合、関係する企業から協賛金を得
て、それを運営資金としている。
今回は、パタヤの高級ヨットクラブを利用したビー
チリゾートを最大限に活かしてた屋外イベントとなっ
ドイツの建機メーカーLiebherr(リープヘル)の多軸大型クレーン
タイ国に進出しているトラックメーカーも車両の展示を行った
タイでVOLVOは高級車のイメージがある
タダノの販売用中古クレーン。日本語の表示がかなり目立つ
ユニックはタイ工場で生産しているカニ足タイプを販売店が出展
TheTRUCK2015年4月号 44
◆クレーン&トラック展示
会場には約50台のクレーン車やトラックが展示さ
れた。クレーン車を保有する運送事業者も多く、新
型のトラックも注目されていた。中古のクレーン車の
多くは日本からのもので、「○○運輸機工」「吊り荷の
下に入るな!」などの日本語表記がそのままになって
いる。ところが、日本語が入っているのがひとつの
ステータスだと来場者が話していた。
TheTRUCK2015年4月号 45
TheTRUCK2015年4月号 46
◆クレーン関連製品コーナー
フックやチェーンをはじめ、コントロールユニットや
各種アタッチメント、油圧ポンプにバルブ、ホース類、
オイル、タイヤ、さらにキャビン内に飾るマスコット
類まで集まっていた。LTFT加盟の各団体が開催す
る同種の展示会には関連部品や用品が必ず出展して
いる。どのブースにも来場者が集まっているので出
展する効果は高いのだと思われる。
人気デュオ“NEKOTYAN”のコンサート
派手な演出のリゾート気分の野外パーティー
TheTRUCK2015年4月号 47
◆野外会場の懇親パーティー
関係者約300人が集まり、展示会場の中央に舞
台を設置し、年次総会の締めくくりとして最後に行わ
れた懇親目的のパーティー。会場となったパタヤの高
級ヨットハーバーには、夕方の涼しい風が吹き抜けリ
ゾート気分が味わえる。花火が上がり、タイのTV番
組にも数多く出演する人気デュオの“NEKOTYAN”
が美しい歌声を聞かせてくれた
節約運転の提案
TheTRUCK2015年4月号 48
MICミックワークス㈱ 松原勝(取締役社長)
■消灯操作だけで32億円の節約
現在、国内には軽から大型車両まで合わせて、
約8000万台のトラックがあります。これは物の考
え方ですが、1台のトラックが1日に1円節約する
と、1日で8000万円が何処かに残ることになりま
す。これが10円になると8億円だし、1ヶ月30日と
計算すれば24億円、1年間だと実に288億円にな
ります。
では、トラックは1日に100円〜500円節約する
走り方が出来るのか。それは、充分可能なことで
す。具体的にお話しましょう。
クルマで夜間走行するとお気づきの方もあると
思いますが、信号が赤になると7〜8台が列をなし
て停車しますが、ヘッドライトを点けっぱなしにして
いる車両が随分あります。運送会社の中には安全
の為に日中でもヘッドライトを点灯したまま走らせ
ています。
ヘッドライトを点灯したままにすると、バッテリー
やオルタネーター、更には電球も寿命が短くなる
ので、30秒間で3〜4銭の損失になる考えられま
節約運転で運転手不足を乗り切ろう
集中力が増して安全運転にも貢献
ミックワークス株式会社(神奈川県座間市、松原勝社長)は、各種ランプ類や
ホーン等を製造、トラック産業界にも広く販売している。同社の松原 勝社長は
何事につけ研究熱心で、次々に安全商品を開発しているが、今回は商品開発
というよりも、提言に近い考案である。トラック運送業界には“目からウロコ”と言
える内容。以下は松原社長の発言を咀嚼して編集部でまとめたものである。
TheTRUCK2015年4月号 49
○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○○
す。都心だと僅か2〜3㎞走る間に信号や渋滞で
車両を停めなければならないシーンが5〜10回は
ある筈です。一回が3〜4銭でも100回になれば、
1日に3〜4円になります。全国に8000万台のト
ラックがあるとして、全ての車両が小まめにスモー
ルランプに切り替えれば合計では24〜32億円で
す。これはけっして小さな金額ではありません。
私は神奈川の本社から山梨の工場まで、夜間
に週2回3000㏄のライトバンで行きます。往復で
約400㎞になりますが、信号や渋滞で停まること
は数えきれないほどあります。ライトを意識しなけ
れば、全く節約になりません。これは最も簡単な節
約運転です。
■1台当たり10年で
276万4800円の節約
次に、皆さんビックリされる程効果のある節約
運転についてお話します。
3000㏄のクルマだと普通に運転していたので
は1リッターで6〜7㎞位しか走りません。私は一
般道を山越えして往復約400㎞走りますが、調子
のよい時は1リッターで12〜14㎞走ります。これ
は、何も意識しないで運転していたのでは達成で
きない距離です。
これをお金に換算すると
どうなるか。一般の方が1
リッターで7㎞走ると仮定
すると400㎞走るのに約57
リッターの燃料が必要で
す。1リッター120円として
6,840円の燃料代がかかり
ます。
では、節約運転で1リッ
ター12㎞走ると仮定すれ
ば400㎞の走行で約33
リッター消費しますから、
3,960円になります。その
差額は2,880円です。週2
回なので1ヶ月では往復8回ですから2万3,040
円、1年だと27万6,480円、10年だと276万
4,800円になります。
その他に、この節約運転は出来るだけ急加速を
しない、急ブレーキも踏まないように気をつけます
から、タイヤの摩耗も低減出来るしブレーキパット
も長持ちします。車両の傷みも抑えられるので下
取り価格も良くなる筈です。
では、どのように運転すれば1リッター当たり
の走行距離を飛躍的に延ばすことが出来るので
しょうか。慣れれば誰でも簡単に出来る運転方
法です。
車両の発進は同じですが、一定の速度に達し
たらギアをニュートラルにして、アクセルペタルか
ら足を浮かせます。これで走行中もエンジンはア
イドリング状態になります。つまり加速した際の慣
性応力の有効利用ですが、平たん路では車両進
行時間の20〜30%のエンジン加速で走行できま
す。しかし、そのままだと、次第にスピードが落ち
て先行車との車間距離が空いてくるし、後続車の
ドライバーもイライラしてくるので、頃合いをみて
加速することになります。しかし、加速し過ぎると
前方車に近づきすぎてブレーキを踏むことになりま
すので、ほどほどの距離に近づいたら、またギアを
節約運転の提案
TheTRUCK2015年4月号 50
ニュートラルに入れてアクセルペタルから足を浮か
せます。この繰返しで車両を走らせるのですが、ブ
レーキはエネルギーを無駄にすることになるので、
出来るだけ踏まない方がいい訳です。信号が2つ
並んでいる場合でも、慣れれば青で通り抜け出来
るようになります。既にお解りの通り、惰力走行し
ている間はエンジンがアイドリング状態になってい
るので燃料が節約できる訳です。
私は永年に渡ってこの節約運転を行ってデータ
を取り続けていますが、何も意識をしないで走行
するクルマとも到着時間は殆ど変わりません。
■安全運転の効果も
走行中にギアをニュートラルに入れるのは危険
と思われる方もあるかも知れませんが、そんな事
はありません。私自身が永年その方法で運転し
て、一度も事故を起こしていないし、むしろ安全
運転になります。何故なら、下り道でのエンジンブ
レーキや、ドライブに入れるタイミングが節約運転
の効果にも影響するので、常に周辺車両の動静
に気配りすることになるし、信号灯の読取にも注
意を払いますから、自然に安全運転になるのです。
アクセルに足を乗せたまま単調な運転を続けて
いると、自然に集中力が欠けて来ますから、周り
の急な変化に俊敏に対応出来なかったり、慌てる
のでハンドルミスをおかしてしまうのです。
いま運送業界では、ドライバーさんが不足して
物流マヒが起きかねないと本誌にも書いてあり
ますが、その大きな要因が給料など待遇面が良く
ないので若い方が魅力ある職業として受け止めて
くれない事です。
経営者の皆さんは適正運賃を貰えないので、
良い給料をドライバーさんに支払えないとおっしゃ
る。では、ドライバーさんが納得できる給料を支払
うための努力をホントななさっているのか。色々と
努力はなさっていると思いますが、節約運転を指
導して、それによって浮いたお金を還元することま
では、実施しておられないと思います。
先ほど、3000㏄のライトバンで私が行っている
節約運転で、一年間に約27万6,480円の節約が
出来ていると申し上げましたが、大きな車両で毎
日遠くまで出かける運送事業者さんは、もっと大き
な金額になるに違いありません。
では、どのようにして節約運転の効果を測定
するか。それは、ドライブポイントメーターを装着
することで、メーターの点数により燃料の節約度
合が判明します。一例を上げますと、大型トラック
が年間平均で15万㎞走行すると仮定すると、燃
料1リッターでの走行距離は2.2〜3.2㎞になりま
す。仮に3㎞とすると15万km÷3㎞ですから、年
間には約50000リットルの燃料が必要です。それ
を20〜30%節約すれば、10000〜15000リッ
トルの節約になり、金額に換算すれば、軽油が
リッター120円として(15000×120円)、年間約
1,800,000円の節約になります。
これはドライバーさんの気配りと努力がない限
り、良い結果は得られませんので、成果はドライ
バーさんに還元するべき性格のお金です。例え
ば、一年間で1,800,000円の節約が出来たら、そ
の半額の900,000円を特別賞与として支給すれ
ば、ドライバーさんの励みにもなるし、社内に活気
が出ると思います。
ただ、節約運転に一所懸命取り組むドライバー
さんも努力しないドライバーさんも同じ金額の賞
与では不公平になります。そこで、私は車両ごとに
節約運転をした記録が残るシステムを考案したの
ですが、それがドライブポイントメーターです。こ
れが、頑張ったドライバーさんにはより多くの賞与
を差し上げる目安になります。
余談ですが、ニュートラル運転中は、運転室内
が静かですから、音楽やラジオも鮮明に楽しむ事
が出来ます。
もしトラック協会さんなどで、節約運転の方法な
ど詳しく知りたいという希望がありましたら、何処
へでもお話に参りますので、ご連絡下さい。
TheTRUCK2015年4月号 52
コンテナマッチング拡大をテーマにした「第2回京浜港物流高度化シンポジウム」
京浜港の国際競争力の強化と背後圏物流の高
度化に向けた様々な取り組みを進めている京浜港
物流高度化推進協議会(中田信哉委員長=神奈
川大学名誉教授)は2015年2月6日、東京都
千代田区のベルサール神田で、「第2回京浜港
物流高度化シンポジウム」を開催した。
同協議会では、内陸地における空コンテナの
陸上輸送の削減に取り組んでおり、輸出入企業
が効率よくコンテナを利用(コンテナマッチング)す
ることが、空コンテナ輸送の削減につながり、
結果として環境負荷の低減、物流コストの削減
及びターミナル周辺での渋滞緩和に寄与すると考
えている。そこで、コンテナマッチングをより一
層推進するため、2014年10月に「京浜港コン
◇シンポジウム◇
コンテナマッチングの拡大に向けた
第2回京浜港物流高度化
シンポジウムを
京浜港物流高度化推進協議会
が開催
TheTRUCK2015年4月号 53
中田委員長がコーディネートを担当したパネルディスカッション
テナマッチングセミナー2014」を開催したのに続
き、今回第2回目として海上コンテナを扱ってい
る企業・団体を対象としたシンポジウムを開催し
たもの。
今回のシンポジウムでは、タニタ国際物流管
理室の横山九一室長、日本通運海運事業部の
犬井健人専任部長、そして日本コンテナ輸送の
土屋廣明常務取締役の講演に続いてパネルディ
スカッションが行われた。コンテナマッチングの
最新状況をレビューするパネルディスカッションで
は、中田委員長をコーディネート役に講演者3人
に加え、NPO法人エスコットの藤本治生理事長、
クボタ機械海外総括部物流企画グループの土本
哲也グループ長、国土交通省関東地方整備局
の下司弘之副局長が荷主、フォワーダー、陸運
事業者、船社、行政の立場からコンテナのラウ
ンドユース、マッチングについて議論した。
また、パネルディスカッション終了後に参加者
相互の交流・情報交換を目的とした交流会が行
われた。
《講演》の概略
◆タニタ・横山氏
タニタは1997年からエスコットの協力で、海
上コンテナのラウンドユースを開始し、2010年
3月から、東京港から秋田工場向けの部品輸入
で海上コンテナ輸送を陸送から鉄道輸送に切り替
えた際、JR貨物の盛岡インランドデポを利用し、
輸入で使用したコンテナを輸出業者が転用するラ
ウンドユースを実施した。その他、新潟の倉庫
への商品輸送で20フィートコンテナを鉄道にシフ
ト、JR貨物新潟貨物駅を活用しラウンドユース
につなげている。リードタイムの短縮と時間の
ぶれがないことが鉄道を使うメリットだとした。
◆日本通運・犬井氏
日通では「コンテナマッチングは手間がかかるた
め営業部門ではなく、非生産部門の企画としてコ
ンテナマッチングセンターを立ち上げた」と説明。
関東地区発のコンテナマッチングでは、太田国際
貨物ターミナル(OICT)、宇都宮国際貨物ターミ
ナル(UICT)、つくば国際貨物ターミナル(TICT)
など北関東のデポを活用している他、荷主倉庫
や輸送業者の施設にデポ機能を付加した。免税
コンテナの国内運送制度を利用した、国内貨物
への転用では、輸出空コンテナのピックアップ、
輸入空コンテナ返却時のほか、自社航空貨物の
幹線輸送に適用しているが、国内貨物を積むた
めの保定材や、海コンドライバーが通常行わない
TheTRUCK2015年4月号 54
パネルディスカッションは、荷主、フォワーダー、陸運事業者、船社、行政を集めて行われた
積み付けやラッシング業務が課題となっている。
◆日本コンテナ輸送・土屋氏
関東、関西で各種ラウンドユースの実績があ
る日本コンテナ輸送では、京浜港発着のコンテ
ナドレージは、車両不足による手配の困難さがあ
る。運転手・車両の1日あたりの稼働率悪化で
収支もダウンし、運転手の離職や海上コンテナ
輸送からの撤退が続いている。そのため「京浜
支店の固定傭車はこの2年で3割減り、歯止
めがかかっていない」とした上で、港でのコンテ
ナ搬出入に要すムダな長期間待機、ゲートオー
プン時間の制約による朝夕のゲート集中、運転
手の長時間労働などを解消する必要性を強調し
た。輸送業者にとってのコンテナマッチングの意
義は、付加価値を生む実入りコンテナの輸送を
増やし、運転手と車両の稼働率を上げることが
必要だとした。
《パネルディスカッション》の概略
▼ラウンドユースのコストや採算性について、「クボ
タは年間6500本をマッチングさせているが、デ
ポのコスト負担は受益者負担とすべきで、そのメ
リットは荷主と運送会社で分け合う必要がある。
ラウンドユースは1本からでもメリットがある(土本
氏)」と説明した。
▼運賃について、従来はラウンドユースが成立し
た時の運賃と、しなかった時の運賃を分けないこ
とが多かったが、「輸入のコンテナがなくなり安い
運賃だけ残ってしまうということがあり、ラウンドし
た場合としない場合の運賃を別建てにすることが
重要(藤本氏)」だとした。また、ラウンドユース
を行う際の陸上輸送業者への仕事の配分につい
ては、「20件をA社とB社に平等に分けるわけには
いかない。努力してもらった方にその仕事をやっ
てもらうしかない。船社も、ラウンドユースに協
力してくれる船社に替えないとマッチング率を上げ
られない(犬井氏)」と説明した。
▼ラウンドユースに消極的な船社があることに関し
て、「いろいろな船社にマッチングに参加して、選
択しやすい環境をつくってほしい(横山氏)」、「イン
ランドB/L(船荷証券)を発行することを、荷主
から船社に勧めてほしい(藤本氏)」との話が出さ
れた。
その他、ゲートオープン時間の課題として、オー
プン時間が拡大すれば事務負担が緩和される、
などの話題も出ていた。
◇シンポジウム◇
TheTRUCK2015年4月号 55
参加者がスマホ利用で質問を投げる形がとられた
TheTRUCK2015年4月号 56
各ブロックを代表する青年部会の正副会長
業界トピックス
全ト協青年部会が平成26年度全国大会を開催
青年経営者・事業継承者が参加し、
より積極的な社会貢献活動の継続を誓う
TheTRUCK2015年4月号 57
来賓と青年部会を応援する全ト協の幹部
公益社団法人全日本トラック協会青年部会(笠
原史久部会長)は2015年2月26日、東京新宿
の京王プラザホテルで「平成26年度全国大会」
を開催した。部会員の一致結束を図ることを目
的に今回のテーマを「今こそ団結ひとつの力へあ
るべき姿を目指して」とし、全国から運送事業者
の若手経営者ら655人が参加した。
全国大会の第1部は研修会で、冒頭壇上に
立った笠原部会長は、「全国には青年部会の仲間
が5300人いる。今こそ青年経営者が一致団結
し、業界のけん引役として一所懸命事業に取り
組み、“くらし(生活)と経済のライフライン”と
してトラックの価値を高めていくことが必要で
ある。業界を取り巻く諸問題は様々あるが、皆
さんと一緒に困難を突破していこうではないか」
と挨拶した。
続いて壇上に立った星野良三全ト協会長は、
「今日はこのような広い会場に若い経営者の方々
にたくさん集まっていただき、大変熱気を感じ
る。トラック業界の若手代表として、皆さんに
は今後の日本の物流業界を力強く引っ張って
いっていただきたい」とエールを送った。
また、木原稔自由民主党青年局長と祓川直也
国土交通省自動車局貨物課長が来賓の挨拶を
行った。
講演会は、早稲田大学の杉山雅洋名誉教授と
希望が丘高等学校自動車科の安部幹也科長の2
人が講師を務めた。
講演終了後に引き続き、青年部会平成26年
度活動報告が行われた。
主な報告内容としては、
①正副部会長会議の開催…笠原部会長ほか新正
副部会長就任(6月)
②全国代表者協議会の開催…26年6月、11月、
27年2月の3回開催
③全国9ブロック大会の開催…各会場に募金箱
を設置、109万9416円が集まった報告
④自由民主党青年局との意見交換会の開催(26
TheTRUCK2015年4月号 58
皆さんと一緒に困難を突破しよう、
と笠原部会長
物流業界を力強く牽引してほしい、
と星野全ト協会長
須藤全ト協副会長の乾杯で交流会はスタートした
年10月28日)
⑤ラジオ番組「ドライバーズ・リクエスト」への
出演内容
⑥希望が丘高等学校への視察(社会貢献活動)
となった。
募金活動で集まった募金について、2月25日
に開催された正副部会長会議の中で、全国自動
車教育研究会(全国の自動車関係課程を有する高
校96校が参加)との連携を行い、若年労働力の
獲得に向けた取り組みへの活用などが検討され
ている。
最後に、青年経営者・事業後継者の育成を目
的とした研修や社会貢献活動などを、積極的に
推進していくとする決意表明がなされて第1部
の研修会は終了した。
研修会終了後に第2部となる交流会が開催さ
れ、須藤弘三全ト協副会長(宮城県トラック協会
会長)の発声により乾杯が行われ、参加者たちは
さらなるコミュニケーションを深め合った。
なお、今回の青年部会全国大会の模様は、3月
上旬にYouTubeにアップされている。“全ト協
青年部会”で検索をかけるとその他の活動内容が
分かる動画が多数引っかかるので、興味のある人
はぜひともYouTubeを見ていただきたい。
TheTRUCK2015年4月号 59
若い力に期待する、
と祓川国交省自動車局貨物課長
われわれも協力する、
と木原自民党青年局長
「業界発展に貢献する」との
決意看板が立てられていた
熱気があふれる交流会の会場
TheTRUCK2015年4月号 60
講師の早稲田大学杉山名誉教授
物流の役割はとても重要で、生活に欠か
せないものです。一般的には「衣・食・住」
と言われますが、私はさらにそれに「交(物
流)」を加えて「衣・食・住・交」でなけ
ればならないと感じています。それだけ物
流の社会的意義は非常に大きく、物流事業
者の皆さんには、もっと自信を持って物流
という仕事に取り組んでほしいと思ってい
ます。
このところ、トラック運送業界を取り巻
く様々な問題が指摘されていますが、こう
した課題を克服するためには業界の青年経
営者の力がとても大切です。青年の「青」
は漢語で“春季”を表し、物事の始まりを
意味します。生活の中で大切な物流業界の
継続性を維持し、発展させていくためには、
青年経営者の役割がとても重要です。
そうしたことを背景に、全日本トラック
協会では「青年経営者等による先進的事業
取組に対する顕彰制度」を行っています。
具体的には、都道府県トラック協会の青年
組織に所属する経営者等が実施している先
進的で創意工夫等のある取り組みのうち、
他のものの模範となり得るような事業に対
して行う顕彰です。「先進的」な「創意工夫」
は、青年経営者だからこそできる特権です。
残念ながら、平成26年度は応募はあっ
たものの本顕彰制度の受賞事業に対応する
ものはありませんでした。これからの青年
経営者の皆さんのいっそうのチャレンジに
期待したいところです。
「トラック運送事業の発展のために
〜その源泉は青年経営者の創意と
工夫〜」
早稲田大学 名誉教授 杉山雅洋
■講演1
TheTRUCK2015年4月号 61
講師の希望が丘高等学校自動車科安部科長
大いに期待したいと安部科長が東京トラックショーを紹介
本校では、運転業務に関する教育を行って
います。それにより、各種国家資格を取得さ
せ、自動車業界に若い人材を数多く送り込ん
でいます。
具体的な取り組みとしては、①3級自動車
整備士(整備管理者)の資格取得に向けた教育
の実施、②運行管理者資格(貨物)の取得、
③3年生の授業として、教育課程に物流授業
1単位、TSE(交通安全教育・教習)2単位
の設定、④自動車実習場内に設置した全天候
型屋内試験コースでのフォークリフトの技能講
習…、などが挙げられます。
また本校は現在、文部科学省指定のスー
パー・プロフェッショナル・ハイスクール(SPH)
の申請を行っています。社会の第一線で活躍
できる専門的職業人を育成する専門的な高校
として指定いただくことで、モデル校として高
校生たちに自動車産業への興味を持ってもらい
たいと考えています。
子どもたちにとって、運転手は将来就きた
い職業の上位にランクされます。その一方
で、彼らを取り巻く親御さんや教員のトラック
運送業界への理解はまだまだ不十分だといえ
ます。学生や保護者、教員などにトラック運
送業界をより深く知ってもらうためには、積極
的な情報発信により業界を知っていただく必要
があると考えています。2016年に開催が予
定されている「東京トラックショー」の中で子ど
もを対象とする
「こどもトラッ
クショー」を計
画していると聞
いています。
大いに期待し
たいと思ってい
ます。
「自動車教育による人材育成
〜SPH指定校を目指して〜」
希望が丘高等学校自動車科・自動車専攻科科長 安部幹也
■講演2