【女性トラックドライバーの生き様】良い会社と仲間に恵まれて、好きな道を突っ走る!!
聞き手:横路(本誌)
大型トラックを運転する小林弘美さん
少子高齢化は社会のあらわる分野に影響を及ぼしている。中でも労働集約のトラック運送事業はドライバー不足がピークとなって、物流が滞りかねない状況となっている。そこで、国土交通省が着目したのが女性労働力で、“ トラガール ” の愛称まで考案して、運送業界への誘致を働き掛けている。しかし、もともと男社会のイメージが強いトラックドライバー、女性はそう簡単には集まらない。このほど、縁あって「 トラックの大好き」の現役女性トラックドライバー小林弘美さんが娘の林百合香さんを伴って本誌を訪ねてこられた。運転の経験も豊富なので、女性ドライバーの実体験を通してナマの声をお届けする。
独りが好きになった生まれ育ち
□横 路 まず生まれ育ちから・・・。
■小 林 生まれたのは埼玉県の日進町、大宮の少し先です。父は溶接で祖父は左官、叔父さんも大工さんでしたから、職人一家みたいでした。
□横 路 ご母堂は?
■小 林 母は水商売をしていたみたいですが、私はゼロ歳で生き別れになって5歳上の姉と一緒に祖父母に育てられました。
□横 路 そうでしたか…ゼロ歳では覚えていないですね。最近、幼少から祖母に育てられた女性の話を伺ったことがありますが、規律はとても厳しかったそうです。どんな感じでしたか。
■小 林 姉はとても可愛がられていましたが、私は独りが多かったです。そんな事もあって今も独りが好きです。
□横 路 子供の頃は何かサークルに入っていたのですか。
■小 林 芸能界に憧れていたので、小学は演劇部に入っていました。でも小5の時にロック歌手のファンになって、ひとりでコンサートに出掛けたり、追っかけをやっていたので、お巡りさんに補導もされました(笑)
□横 路 ファンが出来ても普通の女の子は友達と出掛けますよね。クルマとの出会いは ?
■小 林 18歳になったら直ぐに免許を取得して乗用車を乗り回していました。スピード出すと気持ちいいので、何度も危ない目に遭いました。でもお金を稼がないと生活できないので、軽自動車でお弁当を配達したこともあります。16歳で結婚して翌年に生まれた長女(同席の林さん)も3歳くらいになっていたので、助手席に乗せて仕事をしていました。
大好きなトラックはいつもピッカピカに磨き上げる
最初の入社はトラック協会長さんの会社
□横 路 若いお母さんですよね。 運送のトラックとの出会いは?
■小 林 用車で走っていると大きなトラックも見かけるし、運転手さんもカッコ良いので自然に憬れるようになって、運転してみたいと思うようになりました。
□横 路 “トラック野郎 ” の映画がヒットした時代ですね。
■小 林 そうです。 父が連れて行ってくれる映画もそんな内容ばっかりでしたから、自然に憧れるように・・・。
□横 路 普通の女性は大きなトラックは “ 怖い ”と言いますが、小林さんは逆でしたね。
■小 林 トラックは大きいから憧れるし、運転手さんもカッコ良いので、その中に飛び込んでみたいと思うようになりましたね。
□横 路 その発想は育った環境も影響しているかも知れません。
■小 林 はい、それで最初に採用して下さった運送会社が埼玉県トラック協会の会長をなさっている立派な会社で、見掛けもヤンキーな私を即決して下さったのは専務でした。とても良い方でその出会いがなければ今のわたしはなかったかもしれません。
□横 路 当時、女性ドライバーは何人くらいいたのですか。
■小 林 ひとりも居なくて私が最初でした。面接した方は3日と持たないだろうと思ったらしいのですが、いつまでも辞めないしクルマが好きだったので何時もピッカピカに磨いていたんです。それで皆に可愛がられて最高でした。
□横 路 どんなトラックでした?
■小 林 中型のウイングボデー車でした。
□横 路 どうやってその運送会社を探したの?
■小 林 運転手募集の広告を見て、自分で下調べもして面接に出掛けました。 幾つか候補があったのですが、最初で決まってしまいました。
□横 路 良くも悪くも人生は出会いですよね~(笑)。
■小 林 ホントに・・・。 私は親には恵まれませんでしたが、出会いには恵まれました。
□横 路 出会いはお互いだから、弘美さんにもオーラが出ているのだと思います。どんな荷物を運んでいたのですか。
■小 林 袋物が多かったのですが、まだ手荷役で愛知とか大阪とか遠くまで運んでいました。
□横 路 独りで寂しくなかったですか。
■小 林 運転手仲間とは、いつでも無線で連絡がとれるし、お願いすると駆けつけてくれる。まだ携帯電話がない時代でしたから最高でした。
□横 路 無線のグループが出来ていましたね。
■小 林 そうです。 食事する時もサービスエリアで待ち合わせてトラックの話で盛り上がったり、色々情報もくれるし女性は私ひとりでしたから何時もご馳走してくれるんですよ若かったし女子の特権でした(笑)。
□横 路 そんなに良くして頂いた会社をなんで辞めたのですか。
■小 林 その会社には約 10年居たのですが、運転免許を更新するのを忘れて運転していたら、料金所で捕まってしまって…迎えに来てもらう不始末をしてしまって、暫くお休みすることになったのです。会社は引き留めてくれましたが、迷惑をかけたし辞めることにしたのです。
小林弘美ドライバーと長女の林百合香さん
過積載で稼いだ産廃を運ぶ仕事
□横 路 大好きなトラックを降りて何をしたのですか。
■小 林 割りに大きな水商売のお店に入りました。
□横 路 それも女性ならではの仕事ですね。 最近は逆のホストクラブもあるようですが・・・。 現在、全国には約6万3000の運送会社がありますが、運転手さんが立ち上げた会社も沢山あるし、女性経営者も増えてきました。 運転の仕事を辞める時に運送会社を経営する発想はなかったのですか。
■小 林 私は机を並べてする仕事はダメなんです。やはりトラックを運転して自然を満喫する方が性分に合っているんです。
□横 路 なるほど。水商売から再度トラックドライバーにもどることになったキッカケは ?
■小 林 お店に努めている時に二度目の結婚をして下の子が生まれたのですが、やはりお金を稼がないと生活出来ないので、また運転しようと決心しました。
□横 路 二度目の運送会社はどんな仕事でした。
■小 林 ビンをクラッシュしたガラスとか、産業廃棄物を運ぶ仕事でした。 実は、そのお客様は私が見つけた荷主さんだったので、専用の高価なトラックを買って頂いて、一切を任せて下さったのです。
□横 路 それは凄いことですね。 積載が産業廃棄物ですと荷箱の深い大きな
ベッセルが架装されていたと思いますが、メーカーとか覚えていますか。
■小 林 トラックは三菱ふそうでしたが、荷台は覚えていないですね。
□横 路 泥除けに車体メーカーが書いてあったと思いますが。
■小 林 私はシンプルなデザインが好きなので、車体に貼ってあるシールとかも最初に剥がしてしまうし、泥除けも用品店でカッコ良いのを買ってきて付け替えるので、覚えていないです。
□横 路 トラックは荷物を積載する荷台が稼ぐので、経営者は荷台を大切に考える。でもドライバーは長時間生活する場所なので運転室が大切なんですよね。 運んでいた産廃は再生用でしたか。
■小 林 そうです。だからショベルカーの免許も取得して、自分で積み込んで降ろすときはダンプです。
□横 路 土砂を運ぶ一般のダンプは過積載が社会問題になりましたね。
■小 林 同じでした。多く運べばそれだけお金になる運賃体系でしたから、大きな荷台に積めるだけ詰め込む。自分で積み込む訳ですから、ショベルカーで押し付けながら積むんです。それで荷箱は膨らむしタイヤも扁平してエンジンも唸りながら走るのですが、過積すればお金になるので積めるだけ積む訳ですが、やはり白バイに何度か捕まりました。
□横 路 違法運送ですからね~。その後、大きな人身事故が発生したことをキッカケに議員立法でダンプ規制法が成立して、ダンプの過積載は終息することになる訳ですが、当時の過積載はドライバーが悪いのではなくて、その運賃制度に問題があったと思います。
■小 林 過積すれば稼げる訳ですから、ドライバーは積めるだけ積むのは当然ですよね。
□横 路 本来は過積しなくても適正運賃が貰えるカタチじゃないと可笑しい訳です。日本経済が急成長する時のひとつの歪だったように思います。その産廃運送の仕事も長かったのですか。
■小 林 数年前まで、・・・良かったです。その間に離婚したり、色々な出来事がありました。(笑)
トラック大好きの女性ドライバー、小林弘美さん
尊敬できる会社とドライバー仲間
□横 路 人生色々ですね。
■小 林 そうですね~。実はの仕事をしている時にストーカー事件に巻き込まれて、警察から「暫く埼玉から離れたほうがいい。」と言われて、名古屋に嫁いでいた長女(同席の林さん)のところに身を寄せることになったんです。それでご迷惑をかけるので産棄の仕事もやめることにしました。
□横 路 身を寄せるところがあって良かったですね。
■小 林 でも心はボロボロになって何をする気力もなくなっていました。
□横 路 その期間は結構長いのですか ?
■小 林 一年そこそこです。 問題が沈静化したので東京に戻ったのですが、やはり収入がなくては生活出来ないので、またトラックドライバーの仕事を探し始めました。これまでの会社もケジメをつけて辞めているので、再雇用の話も頂いたのですが、スマホで募集をしている会社を探して面接に行きました。
□横 路 それが現在の㈱ヨコタエンタープライズですね。
■小 林 そうです。 本社は愛知県ですが、埼玉県の三郷に営業所があったので、そこで面接して頂きました。 経歴書もあるし運転する様子も見て頂いて即決になりました。
□横 路 現在のトラックはどんなクルマですか。
■小 林 UDの大型ウイングで車体には日本トレクスの社名が貼ってあります。
□横 路 やっと車体メーカーの社名が出てきましたね。どんな荷物を運んでいるのですか。
■小 林 現在は建材です。
□横 路 現在も現役のトラックドライバーですが、とても長い経験を積んでおられます。 少子高齢化でドライバー不足の時代で、国は女性ドライバーを増やす政策を打っている訳ですが、実際に働いてみて運送は働き易い仕事だと思われますか。
■小 林 私はトラックの運転が好きだし、今の会社もこれまでの会社もとても良くして頂きました。ただ、圧倒的に男性の多い仕事ですよね。 私は男性に甘えることで助けて頂けることが多かったのですが、一般の OL さんが気楽に転職できる仕事ではないように思いますね。
□横 路 具体的にはどんなところがNGですか。
■小 林 私は男性ドライバーさんとドライブイン等で食事することも多いのですが、ドライブインの食堂は女性好みの雰囲気じゃないし、仮眠施設も女性専用の部屋もシャワーも少ないですから、ドライバーとして働くのは大変だと思います。まだまだ女性向けの設備は不足していると思います。
□横 路 これまでトラックドライバーは男性社会のイメージが強いですから、女性の方は働く場所のひとつとして対象に入れないですよね。
■小 林 私は男性ドライバーさんとドライブイン等で食事することも多いのですが、ドライブインの食堂は女性好みの雰囲気じゃないし、仮眠施設も女性専用の部屋もシャワーも少ないですから、ドライバーとして働くのは大変だと思います。まだまだ女性向けの設備は不足していると思います。
□横 路 これまでトラックドライバーは男性社会のイメージが強いですから、女性の方は働く場所のひとつとして対象に入れないですよね。
■小 林 こういう仕事が合う女性は沢山いらっしゃると思いますよ。でも男性イメージが強いから足を向けづらいのだと思います。
□横 路 女性が多くなったから設備を整えるというのではダメで、先ずインフラを整えてから女性を歓迎するキャンペーンが必要ですね。
本誌事務所でのインタビュー
□横 路 最後になりますが、同席して頂いた長女の林さんも祖父母に育てられ、お母とほぼ同じ年齢で結婚して3人のお子様がいらっしゃいます。これまでのトラックドライバー人生をどのように感じておられますか。
■小 林 色々ありましたが、私は自分の気持ちに素直に生きてきました。トラックドライバーの世界はこんな私を受け入れてくれて、誰もが可愛がってくれましたので、感謝しています。下の娘はまだ会えない状態ですが、いつかは誇りをもって生きて来た私を認めてくれる日が来ると信じています。
□横 路 人生は死ぬまで続きますからね(笑)。いつの日か弘美さんが女性トラックドライバーの草分け的存在であったことを世間も知ることになると思いますが、信念を貫き通しておられることに敬意を表します。 本日は貴重な休日を割いてまで取材にご対応頂き有難う御座いました。
カーボンニュートラル方策研究
現有ディーゼル社の存続が燃料の「グリーン化」即ち化石燃料(地中から汲み上げた太古の遺産である原油をゲースに精製した経由)に代わる「CO2化された新燃料」によって現実性がどうなるのかの検討を始めた。その具体例についてリポートを紹介します。
話題のニュートラル新製品情報
パワフル&スピーディな新型7トン脱着ボデー車を発売